PDFに電子署名を入れる方法|Acrobat・Word・スマホでのやり方

・契約・電子署名・会社のはじめかた編集部(監修:田中 祐介)

「PDFで契約書が送られてきたけれど、印刷して押印して郵送し直すのは面倒」。そんなときに使うのが電子署名です。ただ、ひとくちに電子署名といっても、サイン画像を貼るだけのものから、証明書を使って本人性と改ざんの有無を確認できるものまで幅があります。この記事では、Acrobat Reader・Word・スマホ・電子契約サービスという4つのルートごとに、どんな場面で使えて、どういう順番で操作すればよいのかを整理します。

この記事の結論

  • PDFに電子署名を入れる方法は大きく4つで、Acrobat Readerの署名機能、Wordから変換して署名、スマホの標準アプリでの手書きサイン、電子契約サービス経由に分かれます。
  • 自分のためのメモや社内回覧なら無料のサイン挿入で足りることが多く、相手方と交わす契約書では、誰がいつ署名したかの記録が残る電子契約サービスを使う方法が向いています。
  • 署名後のPDFは編集できる形で上書きせず、署名済みファイルとして別名で保存し、契約の相手方と同じファイルを保管しておくのが安全です。

そもそも「電子署名」と「サイン画像の貼り付け」は何が違う?

画面上の見た目はどちらも「PDFに名前が書かれている」状態ですが、中身は別物です。サイン画像の貼り付けは、手書き文字の画像をPDFの上に置いているだけなので、誰が置いたのか、後から書き換えられていないかを、ファイル自体から確かめることはできません。一方、証明書を使った電子署名は、署名した時点のファイルの状態を記録し、その後に変更が加えられていればPDFを開いたときに検知できる仕組みになっています。

日本では電子署名に関する法律で、一定の要件を満たす電子署名がなされた電子文書について、真正に成立したものと推定される旨の規定が置かれています。ただし、どの方法がその要件を満たすかは、使う仕組みや運用によって評価が分かれることがあります。重要な契約で「この署名方法で足りるか」を判断する場面では、弁護士に確認しておくと安心です。

実務では、社内の申請書・見積書の確認印のような場面では手軽なサイン挿入、相手方と締結する契約書では記録が残る電子契約サービス、という使い分けが一般的です。まずは「その文書は後から証明する必要があるか」を基準に、どちらのルートを使うか決めてください。

Acrobat Readerで PDF に電子署名を入れる手順(Adobe)

無料のAdobe Acrobat Readerでも、PDFに署名を入れる機能が用意されています。用意するものは、署名したいPDFファイルと、自分の署名(手書き文字を書くか、あらかじめ白い紙に書いたサインを撮影した画像)です。まずAcrobat ReaderでPDFを開き、ツールやメニューの中から「入力と署名」「署名を追加」にあたる項目を選びます。

次に、署名の作り方を選びます。キーボードで名前を入力してフォントで表示する方法、マウスやタッチ操作で手書きする方法、サインの画像を読み込む方法のいずれかから選べます。作成した署名は保存しておけるので、次回以降は選ぶだけで挿入できます。あとは署名欄の位置にドラッグして大きさを調整し、日付や会社名などのテキストが必要であれば同じツールで追加します。

相手から送られてきたPDFにあらかじめ「署名フィールド」が設定されている場合は、そのフィールドをクリックすると、証明書を使った電子署名(デジタルID)を求められることがあります。この場合は、持っている電子証明書を選ぶか、新しくデジタルIDを作成する流れになります。画面表示や項目名はバージョンによって変わるため、見当たらないときはAdobeの公式ヘルプで最新の手順を確認してください。

署名が終わったら、必ず別名で保存します。元のPDFを上書きしてしまうと、署名前の状態に戻せません。ファイル名の末尾に「_署名済」などを付けておくと、後から探しやすくなります。

Wordで作った文書に電子署名を付けるには

Wordで契約書や申請書を作っている場合、進め方は2つあります。ひとつは、WordファイルをPDFに書き出してから、前の章の手順でPDFに署名する方法です。契約書のやり取りでは、レイアウトが崩れず編集もされにくいPDFで渡すのが一般的なので、迷ったらこちらを選んでおくと無難です。

もうひとつは、Wordの機能で署名欄を挿入する方法です。挿入メニューの中に「署名欄」を追加する項目があり、署名者の氏名や役職を入れた欄を文書内に置けます。さらに、Wordにはデジタル署名を付与する機能もありますが、利用には電子証明書が必要になります。会社として証明書を用意していない段階では、PDF化してから署名するか、電子契約サービスを使うほうが手間が少ないでしょう。

相手にWordファイルのまま送ると、署名後も文言を書き換えられる余地が残ります。締結版はPDFで確定させ、修正のやり取りをしている途中だけWordを使う、と切り分けておくと管理がしやすくなります。

スマホやタブレットでPDFに署名する方法

外出先で署名を求められたときは、スマホだけでも作業できます。iPhoneやiPadでは、メールやメッセージで受け取ったPDFをプレビュー表示し、マークアップ(ペンのアイコン)から署名を追加する機能が使えます。指やペンでサインを書いて保存しておけば、次回からは呼び出すだけです。編集したファイルは、そのまま返信メールに添付できます。

Androidでは、PDFを開くアプリによって手順が変わります。Acrobat Readerのモバイル版や、端末に入っているファイル・PDFアプリの注釈機能から、手書きサインやテキストを追加できることが多いです。アプリの仕様は更新で変わるため、各アプリの公式ヘルプで最新の操作を確認してください。

注意したいのは、スマホの手書きサインも基本的には「画像の貼り付け」に近い性質だということです。急ぎで受領書を返す、社内の確認を取る、といった用途には向きますが、後から署名者を証明する必要がある契約では、記録が残る方法を選ぶほうが安心です。

電子契約サービスを使うのはどんなとき?選び方の順番

相手方と締結する契約書で、署名した人・日時・その後改ざんされていないことを記録として残したいなら、電子契約サービスを使う方法が向いています。送信者がPDFをアップロードし、署名欄と相手のメールアドレスを指定して送ると、相手がリンクを開いて同意・署名し、双方に締結済みのファイルと履歴が残る、という流れが一般的です。

サービスを比べるときは、この順に見ると絞り込みやすくなります。第一に、相手方に会員登録を求めずメールのリンクだけで署名してもらえるか。第二に、署名の方式(メール認証による立会人型か、電子証明書を使う当事者型か)が、自社の契約の重さに合っているか。第三に、締結済み文書の保管・検索と、電子帳簿保存法を意識した管理がしやすいか。第四に、月あたりの送信件数や利用人数に対して、料金体系が自社の使い方に合うか。

料金や機能は改定されることがあるため、各社の公式サイトで最新の内容を確認してください。無料で試せる範囲が用意されていることもあるので、実際に自分あてに1通送って、相手側の画面がどう見えるかを確かめてから本番に使うと、取引先への説明もしやすくなります。

なお、契約の種類によっては、書面での交付が求められたり、電子化にあたって相手の承諾が必要とされたりする場合があります。不動産や一部の取引で判断に迷うときは、弁護士や司法書士に確認してから運用を始めると安全です。

署名した後の保存と、社内ルールの決め方

署名済みのPDFは、メールの添付ファイルのまま放置せず、共有フォルダやクラウドストレージに契約書専用の場所を作って保管します。ファイル名は「締結日_相手先名_契約名」のように並べ方を決めておくと、後から探す時間が大きく減ります。相手方にも同じファイルが渡っている状態にしておくことも大切です。

電子で受け取った契約書や請求書の保存については、電子帳簿保存法で電子取引データの保存に関する考え方が定められています。保存方法や検索の要件は制度改正で変わることがあるため、詳細は国税庁の公表資料を確認し、自社の保存方法が要件に沿っているかは税理士にご相談ください。

最後に、社内で「どの文書はサイン挿入でよく、どの文書は電子契約サービスを通すか」を一枚にまとめておくと、担当者が替わっても運用が崩れません。ひとり社長の会社でも、後から従業員が増えたときに役立ちます。判断に迷う契約が出てきたら、その都度専門家に確認する前提でルールを作っておくと、現場が止まりません。

よくある質問

PDFに電子署名を無料で入れることはできますか?

無料のAdobe Acrobat Readerやスマホの標準機能を使えば、PDFにサインを挿入する作業自体は費用をかけずに行えます。ただし、署名者や日時の記録を残す機能は有料のサービスに含まれることが多いため、契約書の締結に使う場合は各社の公式サイトで提供範囲を確認してください。

手書きサインの画像を貼り付けるだけでも契約は成立しますか?

契約は当事者の合意で成立するのが原則ですが、後から「本人が署名した」ことを示せるかどうかは別の問題です。争いになりやすい取引では、署名の記録が残る方法を選んでおくほうが安心で、判断に迷う場合は弁護士にご確認ください。

取引先から電子契約を求められましたが、こちらに登録は必要ですか?

多くのサービスでは、受信側はメールのリンクから署名でき、登録を求められないことが一般的です。届いたメールの送信元と契約内容を確認したうえで、不明な点は相手の担当者に直接問い合わせてから署名してください。

署名済みのPDFはどのように保存すればよいですか?

元のファイルを上書きせず、別名で保存し、契約書専用のフォルダに締結日と相手先名を付けて保管する方法が管理しやすいです。電子で受け取った書類の保存要件は国税庁の資料を確認し、自社の運用で足りるかは税理士にご相談ください。

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この記事は一般的な情報をまとめたものです。税務・法務・労務の個別の判断については、税理士・弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。 料金や条件は変わることがあるため、お申し込み前に必ず各サービスの公式サイトで最新の内容をご確認ください。