電子署名を無料でできるツール|フリーソフトとクラウドの使い分け
「印刷して押印して郵送」をやめたいけれど、いきなり有料の電子契約サービスを入れるのは重い。そんなときにまず試せるのが、無料で使える電子署名の手段です。ただし無料の手段にはいくつか種類があり、できることの範囲も、後から「本当にこの人が署名したのか」を示せる強さも違います。この記事では、無料でできる電子署名のやり方を3つに分けて整理し、どの契約なら無料の範囲で回せて、どこから先は有料や別の方式を検討したほうがよいのかを、判断の順番で説明します。
この記事の結論
- 電子署名を無料で行う方法は大きく、PDF編集ソフトで署名画像や証明書を付ける方法、クラウド型電子契約サービスの無料枠を使う方法、スマホアプリで手書きサインを入れる方法の3つに分かれます。
- 無料の範囲で回しやすいのは、相手方が少なく、金額や期間の負担が小さく、社内で保管できる文書(見積書の承諾、簡単な業務委託、社内の申請書など)です。
- 送信件数が増える、相手先が本人確認の記録を求める、契約書を長期間保管する必要がある、といった状況になったら、有料プランや立会人型の電子契約サービスへの切り替えを検討する時期です。
そもそも電子署名とは?無料ツールでどこまでできるのか
電子署名という言葉は、実際には広い意味で使われています。PDFに手書き風のサイン画像を貼る操作も「電子署名」と呼ばれますし、電子証明書を使って「誰が署名し、その後に改ざんされていないか」を技術的に示す仕組みも電子署名と呼ばれます。無料ツールを探すときは、自分が欲しいのがどちらなのかを先に決めると迷いません。
前者は見た目としてのサインで、相手が納得すれば実務は進みます。後者は、後で争いになったときに「この文書はこの時点から変わっていない」と説明しやすくなる方向の仕組みです。無料で手に入りやすいのは前者寄りの機能で、証明書や本人確認の記録が絡む部分は有料の範囲になっていることが多い、というのが全体像です。
なお、電子署名や電子契約の効力については電子署名法などの法令が関係します。どの方式ならどこまでの証拠力があるか、という評価は個別の契約内容によって変わるため、重要な契約では弁護士に確認しておくと安心です。
無料で電子署名を作る3つの方法と、向いている場面
1つ目は、PDFを扱うソフトの署名機能を使う方法です。無料で配布されているPDFリーダーやフリーソフトにも、署名欄に手書きサインを描いて保存したり、あらかじめ作ったサイン画像を配置したりする機能が付いていることがあります。相手から届いたPDFにその場で署名して返送する、という一往復で終わる場面に向いています。
2つ目は、クラウド型の電子契約サービスが用意している無料枠です。送信できる件数や利用できる機能に制限があるのが一般的ですが、相手方に署名依頼メールを送り、相手はブラウザ上で署名し、履歴が残る、という一連の流れを体験できます。契約の相手が複数いる、署名の順番がある、といったケースでは、PDFソフトより明らかに楽です。
3つ目は、スマホアプリで手書きサインを入れる方法です。スマートフォンやタブレットの標準機能でも、PDFにマークアップとしてサインを書き込める場合があります。外出先で急ぎの一枚に対応する、という用途では便利ですが、履歴が残らない点は理解しておきましょう。いずれの方法も、機能や無料で使える範囲は変更されることがあるため、各社の公式サイトで最新の情報を確認してください。
フリーソフトとクラウド、どちらを選ぶか:判断の順番
迷ったら、次の順に見てください。第一に「相手方に署名してもらう必要があるか」。自社側が署名して返すだけならPDFソフトで足ります。相手に署名してもらうなら、依頼から完了までを追えるクラウド型のほうが、催促や進捗管理の手間が減ります。
第二に「後から記録を出す必要があるか」。取引先の監査や、社内の承認フローで「いつ誰が署名したか」を示す場面があるなら、署名の履歴(監査ログ)が残る仕組みを選びます。PDFソフトで画像を貼っただけだと、この記録は基本的に残りません。
第三に「月にどれくらい送るか」。数か月に数件であれば無料枠で足りることが多く、毎月まとまった件数を送るなら無料枠はすぐに足りなくなります。件数が読めない段階では、無料で始めて上限に当たった時点で有料化を検討する、という進め方が現実的です。
無料では足りないと判断する3つのサイン
1つ目は、相手から方式を指定されたときです。大きな会社と取引すると、先方が使っている電子契約サービスで締結したい、本人確認を伴う方式にしてほしい、と指定されることがあります。この場合は自社の都合より相手の運用に合わせるほうが早く、必要なら該当サービスの受信側として参加します。多くのサービスで、署名する側は無料で参加できる設計になっていますが、条件は事前に確認してください。
2つ目は、契約の重さです。期間が長い、金額の負担が大きい、解約条件が複雑、といった契約は、後で争いになったときのコストが大きくなります。こうした契約では、証跡の残り方がしっかりした方式を選び、内容そのものについても専門家のチェックを受けたほうが安全です。
3つ目は、保管の要件です。電子で受け取った契約書や請求書の保存については、電子帳簿保存法など税務上の取り扱いが関係します。ファイルをデスクトップに置いたままでは探せなくなりますし、要件を満たす保存方法かどうかの判断も必要です。具体的な要件は国税庁の資料を確認し、自社の運用で足りるかは税理士にご確認ください。
無料ツールで電子署名を始める手順
まず準備するものを決めます。署名する文書のPDF、署名者の氏名と連絡先(メールアドレス)、そして自分のサインの元になる手書き画像かタッチ入力です。社印に相当する画像を使う場合は、誰が使えるかを社内で決めておくと、後の混乱を防げます。
次に、1件目を社内でテストします。自分から自分宛てに送る、あるいは同僚と送り合って、署名依頼メールがどう届くか、相手側の画面がどう見えるかを確認します。相手先にいきなり本番の依頼を送ると、操作が分からず電話が来て、かえって時間がかかることがあります。
本番で送るときは、メール本文に「電子で締結したい旨」「署名の期限」「操作で困ったときの連絡先」を添えます。締結後は、完成したPDFと履歴ファイルをダウンロードし、社内の保管場所に取引先名と締結日が分かる名前で保存します。ここまでを最初に決めておくと、件数が増えても運用が崩れません。
無料運用でつまずきやすいところ
よくあるのが、無料枠の上限に月末で当たり、締結できないまま止まるケースです。上限の考え方(月ごとか、累計か、文書単位か通数単位か)はサービスごとに違うので、使い始める前に公式サイトで確認し、社内の担当者にも共有しておきましょう。
もう一つは、ファイルの散逸です。個人のPCやスマホに保存したまま担当者が変わると、契約書の所在が分からなくなります。無料で始める段階から、共有フォルダの一か所に集める、命名ルールを決める、という二つだけは先に決めてください。ここが整っていれば、後で有料サービスに移行するときの移行も楽になります。
最後に、社内の合意です。押印から電子署名に切り替えると、承認の流れや決裁者の確認方法が変わります。誰が送信してよいか、いくら以上は誰の承認を得るか、といった簡単な取り決めを文書にしておくと、運用が安定します。契約実務や社内規程の整え方に不安がある場合は弁護士に、保存や税務上の取り扱いについては税理士に、早い段階で相談しておくことをおすすめします。
よくある質問
無料の電子署名でも契約は成立しますか?
契約は当事者の合意で成立するのが原則とされ、書面や押印が必ず必要とは限りません。ただし、後から「本人が署名したか」を示せるかどうかは方式によって差が出るため、重要な契約では証跡の残る方式を選び、必要に応じて弁護士にご確認ください。
スマホだけで電子署名はできますか?
PDFに手書きサインを書き込むだけであれば、スマートフォンやタブレットの標準機能やアプリで対応できる場合があります。ただし署名の履歴は残らないことが多いため、取引先とのやり取りではクラウド型サービスのスマホ画面から署名する方法も検討してください。
無料のフリーソフトと有料サービスは何が一番違いますか?
大きな違いは、送信できる件数の上限と、誰がいつ署名したかという記録(監査ログ)、そして契約書を検索して管理する機能です。件数が少なく社内保管で足りるうちは無料でも回りますが、件数と相手先が増えたら有料の検討時期といえます。
電子で締結した契約書はどう保存すればよいですか?
電子で受け取った契約書は、電子のまま保存することが求められる場合があり、電子帳簿保存法の取り扱いが関係します。要件の詳細は国税庁の資料を確認したうえで、自社の保存方法で足りるかどうかは税理士にご確認ください。