電子契約の普及率と利用率|導入がどこまで進んでいるかを自分で確かめる方法

・契約・電子署名・会社のはじめかた編集部(監修:田中 祐介)

「電子契約って、実際どのくらい使われているの?」——導入を検討すると、まずこの疑問にぶつかります。ただ、ネット上には出典の分からない数字が多く、そのまま社内説明に使うと後で困ります。この記事では、普及率・利用率を自分で確認できる一次情報の探し方と、数字の読み違えを避ける視点、そして自社が今すぐ導入すべきかを判断する順番を整理します。

この記事の結論

  • 電子契約の普及率や利用率は、総務省の通信利用動向調査や関連団体の企業IT利活用に関する調査など、公表元が明示された一次情報で確認するのが確実です。
  • 普及率の数字は「導入した企業の割合」なのか「契約書全体に占める電子の割合」なのかで意味が大きく変わるため、定義を確認してから比較してください。
  • 自社が導入すべきかは、普及率よりも「相手先が電子契約に応じるか」「月あたりの契約件数」「押印と郵送にかかっている時間」で判断するほうが実務的です。

電子契約の普及率・利用率はどこで調べられますか

まず押さえておきたいのは、電子契約の普及率について、国が単独で発表している「公式の一本の数字」があるわけではない、ということです。複数の調査がそれぞれの定義・対象企業・調査時期で数字を出しているため、記事によって印象が違うのはそのためです。

確認先としては、総務省が毎年実施している通信利用動向調査(企業編)のように、クラウドサービスや電子的な手続きの利用状況を継続的に追っている統計が出発点になります。あわせて、デジタル庁や法務省、経済産業省が公開している電子署名・電子契約に関する資料、企業のIT利活用動向を調べている民間団体の調査レポートも参考になります。いずれも公表元のサイトで、最新版の調査年と対象を必ず確認してください。

ニュース記事やサービス提供会社のブログで見かける数字は、元をたどると特定の調査の一部分であることが多いものです。社内の稟議や取引先への説明に使うなら、孫引きではなく、公表元のPDFや報告書ページまで戻って引用するのが安全です。

「普及率」と「利用率」と「シェア」は何が違いますか

同じ電子契約の数字でも、指標の定義はばらばらです。よくあるのは三種類で、①電子契約を導入している企業の割合(導入率・普及率)、②自社の契約のうち電子で締結した件数の割合(利用率・電子化率)、③電子契約サービス提供各社の市場での占有状況(シェア)です。①が高くても②が低い、という状態は珍しくありません。試験的に導入しただけで、実際は紙が中心という会社もあるからです。

比較するときは、まず調査対象を見ます。大企業中心の調査か、中小企業や個人事業主まで含むかで数字は大きく動きます。従業員規模別・業種別の内訳が載っている調査であれば、自社に近い区分の数字だけを見るほうが、全体平均より参考になります。

シェアの数字は、調査会社が独自の基準で算出しているものがほとんどです。算出基準(売上ベースか導入社数ベースか)が示されていない数字は、社内資料で使わないほうが無難です。サービス選びの根拠としては、シェアよりも後述する自社の条件で比較するほうが判断を誤りにくくなります。

なぜ電子契約は広がってきたのですか|背景を制度から押さえる

電子契約が語られるようになった背景には、いくつかの制度的な流れがあります。ひとつは電子署名法で、一定の要件を満たす電子署名がなされた電磁的記録について、真正に成立したものと推定される旨が定められています。もうひとつは電子帳簿保存法で、電子的にやり取りした取引情報について電子データのまま保存する取扱いが整理されてきました。要件の詳細は改正が重ねられているため、国税庁や法務省など所管官庁の最新資料でご確認ください。

実務面では、押印のための出社、郵送、収入印紙の扱いといった紙の契約に付随する手間が見直された流れも大きいと言われています。特にリモートワークが広がった時期以降、社内の承認と相手方への送付をオンラインで完結させたいというニーズが強まりました。

一方で、不動産や一部の手続きのように、書面での交付や締結が求められる場面も残っています。制度改正で電子化が認められた分野もありますが、自社の扱う契約類型が電子で問題なく成立するかは、契約の種類ごとに確認が必要です。判断に迷う契約があれば、弁護士や司法書士に相談してください。

普及率を見ても迷うとき、導入すべきかはこの順で判断する

普及率の数字は参考にはなりますが、「他社が使っているから自社も」という理由だけでは社内の運用は定着しません。判断するなら、次の順で見るのがおすすめです。第一に、契約の相手先です。取引先が電子契約に応じてくれるか、逆に相手方のサービスで署名を求められることが多いか。受信側として使うだけなら、無料で使える範囲で足りる場合もあります。

第二に、月あたりの契約件数と種類です。雇用契約、業務委託契約、秘密保持契約、注文書・注文請書など、繰り返し発生する書類が多いほど電子化の効果が出ます。年に数件しか契約がない段階なら、まずは相手方のサービスに応じる形から始め、件数が増えてから自社導入を検討する、という順序でも遅くありません。

第三に、押印と郵送にかかっている実時間です。代表者印を押すために誰かが動いている、返送待ちで着手が遅れている、といった具体的な詰まりがあるなら、導入の優先度は上がります。逆に、そこに困っていないなら、会計や請求の仕組みを先に整えるほうが効果が大きいこともあります。

サービスを比べるときに見る条件|料金だけで決めない

電子契約サービスを比較するときは、料金表の数字だけを並べても判断しづらいものです。まず確認したいのは署名の方式で、契約当事者本人の電子証明書を使う方式か、サービス事業者が立会人的に署名する方式かで、運用の手間と想定される場面が変わります。どちらが自社の契約に合うかは、相手方の要望や社内規程とあわせて考えてください。

次に、送信数の数え方と、権限管理の仕組みです。誰が送信でき、誰が承認するのかを設定できるか、担当者が退職したときにアカウントと過去の契約書をどう引き継ぐか。ここは後から変えづらいので、初期に確認しておく価値があります。

最後に、保存と検索です。締結済みの契約書を、取引先名や契約日で探せるか、契約期限が近づいたときに気づける仕組みがあるか、他のシステムに書き出せるか。電子帳簿保存法の考え方を踏まえた保存機能をうたうサービスも多いため、自社の保存方法が要件に沿うかは、国税庁の資料や税理士への確認とあわせて判断してください。なお、料金やプラン内容は変更されることがありますので、各社の公式サイトで最新の情報を確認してください。

導入を決めたら、この順で進める

導入の進め方はシンプルです。まず、自社で発生する契約書を一覧にします。契約の種類、年間のおおよその件数、相手方の属性(法人か個人か、継続取引か単発か)を並べるだけで十分です。ここで、電子に切り替えやすいものと、書面が求められる可能性があるものを分けます。

次に、対象を絞って試します。最初から全種類を電子にしようとすると社内が混乱するので、秘密保持契約や業務委託契約など、定型で件数が多いものから始めるのが現実的です。あわせて、電子契約を使う旨と締結手順を社内ルールとして短く文書化し、押印規程がある会社は電子署名の扱いも整理しておきます。

最後に、保存と引き継ぎを決めます。締結済みデータをどこに保管し、誰がアクセスでき、バックアップをどうするか。契約書は数年単位で参照するものなので、担当者が変わっても探せる状態にしておくことが大切です。税務上の保存要件や、契約内容そのものの適法性に不安がある場合は、税理士や弁護士に早めに相談しておくと安心です。

よくある質問

電子契約の普及率は今どのくらいですか

公表元によって定義も対象企業も異なるため、この記事では特定の数字は挙げていません。総務省の通信利用動向調査など、調査年と対象が明記された一次情報で最新版をご確認ください。社内資料に使うときは、孫引きではなく公表元の報告書から引用すると安全です。

取引先が紙の契約書を求めてきた場合はどうすればよいですか

相手方が書面を希望する場合は、無理に電子へ切り替えず、紙と電子を併用する運用にしておくのが現実的です。契約類型によっては書面での交付や締結が求められる場合もあるため、判断に迷うものは弁護士や司法書士に確認してください。

電子契約にすると収入印紙はどうなりますか

印紙税は課税文書を作成した場合に関わる税で、電子的に取り交わした場合の取扱いについては国税庁の資料で整理されています。個別の契約でどう扱われるかはケースにより異なりますので、税理士や所轄の税務署にご確認ください。

ひとり社長でも電子契約は導入したほうがいいですか

契約件数が少ないうちは、相手方のサービスで署名する受信側としての利用から始めても差し支えありません。雇用や業務委託の契約が繰り返し発生するようになった段階で、自社導入を検討すると判断しやすくなります。

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この記事は一般的な情報をまとめたものです。税務・法務・労務の個別の判断については、税理士・弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。 料金や条件は変わることがあるため、お申し込み前に必ず各サービスの公式サイトで最新の内容をご確認ください。