法人口座は複数必要か|2つ目の開設と、口座の分け方・使い分け
法人口座は、1社につき1つと決まっているわけではありません。同じ銀行で複数の口座を持つことも、別の銀行に2つ目を作ることもできます。とはいえ、増やせば増やすほど管理の手間も増えます。この記事では、2つ目をいつ作るか、どう分けるか、開設のときに何を用意するかを、判断の順番に沿って整理します。
この記事の結論
- 法人口座の数に法律上の上限はなく、1社で複数の銀行に口座を持つことも、同じ銀行で複数口座を持つこともできます。
- 2つ目を作る目安は「入金が止まると困る取引先ができたとき」「決済手段や融資の相談先を分けたいとき」で、設立直後から急いで増やす必要は高くありません。
- 分け方の基本は、売上入金と支払いを担うメイン口座を1つ決め、税金・社会保険の積み立てや特定事業の収支をサブ口座に寄せる形です。
法人口座は何個まで作れるのか
結論から言うと、法人が持てる口座の数に法律上の上限はありません。A銀行に1つ、B銀行に1つ、ネット銀行に1つ、という持ち方も一般的です。同じ銀行の同じ支店で、用途の違う普通預金口座を複数持つこともできます。
ただし「作れる」ことと「作りやすい」ことは別です。法人口座の開設では、事業の実態や取引の見込みを確認する手続きがあり、開設の可否や必要書類は金融機関ごとに異なります。2つ目、3つ目であっても、あらためて事業内容の説明を求められると考えておいたほうが現実的です。
実務上の感覚としては、設立直後のひとり法人なら1〜2口座、従業員を雇って給与や社会保険の支払いが出てきたら2〜3口座あたりで足りることが多い、という程度に捉えておくとよいでしょう。数を増やすこと自体が目的になると、残高の把握と記帳の手間だけが増えていきます。
2つ目の法人口座は、いつ作るべきか
迷ったら、次の順に自社の状況を当てはめてみてください。第一に「その口座が使えなくなったら、いつの入金・支払いが止まるか」。売上の入金も、家賃も、給与も、税金の引き落としもすべて1つの口座に集まっているなら、システム障害や手続きの都合で使えない期間が発生したときの影響が大きくなります。ここに不安があるなら、2つ目を作る理由としては十分です。
第二に「取引先や決済サービスから、特定の銀行を指定されたことがあるか」。振込手数料の負担や、決済代行サービスの入金先の条件などで、別の銀行のほうが都合がよい場面は出てきます。実際に指定や要望が出てきた時点で動けば間に合うことが多く、先回りして増やす必要は高くありません。
第三に「将来、融資や資金繰りの相談をしたい先があるか」。取引実績がある銀行のほうが相談は進めやすい傾向があります。地域の金融機関と付き合いを作っておきたいなら、早めに口座を開いて日々の入出金を通しておく、という考え方はあります。ただしこれも、事業が動き出してからで構いません。
口座の分け方の基本:メイン1つ+目的別のサブ
分け方でおすすめの出発点は、「メイン口座を1つ決めて、そこに売上入金と主要な支払いを集める」ことです。記帳と残高確認の中心をひとつにしておくと、会計ソフトとの連携も月次の確認もシンプルになります。まずメインを決め、そのうえでサブに何を寄せるかを考えます。
サブ口座の使い道としてよくあるのは、①税金・社会保険料の積み立て、②特定の事業やプロジェクトの収支、③ネット決済サービスの入金先、④予備(メインが使えないときの退避先)です。特に①は、ひとり社長でも効果が実感しやすい分け方です。法人税や消費税、社会保険料は後からまとまって出ていくため、売上が入った時点で一定額をサブへ移しておくと、支払い時期の資金繰りが読みやすくなります。
一方で「取引先ごとに口座を分ける」「経費の種類ごとに分ける」といった細かすぎる分け方は、管理コストに見合わないことが多いです。分けるかどうかの基準は、「分けることで、見たい数字がひと目で分かるようになるか」。ならないなら、口座ではなく補助科目や会計ソフトのタグで分けるほうが早いことがあります。
どの銀行を2つ目にするか、選び方の基準
2つ目を選ぶときは、まずメイン口座に足りていない機能から逆算します。ネットバンキングの使い勝手やAPI連携、振込予約や総合振込の対応、法人カードとの組み合わせ、外貨や海外送金の可否、窓口相談のしやすさ。このうち、自社が今困っていることに直結するものを1つか2つ挙げ、それを満たす先を候補にします。
タイプで整理すると、都市銀行・地方銀行・信用金庫は、対面での相談や融資の話を進めたいときに選ばれやすく、ネット銀行はオンライン完結の手続きや会計ソフト連携を重視するときに候補になりやすい、という傾向があります。「対面で相談したい」と「画面だけで完結させたい」の両方が必要なら、性格の違う2行を組み合わせる形が収まりがよいでしょう。
なお、振込手数料やネットバンキングの利用料、各種サービスの条件は金融機関ごとに異なり、改定されることもあります。金額や条件は各社の公式サイトで最新の情報を確認してください。毎月の振込件数が多い会社ほど、手数料の条件は判断に効いてきます。
2つ目を開設する手順と、用意するもの
進め方は1つ目と大きく変わりません。まず候補の金融機関の公式サイトで、法人口座開設の受付方法(オンライン申込か、来店予約か)と必要書類を確認します。次に書類をそろえ、申込み。その後、事業内容の確認や追加資料の依頼があり、審査を経て口座開設という流れです。所要期間は金融機関や時期によって差があるため、支払い期日が迫っている場合は余裕を持って動いてください。
一般に求められることが多いのは、登記事項証明書(履歴事項全部証明書)、定款の写し、法人の印鑑証明書、代表者の本人確認書類、法人番号が分かるもの、印鑑(届出印)です。加えて、事業内容が分かる資料(会社概要、ウェブサイト、契約書や請求書の控えなど)や、事務所の実在が分かるもの(賃貸借契約書など)を求められることがあります。何が必要かは金融機関ごとに違うので、申込み前の確認が近道です。
2つ目の申込みでは、「なぜもう1つ必要なのか」を説明できるようにしておくと話が早く進みます。たとえば「売上入金用と、税金・社会保険の支払い用を分けたい」「取引先から別行での振込を求められた」など、実際の事情をそのまま伝えれば十分です。口座の用途が具体的であるほど、確認のやり取りは短く済む傾向があります。
増やしたあとの管理で、つまずきやすいところ
口座が増えて最初に崩れるのは、残高の把握です。メインだけ見て「足りている」と判断してしまい、サブに寄せたはずの納税資金を別の支払いに使ってしまう、という取り違えが起きます。対策はシンプルで、会計ソフトにすべての法人口座を連携し、月に一度は全口座の残高を一覧で確認する習慣を作ることです。
次に、休眠口座の放置です。作ったものの使わない口座があると、通帳やカードの管理、届出印の管理、口座情報の変更手続きが無駄に増えます。半年ほど動きがない口座は、用途を決め直すか、解約を検討するタイミングです。解約の手続きや必要書類も金融機関によって異なります。
そして、会社の情報が変わったときの届出漏れ。本店移転、商号変更、代表者の変更があったら、すべての取引金融機関に届け出る必要があります。口座を増やすほど、この連絡先リストの管理が効いてきます。登記事項に変更があったときは、登記手続きと合わせて銀行への届出も忘れずに進めてください。
口座の分け方は、経理処理や決算、資金繰りの見え方に直結します。自社の売上規模や取引の形に合った分け方が分からないときは、顧問税理士に相談してみてください。口座を増やすことで経理の負担がどう変わるかも、あわせて確認しておくと安心です。登記事項の変更や届出について迷う場合は司法書士、社会保険料の支払い管理については社会保険労務士に確認する方法もあります。
よくある質問
法人口座は何個まで作れますか。
法人が持てる口座数に法律上の上限はなく、複数の銀行に口座を持つことも、同じ銀行で用途別に複数持つこともできます。ただし開設の可否や必要書類は金融機関ごとの判断になるため、2つ目以降でも事業内容の確認が行われると考えておくとよいでしょう。
設立直後から2つ目の法人口座を作ったほうがよいですか。
設立直後は1つで動かしてみて、実際に不便が出てから増やす進め方で間に合うことが多いです。入金が止まると困る取引が出てきたときや、取引先・決済サービスから別行を求められたときが、2つ目を検討する分かりやすいタイミングです。
口座はどう使い分けるのが分かりやすいですか。
売上入金と主要な支払いを担うメイン口座を1つ決め、税金や社会保険料の積み立て、特定事業の収支などをサブ口座に寄せる形が基本です。分けるかどうかは「分けることで見たい数字がひと目で分かるか」で判断し、そうでなければ会計ソフト側で区分するほうが手間は少なくなります。
使っていない法人口座は解約したほうがよいですか。
半年ほど入出金がないなら、用途を決め直すか解約を検討するタイミングです。口座が多いほど通帳や届出印の管理、本店移転などの際の届出先が増えるため、使わない口座を減らすと事務の負担が軽くなります。解約手続きや必要書類は各金融機関の公式サイトで確認してください。