社会保険の扶養の追加・削除の手続き|必要書類と外れるときの流れ
従業員から「子どもが生まれました」「妻が仕事を辞めました」「子が就職しました」と言われたとき、会社側で何をすればいいのか。社会保険の扶養(被扶養者)の追加・削除は、従業員本人ではなく会社が届出をするのが基本です。この記事では、どの届出書を、いつ、どこへ出すのか、添付書類は何が求められやすいのかを、判断の順番にそって整理します。
この記事の結論
- 社会保険の被扶養者の追加・削除は、原則として会社(事業主)が「健康保険被扶養者(異動)届」を年金事務所または加入している健康保険組合へ提出します。
- 提出の目安は事実が発生してから5日以内とされており、追加のときは続柄と収入・同居を確認する書類、削除のときは保険証(または資格情報)の返却が必要になることが多いです。
- 扶養から外れる事実があったのに届出をしていなかった場合は、さかのぼって削除され、その間に使った医療費の返還を求められることがあるため、気づいた時点で速やかに手続きします。
社会保険の扶養の追加・削除は、誰がどこに手続きするのか
社会保険(健康保険・厚生年金)の被扶養者に関する手続きは、従業員本人が窓口へ行くのではなく、会社が事業主として届出をするのが基本の流れです。従業員から申し出を受け取り、会社が「健康保険被扶養者(異動)届」を作成し、提出します。
提出先は、加入している健康保険がどこかで分かれます。協会けんぽに加入している会社は、管轄の年金事務所(または事務センター)へ。健康保険組合に加入している会社は、その健康保険組合へ提出します。まず自社の健康保険証や加入先の名称を確認して、どちらのルートかをはっきりさせてください。
なお、配偶者を扶養に入れる場合で、その配偶者が国民年金の第3号被保険者になるときは、同じ届出書の中で第3号被保険者関係届も兼ねる様式になっています。配偶者かどうかで書く欄が変わるので、記入前に様式の該当箇所を確認しておくと手戻りが少なくなります。
扶養に追加するときの手続きと必要書類
追加のきっかけは、結婚、出産、配偶者の退職、親を扶養に入れる、といったケースが多いです。いずれも「事実が発生した日」が起点になります。届出は事実発生から5日以内が目安とされているので、従業員からの申し出は早めに受け取れる社内の流れを作っておくと安心です。
用意するものは、順番に考えると整理しやすいです。まず、続柄を確認する書類(戸籍謄本や住民票など)。次に、収入を確認する書類(退職したなら退職証明書や離職票の写し、年金を受けている親なら年金額が分かる書類、パート勤務中なら直近の給与に関する書類など)。同居が条件になる続柄の場合は、同一世帯であることが分かる住民票が求められることがあります。
ただし、マイナンバーを届出書に記載し、事業主が続柄や収入の確認を済ませていることを届出書上で申し立てることで、添付を省略できる取り扱いが設けられています。何を省略できるかは加入先によって運用が異なるため、協会けんぽまたは健康保険組合の最新の案内を確認してください。判断に迷うときは、会社の判断で「扶養に入れる/入れない」を決めきらず、加入先や社会保険労務士に確認するのが安全です。
扶養から削除する・外れるときの流れ
削除が必要になるのは、被扶養者が就職して自分で社会保険に加入した、収入が基準を超えて見込まれるようになった、離婚した、死亡した、後期高齢者医療制度に移った、といった場合です。ここでも同じ「健康保険被扶養者(異動)届」を使い、削除する人と削除の理由、該当日を記入して提出します。
削除のときに忘れやすいのが、健康保険証の返却です。カード型の保険証に加えて、高齢受給者証や限度額適用認定証などを交付されている場合は、それらもあわせて返却の対象になることがあります。従業員に「家族の分の保険証を回収してください」と具体的に伝えるとスムーズです。マイナ保険証の利用が中心で紙のカードを持っていない場合の取り扱いは、加入先の案内にしたがってください。
従業員の配偶者を扶養から外す場合、配偶者はその後、勤務先の社会保険に入るか、国民健康保険・国民年金に加入するかのどちらかになります。後者の場合は市区町村での手続きが必要になるため、会社側からも「健康保険の資格喪失に関する書類を使って市区町村で手続きが必要になります」と一声かけておくと、無保険期間を作りにくくなります。
手続きは何日かかるのか、保険証はいつ届くのか
届出を出してから、新しい被扶養者分の保険証(または資格情報の反映)が使えるようになるまでには、一定の日数がかかります。書類に不備があると確認のやり取りが入り、さらに時間がかかります。どのくらいで届くかは提出先や時期によって変わるため、急ぎのときは提出先へ見込みを問い合わせてください。
医療機関の受診が先になりそうなときは、資格の確認方法を先に案内しておくと従業員が困りません。マイナンバーカードを健康保険証として利用する仕組みでは資格情報の反映を待つ必要があり、それが間に合わない場合は、いったん自己負担して後から療養費の申請をする流れになることもあります。この取り扱いも加入先の案内にしたがってください。
会社としては、「申し出を受けた日」「届出を出した日」を記録に残しておくのがおすすめです。あとから資格の開始日をめぐって確認が入ったときに、経緯を説明しやすくなります。
扶養の手続きを忘れていたときの対応
よくあるのが、子どもが就職したのに扶養のままだった、配偶者の収入が増えていたのに届出をしていなかった、というケースです。この場合、削除は実際に要件を満たさなくなった日にさかのぼって処理されることがあります。さかのぼった期間に被扶養者として医療機関を受診していると、保険が負担した分の返還を求められることがあります。
対応の順番はシンプルです。まず、いつ要件を満たさなくなったのかを従業員に確認する。次に、その日付で削除の届出を作成し、保険証等を回収して提出する。最後に、さかのぼり期間の医療費や、配偶者の場合は国民年金の記録の扱いについて、提出先の指示を受ける。自己判断で「今月から外す」と処理せず、事実の日付で出すのが基本です。
反対に、追加の届出が遅れていた場合も、事実発生日にさかのぼって認定されることがあります。ただし遅れた理由の説明や追加の書類を求められることがあるため、こちらも早めに相談したほうが手続きが軽くなります。
毎年の被扶養者資格の再確認(検認)の案内が届いたときに、実態と届出がずれていないかを点検する機会にすると、忘れの発見が早まります。
社内の運用として整えておきたいこと
扶養の手続きは、従業員が申し出てくれないと会社は気づけません。そこで、入社時の案内に「結婚・出産・家族の就職・家族の退職・離婚があったら、◯日以内に総務へ連絡」と書いておくと、申し出が集まりやすくなります。年末の扶養控除等申告書のやり取りのタイミングで、社会保険の扶養と税の扶養は基準が別である点も一緒に伝えておくと、混同が減ります。
社会保険の扶養の要件(収入や同居・別居、続柄など)は、健康保険の考え方にもとづくもので、税の扶養親族の判定とは一致しません。「税の扶養に入れたから社会保険も入る」と考えて処理すると、あとで訂正になることがあります。どちらの話なのかを、従業員との会話でも切り分けてください。
扶養に入れられるかの判定が微妙なとき(パート収入が変動している、別居の親を扶養に入れたい、事業所得があるなど)は、会社で結論を出す前に、加入している協会けんぽ・健康保険組合、または社会保険労務士に確認することをおすすめします。労務や手続きの積み残しが増えてきたと感じたら、社会保険労務士に一度全体を見てもらい、届出の流れと社内の様式を整えておくと、その後の運用がぐっと楽になります。
よくある質問
社会保険の扶養の追加・削除の手続きは、いつまでに出せばいいですか。
事実が発生した日から5日以内が目安とされています。実務では書類集めに時間がかかることもあるため、従業員から申し出を受けた時点で足りない書類を洗い出し、そろった順に提出先へ相談するのが現実的です。
協会けんぽの場合、扶養の手続きの必要書類は何ですか。
「健康保険被扶養者(異動)届」に加えて、続柄を確認する書類や収入を確認する書類、同居の確認書類などが求められることがあります。マイナンバーの記載と事業主の確認によって添付を省略できる取り扱いもあるため、最新の案内を協会けんぽの公式情報で確認してください。
扶養から外す手続きを忘れていました。どうすればいいですか。
気づいた時点で、要件を満たさなくなった日付で削除の届出を提出し、保険証等を返却します。さかのぼって削除され、その期間の医療費の返還を求められることがあるため、提出先の指示にしたがって対応し、判断に迷う点は社会保険労務士にご確認ください。
配偶者を扶養に入れるとき、年金の手続きも必要ですか。
配偶者が国民年金の第3号被保険者に該当する場合は、被扶養者の届出書が第3号被保険者関係届を兼ねる様式になっているため、該当欄をあわせて記入します。年齢や配偶者自身の就労状況によって扱いが変わるので、提出前に加入先の案内を確認してください。