就業規則の意見書の作り方|従業員代表の選び方と書式
就業規則を作ったり変更したりして労働基準監督署に届け出るとき、就業規則そのものだけでは受け付けてもらえません。従業員側の意見を聞いたことを示す「意見書」を添えるのが基本の形です。とはいえ、誰に書いてもらうのか、何を書けばいいのか、反対と書かれたらどうなるのかは、はじめて届け出る会社ほど迷うところです。この記事では、従業員代表の選び方から意見書の書き方、届出までの流れを順番に整理します。
この記事の結論
- 意見書は、就業規則の作成・変更について労働者側の意見を聞いたことを示す書面で、労働基準監督署への届出に添えるのが基本です。
- 労働者の過半数で組織する労働組合がない会社では、労働者の過半数を代表する者を投票や挙手などの民主的な方法で選び、その人に意見を書いてもらいます。
- 意見書に反対意見が書かれていても、意見を聴いた事実が示されていれば届出自体は進められるのが一般的な取り扱いです。
就業規則の意見書とは何か、なぜ必要なのか
就業規則の意見書とは、会社が就業規則を作成または変更する際に、労働者側の意見を聴いたことを記録した書面です。労働基準法では、常時一定人数以上の労働者を使用する事業場について就業規則の作成と届出が求められており、その届出には労働者側の意見を記した書面を添えることとされています。つまり意見書は、就業規則本体とセットで扱われる添付書類だと考えてください。
ここで求められているのは「意見を聴くこと」であって、労働者側の同意を得ることではありません。内容に反対する意見が書かれていても、意見を聴いた事実が確認できれば手続としては進められるのが一般的です。ただし、反対意見が出ている状態で強行すると、後々の労使トラブルや変更の有効性をめぐる争いにつながることがあります。
意見書は、就業規則を新しく作るときだけでなく、変更するときにも必要になります。賃金規程や育児介護休業規程のように、就業規則の一部を別規程として切り出している場合も、その規程を変更するたびに同じ手続が想定されます。「本則だけ意見書を取ればよい」と思い込まないように注意してください。
意見書は誰に書いてもらうのか|従業員代表の選び方
意見を聴く相手は、事業場に労働者の過半数で組織する労働組合があればその労働組合、なければ労働者の過半数を代表する者です。判断の順番はシンプルで、まず過半数組合があるかを確認し、なければ過半数代表者を選ぶ、という流れになります。ひとり社長に近い小さな会社や、組合のない会社では、ほとんどが後者のケースです。
過半数代表者を数えるときの「労働者」には、正社員だけでなくパート、アルバイト、契約社員も含めて考えるのが基本です。役員は労働者に含まれませんが、いわゆる管理監督者にあたる人は、代表者本人にはなれないとされている一方で、母数としての労働者には含めて数えるのが一般的な整理です。誰を母数に入れるか迷ったら、事業場ごとの在籍者名簿を作り、雇用契約に基づいて働いている人を洗い出すところから始めてください。
選び方でよく問題になるのが「会社が指名した」ケースです。過半数代表者は、投票、挙手、持ち回り決議、労働者による話し合いなど、労働者の意思が反映される方法で選ぶ必要があります。社長が「君にお願いする」と決めてしまう、朝礼で異論の出ようがない形で名前を出す、といった進め方は、手続の適正さを疑われるもとになります。
従業員代表を選ぶ手順|いつ・何を用意して・どう進めるか
進め方の目安は次のとおりです。まず就業規則の案がおおむね固まった段階で、代表者選出の準備に入ります。用意するのは、選出の目的を書いた案内文(就業規則の作成または変更について意見を聴くための代表者を選ぶ旨を明記したもの)と、投票用紙または信任の確認ができる書式です。案内は掲示、社内メール、チャットなど、全員が見られる方法で行います。
次に、立候補や推薦を受け付け、投票または挙手で選出します。人数の少ない会社では、候補者を1名立てて「この人を代表とすることに賛成か」を問う信任投票の形を取ることも多く、その場合も全員に意思表示の機会がある状態にしておきます。結果は、投票日、対象人数、賛成数などを記した簡単な記録として残しておくと、あとから手続を説明しやすくなります。
選出が終わったら、代表者に就業規則の案を渡し、読む時間を確保したうえで意見を求めます。案を渡した日と意見書を受け取った日が同じ、というスケジュールは避けたいところです。質問が出ることも想定して、変更の理由や影響の出る条文をまとめたメモを添えると、やり取りがスムーズになります。
意見書の書式と記載する項目
意見書に決まった様式が法律で細かく定められているわけではありませんが、労働基準監督署のウェブサイトなどで参考様式が公開されています。まずは所管の労働局・労働基準監督署が示している様式を確認し、それに沿って作るのが早道です。自社で作る場合も、記載する項目はおおむね共通しています。
一般的に盛り込むのは、宛名(事業主または会社名)、意見を求められた就業規則(変更)案の特定、意見の内容、意見書を作成した日付、事業場の名称、従業員代表の職名・氏名、そして代表者の選出方法です。選出方法の欄がない様式でも、「投票による選出」「挙手による選出」などと書き添えておくと、手続の適正さが伝わりやすくなります。
意見の内容は、特に意見がない場合は「本就業規則(変更)案について、特段の意見はありません」といった一文で足ります。意見がある場合は、条文番号を示して「第◯条について、周知期間を長めに取ってほしい」のように具体的に書いてもらいます。押印の取り扱いは様式や窓口によって異なることがあるため、提出前に届出先の案内を確認してください。
反対意見が出たとき・代表者が書いてくれないときの対応
反対意見が書かれた意見書でも、届出の手続としては受け付けられるのが一般的です。ただし、それで終わらせるのは得策ではありません。どの条文に、どんな理由で反対しているのかを整理し、説明会を開く、施行日をずらす、経過措置を設ける、といった調整の余地がないかを検討してください。特に賃金や労働時間など労働条件を不利益に変更する内容は、変更の有効性そのものが後日争われることがあります。
代表者が意見書の作成に応じてくれない場合もあります。このときは、意見を求めた事実(依頼した日、渡した書類、期限を設けたこと)を記録に残し、その経緯を説明できるようにしておきます。取り扱いは窓口によって異なる可能性があるため、提出前に所管の労働基準監督署に相談するのが確実です。
なお、意見を聴く手続と、就業規則を従業員に周知する手続は別ものです。届出が済んでも、実際に働く人が内容を確認できる状態にしていなければ、規則としての効力が問題になることがあります。掲示、書面の配付、社内で誰でも見られる場所へのデータ保存など、自社に合う方法で周知まで一通り終わらせてください。
届出までの流れと、迷ったときの相談先
全体の流れを整理すると、就業規則の案を作る、従業員代表を選ぶ、案を渡して意見を聴く、意見書を受け取る、就業規則(変更)届・就業規則本体・意見書をそろえて事業場を所管する労働基準監督署に届け出る、従業員に周知する、という順番になります。電子申請に対応している手続もあるため、窓口持参と郵送、電子のどれで出すかは、所管の案内で確認してください。
支店や店舗が複数ある会社では、原則として事業場ごとに届出を行います。本社で一括して届け出られる仕組みが用意されている場合もありますが、条件があるため、事前に届出先へ確認しておくと安心です。事業場が増えたタイミングで届出漏れが起きやすいので、拠点を出すときのチェックリストに入れておくとよいでしょう。
就業規則の中身、特に労働時間制度や賃金・退職金に関わる条文の変更は、書き方ひとつで運用の負担が大きく変わります。不利益変更にあたる可能性がある改定や、代表者の選出手続に不安が残る場合は、社会保険労務士に相談しながら進めることをおすすめします。制度の詳しい要件や様式は、厚生労働省や所管の労働基準監督署が公開している資料で最新の内容を確認してください。
よくある質問
就業規則の意見書に反対と書かれたら、届出はできませんか。
意見を聴いた事実が示されていれば、反対意見が書かれていても届出の手続は進められるのが一般的な取り扱いです。ただし反対の理由を確認せずに施行すると、後から変更の有効性が争われることがあります。内容を調整するか、説明の機会を設けたうえで進めるのが安全です。
従業員代表を社長が指名してもよいですか。
過半数代表者は、投票や挙手など労働者の意思が反映される方法で選ぶことが求められています。会社側が一方的に指名した場合、手続の適正さを問われることがあります。人数が少ない会社でも、候補者を示して信任を確認する形にし、選出の記録を残しておいてください。
就業規則を少し変更しただけでも意見書は必要ですか。
変更の場合も、作成時と同様に労働者側の意見を聴いて意見書を添えるのが基本です。条文の一部修正や、賃金規程など別規程の変更でも同じ考え方になります。軽微な字句修正の扱いに迷う場合は、所管の労働基準監督署に確認するとよいでしょう。
意見書に押印は必要ですか。書式は自社で作ってもよいですか。
押印の取り扱いは様式や届出先の案内によって異なることがあるため、提出前に確認してください。書式は労働基準監督署などが公開している参考様式を使うのが早く、自社で作る場合も日付、事業場名、代表者の氏名、選出方法、意見の内容といった項目を押さえれば形になります。