Adobe Acrobat Signとクラウドサインの違い|料金体系と選び方

・契約・電子署名・会社のはじめかた編集部(監修:田中 祐介)

電子契約サービスを調べ始めると、名前が挙がることが多いのがAdobe Acrobat Signとクラウドサインです。どちらも契約書に電子的に署名するためのサービスですが、生まれた背景が違うため、得意な場面も、料金の数え方も、社内での使われ方も変わってきます。この記事では「どちらが優れているか」ではなく、「自社の契約の出し方・受け取り方から見て、どちらの考え方が合うか」を判断する順番で整理します。

この記事の結論

  • Adobe Acrobat SignはPDF編集・文書管理の延長線上にある電子署名サービスで、クラウドサインは日本の契約実務に合わせて設計された電子契約サービスという出自の違いがあります。
  • 選ぶときは、まず「自社が契約書を送る側か受け取る側か」「相手が国内企業中心か海外も含むか」「PDFの作成・編集を日常的に行うか」の順に見ると判断しやすくなります。
  • 料金は送信件数課金・ユーザー課金・既存のAdobeプランへの付帯など数え方自体が異なるため、金額の大小より「自社の月あたり契約件数と、署名を送る人の数」を先に把握することが重要です。

Adobe Acrobat Signとクラウドサインは、そもそも何が違うのか

Adobe Acrobat Signは、PDFという文書形式を作ってきたAdobeが提供する電子署名サービスです。PDFの作成・編集・共有という一連の文書業務の中に、署名の依頼と収集が組み込まれている点が特徴です。見積書や仕様書をPDFで作り、そのまま署名依頼まで進めたい、という流れと相性がよい設計になっています。

一方のクラウドサインは、日本国内の契約実務を前提に設計された電子契約サービスです。契約書のアップロード、送信先の指定、締結、書類の保管という流れが日本語で完結しており、相手方に送ったときの画面や通知メールも国内の取引先が戸惑いにくい作りになっています。国内企業同士のやり取りが中心なら、この「相手に説明しやすさ」は実務上の負担を大きく左右します。

つまり違いの本質は、機能の多い少ないではなく「文書業務の延長として署名を扱うか」「契約締結という業務に特化して扱うか」という設計思想です。ここを押さえると、後の比較がぶれにくくなります。

署名の方式が違う|立会人型と当事者型という考え方

電子契約には大きく分けて、サービス事業者がメール認証などを通じて締結を記録する「立会人型(事業者署名型)」と、当事者本人の電子証明書を用いる「当事者型」という考え方があります。多くの国内向け電子契約サービスは、相手方に負担をかけにくい立会人型を中心に据えています。

Adobe Acrobat Signは、立会人型に相当する運用に加えて、電子証明書を用いた署名やデジタルID連携など、より厳格な方式にも対応する構成を持っています。海外の取引先とのやり取りや、業界慣行として証明書ベースの署名を求められる場面がある会社では、この幅が効いてきます。

クラウドサインは、メール認証を軸にした締結の流れを分かりやすくまとめており、相手方がアカウントを作らずに締結できる導線が整っています。取引先が中小企業や個人事業主中心で「電子契約は初めて」という相手が多い場合、手順の説明コストが下がりやすいという実務上の利点があります。なお、どの方式がどの契約類型に適するかは法的な評価が絡むため、重要な契約については弁護士にご確認ください。

クラウドサインの料金プラン

クラウドサインの料金は次のとおりです。改定されることがあるため、申し込み前に公式サイトで最新の内容をご確認ください。

プラン月額1件あたりの送信料ユーザー数備考
Free0円無料(月2件まで)1名月の送信2件が上限。書類管理機能に制限
Light11,000円(税抜)/12,100円(税込)220円(税抜)/242円(税込)無制限AI契約書管理(インポート時)非対応、キャビネット機能なし
Corporate28,000円(税抜)/30,800円(税込)220円(税抜)/242円(税込)無制限専任CSM非対応、一部の内部統制機能に制限
Business / Enterprise記載なし(個別)記載なし(ボリュームディスカウントあり)記載なし料金は問い合わせ
出典:クラウドサイン 公式料金ページ(https://www.cloudsign.jp/price)・2026-09-21確認

料金体系の見方|金額を比べる前に数えるべき2つの数字

料金は各社の公式サイトで最新の内容を確認いただく前提として、ここでは「何に対して課金される設計か」という構造だけを整理します。電子契約サービスの課金の軸は、おおむね(1)送信1件あたりの従量、(2)送信できるユーザー数、(3)保管件数や機能の範囲、の組み合わせです。同じ「安い」でも、どの軸で安いかによって自社の総額は逆転します。

そこで比較の前に、次の2つを数えてください。ひとつは「月あたり何件の契約を自社から送るか」。もうひとつは「社内で契約を送る人は何人か」。ひとり社長で月数件なら従量寄りの設計が向きやすく、営業担当が複数人いて日常的に送るならユーザー数と定額の関係を見る必要があります。

Adobe Acrobat Signは、PDF編集を含むAdobeの製品群と組み合わせて導入されることがあります。すでにPDFの編集ソフトに費用をかけているなら、署名機能を別サービスとして増やすより、既存の契約内容に含まれていないかを先に確認すると無駄が出にくくなります。逆に、PDF編集をほとんど使わないなら、その分の価値は活きません。具体的な金額とプランの構成は、各社の公式サイトで最新の料金を確認してください。

どちらを選ぶか|この順番で見ると迷いにくい

第一に、取引先の範囲です。国内企業・国内の個人事業主が相手のほぼすべてを占めるなら、日本語で完結し相手方の操作が単純なクラウドサインの考え方が合いやすくなります。海外法人との契約がある、あるいは今後増える見込みがあるなら、多言語対応と証明書ベースの署名にも幅があるAdobe Acrobat Signを候補に残します。

第二に、自社のPDF業務量です。提案書・図面・仕様書をPDFで加工する機会が多く、すでにAdobe製品を業務の中心に置いているなら、文書作成から署名までを一つの環境で回せるメリットが効きます。契約書はWordで作ってPDFに出すだけ、という使い方なら、この利点は小さくなります。

第三に、社内の運用体制です。誰が送信し、誰が承認し、締結済みの書類をどこに置くか。承認フローを社内で回す必要があるなら、ワークフロー機能と権限設定の作り込みやすさを見ます。ひとり社長で承認者が自分だけなら、ここは軽く見て構いません。この3点を上から順に当てはめると、たいていは候補が絞れます。両方の無料試用がある場合は、実際に自分宛てと社外の協力者宛てに1通ずつ送ってみると、相手側の見え方まで確認できます。

導入前に決めておくこと|書類の保管と社内ルール

電子で締結した契約書は、紙と同じ場所には置けません。どのサービスを使うにしても、締結済みファイルをどこに保管し、誰が検索できるようにするかを先に決めておきます。サービス内の保管に任せきりにするか、社内のクラウドストレージにも控えを置くか、二重管理にしてルールを一本化するかは、解約時や担当者交代時に効いてきます。

電子取引で授受した書類の保存については、電子帳簿保存法の考え方が関わります。日付・取引先・金額といった条件で探せる状態にしておくことが一般に求められるため、ファイル名の付け方や保管フォルダの切り方を導入時に決めておくと後が楽です。要件の詳細は国税庁の資料を確認し、判断に迷う点は税理士にご確認ください。

あわせて、社内ルールとして「どの契約を電子で締結するか」「印紙が関わる契約をどう扱うか」「押印規程をどう書き換えるか」を整理します。取引先によっては紙の原本を求められることもあるため、紙と電子の併用前提で運用を組んでおくと現実的です。契約書の文言や締結方法の有効性に関わる論点は、弁護士に相談しながら進めることをおすすめします。また、会社設立直後で契約書の様式そのものから整える段階であれば、司法書士や弁護士に一度見てもらうと、後からの手戻りを減らしやすくなります。

よくある質問

Adobe Acrobat Signとクラウドサイン、どちらが導入しやすいですか

取引先が国内中心で、相手に操作を説明する手間を減らしたい場合はクラウドサインの考え方が馴染みやすく、PDFの作成・編集を日常的に行い海外との契約もあるならAdobe Acrobat Signが候補になります。まずは自社の取引先の範囲とPDF業務量から絞り込むと判断しやすくなります。

電子契約は相手方もサービスに登録する必要がありますか

多くの電子契約サービスでは、受信側はメールのリンクから締結でき、アカウント登録を求めない導線が用意されています。ただし対応は方式やプランによって異なるため、各社の公式サイトで最新の仕様を確認し、重要な取引では事前に相手方へ手順を案内しておくと安心です。

電子契約にすると印紙はどうなりますか

印紙税の取り扱いは契約書の作成方法や課税文書に該当するかどうかで判断が分かれ、電子的に授受した場合の扱いも個別の事情によります。一律に結論づけられる論点ではないため、国税庁の資料を確認のうえ、税理士にご確認ください。

無料プランだけで運用できますか

送信件数や保管、権限設定などに制限が設けられていることが一般的で、契約件数が増えると有料の検討が必要になる場合があります。まずは月あたりの送信件数と送信する人数を数え、その条件で各社の公式サイトで最新の料金とプラン範囲を確認してください。

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この記事は一般的な情報をまとめたものです。税務・法務・労務の個別の判断については、税理士・弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。 料金や条件は変わることがあるため、お申し込み前に必ず各サービスの公式サイトで最新の内容をご確認ください。