印鑑届出書の書き方と提出|法人実印の登録と押印不要になる場合
会社設立の書類を一通り揃えたところで、「印鑑届出書って結局いるの?」と手が止まる人は多いです。オンライン申請なら印鑑の届出は任意、という話を聞いて余計に迷ったかもしれません。この記事では、印鑑届出書が必要になる場面と不要にできる場面の見分け方、記入欄ごとの書き方、提出のタイミングと提出先、その後の印鑑カード・印鑑証明書の取得までを、実際に手を動かす順番で整理します。
この記事の結論
- 印鑑届出書は、会社の代表者が法務局に法人実印を登録するための書類で、書面で設立登記を申請する場合は登記申請書と一緒に提出するのが基本です。
- 商業登記の全面的なオンライン申請では印鑑の届出が任意とされていますが、印鑑証明書が必要になる手続きに備えて、実務では届け出ておく会社が多くあります。
- 印鑑届出書には会社実印の押印と、代表者個人の実印および市区町村発行の印鑑証明書が必要になるのが一般的で、印鑑登録後は印鑑カードを別途請求します。
印鑑届出書とは?法人登記の印鑑はどこに届け出るのか
印鑑届出書は、会社の代表者が「この印鑑を会社の実印として使います」と法務局に登録するための書類です。ここで登録した印鑑が、いわゆる法人実印(代表者印・会社実印)で、登録後は法務局で法人の印鑑証明書を取得できるようになります。市区町村に届け出る個人の印鑑登録とは窓口が別で、会社の印鑑は本店所在地を管轄する法務局(登記所)が窓口です。
届け出る人は、原則として登記される代表者本人です。株式会社なら代表取締役、合同会社なら代表社員(法人が代表社員の場合は職務執行者)が届出人になります。設立時にまだ会社は存在していないため、設立登記の申請と同時に提出するのが通常の流れです。
なお、契約書に押す「会社の角印(社印)」や「銀行印」は法務局に届け出るものではありません。届出書に押すのは、あくまで実印として登録したい丸印1つです。用途ごとに印鑑を分けたい場合も、法務局に登録するのは1本だと考えてください。
押印不要になる場合とは?オンライン申請と書面申請の分かれ道
商業登記の手続では、全面的なオンライン申請(申請書も添付書面も電子データで提出し、電子署名で本人確認をする方法)による場合に、印鑑の届出が任意とされています。電子署名で申請人の本人確認ができるため、印鑑の登録を前提としなくてもよい、という整理です。ここが「法人登記は押印不要になった」と言われる部分です。
一方で、書面で登記申請書を作って法務局の窓口や郵送で提出する場合は、申請書に会社実印を押し、印鑑届出書も併せて提出するのが基本の流れになります。また、オンライン申請でも添付書類を別途書面で郵送する「半ライン」方式をとる場合は、書面側に押印が求められる部分が残ります。自分がどの方式で申請するのかを先に決めてください。
判断の順番はシンプルです。まず「電子署名を用意できるか」を見ます。マイナンバーカードや電子証明書を使った電子署名の準備が整っていて、司法書士に依頼せず全面オンラインで進められるなら、印鑑の届出を省く選択肢があります。少しでも書面が混ざる、あるいは初めての設立で不安が大きいなら、書面申請+印鑑届出書という従来どおりの進め方のほうが迷いは少ないでしょう。
届け出ないとどうなる?実印を作るかどうかの判断基準
印鑑の届出を省略した場合、その会社は法務局で印鑑証明書を取得できません。法人の印鑑証明書は、不動産の取引、自動車の登録、一部の金融機関や取引先との契約、助成金・補助金の申請などで求められることがあります。設立直後は不要でも、後から必要になる場面は意外と出てきます。
そのため、次のどれかに当てはまるなら、設立時に届け出ておくほうが手戻りが少ないです。①法人名義の口座開設や融資の相談を予定している、②不動産や車両を法人名義で取得する可能性がある、③取引先から実印での契約を求められそうな業種である、④自分は電子署名に不慣れで、今後の登記も書面で行いそうである。
逆に、完全に電子完結で運営するつもりで、取引も電子契約が中心という会社なら、当面は届け出ないという判断もあり得ます。届出は設立後でも可能ですから、「今は保留、必要になったら届け出る」でも構いません。ただし必要になった時点で法務局に出向く手間は発生するので、実印そのものは作っておき、届け出るかどうかだけを後で決める、という進め方が現実的です。
印鑑届出書の書き方|記入欄ごとのポイント
用紙は法務局のウェブサイトから様式をダウンロードできます。書き方は難しくありませんが、押し間違いと記載のずれが差し戻しの原因になりやすいので、順番に確認しましょう。まず上部の枠内に、登録したい会社実印を押します。枠からはみ出したり、かすれたりすると受け付けてもらえないことがあるため、朱肉をしっかりつけて、捺印マットの上で垂直に押してください。失敗したら書き直すのが安全です。
続いて「商号・名称」「本店・主たる事務所」を記入します。ここは定款や登記申請書と一字一句そろえるのが鉄則です。「株式会社」が前か後ろか、丁目・番地の表記、アラビア数字か漢数字かまで合わせます。次に「印鑑提出者」の資格(代表取締役、代表社員など)、氏名、生年月日を記入します。資格の書き方は会社の種類によって異なるので、自社の登記内容に合わせてください。
下部には、届出人の欄と、市区町村への印鑑登録の有無を記入する欄があります。代表者個人の実印を押し、その印鑑について市区町村が発行した印鑑証明書を添付するのが一般的な取り扱いです。この印鑑証明書は取得から一定期間内のものを求められるため、設立直前に取ってください。代理人に提出を頼む場合は委任状の欄に必要事項を記入し、代理人の印を押します。
最後に、会社実印の押印と代表者個人の実印の押印を取り違えていないか、商号・本店の表記が申請書と一致しているか、生年月日の記入漏れがないか、の3点を見直します。この3つで、差し戻しの多くは防げます。
いつ・どこに出す?提出のタイミングと必要なもの
提出のタイミングは、設立登記の申請と同時が基本です。準備するものは、印鑑届出書、登録する会社実印、代表者個人の実印、代表者個人の印鑑証明書(市区町村発行)、そして登記申請書一式です。提出先は、本店所在地を管轄する法務局(登記所)の商業・法人登記の窓口になります。管轄は法務局のウェブサイトで確認できます。
窓口に持参するほか、登記申請書と一緒に郵送する方法もあります。郵送の場合は、書類の不備があると連絡と再送でそのぶん日数がかかるので、初回は窓口に持参して、その場で軽く確認してもらうほうが安心という人も多いです。管轄法務局によっては事前の相談予約制度が用意されている場合があるので、必要なら問い合わせてみてください。
設立後に印鑑を届け出る場合や、代表者が交代して印鑑を新しく登録する場合も、同じ印鑑届出書を使います。この場合は登記申請と切り離して単独で提出することになります。なお、登録した印鑑を変更したいときは、改めて印鑑届出書(改印の届出)を出す形になります。
登録した後は?印鑑カードと印鑑証明書の取り方
印鑑を登録しただけでは、印鑑証明書はすぐに出てきません。法人の印鑑証明書を取るには、まず「印鑑カード交付申請書」を提出して印鑑カードを受け取る必要があります。申請書には会社実印を押し、登記が完了した後に法務局へ提出します。窓口ならその場で発行してもらえることが多く、郵送で請求することもできます。
印鑑カードを受け取ったら、そのカードを提示して印鑑証明書を請求します。証明書の交付手数料がかかりますので、最新の金額は法務局の公式サイトで確認してください。印鑑カードは紛失すると再発行の手続きが必要になるため、登記事項証明書や定款の控えとまとめて、社内の決まった場所に保管しておくことをおすすめします。
あわせて、設立後すぐに必要になる書類として、登記事項証明書(履歴事項全部証明書)があります。法人口座の開設や各種届出で求められるので、印鑑カードを作るタイミングで何通か取得しておくと、その後の手続きがスムーズです。必要通数は提出先によって違うので、口座を開く金融機関や税務署の案内を先に確認しておきましょう。
迷ったときの進め方と、専門家への相談
整理すると、判断は次の順番です。第一に、申請方式を決める(全面オンラインか、書面が混ざるか)。第二に、印鑑証明書が必要になりそうな予定があるかを洗い出す。第三に、なければ届出を保留、あるなら設立登記と同時に印鑑届出書を提出する。この3ステップで、ほとんどのケースは決まります。
会社実印そのものは、法務局に登録できる大きさの要件(一辺が1センチメートルを超え、3センチメートル以内の正方形に収まるものとされています)に合っていれば、印材やデザインは自由です。ゴム印のように変形しやすいものは登録できないとされていますので、発注時に「法人実印用」と伝えて作るのが無難です。要件の詳細は法務局の案内を確認してください。
登記の申請方式や添付書類の要否は、会社の形態や出資の内容によって変わることがあります。オンライン申請の可否や電子署名の準備、印鑑届出を省略した場合の影響について判断に迷うときは、商業登記の専門家である司法書士に相談すると、自社の状況に合わせた進め方を整理してもらえます。設立と同時に税務署への届出や社会保険の手続きも動き出しますので、税理士・社会保険労務士にも早めに声をかけておくと、全体の段取りが立てやすくなります。
よくある質問
印鑑届出書を出さないと会社は設立できませんか。
全面的なオンライン申請による場合は印鑑の届出が任意とされているため、届け出なくても設立登記自体は進められます。ただし届け出ないと法人の印鑑証明書が取得できず、契約や各種申請で困る場面が出ることがあります。後から届け出ることもできますので、必要性を見て判断してください。
印鑑届出書に押すのは会社実印と個人の実印、どちらですか。
上部の印鑑欄には登録したい会社実印を、届出人の欄には代表者個人の実印を押すのが一般的な取り扱いです。あわせて、代表者個人の印鑑証明書(市区町村発行)の添付を求められます。押す場所を取り違えると差し戻しになりやすいので、提出前に必ず見直してください。
登記申請書に認印を使うことはできますか。
書面で登記を申請する場合、申請書には法務局に届け出た会社実印を押すのが基本です。認印で足りる書類もありますが、どの書類にどの印が必要かは手続きの種類で異なります。判断に迷う場合は、管轄の法務局か司法書士に確認するのが確実です。
印鑑カードはいつ作ればよいですか。
設立登記が完了した後に、印鑑カード交付申請書を法務局に提出して受け取ります。印鑑証明書はこのカードがないと請求できないため、法人口座の開設など印鑑証明書が必要な予定があるなら、登記完了後すぐに手続きしておくと安心です。