取引先から電子契約を求められたら|受け取り側の署名手順と確認点

・契約・電子署名・会社のはじめかた編集部(監修:田中 祐介)

「電子契約で送りますので、メールから署名をお願いします」——取引先からそう言われて、手が止まっていませんか。受け取り側は、自社でサービスを契約していなくても、ほとんどの場合そのまま署名できます。ただし、押印のときと同じように、中身を確認し、社内で承認を取り、控えを保存する流れは変わりません。この記事では、メールが届いてから保存までの手順と、署名を押す前に見ておきたい確認点を順番に整理します。

この記事の結論

  • 取引先から電子契約を求められた場合、受け取り側は自社でサービスを契約していなくても、届いたメールのリンクから無料で署名できるのが一般的です。
  • 署名ボタンを押す前に、契約書の本文・相手方の署名者・送信元メールアドレスの3点を確認し、社内の承認を得てから進めます。
  • 署名が完了したら、完了通知メールと契約書のPDFをダウンロードし、社内のルールに沿って電子データのまま保存します。

電子契約を求められたら、受け取り側は何をすればいい?

取引先が電子契約サービスを使っている場合、受け取り側であるあなたの会社は、そのサービスと契約する必要がないのが一般的です。送信者が契約書をアップロードし、あなたのメールアドレス宛に署名依頼を送る形になるため、届いたメールのリンクを開いて内容を確認し、署名する、という流れになります。

つまり、受け取り側がやることは大きく3つです。①届いたメールが本物かを確かめる、②契約内容を確認して社内の承認を取る、③署名して、完成した契約書を保存する。紙の契約書が郵送で届いて、押印して返送し、控えをファイルに綴じるのと、やることの骨格は同じです。

なお、サービスによっては署名時にアカウント登録を求められるものもあります。その場合も、受け取り側の利用は追加費用なしで使えることが多いですが、条件はサービスごとに異なります。気になる場合は、送信元の取引先に「こちらで費用は発生しますか」と一言確認しておくと安心です。

署名する前に確認する4つのこと

まず、送信元のメールアドレスを見ます。取引先の担当者名と、サービス事業者のドメインからの通知であるかを確認してください。心当たりのない相手や、社名と一致しない差出人からの署名依頼は、リンクを開く前に、その取引先へ電話など別の手段で確認するのが安全です。最近は契約書を装ったメールも見られるため、ここは省略しないでください。

次に、契約書の本文です。画面上で読み飛ばしがちですが、金額、支払期日、契約期間、自動更新の有無、解約の申し入れ期限、損害賠償や秘密保持の範囲など、紙のときと同じ箇所を確認します。PDFをダウンロードして拡大表示したほうが読みやすい場合もあります。

3つ目は、署名欄と署名者です。自社側の署名者として指定されているのが代表者なのか担当者なのか、相手方はすでに署名済みか、これから署名するのかを確認します。社内規程で代表者名義の契約が必要な場合、担当者のメールアドレス宛に届いていても、代表者に転送して署名してもらう必要があります。

4つ目は、修正が必要な箇所がないかです。電子契約は一度署名すると原則として内容を変更できません。誤字や条件の食い違いに気づいたら、署名せずに送信者へ連絡し、差し替えたファイルで再送してもらいます。「とりあえず署名しておいて後で直す」は避けてください。

実際の署名手順|メールが届いてから完了まで

手順はサービスによって画面が異なりますが、流れはおおむね共通しています。①署名依頼メールを開き、「書類を確認する」「署名する」といったリンクをクリックします。②ブラウザで契約書が表示されるので、全ページに目を通します。③署名欄をクリックし、氏名の入力、印影風の画像の選択、または手書き入力などの方法で署名を作成します。④内容に同意して「完了」ボタンを押します。

サービスによっては、リンクを開くときにアクセスコード(パスワード)の入力を求められることがあります。このコードは、送信者が別途メールやチャットで伝えてくることが多いので、見当たらなければ送信者に問い合わせてください。また、SMSで届く認証番号を入力する方式もあります。

署名が完了すると、双方に完了通知メールが届き、契約書のPDFをダウンロードできるようになります。このダウンロードリンクには有効期限が設定されている場合があるため、完了通知が届いたらその日のうちにPDFを保存しておくのが確実です。

用意しておくものは、署名権限のある人のメールアドレスと、会社名・部署・役職・氏名の表記です。押印にあたる作業は画面上で完結するため、印鑑そのものは使いません。

社内の承認と、署名者を誰にするか

紙の契約書なら、稟議を回して代表印を押す、という手順が自然に承認の役割を果たしていました。電子契約はメールが担当者に直接届くため、承認を挟まずに署名できてしまうのが落とし穴です。ひとり社長であれば自分で判断すれば済みますが、担当者がいる会社では、署名前に誰の確認を取るかを決めておきましょう。

目安としては、金額や契約期間が一定の基準を超えるもの、継続的な取引の基本契約、秘密保持や損害賠償の条項があるものは代表者の確認を取る、日常的な発注書レベルは担当者限りで進める、といった線引きが実務的です。この基準を社内メモにしておくだけでも、判断に迷う時間が減ります。

なお、代表者本人ではなく担当者が署名する場合、その担当者に契約を締結する権限があるかどうかが後から問題になることがあります。社内で権限を明確にしておく、あるいは相手方に「当社は代表者名義で署名しますので、代表宛に再送してください」と伝えるほうが整理しやすいケースもあります。判断に迷う契約は、弁護士に相談してください。

署名後の保存|どこに、どう残すか

電子契約で締結した契約書は、電子データが原本にあたります。印刷して紙で保管しても、それは控えの意味しか持たないと考えたほうがよいでしょう。完了通知メールからPDFをダウンロードし、自社のクラウドストレージや共有フォルダに保存してください。

ファイル名は「取引先名_契約書名_締結日」のように、後から検索できる形に統一しておくと探す手間が減ります。保存先も「契約書」フォルダに一本化し、取引先ごとにサブフォルダを作ると管理しやすくなります。送信者側のシステムにも契約書は残りますが、そのサービスを解約されたり、担当者が変わったりする可能性を考えると、自社にも控えを持っておくのが安全です。

なお、電子取引でやりとりしたデータの保存については、電子帳簿保存法で一定の取り扱いが定められています。契約書がその対象になるかどうか、どのような形で保存すればよいかは、取引の内容や自社の状況によって異なることがあります。具体的な要件は国税庁の資料を確認するか、顧問税理士にご確認ください。

電子契約を断りたい・紙にしてほしい場合は?

電子契約は、当事者双方が合意して使うものです。受け取り側が「紙で締結したい」と申し出ることは可能で、相手方がそれに応じるかどうかは交渉次第になります。ただし、相手が契約業務を電子に統一している場合、紙に戻すには先方の社内調整が必要になり、締結までの日数が延びることがあります。

断る理由がはっきりしているなら、それを伝えたほうが話が早く進みます。たとえば「社内の保存体制が整っていない」「代表が出張中で当面メールを確認できない」といった事情であれば、期限を区切って調整できることもあります。一方で、なんとなく不安、という理由であれば、まずは一度試してみて、手順を把握してから判断するのも現実的です。

ちなみに、契約の種類によっては、法令上、書面の交付や特定の方式が求められるものもあります。不動産や特定の消費者向け取引などが該当する場合があるため、扱う契約が電子で問題なく締結できるかどうか迷うときは、そのまま進めずに確認したほうが安心です。

また、署名依頼が来たものの内容に納得できない、条件を変更したい、という場合は、署名せずに保留にしておけば契約は成立しません。「署名依頼が届いたから署名しなければならない」わけではない、という点は押さえておいてください。

迷ったときの相談先

契約条項の意味や、自社にとって不利な内容になっていないかの判断は、弁護士の領域です。特に、継続的な取引の基本契約、業務委託契約、秘密保持契約など、長く効力が続くものは、署名前に一度目を通してもらう価値があります。

締結した契約書の保存方法や、電子帳簿保存法との関係については、顧問税理士に確認するのが近道です。自社の取引の実態に合わせて、どこに何を残せばよいかを具体的に整理してもらえます。

社内で誰がどこまで署名できるか、という権限の設計は、会社の規模が小さいうちに決めておくほど後が楽になります。契約の進め方に不安があれば、早めに専門家へ相談してください。

よくある質問

電子契約を受け取る側も、サービスに登録や支払いが必要ですか?

多くのサービスでは、受け取り側は届いたメールのリンクから署名でき、追加の支払いは発生しない運用が一般的です。ただし条件はサービスごとに異なるため、気になる場合は送信元の取引先に確認するか、各社の公式サイトで最新の情報をご確認ください。

電子契約に押印は必要ですか?印鑑がなくても署名できますか?

電子契約では、画面上で氏名を入力したり印影風の画像を選んだりする形で署名するため、実物の印鑑は使いません。会社の実印や角印がなくても手続きは進められます。

署名した後に内容の誤りに気づいたら、どうすればいいですか?

署名済みの契約書は原則として内容を変更できないため、まず取引先に連絡し、覚書や再締結など、どう対応するかを相談してください。金額や期間の誤りは後の取引に影響するので、早めに連絡することが大切です。

電子契約で締結した契約書は、紙に印刷して保管すればよいですか?

電子契約ではデータそのものが原本にあたるため、PDFを自社でも保存しておくことをおすすめします。保存方法は電子帳簿保存法の考え方にも関わるため、詳しくは国税庁の資料を確認するか、税理士にご確認ください。

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この記事は一般的な情報をまとめたものです。税務・法務・労務の個別の判断については、税理士・弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。 料金や条件は変わることがあるため、お申し込み前に必ず各サービスの公式サイトで最新の内容をご確認ください。