育児・介護に関する就業規則の規定|時短勤務と育児時間の記載例
育児・介護の制度は法律で枠組みが決まっているぶん、就業規則には「自社がどう運用するか」を書き込む必要があります。しかも改正が続いている分野なので、数年前に作った規程がそのままだと、実態と条文がずれていることも少なくありません。この記事では、本則と別規程の分け方、短時間勤務や育児時間をどう書くか、改正があったときに何をどの順で直すかを、手を動かせる形で整理します。
この記事の結論
- 育児・介護に関する規定は、就業規則の本則に「詳細は育児・介護休業規程による」と委任条文を置き、具体的な要件や手続は別規程にまとめる形が、改正時の修正がしやすく実務で広く使われています。
- 短時間勤務は「3歳に満たない子を養育する従業員が申し出た場合、所定労働時間を1日6時間とする措置を設ける」ことが法律上求められており、就業規則には対象者・申出方法・始業終業時刻の選択肢まで書いておくと運用が安定します。
- 育児時間は労働基準法にもとづく制度で、生後満1年に達しない生児を育てる女性従業員が1日2回各少なくとも30分請求できるもので、短時間勤務や育児休業とは別の条文として整理します。
就業規則の本則に書く?別規程にする?まず決めること
育児・介護の規定をどこに書くかで迷ったら、判断はシンプルです。従業員数にかかわらず、本則には「育児休業、介護休業、短時間勤務その他の措置については、育児・介護休業規程に定める」という委任条文を1条だけ置き、中身は別規程に切り出す。これが、あとから直しやすい形です。
理由は改正の頻度です。育児・介護休業法はここ数年、対象者の拡大や新しい休暇の新設など見直しが続いています。本則の中に細かく書き込んでいると、改正のたびに本則そのものを開いて条番号を振り直すことになり、他の条文との整合も取り直しになります。別規程なら、その規程だけを差し替えれば済みます。
なお、別規程も就業規則の一部です。作成・変更したときは、常時10人以上の従業員がいる事業場であれば、従業員代表の意見書を添えて所轄の労働基準監督署に届け出る必要があります。「別規程だから届出は不要」と考えてしまうのはよくある誤解なので、ここは押さえておいてください。
就業規則の時短勤務(短時間勤務制度)はどう書くか
短時間勤務については、3歳に満たない子を養育する従業員が申し出たときに、1日の所定労働時間を原則6時間とする措置を設けることが、事業主に求められています。就業規則に書くときは、①対象となる従業員の範囲、②除外できる場合、③申出の時期と方法、④短縮後の始業・終業時刻、⑤給与や賞与の取扱い、の5点をそろえると抜けが出にくくなります。
記載例としては、次のような形が考えられます。「3歳に満たない子を養育する従業員が申し出た場合、1日の所定労働時間を6時間(午前9時から午後4時まで、休憩1時間)とする。ただし、日々雇用される者、1日の所定労働時間が6時間以下の者は対象としない。」そのうえで「申出は短縮を開始しようとする日の1か月前までに、所定の申出書を所属長に提出する」と手続を続けます。
始業・終業時刻をひとつに固定するか、複数のパターンから選べるようにするかは、業務の性質で決めてください。窓口対応や交替制がある職場なら、パターンを2〜3種類示して選択させるほうが現場は回りやすくなります。柔軟にしたい場合でも、「協議のうえ決定する」だけで終わらせず、決め方の手順まで書いておくと、担当者が替わっても運用がぶれません。
なお、3歳以降小学校就学前の子を養育する従業員については、始業時刻の変更やテレワークなど複数の措置から選べるようにする仕組みが法律上整理されています。自社がどの措置を採るかは、要件の詳細を所管官庁の資料で確認したうえで条文化してください。
就業規則の育児時間・子の看護等休暇の記載例
育児時間は、労働基準法にもとづく制度です。生後満1年に達しない生児を育てる女性従業員は、休憩時間のほかに1日2回、各少なくとも30分の育児時間を請求できます。短時間勤務や育児休業とは根拠も対象も異なるので、別の条として立てるほうが混乱しません。
記載例は「生後満1年に達しない生児を育てる女性従業員から請求があったときは、休憩時間のほか1日2回、各30分の育児時間を与える。育児時間を請求しようとする者は、事前に所属長に申し出るものとする。育児時間は無給とする。」といった形です。有給とするか無給とするかは会社が決められる部分なので、必ず明記してください。書いていないと、あとで解釈の食い違いが起きます。
子の看護等休暇と介護休暇も、同じ考え方で条文化します。対象となる子や家族の範囲、取得できる事由、時間単位で取れるかどうか、申出は書面か口頭か、給与の取扱い。この5点を書いておけば、現場から質問が来たときに規程を見せるだけで答えられます。近年、対象となる事由や子の範囲について見直しが行われているため、条文を作る前に最新の要件を確認しておくと安心です。
就業規則を最新の改正に合わせる手順
「就業規則 最新 改正」で調べている方は、まず自社の規程がいつ版のものかを確認してください。表紙や末尾に「令和◯年◯月◯日改定」と入っているはずです。日付が数年前のままなら、育児・介護の分野は見直しの対象になっている可能性が高いと考えて進めます。
進め方は、①厚生労働省が公開している育児・介護休業等に関する規程例の最新版を入手する、②自社の規程と条文単位で見比べ、足りない制度・条件がずれている箇所に印をつける、③修正案を作る、④従業員代表から意見を聴き意見書をもらう、⑤労働基準監督署へ変更届と意見書を添えて提出する、⑥従業員に周知する、という順です。行政のモデル規程を基準にして差分を洗い出すやり方は、確認しやすい方法の一つです。
忘れられがちなのが⑥の周知です。届け出ただけでは足りず、事業場の見やすい場所への掲示、書面の交付、社内ネットワークでの共有などの方法で従業員がいつでも確認できる状態にしておく必要があります。クラウドの労務システムを使っている場合は、旧版が残っていないかもあわせて確認してください。
なお、育児・介護に関する規程を直すときは、テレワーク規程や時間単位年休の取扱い、賃金規程の欠勤控除の条文とも関係します。1か所だけ直して他が古いままだと、実務で矛盾が出ます。改定のたびに「関連する規程はどれか」をメモに残しておくと、次回が楽になります。
ひとり社長・少人数の会社はどこまで整えるか
従業員が常時10人未満の事業場は、就業規則の作成・届出が法律上の義務とはされていません。ただし、育児・介護の制度そのものは、就業規則の有無にかかわらず法律にもとづいて適用されます。「規程がないから制度もない」ということにはならない点は押さえておいてください。
判断の順番としては、まず「今後1年以内に人を雇う予定があるか」。予定があるなら、採用前に育児・介護休業規程まで含めて整えておくほうが後々の手間が少なくなります。次に「すでに雇用している従業員に、育児や介護の事情が出てきそうか」。該当者が出てから慌てて作ると、条件設定が目の前の一人に引きずられ、社内の公平性を欠く形になりがちです。
当面は最小限で、という場合でも、短時間勤務・育児時間・子の看護等休暇・介護休暇の4つは条文として持っておくと、問い合わせに答えやすくなります。行政のモデル規程をベースに、自社の始業終業時刻と申出先だけ書き換えるところから始めてみてください。
よくあるつまずきと、専門家に相談するタイミング
実際によく起きるのが、「短時間勤務中の賃金をどう計算するか書いていない」というケースです。時間比例で減額するのか、固定的な手当は据え置くのか。賃金規程側との整合が取れていないと、給与計算のたびに判断が必要になります。条文を作るときは、賃金規程を横に置いて読み合わせてください。
もうひとつは、社会保険や給付との関係です。育児休業中の社会保険料や、短時間勤務に伴う標準報酬月額の取扱いには、それぞれ手続が定められています。就業規則の条文と実際の手続は別物なので、規程を整えたら「誰が、いつ、どこへ出すか」も社内で決めておくと動きやすくなります。
どの措置を採用するか、除外できる従業員の範囲をどう書くか、労使協定が必要な項目はどれか。このあたりは自社の働き方によって答えが変わり、判断を誤ると後から修正が必要になります。条文案ができた段階で社会保険労務士に一度見てもらうと安心です。就業規則の不利益変更にあたるかどうかが問題になりそうな場合や、個別の従業員とのトラブルが見込まれる場合は、弁護士への相談も検討してください。制度の要件そのものは、所管官庁が公開している最新の資料もあわせて確認することをおすすめします。
よくある質問
就業規則に時短勤務を書かないと、従業員は短時間勤務を使えないのですか。
育児・介護休業法にもとづく制度は、就業規則に記載がなくても法律上の要件を満たす従業員に適用されると考えられています。ただし、申出方法や短縮後の勤務時間が決まっていないと運用が混乱するため、規程として明文化しておくことをおすすめします。詳しい取扱いは社会保険労務士にご確認ください。
育児時間と短時間勤務は同時に取れますか。
育児時間は労働基準法、短時間勤務は育児・介護休業法と根拠が異なる別の制度で、要件を満たせば併用が問題になるケースと、実務上の調整が必要になるケースがあります。自社での取扱いを就業規則に明記し、判断に迷う場合は社会保険労務士に相談してから条文化すると安心です。
育児・介護休業規程を変更したら、労働基準監督署への届出は必要ですか。
別規程であっても就業規則の一部にあたるため、常時10人以上の従業員がいる事業場では、変更届に従業員代表の意見書を添えて所轄の労働基準監督署へ届け出る扱いになります。届出後は、従業員がいつでも内容を確認できる方法で周知してください。
モデル規程をそのまま使っても大丈夫でしょうか。
行政が公開している規程例は出発点として役立ちますが、始業終業時刻、申出先、賃金の取扱いなど自社固有の部分は書き換えが必要です。労使協定が求められる項目もあるため、完成前に社会保険労務士に確認してもらうと安心です。