就業規則の労働時間・休憩・休日の記載例|みなし残業の書き方
就業規則づくりでいちばん手が止まるのが、労働時間と休日まわりの条文です。始業終業の時刻、休憩の取り方、休日の決め方、そして残業代の計算方法。ここは実際の運用と食い違うとトラブルの火種になりやすい部分でもあります。この記事では、労働時間・休憩・休日・割増賃金・みなし残業(固定残業代)について、どういう順番で決めて、どう書き分けるかを整理します。条文の形は自社の実態に合わせて調整してください。
この記事の結論
- 就業規則の労働時間の条文は、始業・終業の時刻、休憩時間、休日、時間外労働の有無をセットで書き、実際の運用とずれないようにするのが基本です。
- みなし残業(固定残業代)を導入する場合は、固定残業代に含まれる時間数と金額、その時間を超えた分は別途支払うことを就業規則と労働条件通知書の両方に明記する必要があります。
- 休日は「法定休日がどの曜日か」を決めたうえで、振替休日と代休の違いを条文で書き分けておくと、割増賃金の計算で迷いにくくなります。
就業規則の労働時間は、どの順番で決めればいい?
労働時間の条文は、①1日の所定労働時間と1週の所定労働時間、②始業・終業の時刻、③休憩時間、④休日、⑤時間外・休日労働をさせることがある旨、の順に決めていくと形になります。この5つは互いに関係しているので、どれか一つだけを先に決めると後で矛盾が出ます。まず「うちは週何日、1日何時間働く会社なのか」を紙に書き出すところから始めてください。
法令では1日および1週の労働時間の上限(法定労働時間)が定められていて、これを超えて働かせるには労使協定(いわゆる36協定)の締結と届出が必要とされています。所定労働時間を法定労働時間と同じにするか、少し短くするかは会社の判断です。上限や例外の詳細は厚生労働省の資料で最新の内容を確認してください。
記載例としては「所定労働時間は、1週間については◯時間、1日については◯時間とする」「始業時刻 ◯時◯分、終業時刻 ◯時◯分」という形が一般的です。部署や職種で勤務時間が違う場合は、条文の中で別表を引く形にしておくと、後から追加しやすくなります。
休憩時間はどう書く?一斉付与と交替制の書き分け
休憩は、労働時間の長さに応じて労働時間の途中に与えることが法令で求められています。就業規則には「休憩時間は◯時◯分から◯時◯分までとする」と時刻で書くのがもっとも分かりやすい書き方です。休憩は労働から完全に解放されている時間なので、電話番をさせている時間は休憩と扱われないことがあります。
飲食店や店舗のように全員で同時に休憩を取れない業種では、交替で休憩を取る形になります。その場合は「業務の都合により、前項の休憩時間を交替で与えることがある」といった一文を入れ、あわせて一斉休憩の適用除外に関する労使協定が必要かどうかを確認してください。業種によって扱いが異なるため、判断に迷うときは社会保険労務士に相談すると整理が早いです。
休憩を分割して与える場合や、外出を許可制にする場合も、その旨を条文に書いておきます。運用でだけ決まっているルールは、後から「聞いていない」と言われやすい部分です。
休日の記載例|法定休日をどこにするかを先に決める
休日の条文でまず決めるのは「法定休日をどの曜日にするか」です。週休2日の会社でも、法令上の休日として位置づけられるのは原則として週1日(または一定期間内に4日)で、それ以外は所定休日という扱いになります。法定休日に働かせた場合と、所定休日に働かせた場合とでは割増賃金の考え方が変わるため、ここを曖昧にしたままだと給与計算でつまずきます。
記載例は「休日は次のとおりとする。①日曜日(法定休日)②土曜日③国民の祝日④年末年始(◯月◯日から◯月◯日まで)⑤その他会社が指定する日」といった列挙の形が使いやすいです。年末年始や夏季休暇を毎年変える運用なら「会社が別に定める日」としておき、年度ごとに年間カレンダーで示す方法もあります。
振替休日と代休は別物なので、条文を分けて書きます。振替休日は、あらかじめ休日と労働日を入れ替えるもので、事前の指定が前提です。代休は、休日に労働させた後で別の日を休みにするもので、休日労働自体はなかったことにならないため、割増賃金の支払いが必要になる場面があります。この違いを一文ずつ書き分けておくと、現場の運用が安定します。
半休・時間単位年休はどこまで書いておくべき?
半休(半日単位の休暇)は法令上必ず設けなければならない制度ではなく、会社が任意で導入するものです。導入するなら、①午前休・午後休の区切り時刻、②半休を取得した日の休憩の扱い、③半休を何回取ったら1日分として扱うか、の3点を就業規則に書いておくと運用が揺れません。区切り時刻を書かずに運用すると、人によって「半日」の長さが変わってしまいます。
年次有給休暇を時間単位で取れるようにする場合は、労使協定が必要とされています。半休と時間単位年休の両方を入れると管理が複雑になるので、勤怠管理の仕組みが整うまではどちらか一方から始める、という判断もあります。
記載例としては「午前半休とは、始業時刻から◯時◯分までを就業しないことをいう」「午後半休とは、◯時◯分から終業時刻までを就業しないことをいう」と時刻で定義する形です。遅刻・早退との違いもあわせて書いておくと、賃金控除の場面で迷いません。
みなし残業(固定残業代)の書き方と、最低限入れる3点
みなし残業、固定残業代、定額残業代などと呼ばれる制度は、一定時間分の時間外労働に対する割増賃金をあらかじめ定額で支払うものです。就業規則や賃金規程に書くときは、①固定残業代として支払う金額、②その金額が何時間分の時間外労働に相当するか、③その時間数を超えた場合は差額を別途支払うこと、の3点を明記するのが基本とされています。この3点のどれかが欠けていると、固定残業代として有効と認められない場合があります。
記載例は「固定残業手当は、1か月◯時間分の時間外労働に対する割増賃金として支給する。実際の時間外労働が◯時間を超えた場合は、超過分の割増賃金を別途支給する」という形です。あわせて、基本給と固定残業手当を給与明細上で分けて表示し、労働条件通知書にも同じ内容を書いておきます。書類ごとに数字が違うと、説明がつかなくなります。
なお、固定残業代を導入しても36協定の締結・届出や時間外労働の上限規制の適用がなくなるわけではありません。「固定残業代を払っているから何時間でも働かせてよい」という運用にはならないため、勤怠の記録は通常どおり必要です。設計段階で社会保険労務士に見てもらうことをおすすめします。
割増賃金の条文|深夜・休日・月60時間超をどう書くか
割増賃金の条文では、時間外労働、深夜労働、法定休日労働の3つについて、それぞれ割増率を定めます。法令では最低限の割増率が定められており、就業規則にはそれ以上の率を書くことになります。さらに、1か月の時間外労働が60時間を超えた部分については、より高い割増率が適用される取扱いがあり、中小企業にも適用が及んでいます。具体的な率と適用範囲は厚生労働省の資料で最新の内容を確認してください。
記載例としては、「時間外労働に対しては、通常の労働時間の賃金に法令に定める割増率を乗じた額を支給する」「1か月の時間外労働が60時間を超えた部分については、法令に定める率による割増賃金を支給する」といった形で、率そのものを条文に書き込まず法令を引く書き方もあります。この書き方だと法改正のたびに規則を直さずに済む一方、従業員から見た分かりやすさは下がります。自社の規模と、給与計算を誰がやっているかで選んでください。
月60時間を超える部分について、割増賃金の支払いに代えて有給の休暇(代替休暇)を与える制度を設けることもできます。導入には労使協定が必要とされており、単位や取得期限などの決めごとも出てきます。まずは60時間を超える残業が発生する部署があるかどうかを確認し、あるなら計算方法を先に固めるのが現実的です。
作った就業規則は、いつ・どこに出す?
常時使用する労働者が一定数以上の事業場では、就業規則の作成と所轄の労働基準監督署への届出が求められています。届出の際には、労働者の過半数を代表する者の意見を聴いた「意見書」を添えるのが一般的です。人数が基準に満たない会社でも、労働時間や休日のルールを書面にしておくと、後の食い違いを防ぎやすくなります。
流れとしては、①条文案を作る、②従業員代表に意見を聴いて意見書をもらう、③就業規則本体と意見書を労働基準監督署に届け出る、④従業員に周知する、という順です。周知は、掲示・備付け・書面交付・社内システムでの閲覧など、従業員がいつでも見られる状態にしておくことが求められます。作って金庫にしまうだけでは周知にならない点に注意してください。
労働時間や割増賃金の条文は、書き方ひとつで給与計算の実務が変わります。みなし残業の設計、変形労働時間制の導入、月60時間超の取扱いなど、判断が分かれる論点は自己流で進めず、社会保険労務士に内容を確認してもらうと安心です。すでに運用している規則を見直す場合は、不利益変更にあたらないかという観点も含めて相談してみてください。
よくある質問
就業規則に始業・終業の時刻を書かず「シフトによる」とだけ書いてもいいですか。
シフト制の場合でも、就業規則には基本となる勤務パターンごとの始業・終業時刻を書き、シフトの決定方法や通知時期をあわせて定めておくのが一般的です。「シフトによる」だけでは労働条件が特定できず、後でトラブルになることがあります。勤務パターンを別表にまとめて条文から引く形が実務では使いやすいです。
みなし残業代を導入すれば、残業時間の管理はしなくてよくなりますか。
そうはなりません。固定残業代を支払っていても、実際の時間外労働が定めた時間数を超えた場合は差額の支払いが必要とされており、そのためにも労働時間の把握は欠かせません。36協定や上限規制の適用もなくならないため、勤怠記録は通常どおり残してください。
半休を導入する場合、就業規則の変更は必要ですか。
休暇の取得単位は就業規則に定める事項にあたるため、半休を導入するなら条文の追加や変更を検討することになります。あわせて、午前休・午後休の区切り時刻と、その日の休憩の扱いを書いておくと運用が安定します。変更手続きの進め方は社会保険労務士に確認すると確実です。
月60時間を超える時間外労働の割増率は、小さな会社にも関係ありますか。
月60時間を超える部分の割増賃金に関する取扱いは、中小企業にも適用が及んでいます。該当する残業が発生しうる会社は、就業規則の条文と給与計算の設定を先に確認しておくと安心です。具体的な率や代替休暇の要件は、厚生労働省の資料および社会保険労務士にご確認ください。