法人インターネットバンキングの選び方|アプリ・通帳なし運用と利用料

・法人口座・会社のはじめかた編集部(監修:田中 祐介)

法人口座を開いたあと、実際に毎日触るのはインターネットバンキング(以下、ネットバンキング)の画面です。振込も、残高確認も、会計ソフトへの連携も、ここが起点になります。ところが個人の口座とは違い、法人向けは月額の利用料がかかる銀行とかからない銀行があり、通帳が発行されない口座も増えました。この記事では、ひとり社長や少人数の会社が「どの順番で何を見て決めればいいか」を、比較の軸に沿って整理します。

この記事の結論

  • 法人のネットバンキングは、利用料の有無・振込の上限や手数料体系・会計ソフト連携の可否の順に見ると、自社に合うかどうかが短時間で判断できます。
  • 通帳が発行されない法人口座でも、ネットバンキングの入出金明細をPDFやCSVで取得できれば、帳簿の裏づけとして使えるのが一般的です(保存方法は電子帳簿保存法の要件を所管官庁の資料で確認してください)。
  • スマホアプリは残高確認と承認に向き、振込データの作成や明細のダウンロードはPCのWeb画面のほうが扱いやすい、と役割を分けるのが現実的です。

法人口座のインターネットバンキングは、まず何を比べるのか

法人向けネットバンキングは、銀行によって「口座はあるがネットバンキングは別契約」という形と、「口座開設と同時に使える」という形があります。最初に確認すべきは、申し込みが別なのか、利用料がかかるのか、という2点です。ここが分かると、その後の比較がぐっと楽になります。

比較の順番としては、①利用料(月額の基本料や初期費用の有無)、②振込の手数料体系と1回・1日あたりの上限、③会計ソフトとのデータ連携、④アプリとWebの使い分け、⑤複数人で使うときの権限設定、の順がおすすめです。ひとり社長なら⑤は後回しでよく、従業員がいる会社は③と⑤の優先度が上がります。

なお、具体的な金額はここには書けません。同じ銀行でもコースや契約形態で変わりますし、改定もあります。各行の公式サイトで、法人向けページの最新の料金表を必ず開いて確認してください。

「法人口座 ネットバンキング 無料」で探すときの注意点

検索では「無料」という言葉がよく使われますが、法人向けの場合、無料になりうるのは主に月額の基本利用料の部分です。振込手数料や、証明書の発行、ワンタイムパスワード用の機器などは別の費用が発生することがあります。「月額がかからない=すべてタダ」ではない、という前提で読むのが安全です。

判断の順番はこうです。まず、月に何件くらい振込をするかをざっくり数えます。振込がほとんどない会社なら、月額がかからない銀行の優先度が上がります。逆に毎月まとまった件数の振込をするなら、月額がかかっても1件あたりの手数料が抑えられる体系や、一定回数まで手数料が優遇される仕組みのほうが、合計では軽くなることがあります。

もうひとつ、同じ銀行あて(同行内)の振込と他行あてで扱いが違うのが一般的です。主要な取引先や外注先の口座がどこに集まっているかを一度書き出してみると、どの銀行を主口座にすると振込が楽か、が見えてきます。金額は各行の公式サイトで確認し、自社の件数を当てはめて比べてください。

法人口座の通帳なし運用は問題ないか、通帳ありとどう使い分けるか

最近は、通帳を発行せず入出金明細をWeb上で確認する形の法人口座が増えています。通帳がないこと自体が経理上の支障になるわけではなく、取引の事実を示す記録が残り、必要なときに出力できるかどうかが要点だと考えられています。実務では、ネットバンキングの明細をPDFやCSVで保存し、会計ソフトのデータと突き合わせる運用が一般的です。

気をつけたいのは、明細の閲覧できる期間が銀行ごとに決まっていることです。過去分をさかのぼって見られる範囲には限りがあるため、決算期末や、少なくとも月次のタイミングで明細をダウンロードして保存する習慣をつけておくと安心です。取得した電子データの保存方法については、電子帳簿保存法の考え方が関わるため、所管官庁の資料や顧問税理士に確認してください。

一方で、通帳が手元にあると役立つ場面もあります。融資の相談や、補助金・助成金の申請、賃貸借契約の審査などで、入出金の記録の提出を求められることがあるためです。ただし多くの場合は取引明細の書面(残高証明書や取引証明書)で代替できます。通帳の有無だけで銀行を決めるより、「必要になったときに証明書類を発行してもらえるか」を先に確認するほうが実務的です。

法人口座アプリとWeb、どちらをメインにするか

法人向けのスマホアプリは、提供している銀行とそうでない銀行があります。提供されている場合でも、できることがWebの画面と同じとは限りません。残高照会や入出金の確認、振込の承認まではアプリで、振込データの一括作成や明細のダウンロード、権限設定はPCのWebで、という役割分担にしておくと迷いません。

外出が多い社長なら、アプリで承認できるかどうかは日々のスピードに直結します。経理担当が振込データを作り、社長がアプリで承認する、という流れが組めると、承認待ちで支払いが止まる事態を減らせます。担当者と承認者を分けられる機能があるかは、従業員がいる会社では早めに確認しておきたい点です。

セキュリティ面では、ログイン時の追加認証(ワンタイムパスワードや電子証明書)の方式が銀行ごとに違います。専用の機器が必要なのか、アプリで完結するのかで、使い勝手も、担当者が交代したときの手間も変わります。申し込み前に、認証方式と、端末を機種変更したときの再設定の流れを見ておくとよいでしょう。

ペイジーや口座振替、会計ソフト連携はどう見るか

法人の支払いでは、税金や社会保険料の納付が定期的に発生します。ネットバンキングからペイジー(Pay-easy)で納付できると、金融機関の窓口に出向く手間を減らせます。対応状況は銀行ごとに異なり、対応していても収納機関によって扱いが違うことがあるため、自社で納付する予定のもの(法人税や源泉所得税、社会保険料など)が扱えるかを事前に確認してください。

同じく、電気・通信などの経費を口座振替にする場合、法人口座が振替先として指定できるかも見ておきたい点です。クレジットカードの引き落とし口座に指定できるか、法人カードの申し込みと口座がセットになっているか、といった点も、あとから口座を増やす手間を減らします。

会計ソフトとの連携は、日々の記帳の負担を大きく左右します。明細を自動で取り込めるか、手動でCSVを取り込む形になるかで、月次の作業時間が変わります。すでに使っている、あるいは使う予定の会計ソフトの公式サイトに連携できる金融機関の一覧が載っていることが多いので、口座を決める前に一度照らし合わせておくと、あとで困りません。

開設後すぐにやっておく設定と、専門家への相談

ネットバンキングが使えるようになったら、最初の1週間で次の順にやっておくと安定します。まず、1回あたり・1日あたりの振込限度額を、自社の実態に合わせて設定します。初期値が高すぎても低すぎても困るので、月の最大の支払い額を基準に決めてください。次に、振込先の登録(よく使う取引先)と、明細のダウンロード手順の確認です。

そのうえで、会計ソフトとの連携を設定し、試しに1か月分を取り込んでみます。ここで金額や日付のズレがないかを一度見ておくと、決算期になって慌てずに済みます。あわせて、社長以外の人が操作する場合は、担当者IDを分け、承認は社長が行う形にしておくと、内部の管理としても分かりやすくなります。

口座の使い分けや、明細データの保存方法、納付のタイミングは、会社の状況によって適した形が変わります。帳簿や電子データの保存、インボイス制度に関わる書類の扱いについては税理士に、従業員がいる場合の社会保険料の納付や口座からの引き落としについては社会保険労務士に、早めに相談しておくと安心です。制度の細かい要件は、所管官庁の最新の資料もあわせて確認してください。

よくある質問

法人口座のインターネットバンキングは、無料で使えますか。

月額の基本利用料がかからない法人口座もありますが、振込手数料や証明書の発行費用などは別に発生するのが一般的です。同じ銀行でも契約コースによって条件が変わるため、各行の公式サイトで最新の料金を確認してください。

通帳がない法人口座でも、確定申告や決算で困りませんか。

ネットバンキングの入出金明細をPDFやCSVで取得・保存できれば、帳簿の裏づけとして使えるのが一般的です。ただし明細を閲覧できる期間には限りがあるため、月次でのダウンロードをおすすめします。電子データの保存方法は電子帳簿保存法の要件が関わるので、税理士にご確認ください。

法人口座のアプリだけで、振込まで完結できますか。

銀行によって、アプリでできる範囲は異なります。残高照会や承認はアプリで、一括の振込データ作成や明細のダウンロードはPCのWeb画面で、という分担になることが多いため、申し込み前にアプリの機能一覧を確認してください。

税金や社会保険料の納付は、ネットバンキングからできますか。

ペイジー(Pay-easy)に対応している銀行であれば、ネットバンキングから納付できる場合があります。対応する収納機関は銀行ごとに違うことがあるため、自社で納付予定のものが扱えるか、事前に銀行の公式サイトで確認しておくと安心です。

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この記事は一般的な情報をまとめたものです。税務・法務・労務の個別の判断については、税理士・弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。 料金や条件は変わることがあるため、お申し込み前に必ず各サービスの公式サイトで最新の内容をご確認ください。