社会保険と労働保険の違いと年間スケジュール|会社が出す届出の一覧

・採用・労務・会社のはじめかた編集部(監修:田中 祐介)

会社をつくると、「社会保険」と「労働保険」という似た名前の制度に同時に向き合うことになります。どちらも従業員(社長ひとりの会社では社長自身)に関わる手続きですが、出す先も、出す時期も別です。この記事では、二つの違いを整理したうえで、入社・退社などその都度発生する届出と、年に一度の定例の届出を、時期の順に並べて確認していきます。

この記事の結論

  • 社会保険(健康保険・厚生年金保険)は年金事務所または健康保険組合、労働保険(労災保険・雇用保険)は労働基準監督署とハローワークが窓口で、届出先が分かれています。
  • 会社の届出は「人が動いたときに出すもの(入社・退社・氏名住所変更など)」と「毎年決まった時期に出すもの(算定基礎届・労働保険の年度更新など)」の二種類に分けて管理すると漏れにくくなります。
  • 年に一度の山は初夏に集中し、労働保険の年度更新と社会保険の算定基礎届がほぼ同じ時期に重なるため、5月のうちに賃金台帳を整えておくと進めやすくなります。

社会保険と労働保険の違いは?まず「誰を守る保険か」と「どこに出すか」で分ける

社会保険は、一般に健康保険と厚生年金保険を指します。病気やけが、出産、老後の年金に備える制度で、法人であれば社長ひとりの会社でも加入の対象になるのが原則です。窓口は日本年金機構(年金事務所)で、健康保険組合に加入している場合は健康保険部分だけ組合に出すことがあります。

労働保険は、労災保険と雇用保険をまとめた呼び方です。労災保険は仕事中や通勤中のけが、雇用保険は失業や育児休業などに備える制度で、いずれも「雇われて働く人」を対象にしています。労災保険の窓口は労働基準監督署、雇用保険の窓口はハローワークです。

この違いから出てくる実務上のポイントが一つあります。社長だけの会社は、社会保険には加入するけれど、労働保険は人を雇うまで関係しない、という状態になることが多い点です。従業員を一人でも雇った時点で、労働保険の世界が新しく始まると考えておくと整理しやすくなります。

会社を作ったとき・人を雇ったときに最初に出す届出はどれ?

法人を設立して役員報酬を出すことが決まったら、社会保険の新規適用の手続きを年金事務所に行います。会社としての加入届と、社長や従業員それぞれの資格取得届、扶養する家族がいる場合の届出をあわせて提出するのが基本の形です。登記事項証明書など会社の実在を示す書類を求められることが多いので、設立登記が終わってから動くことになります。

従業員を初めて雇ったら、労働保険の側の手続きが加わります。労働基準監督署に労働保険の成立届を出し、そのうえでハローワークに雇用保険の適用事業所設置届と、対象となる従業員の資格取得届を出す、という順番が一般的です。監督署が先、ハローワークが後、と覚えておくと迷いにくくなります。

提出方法は、窓口持参・郵送のほか、電子申請も利用できます。どの方法でも期限は変わらないので、入社日が決まった時点で「誰が、いつまでに、どこへ」を決めてしまうのが安全です。要件や添付書類の細かい部分は年度によって扱いが変わることがあるため、日本年金機構や厚生労働省の最新の案内で確認してください。

社会保険の手続きはいつ?その都度発生する届出の一覧

人が動いたときの届出は、おおむね「事実が起きてから数日以内」という短い期限が設定されています。代表的なものは、入社時の資格取得届、退社時の資格喪失届、結婚や出産で扶養家族が増減したときの被扶養者の届出、氏名や住所が変わったときの変更届です。雇用保険側でも、入社時の資格取得届、退職時の資格喪失届と離職証明書が対になって発生します。

昇給や降給で給与が大きく変わったときは、随時改定という仕組みで標準報酬月額を見直す届出が必要になる場合があります。固定的な賃金が変わった月から数か月の平均を見て判断するため、給与改定を行った月をメモしておくと後で慌てずに済みます。

賞与を支払ったときも、社会保険側に賞与支払届を出す必要があります。支給日から短い期間内に提出する扱いなので、賞与の稟議と同時に届出の担当者を決めておくと抜けにくくなります。

年間スケジュール:毎年決まった時期に出す届出はこれ

まず春から初夏です。3月末から4月にかけては新年度の入社手続きが集中します。5月は、6月以降の繁忙に備えて賃金台帳と出勤簿を整える準備期間と考えるとよいでしょう。ここで数字が揃っていないと、その後の二つの手続きが一気に重くなります。

6月から7月は一年で最も届出が集まる時期です。労働保険の年度更新(前年度の確定保険料と当年度の概算保険料の申告・納付)と、社会保険の算定基礎届(4月から6月の報酬をもとに標準報酬月額を決め直す手続き)が、ほぼ同じ時期に重なります。年度更新は労働基準監督署などへ、算定基礎届は年金事務所へ、と提出先が違う点に注意してください。

秋から冬は、算定基礎届の結果が反映された保険料が9月分から適用され、賞与があれば賞与支払届が発生します。年末には年末調整があり、これは税の手続きですが、社会保険料の控除額を使うため無関係ではありません。1月以降は、法定調書や給与支払報告書の提出、そして新年度に向けた雇用契約の見直しが続きます。具体的な提出期限は毎年公表される案内で確認してください。

年齢によって発生する社会保険の手続きは?節目の年齢を先に押さえる

社会保険は、本人の年齢が一定の節目に達したときに、会社側で対応が必要になることがあります。代表的なのは、介護保険料の対象になる年齢、厚生年金保険の加入が終わる年齢、健康保険で高齢受給者や後期高齢者医療制度に移る年齢です。いずれも誕生日を基準に切り替わるため、従業員名簿に生年月日を入れておき、年度初めに「今年度、節目を迎える人」を洗い出しておくと安心です。

60歳以降も引き続き雇用する場合は、給与額が変わることが多く、社会保険側で標準報酬月額を見直す手続きや、雇用保険側の給付に関する手続きが関係してくることがあります。定年後の再雇用は契約の結び方によって扱いが変わるので、契約書の作成段階で確認しておくのが無難です。

年齢による切り替えは、本人への説明が足りないと「手取りが減った」というトラブルになりがちです。事前に本人へ、いつからどの保険料が変わる予定かを伝えておくと、余計な行き違いを防げます。制度の細かい要件は日本年金機構や協会けんぽなどの公式資料を確認してください。

手続きのやり方と、漏れを防ぐ運用のつくり方

提出方法は、電子申請・郵送・窓口の三つです。人の出入りが年に数回程度なら郵送や窓口でも回りますが、届出の種類が増えてきたら電子申請の環境を整えたほうが記録が残って楽になります。電子申請にはGビズIDなどの事前準備が必要なので、繁忙期の前に取得しておくとよいでしょう。

運用としては、二つのリストを作るのがおすすめの整理法です。一つは「イベント連動リスト」で、入社・退社・結婚・出産・住所変更・賞与支給・給与改定など、起きたら動くものを並べます。もう一つは「カレンダー連動リスト」で、年度更新と算定基礎届を中心に、毎年決まった月に通知が飛ぶよう設定しておきます。

どちらのリストも、「誰が担当か」を必ず書いておいてください。ひとり社長の会社では全部が自分になりますが、それでも書いておくと、将来人を雇ったときにそのまま引き継ぎ資料になります。給与計算のソフトを使っている場合は、届出の作成まで連動できるものがあるため、機能の範囲は各社の公式サイトで確認してください。

迷ったときの判断の順番と、専門家への相談

手続きに迷ったら、次の順で確認すると整理しやすくなります。第一に「これは社会保険の話か、労働保険の話か」。第二に「提出先は年金事務所か、監督署か、ハローワークか」。第三に「期限は事実発生から何日以内か」。この三つが決まれば、あとは書式を探すだけになります。

一方で、役員報酬の決め方、短時間労働者の加入の要否、定年後の再雇用の設計などは、会社ごとの事情で結論が変わる領域です。判断を誤ると保険料の遡及や給付の不利益につながることがあるため、自己判断で進めず、事前に確認するのが安全です。

社会保険・労働保険の手続きや就業規則の整備については社会保険労務士、役員報酬や賞与の税務上の扱いについては税理士に相談してください。設立直後であれば、顧問契約の前に初回相談だけ受けられるところも多いので、年間スケジュールを一度一緒に確認しておくと、その後の一年が進めやすくなります。

よくある質問

社会保険の手続きはどこに出せばいいですか?

健康保険・厚生年金保険は、原則として管轄の年金事務所が窓口です。健康保険組合に加入している会社は、健康保険に関する届出を組合に出す場合があります。雇用保険はハローワーク、労災保険は労働基準監督署と、労働保険は別の窓口になります。

社長ひとりの会社でも労働保険の手続きは必要ですか?

労働保険は雇われて働く人を対象とする制度のため、従業員がいない段階では手続きが発生しないのが一般的です。人を一人でも雇った時点で、労働基準監督署への成立届とハローワークへの届出が必要になります。役員の扱いは事情により異なるので、社会保険労務士にご確認ください。

年度更新と算定基礎届は何が違いますか?

年度更新は労働保険の保険料を確定・概算で申告して納める手続きで、算定基礎届は社会保険の標準報酬月額を毎年決め直す手続きです。時期は初夏に重なりますが、提出先も目的も別です。どちらも賃金の集計が前提になるため、5月中に賃金台帳を整えておくと進めやすくなります。

届出を出し忘れたらどうなりますか?

期限を過ぎても受け付けてもらえることはありますが、保険料が遡って発生したり、本人の給付が遅れたりする不利益が生じることがあります。気づいた時点で早めに窓口へ相談し、経緯を説明したうえで対応方法を確認してください。判断に迷う場合は社会保険労務士に相談すると安心です。

あわせて読みたい

「採用・労務」の記事をすべて見る →

次に決めること

記事をすべて見る(1087本)→

この記事は一般的な情報をまとめたものです。税務・法務・労務の個別の判断については、税理士・弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。 料金や条件は変わることがあるため、お申し込み前に必ず各サービスの公式サイトで最新の内容をご確認ください。