就業規則の休暇・休職の規定|休職期間と復職の書き方

・採用・労務・会社のはじめかた編集部(監修:田中 祐介)

就業規則をつくるとき、いちばん「あとで揉めやすい」のが休暇と休職の条文です。年次有給休暇は法律で枠が決まっている一方、お盆休みや慶弔休暇、私傷病での休職は、会社がルールを決めなければ判断できません。この記事では、休暇と休職をどの順番で書けばよいか、休職期間をどう決め、復職をどう判断するかを、小さな会社が実際に迷う場面に沿って整理します。

この記事の結論

  • 年次有給休暇は法律で基準が定まっているため就業規則では法定どおりの取り扱いを明記し、お盆休みや慶弔休暇など法律で義務づけられていない休みは「会社が独自に定める休暇」として別条文で書き分けます。
  • 休職は法律上の制度ではなく会社が任意で設ける制度のため、休職に入る条件・休職期間の長さ・期間中の賃金や社会保険料の扱い・期間満了時にどうなるかの4点を就業規則に書いておく必要があります。
  • 復職の規定は「本人の希望」ではなく「主治医の診断書に加え、会社が必要と認めた場合は会社の指定する医師の意見も踏まえて会社が判断する」という形にしておくと、入院や私傷病からの復帰で判断が分かれにくくなります。

就業規則の「休暇」と「休職」はどう違うのか

まず押さえたいのは、休暇と休職は性質がまったく違うということです。休暇は、労働義務がある日について、申し出や会社の指定によってその日の労働義務を免除するもの。年次有給休暇、産前産後休業、育児・介護休業のように法律で定められたものと、慶弔休暇や夏季休暇のように会社が独自に設けるものがあります。

一方の休職は、病気やけがなどで長期間働けない状態になったときに、雇用契約は続けたまま一定期間だけ労働義務を免除する制度です。法律で「休職制度を設けなければならない」と定められているわけではなく、設けるかどうか、どんな内容にするかは会社が決めます。だからこそ、就業規則に書いていないと会社も本人も動けません。

条文の並べ方としては、①休日(会社が定める休みの日)、②年次有給休暇、③その他の休暇(法定の休業と会社独自の休暇)、④休職、の順に並べると読みやすくなります。休日と休暇を同じ条文に混ぜると、後で「お盆は休日なのか休暇なのか」が分からなくなりがちです。

年次有給休暇の規定は、どこまで書けばよいか

年次有給休暇は労働基準法で付与日数や要件の基準が決まっているため、就業規則で法律を下回る内容を定めることはできません。書き方としては、入社後の一定期間の勤務と出勤率の要件を満たした従業員に法律で定める日数を付与する、という形で法定どおりであることを示すのが基本です。日数表をそのまま載せる会社も多く、その場合は最新の法令に合っているか確認してください。

そのうえで、会社が決めておくべき運用ルールがあります。取得の申し出はいつまでに誰にするか(原則は事前に所属長へ、など)、半日単位の取得を認めるか、時間単位で取れる仕組みを入れるか、繰越の扱いをどうするか。ここを書いていないと、前日夜の連絡で当日休むといった場面で判断がぶれます。

年5日の時季指定義務(一定日数以上付与された人について、会社が取得時季を指定してでも年5日取らせる仕組み)にも触れておくと運用しやすくなります。誰にいつ指定するかの手順は社内ルールとして決め、制度の細かい要件は厚生労働省の資料で確認するのが安全です。

お盆休みや年末年始は「休日」か「休暇」か

お盆休みは法律で決められた休みではありません。就業規則に書かなければ、会社として一斉に休む根拠がないことになります。書き方は大きく二通りで、①年間カレンダーで定める所定休日に含める、②夏季休暇という有給または無給の特別休暇として与える、のどちらかです。

迷ったら、次の順で考えてみてください。全社員が同じ日に一斉に休む運用なら①の休日として扱うほうが単純です。顧客対応があり交代で休む必要があるなら②の特別休暇にして、取得できる日数と取得可能な期間(たとえば8月中に3日以内)を定めるほうが回ります。①にした場合は、その分だけ年間の所定労働日数が減る点を月給制の設計と合わせて確認しておきます。

年末年始も同じ考え方です。なお、年次有給休暇を計画的に一斉取得する仕組み(計画的付与)を使う方法もありますが、労使協定が必要になるなど手続きが伴います。導入を検討するなら社会保険労務士に相談してから条文を決めると安心です。

慶弔休暇、リフレッシュ休暇、病気休暇なども会社独自の休暇です。対象となる事由、日数、有給か無給か、証明書類の提出を求めるかを、条文の中で一行ずつ決めていきます。

休職の条文に最低限入れておく5つの要素

休職の条文でトラブルになりやすいのは、入口と出口があいまいなケースです。最低限、次の5つを書いておきます。1つめは休職の対象。試用期間中や勤続が短い人を対象外にするかどうかを決めます。2つめは休職開始の条件で、たとえば「私傷病による欠勤が引き続き一定期間に達し、なお就業が困難と認められるとき」といった形で、欠勤が続いた場合に会社が休職を命じる仕組みにします。診断書の提出を求める旨も書いておきます。

3つめは休職期間の長さ、4つめは休職期間中の取り扱いです。賃金は支払わないのが一般的ですが、その場合は無給であることを明記します。社会保険料は休職中も発生するため、本人負担分をどう会社に払ってもらうか(毎月指定日までに振り込む、など)を決めておかないと、復職時に大きな精算が発生します。健康保険の傷病手当金など公的給付の案内先も社内で用意しておくと親切です。

5つめは期間満了時の取り扱いです。休職期間が満了しても復職できない場合に自然退職とするのか解雇とするのかは、その後の手続きが変わる重要な部分です。この点は個別の事情によって評価が分かれることがあるため、条文の言い回しは社会保険労務士や弁護士に確認したうえで決めることをおすすめします。

休職期間はどれくらいに設定すればよいか

休職期間に法律上の決まりはなく、会社の体力と人員構成から決めます。判断の順番としては、まず「その人が抜けた状態で、業務を何か月回せるか」を考えます。次に「勤続年数によって差をつけるか」を考えます。小さな会社では、勤続が浅い人は短め、長い人は長め、という段階を設ける例がよく見られます。

もう一つ決めておきたいのが、同じまたは類似の病気で再び休職する場合の扱いです。復職後しばらくして再発したときに、前回の休職期間と通算するのか、あらためて満額の期間を与えるのか。通算のルールがないと、短期間の復職と再休職が繰り返されて期間が実質的に無制限になることがあります。「復職後◯か月以内に同一または類似の事由で欠勤したときは、前後の休職期間を通算する」といった条文を入れておきます。

入院を伴うケースでは、入院期間そのものより、退院後のリハビリや通院の期間が長くなることがあります。休職期間を決めるときは、入院日数ではなく「通常勤務に戻れるまで」を想定しておくと、途中で規定を変えずに済みます。

復職の書き方と、判断を誰がするかの決め方

復職でもっとも揉めるのは、本人は「働けます」と言い、会社は「まだ難しい」と感じる場面です。これを避けるには、復職の判断権が会社にあることを条文で明確にしておきます。具体的には、復職を希望する従業員は主治医の診断書を添えて申し出ること、会社が必要と認めるときは会社の指定する医師の診断や意見を求めることがあり、本人はこれに協力すること、これらを踏まえて会社が復職の可否を判断すること、の3段構えで書きます。

復職後の働き方についても一行入れておくと運用しやすくなります。「復職にあたり、一定期間、従前と異なる業務や短時間勤務とすることがある」といった内容です。いきなりフルタイムに戻して再発するより、段階的に戻すほうが本人にとっても会社にとっても現実的です。試し出勤のような仕組みを設ける場合は、その期間の賃金や労災の扱いをどうするかまで決めておく必要があります。

メンタル不調による休職は、判断がとくに難しい分野です。産業医がいない小さな会社では、地域産業保健センターなどの外部資源を使える場合があります。復職判定の進め方は個別性が高いので、実際のケースが起きる前に社会保険労務士と手順を確認しておくと落ち着いて対応できます。

作成・変更の手続きと、専門家への相談

就業規則は、常時10人以上の労働者を使用する事業場では作成と労働基準監督署への届出が求められます。作成・変更の際は、従業員代表の意見書を添えて届け出るのが基本的な流れです。10人未満の会社で法律上の義務がない場合でも、休職や特別休暇のような「会社が決めなければ分からないルール」は、書面にしておくほど後で助かります。

進め方としては、①休日カレンダーと年次有給休暇の運用を先に固める、②会社独自の休暇(夏季・慶弔など)を決める、③休職の入口・期間・出口を決める、④従業員に説明して意見を聞く、⑤届出と周知、という順番が自然です。周知は、配布や社内共有フォルダへの掲示など、従業員がいつでも見られる状態にしておきます。

休職と復職の条文は、書き方ひとつで後の対応の幅が変わります。とくに休職期間満了時の取り扱いや、復職可否の判断手順は、労務・法務の観点から個別に検討したほうがよい部分です。自社の規定をつくる段階で、社会保険労務士に内容を確認してもらい、退職や解雇に関わる文言は必要に応じて弁護士にも相談してください。制度の詳細な要件は、厚生労働省など所管官庁の最新資料もあわせて確認しましょう。

よくある質問

就業規則にお盆休みを書かないと休めないのですか。

会社として一斉に休む場合、その日が休日なのか休暇なのかを就業規則で定めていないと、賃金の扱いや欠勤の判断があいまいになります。所定休日に含めるか、夏季休暇という特別休暇として日数と取得期間を定めるか、どちらかの形で明記しておくと運用が安定します。

休職期間は何か月にするのが一般的ですか。

法律上の決まりはなく、会社の規模や人員の余裕に応じて決めるものです。勤続年数に応じて段階を設ける方法もあります。あわせて、同じ事由で再休職した場合に期間を通算するかどうかも決めておくと、運用でつまずきにくくなります。

入院した社員から復職の申し出がありました。診断書だけで復職させてよいですか。

主治医の診断書は重要な資料ですが、業務内容を前提とした判断とは限りません。就業規則に、会社が必要と認めるときは会社の指定する医師の意見も踏まえて会社が復職を判断する旨を定めておくと、判断の根拠が明確になります。個別の対応は社会保険労務士に相談してください。

従業員が10人未満でも休職の規定は必要ですか。

就業規則の作成・届出義務がない規模でも、休職は会社がルールを決めなければ判断できない制度です。実際に長期の病気やけがが起きてから決めると条件を巡って揉めやすいため、早い段階で書面にしておくことをおすすめします。

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