労働保険 保険関係成立届の書き方|提出期限・添付書類と記入例
ひとり社長の会社が、はじめてアルバイトや社員を雇う。そのとき最初に出す書類が「労働保険 保険関係成立届」です。名前が硬いので身構えてしまいますが、書く内容は会社の基本情報と「いつ・何人雇ったか」が中心で、用紙自体は1枚です。ここでは、提出期限と提出先、添付書類、記入で迷いやすい欄の考え方、そして成立届のあとに続く手続きの順番を、はじめての方向けに整理します。
この記事の結論
- 労働保険の保険関係成立届は、従業員を1人でも雇い入れた日の翌日から起算して10日以内に、労働基準監督署(または事業の種類によってハローワーク)へ提出するのが原則です。
- 添付書類は会社の登記事項証明書など会社の存在が分かる書類が求められるのが一般的で、様式は窓口配布のもの(OCR様式)を使うため、書き方に迷ったら管轄の労働基準監督署に確認するのが早道です。
- 成立届を出したあとは、概算保険料申告書(保険関係が成立した日から50日以内が原則)と、雇用保険の適用事業所設置届・被保険者資格取得届が続くため、3つをセットで段取りしておくと手戻りがありません。
労働保険 成立届とは?何のために出す書類か
労働保険とは、労災保険と雇用保険をまとめた呼び方です。従業員を雇うと、原則としてこの労働保険の適用対象になり、「うちの会社で労働保険の関係が始まりました」と国に届け出るのが保険関係成立届(正式には労働保険 保険関係成立届)です。会社を設立しただけで社長ひとりの状態なら通常は不要で、人を雇ったタイミングで必要になる書類だと考えると分かりやすくなります。
労災保険は、従業員が仕事中や通勤中にけがをしたときの補償にあたるもので、パート・アルバイトを含めて雇った人がいれば対象になるのが基本です。雇用保険は、週の所定労働時間や雇用の見込み期間といった条件で加入対象が決まります。つまり「労災は雇ったら」「雇用保険は条件を満たしたら」という二段構えで考えると整理しやすいでしょう。
なお、農林水産業の一部など、業種によって取扱いが異なる場合があります。自社が例外に当たるかどうか気になるときは、管轄の労働基準監督署に事業内容を伝えて確認してください。
提出期限はいつまで?いつから数えるのか
原則は、保険関係が成立した日の翌日から起算して10日以内です。保険関係が成立した日とは、多くの場合「最初の従業員を雇い入れた日」です。会社設立日や雇用契約書を交わした日ではなく、実際に働き始めた日を起点に数えるのが基本になります。
10日はあっという間です。入社日が決まった時点で、初出勤日をカレンダーに入れ、そこから10日後の日付に「成立届の期限」とメモしておくと安心です。さらに、保険関係が成立した日から50日以内が原則の概算保険料申告書の期限も、同じタイミングで書き込んでおきましょう。
期限を過ぎてしまった場合でも、届出そのものは受け付けてもらえるのが一般的です。ただし、遅れた期間の保険料をさかのぼって求められたり、追加の負担が生じたりすることがあります。気づいた時点ですぐ管轄の労働基準監督署に連絡し、事情を伝えて指示を仰ぐのがよいでしょう。
提出先はどこ?労働基準監督署とハローワークの使い分け
迷ったら、次の順に考えてください。まず、一般的な事業(一元適用事業と呼ばれます)であれば、労災と雇用保険をまとめて扱うため、保険関係成立届の提出先は事業所を管轄する労働基準監督署です。都道府県労働局や、事業の種類によってはハローワークが窓口になる場合もあります。
次に、雇用保険の手続きです。成立届を労働基準監督署に出して控えを受け取ったら、その控えを持って管轄のハローワークへ行き、雇用保険適用事業所設置届と雇用保険被保険者資格取得届を提出します。つまり「監督署が先、ハローワークが後」という順番が基本形です。
建設業など、労災保険と雇用保険を別々に扱う事業(二元適用事業)は、労災分と雇用保険分でそれぞれ届出が必要になり、窓口や様式も分かれます。自社が建設・林業・農水産業などに当たる場合は、自己判断せず事前に労働基準監督署へ相談してください。電子申請(e-Gov)に対応している手続きもあるため、窓口へ行く時間が取りにくい方は併せて確認するとよいでしょう。
必要書類・添付書類は何を用意する?
用意するものは大きく3つです。1つ目が保険関係成立届の用紙。これはOCR読み取り用の専用様式で、ホームページから印刷したものでは受け付けられないことがあります。労働基準監督署や労働局の窓口で入手するか、電子申請を利用するのが確実です。
2つ目が、会社の実在と所在地が分かる書類です。法人であれば登記事項証明書(履歴事項全部証明書)、個人事業であれば事業主の住民票など、事業の実態を確認できる書類の提示や添付を求められるのが一般的です。3つ目が、雇い入れの事実と賃金が分かる資料で、労働者名簿、賃金台帳、出勤簿(タイムカード)、雇用契約書などが該当します。
窓口での確認用に、法人番号が分かるもの、会社の印鑑、担当者の身分証も持参しておくと安心です。必要な添付書類は労働局によって案内が異なることがあるため、出向く前に管轄署へ電話で「はじめて人を雇ったので成立届を出したい」と伝え、持ち物を聞いておくと二度手間を防げます。
記入例:迷いやすい欄の書き方
用紙は、上から順に「事業の概要」「事業主の情報」「保険関係成立年月日」「労働者数と賃金見込額」という流れで並んでいます。事業所の名称・所在地・電話番号は、登記や実態と合わせて書きます。本店と実際に人が働く場所が違う場合は、原則として労働者が働く事業所の情報を書き、判断に迷うときは窓口で確認してください。
つまずきやすいのが3つの欄です。第一に「事業の種類」。労災保険料率の区分に対応するもので、窓口に業種一覧があります。自社の主たる事業が卸売なのかサービス業なのか迷ったら、売上の中心になっている業務を伝えて確認するのが早いです。第二に「保険関係成立年月日」。ここは最初の従業員が実際に働き始めた日を書きます。第三に「常時使用労働者数」と「賃金総額の見込額」で、これは概算保険料の計算につながる大事な数字です。
賃金総額の見込額は、成立日からその年度末(3月31日)までに支払う予定の賃金の合計を、雇用予定の人数と月額給与から見積もって書きます。役員報酬は原則として労働保険の賃金には含めませんが、使用人兼務役員など扱いが分かれるケースもあります。通勤手当や賞与の扱いも含め、判断に迷う場合は社会保険労務士や管轄の労働基準監督署に確認してください。
成立届のあとに続く手続きと、進め方の順番
実務では、次の順で進めるとスムーズです。①保険関係成立届を労働基準監督署に提出して控えと労働保険番号を受け取る、②同じ窓口またはその後に概算保険料申告書を提出し、保険料を納付する(保険関係が成立した日から50日以内が原則)、③成立届の控えを持ってハローワークで雇用保険適用事業所設置届と被保険者資格取得届を出す(設置届は設置の日の翌日から10日以内、資格取得届は資格取得日の属する月の翌月10日までが原則)。
同時期に、社会保険(健康保険・厚生年金保険)の手続きが必要になる会社も多いはずです。法人は原則として社会保険の適用事業所となるため、年金事務所への新規適用届も並行して考えます。さらに、従業員を雇ったら労働者名簿・賃金台帳・出勤簿(法定三帳簿)の整備や、常時10人以上になる場合の就業規則の届出も視野に入ります。
以後は毎年、年度更新という手続きで前年度の確定保険料と当年度の概算保険料を申告・納付していきます。最初の成立届で登録した事業の種類や賃金見込額がそのベースになるので、ここを丁寧に書いておくと後が楽になります。労働保険の手続きは、人の入退社や働き方の条件によって判断が分かれる場面が少なくありません。雇用保険の加入対象になるかどうか、賃金に何を含めるか、二元適用事業に当たるかといった点で迷ったら、社会保険労務士に相談し、必要に応じて管轄の労働基準監督署・ハローワーク・厚生労働省の公表資料で最新の取扱いを確認することをおすすめします。
よくある質問
社長ひとりの会社でも労働保険 成立届は必要ですか?
従業員を雇っていない、社長ひとりだけの会社では、原則として労働保険の適用対象にならず成立届も不要とされています。アルバイトを1人でも雇い入れた時点で必要になるのが基本です。役員だけで運営している場合の扱いに不安があれば、管轄の労働基準監督署か社会保険労務士に確認してください。
アルバイトを短時間で1人だけ雇う場合も提出しますか?
労災保険は、雇用形態や労働時間にかかわらず雇った人がいれば適用されるのが原則のため、短時間のアルバイト1人でも成立届が必要になると考えるのが基本です。一方、雇用保険に加入するかどうかは所定労働時間や雇用見込み期間などの条件で判断が分かれます。具体的な条件はハローワークで確認するのが確実です。
成立届の提出期限を過ぎてしまいました。どうすればよいですか?
気づいた時点でできるだけ早く管轄の労働基準監督署に連絡し、遅れた事情を伝えて提出してください。届出自体は受け付けてもらえるのが一般的ですが、さかのぼって保険料を求められたり追加の負担が生じたりすることがあります。放置するほど不利になりやすいため、早めの相談が安全です。
成立届の用紙はダウンロードして印刷できますか?
保険関係成立届はOCRで読み取る専用様式のため、印刷したものでは受け付けられない場合があります。労働基準監督署や労働局の窓口で用紙を受け取るか、e-Govの電子申請を利用する方法が一般的です。対応状況は管轄の窓口や公式サイトで最新の案内を確認してください。