就業規則の服務規律の書き方|スマホ・服装・アルコールチェックはどこまで書けるか
「勤務中のスマホをやめてほしい」「服装がバラバラで困る」「運転前のアルコールチェックをルール化したい」。こうした社内の困りごとは、就業規則の服務規律に書くことで、はじめて「会社のルール」として扱えるようになります。とはいえ、何でも書けばいいわけではありません。この記事では、服務規律に書ける範囲の考え方と、条文に落とすときの順番、社内に定着させるまでの手順を整理します。
この記事の結論
- 服務規律は「業務に必要な理由があるか」「手段が行き過ぎていないか」の2点で書ける範囲が決まり、業務との関連が説明できないルールは無効と判断されることがあります。
- スマホ・服装・アルコールチェックはいずれも服務規律に書けますが、全面禁止ではなく「原則+例外+目的」の形にすると運用しやすくなります。
- 服務規律を新設・変更するときは、条文を作る→従業員代表の意見を聴く→労働基準監督署へ届け出る→全員に周知する、の順に進めます。
そもそも就業規則の服務規律とは何を書く章なのか
服務規律は、就業規則のなかで「働くときに守ってほしい行動のルール」をまとめた章です。始業・終業の時刻や賃金のように法律で記載が求められる事項とは別に、会社が任意で定める部分にあたります。任意だからといって軽い扱いでよいわけではなく、懲戒処分の根拠を支えるのは、この服務規律に書かれた内容です。
よくある構成は、①一般的な心得(誠実な職務遂行、職場秩序の維持)、②具体的な禁止・遵守事項(無断欠勤、職務専念、私用スマホ、服装、飲酒運転の禁止など)、③情報・機密の取扱い(顧客情報、個人番号、SNS投稿)、④ハラスメント関連、の4ブロックです。まずこの箱を決めてから、自社で実際に起きている困りごとを当てはめていくと、条文がばらつきません。
逆に、服務規律に書いていない行為をいきなり懲戒の対象にするのは難しくなります。「注意しても直らない」と感じている行動があるなら、それが服務規律に書いてあるかを先に確認するのが出発点です。
どこまで書けるか迷ったら、この順に判断する
社内ルールを就業規則に書けるかどうかは、次の順に見ていくと整理できます。第一に「業務上の必要性を説明できるか」。安全の確保、情報の保護、業務の遂行、職場秩序の維持、会社の信用維持のいずれかに結びつくなら、書ける方向で検討できます。第二に「手段が目的に対して行き過ぎていないか」。目的が正当でも、私生活の全面的な制約や、プライバシーに深く踏み込む手段は、行き過ぎと判断されることがあります。
第三に「運用できるか」。全員に同じ基準で適用できないルールは、特定の人にだけ適用したときに不公平と受け取られ、トラブルのもとになります。第四に「記録が残るか」。注意・指導の履歴が残らないルールは、いざというときに根拠として使いにくくなります。
この4つのうち、最初の2つで引っかかるなら条文の書き方を変える、後ろの2つで引っかかるなら運用方法をセットで決める、と切り分けると進みやすくなります。個別の事案で有効性が問題になりそうなときは、社会保険労務士や弁護士に確認してください。
就業規則でスマホを禁止できるか|「全面禁止」より「原則+例外」
「就業規則 スマホ 禁止」と検索する方の多くは、勤務中の私用スマホをやめさせたいと考えています。職務専念義務の観点から、勤務時間中の私用スマホ使用を制限する定めを置くこと自体は一般的に行われています。ただし、完全な持ち込み禁止まで定めると、家族からの緊急連絡や災害時の安否確認ができず、実際には運用が崩れやすくなります。
現実的なのは「勤務時間中の私用の通話・メッセージ・アプリ利用は原則として行わない。緊急の連絡等やむを得ない場合は、上長に申し出たうえで休憩室等で行う」という原則+例外の形です。製造現場や医療、接客など、安全や顧客対応の観点から持ち込み自体を制限する必要がある職場では、対象エリアを限定して「作業区域内への持ち込みを禁止する」と書くほうが、理由が明確で納得を得やすくなります。
あわせて、業務用スマホや社内チャットの私的利用、業務中の写真・動画撮影とSNS投稿についても条文を分けておくと、後の判断が楽になります。撮影禁止は「顧客情報や機密が写り込むおそれがあるため」という目的を条文か社内通達に添えておくと、現場が理解しやすくなります。
就業規則の制服・スーツ規定|服装はどこまで指定できるか
服装は、業務上の必要性が説明しやすい領域です。制服の貸与がある職場なら「会社が貸与する制服を着用し、退職時は返還する」「破損・紛失時は速やかに届け出る」といった条文を置きます。安全靴やヘルメット、名札など、安全衛生上の着用義務があるものは、服装規定ではなく安全衛生の章に置いたほうが、指示の重みが伝わります。
制服がない職場で「就業規則 スーツ」を検討する場合は、書き方に注意が必要です。「スーツ着用のこと」とだけ書くと、季節や職種、多様な働き方に合わなくなります。「業務にふさわしい清潔な服装とする。顧客訪問時は相手方に失礼のない服装とする」といった基準+場面の形にし、具体的な例は服装ガイドラインなど別文書で示すと、時代に合わせて見直しやすくなります。
髪型・髪色・ひげ・ネイル・アクセサリーについては、職種によって必要性の説明しやすさが変わります。食品や医療で衛生上の理由があるもの、機械を扱うため安全上の理由があるものは根拠が明確です。一方、接客上の印象だけを理由に一律に細かく制限すると、行き過ぎと判断されることがあります。迷う項目は「禁止」ではなく「業務に支障のない範囲で」と幅を持たせておくのが無難です。
アルコールチェックを就業規則に書くときの手順
社用車や自家用車で業務運転を行う会社では、運転前後の確認をルール化しておきたいという相談がよくあります。「就業規則 アルコールチェック」で調べる方は、まず自社が道路交通法上の安全運転管理者の選任対象かどうかを確認してください。事業所ごとの自動車の使用台数などによって扱いが変わり、確認の方法や記録の保存についても定めがあります。要件の詳細は警察庁や各都道府県警察の資料で最新の内容を確認してください。
就業規則側では、①飲酒運転および酒気帯びでの業務運転を行わないこと、②運転業務の前後に会社の定める方法で確認を受けること、③確認を拒んだ場合や基準に達した場合は運転業務に従事させないこと、④結果は会社が記録・保存すること、の4点を服務規律に置くのが基本形です。検知の機器や実施場所、記録の様式といった手順は、社内規程やマニュアルに分けると、機器を変えたときに就業規則を触らずに済みます。
導入の順番は、対象者と対象業務を決める→実施方法と記録の担当者を決める→条文案を作る→従業員に説明する、です。前日の飲酒が残っている可能性がある場合の申し出ルートも決めておくと、「言い出せずに運転してしまった」という事態を防ぎやすくなります。
プライベート・SNS・マイナンバーをどう書き分けるか
「就業規則 プライベート」で問題になるのは、私生活上の行為をどこまで規律できるかです。原則として私生活は自由ですが、会社の信用を著しく傷つける行為や、職場秩序に直接影響する行為は、服務規律の対象になり得ます。条文としては「会社の名誉・信用を害する行為をしてはならない」といった形にとどめ、私生活全般を包括的に禁止する書き方は避けるのが一般的です。副業・兼業については、禁止ではなく届出制にして、競業や健康確保の観点から個別に判断する形が増えています。
SNSは、私生活と業務が混ざりやすい領域です。「業務上知り得た情報、顧客・取引先に関する情報、職場で撮影した写真等をSNS等に投稿しない」と、対象を情報に絞って書くと、表現の自由に踏み込みすぎずに済みます。投稿内容そのものの是非を会社が判断しようとすると、線引きが難しくなります。
マイナンバー(個人番号)については、「就業規則 マイナンバー 記載例」を探す方が多いのですが、就業規則に詳細を書き込むより、取扱規程を別に作り、就業規則からは「個人番号および特定個人情報は、会社が別に定める取扱規程に従って取り扱う」と参照する形が扱いやすくなります。服務規律側には「業務上知り得た個人情報・特定個人情報を、業務目的以外に利用し、または第三者に漏らしてはならない。退職後も同様とする」という守秘義務の条文を置きます。安全管理措置の具体的な内容は、個人情報保護委員会の資料などで確認してください。
作った服務規律を有効に運用するまでの流れ
条文ができたら、手順は決まっています。まず従業員代表(過半数労働組合がない場合は、過半数を代表する者を適正な方法で選出)から意見を聴き、意見書を作成します。次に、就業規則本体と意見書を添えて、事業場を管轄する労働基準監督署へ届け出ます。常時使用する労働者が一定数に満たない事業場では届出義務がない場合もありますが、規則を作って周知しておくこと自体は、トラブル予防の面で意味があります。
最後が周知です。書面の配付、いつでも見られる場所への備え付け、社内で閲覧できるデータでの共有など、従業員が実際に内容を確認できる状態にします。周知されていない規則は、いざというときに根拠として使いにくくなります。新しい服務規律を追加したときは、朝礼や説明会で「なぜこのルールを入れるのか」を一度伝えておくと、現場の納得感が変わります。
運用が始まってからは、注意・指導の記録を残すこと、そして例外を認めた場合はその理由も残すことが大切です。同じ行為に対して人によって対応が違うと、規則そのものの説得力が落ちます。服務規律の改定、懲戒との結びつけ方、個別の事案での適用可否は、判断が分かれやすい領域です。条文案ができた段階で、社会保険労務士に内容を確認してもらい、懲戒や解雇に関わる可能性がある論点は弁護士にも相談しておくと安心です。
よくある質問
就業規則で勤務中のスマホを全面禁止にできますか。
勤務時間中の私用スマホ使用を制限する定めを置くこと自体は一般的に行われていますが、持ち込みまで全面的に禁止すると、緊急連絡や災害時の対応ができず運用が難しくなります。「原則として私用利用は行わない。緊急時は上長に申し出る」という形にし、安全上の理由がある作業区域だけ持ち込みを制限するなど、目的と範囲を明確にする書き方が現実的です。
服装について「スーツ着用」と就業規則に書いてもよいですか。
顧客訪問など業務上の必要性が説明できる場面に限って求める形であれば、定めること自体は一般的です。ただし一律に書くと季節や職種の実態に合わなくなるため、就業規則には「業務にふさわしい清潔な服装とする」といった基準を書き、具体例は別のガイドラインで示すと見直しやすくなります。
アルコールチェックは就業規則に書かないといけませんか。
道路交通法上の安全運転管理者の選任対象となる事業所では、確認や記録の扱いについて定めがあり、要件は警察庁や都道府県警察の資料で確認が必要です。就業規則側には、飲酒運転の禁止、運転前後の確認を受ける義務、拒否した場合の取扱い、記録の保存といった枠組みを書き、手順は別の社内規程にまとめると運用しやすくなります。
マイナンバーの取扱いは就業規則にどこまで書けばよいですか。
就業規則には守秘義務と「別に定める取扱規程に従う」という参照条文を置き、取得・利用・保管・廃棄の具体的な手順は取扱規程に分けるのが扱いやすい形です。安全管理措置の具体的な内容は個人情報保護委員会の資料で確認し、自社の体制に不安があれば社会保険労務士に相談してください。