電子署名法とは|第3条と二段の推定をわかりやすく解説

・契約・電子署名・会社のはじめかた編集部(監修:田中 祐介)

電子契約を導入しようとすると、必ず出てくるのが「電子署名法」という言葉です。とくに第3条の「推定」や「二段の推定」は、いざ裁判になったときに電子ファイルが証拠として通用するかどうかに関わる話で、サービス選びの判断基準にも直結します。この記事では、正式名称・施行時期といった基本から、第2条1項の定義、第3条の意味、立会人型(事業者署名型)との関係までを、これから電子契約を入れる小さな会社の目線で整理します。

この記事の結論

  • 電子署名法の正式名称は「電子署名及び認証業務に関する法律」で、2000年に成立し2001年4月1日に施行された法律です。
  • 第3条は、本人による一定の電子署名が行われた電磁的記録は真正に成立したものと推定する、と定めた規定で、紙の押印に関する民事訴訟法の考え方に対応しています。
  • 「二段の推定」とは、①署名鍵などを本人が管理していたことから本人の意思による電子署名と推認し、②そこから文書の真正な成立を推定する、という二段階の考え方を指します。

電子署名法とは?正式名称と、いつから施行されたのか

電子署名法の正式名称は「電子署名及び認証業務に関する法律」です。2000年(平成12年)に成立し、2001年(平成13年)4月1日から施行されました。紙と印鑑を前提にしてきた取引の世界に、電子的な意思表示の枠組みを与えるためにつくられた法律です。

条文自体はそれほど長くありません。大きく分けると、①電子署名や認証業務の定義(第2条)、②一定の電子署名がある電磁的記録の推定効(第3条)、③特定認証業務の認定制度や監督に関する規定、という構成になっています。実務で引用されるのは、ほとんどが第2条1項と第3条です。

注意したいのは、この法律は「電子署名がないと電子契約が無効になる」と定めたものではない、という点です。日本では契約は原則として当事者の合意で成立し、書面や押印が要件とされる場面は限られています。電子署名法は、後から「その文書は本当に本人がつくったのか」が争われたときの証拠としての強さに関わる法律だと理解しておくと、位置づけを見失いません。

電子署名法2条1項の定義をわかりやすく:何が「電子署名」なのか

第2条1項は、電子署名を大まかに言うと「電磁的記録に記録された情報について行われる措置であって、①その情報が当該措置を行った者の作成に係るものであることを示すためのものであり、かつ②その情報について改変が行われていないかどうかを確認することができるもの」と定義しています。つまり、作成者を示す機能(本人性)と、改ざんを検知できる機能(非改ざん性)の両方が求められます。

この定義に照らすと、PDFに印影の画像を貼り付けただけのものや、メール本文に名前を打ち込んだだけのものは、改変の有無を確認する仕組みを伴わないため、電子署名法上の電子署名にはあたらないと整理されるのが一般的です。取引としては成立していても、証拠としての強さは別の話になります。

逆に、電子証明書と公開鍵暗号の技術を使い、署名後の改変が検知できるようになっているものは、この定義に当てはまりやすくなります。電子契約サービスを比較するときは、まず「改ざん検知の仕組みがあるか」「誰が署名したことを示す情報が残るか」を確認するのが出発点です。

電子署名法第3条とは?推定効の意味

第3条は、電磁的記録であって情報を表すために作成されたものは、本人による電子署名(これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る)が行われているときは、真正に成立したものと推定する、という内容です。条文の原文は e-Gov 法令検索で確認できます。

ここでいう「真正に成立した」とは、その文書が作成名義人の意思に基づいてつくられたものだ、ということです。裁判で契約書を証拠として出す場合、相手が「そんな文書は知らない」と争うと、出した側が成立の真正を立証しなければなりません。第3条の推定が働けば、この立証の負担が軽くなる、というのが実務上のメリットです。

ただし「推定」であって確定ではありません。相手方が、署名鍵が第三者に流出していた、なりすましがあった、といった反証に成功すれば推定は覆り得ます。第3条があるから何があっても安心、という読み方は避けてください。

「二段の推定」とは何か:紙の押印との対応関係

紙の世界では、民事訴訟法228条4項に「本人の署名または押印があるときは真正に成立したものと推定する」という規定があります。そして判例上、本人の印章による印影があれば本人の意思に基づく押印と事実上推認され、そこから同条4項で文書の真正が推定される、という二段階の推認・推定が実務に定着しています。これが「二段の推定」です。

電子署名でも同じ構造が語られます。第一段として、署名鍵や認証情報を本人が適正に管理していた事実から「本人の意思に基づく電子署名」と推認し、第二段として電子署名法第3条により文書の真正な成立が推定される、という流れです。だからこそ第3条は「符号及び物件を適正に管理すること」を条件に組み込んでいます。

実務への含意はシンプルで、第一段を支えるのは会社側の管理です。署名権限のあるアカウントを共有していたり、パスワードを使い回していたりすると、そもそも「本人しか行えない」と言いにくくなります。電子契約を入れるなら、アカウント管理と権限設計を同時に整えるのが実質的な対策です。

当事者署名型と立会人型(事業者署名型)はどう違う?選ぶときの順番

電子契約サービスは、利用者本人の電子証明書を使う「当事者署名型」と、サービス提供事業者の署名鍵を用いて利用者の指示に基づき署名する「立会人型(事業者署名型)」に大別されます。立会人型については、総務省・法務省・経済産業省が2020年に公表したQ&Aで、利用者の意思に基づくことが技術的・機能的に担保されている場合には電子署名法上の電子署名や第3条の対象となり得るという考え方が示されました。詳細は各官庁の公表資料を確認してください。

どちらを選ぶかは、契約の種類から逆算すると決めやすくなります。まず①相手方や業界の慣行で当事者署名型が求められる契約があるか、②不動産・金融など個別法令で書面や手続が定められている契約が含まれるか、③高額・長期で紛争リスクが高い契約か、の順に見ます。①〜③に当たるものは当事者署名型や紙も含めて慎重に検討し、日常的な業務委託や発注書などは立会人型で回す、という切り分けが現実的です。

比較の際は、機能名ではなく「本人確認の方法」「二要素認証の有無」「署名時のログや長期保存の扱い」を見てください。料金やプランは各社で改定されるため、必ず公式サイトで最新の内容を確認しましょう。

電子契約を始めるときの手順と、社内で整えておくこと

進め方としては、導入の前に①電子化する契約書の種類を洗い出す、②書面が求められる契約が混ざっていないか確認する、③署名権限者と承認フローを決める、の順で整理します。そのうえでサービスを選定し、テスト送信で相手先の受信・署名の流れを確認してから本番運用に移すと、差し戻しが減ります。

運用開始後は、社内規程に電子契約の扱いを書き足しておくと安心です。誰が送信でき、誰が承認するのか、締結済みファイルをどこに保管するのか、取引先から紙を求められたときどうするのか。最低限この4点を決めておけば、担当者が変わっても運用が崩れにくくなります。

保存については、電子取引データの保存ルールが電子帳簿保存法に定められています。要件は改正が重ねられているため、詳細は国税庁の公表資料で最新の内容を確認し、必要に応じて顧問税理士に相談してください。

電子署名の証拠力や、どの契約を電子化してよいかの判断は、契約の内容や取引の実情によって結論が変わり得ます。重要な取引を電子化する前に、契約書のひな形と運用フローを持って弁護士に相談し、保存方法や税務上の取扱いについては税理士に確認しておくと、後からの手戻りを避けやすくなります。

よくある質問

電子署名法はいつから施行されましたか?

2000年に成立し、2001年4月1日から施行されました。正式名称は「電子署名及び認証業務に関する法律」です。条文は e-Gov 法令検索で原文を確認できます。

PDFに印影の画像を貼るだけでは電子署名になりませんか?

電子署名法2条1項は、作成者を示す機能と改変の有無を確認できる機能の両方を求めています。画像を貼っただけでは改ざん検知の仕組みがないため、同法上の電子署名にはあたらないと整理されるのが一般的です。契約自体の成立とは別の論点なので、証拠力を重視する契約では仕組みのあるサービスを検討してください。

クラウド型(立会人型)の電子契約でも第3条の推定は働きますか?

2020年に総務省・法務省・経済産業省が公表したQ&Aでは、利用者の意思に基づくことが技術的・機能的に担保されている場合には対象となり得るという考え方が示されています。ただし個別の事案での評価は運用次第で変わり得るため、重要な契約については弁護士にご確認ください。

電子契約にした場合、締結済みのデータはどう保存すればよいですか?

電子取引のデータ保存については電子帳簿保存法にルールが定められており、要件は改正されています。国税庁の公表資料で最新の内容を確認し、自社の保存方法が合っているかは顧問税理士に相談するのが安全です。

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この記事は一般的な情報をまとめたものです。税務・法務・労務の個別の判断については、税理士・弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。 料金や条件は変わることがあるため、お申し込み前に必ず各サービスの公式サイトで最新の内容をご確認ください。