マイナンバーカードの電子署名|パスワードとロック解除、更新の手順
会社の設立登記をオンラインで出す、定款認証をオンラインで受ける、電子契約に署名する、法人の税務申告を電子で出す。こうした場面で登場するのが、マイナンバーカードに入っている「署名用電子証明書」です。ところが、いざ使おうとすると「パスワードを忘れた」「5回間違えてロックされた」「スマホがカードを読み取ってくれない」といったところで止まりがちです。この記事では、署名用電子証明書のしくみ、4種類あるパスワードの見分け方、ロックされたときの解除手順、有効期限と更新、読み取れないときの確認の順番を、実務で困る順に並べて整理します。
この記事の結論
- マイナンバーカードの電子署名に使う「署名用電子証明書」のパスワードは6〜16桁の英数字で、一定回数連続で間違えるとロックされ、住民票のある市区町村の窓口でカードと本人確認書類を持参して初期化してもらう必要があります。
- 署名用電子証明書には発行から5回目の誕生日までという有効期限があり、期限が切れると電子署名ができなくなるため、期限前に届く通知をもとに市区町村の窓口で更新します。
- カードが読み取れないときは、アプリ側の対応状況、スマホのNFC読み取り位置、カードケースや金属面の影響、パスワードの種類違いの順に確認すると原因を切り分けやすくなります。
マイナンバーカードの電子署名(署名用電子証明書)とは何か
マイナンバーカードのICチップには、公的個人認証サービス(JPKI)のしくみとして2種類の電子証明書が入っています。ひとつが「署名用電子証明書」、もうひとつが「利用者証明用電子証明書」です。名前が似ていますが、役割はまったく違います。
署名用電子証明書は、作成した電子文書が「その本人が作ったもので、送信後に改ざんされていないこと」を示すために使うものです。法人の設立登記のオンライン申請、定款の電子認証、電子申告、一部の電子契約サービスでの本人型の署名など、文書に責任を持つ場面で登場します。氏名・住所・生年月日・性別の情報が含まれるため、引っ越しや改姓をすると失効するのが特徴です。
一方の利用者証明用電子証明書は、「ログインしているのが本人であること」を示すためのものです。マイナポータルへのログインやコンビニでの証明書交付などで使われ、こちらには住所氏名の情報が含まれません。電子署名の話で出てくるのは基本的に前者の署名用電子証明書だと覚えておくと、手続きの案内文を読み違えずにすみます。
パスワード(PINコード)は4種類。どれを入れるか見分ける
マイナンバーカードには複数の暗証番号が設定されています。混乱の原因はほぼここにあるので、最初に整理しておきます。署名用電子証明書用のパスワードは6〜16桁の英数字(英字は大文字)で、いわゆる「長いほう」です。利用者証明用電子証明書用、住民基本台帳用、券面事項入力補助用の3つは4桁の数字で、多くの方はカード受け取り時に同じ番号にしています。
登記や電子申告、電子契約で「電子署名をします」と言われた場面で求められるのは、6〜16桁のほうです。ここで4桁の数字を入れても通らず、回数を消費してしまいます。画面に「6文字以上16文字以下」「英数字」と出ていたら署名用、「4桁の数字」と出ていたら利用者証明用と判断してください。
連続して間違えるとロックがかかります。署名用電子証明書のパスワードは5回、4桁の暗証番号は3回が目安とされています。うろ覚えのまま何度も試すのは避け、2回外したら手を止めて、控えを探すか窓口での初期化を検討したほうが結果的に早く済みます。
ロックされたときの解除手順(いつ・何を持って・どこへ)
パスワードがロックされた場合、自分で解除することはできません。住民票のある市区町村の窓口で、パスワードの初期化(再設定)をしてもらう流れになります。まず、お住まいの自治体の公式サイトで「マイナンバーカード 暗証番号 初期化」のページを開き、受付窓口・受付時間・予約の要否を確認してください。本庁だけでなく支所や出張所でも受け付ける自治体がありますが、窓口が限られる場合もあります。
持ち物は、マイナンバーカードそのものと、運転免許証などの本人確認書類です。窓口で新しいパスワードを自分で設定するため、あらかじめ何にするか決めておくとスムーズです。本人が行けない場合の代理人手続きは、照会書の郵送を挟むなど日数がかかる方式をとる自治体が多いので、期限が迫った申請がある場合は本人が行くほうが確実です。詳細な必要書類は自治体ごとに案内が異なるため、事前に公式サイトか電話で確認してください。
なお、コンビニのマルチコピー機やスマートフォンアプリを使った暗証番号の初期化・変更に対応している自治体もあります。ただし、利用できる条件や対象となる暗証番号の種類が限られることがあるため、まずは自治体の案内を確認するのが早道です。
登記のオンライン申請日が決まっているときは、ロック解除に窓口の営業日が必要になる点を逆算してください。金曜の夜にロックして月曜まで動けない、というのは実務でよくある詰まり方です。
有効期限と更新。期限切れで署名できなくなる前に
署名用電子証明書には、発行の日から5回目の誕生日までという有効期限があります。マイナンバーカード本体の有効期限(発行時に18歳以上なら10回目の誕生日まで)とは別物なので、「カードはまだ使えるのに電子署名だけ通らない」という状態が起こります。証明書の有効期限は、カードの券面下部に記載欄がありますので、まずそこを見てください。
有効期限が近づくと、地方公共団体情報システム機構から更新の案内が郵送で届きます。案内が届いたら、カードと通知書を持って市区町村の窓口で更新手続きをします。更新の際にもパスワードの入力または再設定が必要になるため、控えを持参すると手続きが早く進みます。
期限が切れたあとでも、窓口で改めて発行を受けることはできます。ただし、法人設立の登記申請や決算申告のように期日が決まっている手続きの直前に気づくと間に合わないことがあります。ひとり社長の場合は、会社の年間スケジュールに「代表者のマイナンバーカード署名用証明書の期限」を書き込んでおくと安心です。
引っ越しや結婚などで住所・氏名が変わったときも、署名用電子証明書は失効します。転入・変更の届出をした自治体の窓口で、カードの記載事項変更とあわせて証明書の新規発行を受けてください。ここを忘れると、次に電子署名を使うときに突然通らなくなります。
「読み取れない」ときに見る順番
スマートフォンやICカードリーダーでカードを読めないときは、原因を上から順に切り分けます。第一に、使っているアプリやソフトがそのカード読み取りに対応しているか。公的個人認証サービス(JPKI)を使う手続きでは、専用のアプリやソフトのインストールと、ブラウザの拡張機能の有効化が必要になることがあります。手続きサイトの「動作環境」ページを先に開いてください。
第二に、読み取り位置です。スマートフォンのNFCアンテナの位置は機種ごとに違い、背面の上部・中央・下部のいずれかにあります。カードを当てたまま少しずつ位置をずらし、5秒ほど動かさずに保持してみてください。手帳型ケース、金属製のカードケース、机の金属面、他のICカードとの重ね持ちは読み取りを妨げる原因になります。
第三に、パスワードの種類違いです。前述のとおり6〜16桁と4桁を取り違えているケースが非常に多く、エラーメッセージが「読み取れません」に近い表現で出ることもあります。第四に、証明書そのものの失効や期限切れです。引っ越し後に更新していない、5年経っていた、という場合はいくら読み取っても先に進みません。
ここまで確認しても解決しない場合は、ICチップの物理的な破損や、カード自体の有効期限も疑ってください。カードを曲げた、強い磁気や熱にさらしたといった心当たりがあれば、市区町村の窓口に相談することになります。マイナンバー総合フリーダイヤルなど、公式の問い合わせ窓口も用意されています。
法人の手続きでは、どの電子署名を使うか先に決める
会社の手続きで使える電子署名は、マイナンバーカードの署名用電子証明書だけではありません。登記所(法務局)が発行する商業登記電子証明書や、民間の認証局が発行する電子証明書、事業者署名型(立会人型)の電子契約サービスなど、複数の選択肢があります。どれを使うかは、手続きの相手先が何を受け付けるかで決まります。
判断の順番はシンプルです。まず、その手続きの案内ページで「使用できる電子証明書」の一覧を確認します。設立登記のように「発起人個人として署名する」場面ではマイナンバーカードが使えることが多く、設立後に「法人として署名する」場面では商業登記電子証明書が求められることがあります。個人として署名するのか法人として署名するのかを先に切り分けると迷いません。
取引先との契約書に使う電子契約サービスの場合は、相手方にも同じ手間を求めることになるかどうかが分かれ目です。相手にカード読み取りを求めない方式を選ぶか、本人性の担保を重視して当事者署名型にするかは、契約の重要度と相手の環境次第です。サービスごとの機能や料金は変わりますので、各社の公式サイトで最新の内容を確認してください。
なお、電子署名の有効性や、電子帳簿保存法・インボイス制度との関係で電子文書をどう保存するかは、個別の事情で扱いが変わることがあります。要件の詳細は国税庁やデジタル庁など所管官庁の資料を確認したうえで、自社の運用に落とし込む段階では税理士に確認しておくと安心です。
迷ったら専門家に相談を
電子署名そのものは技術的な手続きですが、その先にあるのは登記・契約・税務といった法的な効果を伴う行為です。設立登記の申請内容や添付書類の組み立てで迷う場合は司法書士、契約書の条項や電子契約の運用ルールについては弁護士、電子帳簿保存法への対応や申告の電子化については税理士、社会保険や労働保険の電子申請については社会保険労務士が、それぞれ相談先になります。
特に会社を作ったばかりの時期は、「この書類はオンラインで出せるのか」「誰の電子署名が必要なのか」の判断だけで数日を失うことがあります。期日のある手続きを控えているなら、早めに専門家に確認したうえで進めてください。
よくある質問
マイナンバーカードの電子署名のパスワードを忘れました。どうすればいいですか。
自分で確認する方法はないため、住民票のある市区町村の窓口でパスワードの初期化(再設定)を受けることになります。マイナンバーカードと運転免許証などの本人確認書類を持参してください。自治体によってはコンビニのマルチコピー機やアプリから初期化できる場合もあるので、公式サイトの案内を先に確認すると早く済みます。
署名用電子証明書とマイナンバーカードの有効期限は同じですか。
別物です。署名用電子証明書は発行から5回目の誕生日まで、カード本体は発行時に18歳以上であれば10回目の誕生日までが期限とされています。カードが有効でも証明書だけ期限切れになっていることがあるので、券面の記載欄で確認してください。
引っ越しをしたあと、電子署名が使えなくなりました。
署名用電子証明書には住所・氏名の情報が含まれるため、住所変更や改姓によって失効します。転入先の市区町村でカードの記載事項変更を行うときに、あわせて署名用電子証明書の新規発行を申し出てください。手続きの際にパスワードの設定も求められます。
法人の登記申請には、マイナンバーカードと商業登記電子証明書のどちらが必要ですか。
手続きの内容と、誰の名義で署名するかによって変わります。個人として署名する場面ではマイナンバーカードの署名用電子証明書が使えることが多く、法人名義での署名が求められる場面では商業登記電子証明書が必要になることがあります。申請先の案内ページで使用可能な電子証明書を確認し、判断に迷う場合は司法書士に相談してください。