自治体・官公庁との電子契約|入札案件で対応が必要になる場面

・契約・電子署名・会社のはじめかた編集部(監修:田中 祐介)

「入札に参加したいけれど、電子入札と電子契約は何が違うの?」「自治体から電子契約で締結したいと連絡が来たが、うちのサービスで受けられるのか分からない」。官公庁・自治体案件は、民間同士の契約とは準備の順番が少し違います。この記事では、入札参加の前段階から契約締結、締結後の保管まで、事業者側が何をいつ用意すればよいかを順番に整理します。

この記事の結論

  • 官公庁・自治体案件では「電子入札システムへの参加」と「落札後の電子契約による締結」は別の仕組みで、それぞれ必要な準備が異なります。
  • 電子入札には多くの場合ICカード型の電子証明書など発注機関が指定する認証手段が必要で、取得には日数がかかるため、参加したい案件が決まる前に着手しておくと安全です。
  • 落札後の契約締結は発注機関が導入している電子契約の仕組み(LGWAN-ASPを含む)に事業者側が合わせる形が一般的で、自社サービスの指定はできないことが多いと考えておきましょう。

自治体・官公庁との電子契約は、どの場面で必要になるのか

官公庁・自治体の案件では、電子化が関わる場面が大きく三つに分かれます。ひとつ目は入札参加資格の申請、ふたつ目は入札そのもの(電子入札システムでの参加)、三つ目は落札後の契約書の締結です。この三つはそれぞれ別の仕組みで動いていることが多く、「電子入札に対応できた=電子契約にも対応できる」とは限りません。

たとえば、入札は発注機関が使う電子入札システムにログインして行い、契約締結は別の電子契約サービスからメールが届いて署名する、という運用もあります。逆に、入札は紙や持参で、契約だけ電子という機関もあります。どこまで電子化されているかは発注機関ごとに異なるため、案件ごとに公告や入札説明書で確認するのが出発点です。

国の機関については、政府全体の電子調達の仕組みや、行政手続の押印・書面の見直しに関する方針が各省庁から示されています。地方自治体でも、契約書の電子化に関する考え方が総務省や各自治体の規則で整理されつつあります。制度の詳細や最新の取扱いは、発注機関の公式サイトや所管官庁の資料で確認してください。

入札に参加するなら、まず電子証明書とシステム登録から

電子入札に参加するには、多くの発注機関で、事業者本人であることを示す電子証明書が求められます。代表的なのは、認証局が発行するICカード型の電子証明書と、法務局で取得できる商業登記電子証明書です。どの証明書が使えるかは発注機関の指定によりますので、参加したい機関の電子入札ポータルで「利用可能な認証局」「必要な電子証明書」の記載を先に確認します。

ICカード型を使う場合は、カード本体のほかにカードリーダーや専用のソフトウェア、対応するブラウザ環境の設定が必要になることがあります。申込みから手元に届くまで一定の日数がかかり、さらに利用者登録という手続きが別にあるのが通常です。公告を見てから動くと間に合わないことがあるため、「この機関の案件に出たい」と決まった時点で着手しておくと安心です。

証明書の名義にも注意が必要です。原則として契約を締結する権限のある方(法人であれば代表者)の名義で取得し、支店長や営業所長名義で入札する場合は、委任状や使用印鑑届などの提出を求められることがあります。名義と入札参加資格の登録内容がずれていると、システム上で弾かれる原因になります。

落札後の契約締結:LGWAN-ASPと電子契約の関係

落札・選定のあとは契約書の締結です。ここで使われるのが、発注機関が導入している電子契約の仕組みです。自治体の場合、庁内のネットワークである総合行政ネットワーク(LGWAN)から利用できるASPサービス、いわゆるLGWAN-ASPとして提供される電子契約サービスを使っている例があります。この場合、自治体職員はLGWAN側で操作し、事業者はインターネット側からメールのリンクなどを通じて署名する、という流れになります。

事業者側から見ると、届いたメールのリンクを開き、本人確認の手続きを経て契約内容を確認し、同意・署名する、という操作になることが多いです。自社で契約している電子契約サービスのアカウントは基本的に使いません。「当社は別のサービスを使っているので、そちらで送ってほしい」という要望は、発注機関の規則や運用上、通らないことが一般的だと考えておきましょう。

電子署名の方式には、契約当事者自身の電子証明書で署名する当事者型(事業者署名型)と、サービス提供事業者が利用者の指示に基づいて署名する立会人型があります。どちらを採用しているかは発注機関によって異なり、当事者型を求められる場合は事業者側にも電子証明書の準備が必要になります。どちらの方式かは、契約担当部署からの案内や、発注機関が公開している電子契約の手引きに記載されていることが多いので、落札の連絡を受けた段階で確認してください。

事業者側の準備手順:いつ・何を・どこに

時系列で整理すると、まず入札参加資格審査の申請です。国の機関であれば統一資格、自治体であれば各団体(または共同受付窓口)への申請となり、受付期間が決まっていることがあります。ここで登録した商号・所在地・代表者名が、以後の電子入札や電子契約の名義の基準になります。登記内容を変更したときは、資格の登録内容も速やかに更新しておきます。

次に、電子入札を使う機関であれば電子証明書の取得と利用者登録です。必要なものは、発注機関が指定する認証局への申込書類、法人の登記事項証明書や印鑑証明書など本人確認のための書類が一般的です。取得後は、パソコン環境の設定と動作確認まで済ませ、練習用の環境が用意されている場合は事前に操作を試しておくと当日の不安が減ります。

そして落札後です。契約担当部署から電子契約での締結について案内があったら、(1)どのサービスを使うか、(2)署名する人のメールアドレスと役職名、(3)締結後の契約書データの受け取り方法、の三点を最初に確認します。署名するメールアドレスは、代表者本人か、社内規程で権限を与えられた方のものにそろえておくと、後の内部監査でも説明しやすくなります。

締結が済んだら、契約書の電子データをダウンロードして自社側でも保管します。相手方のシステム上に残っているから大丈夫、と考えず、自社の保管ルールに沿って保存してください。電子取引データの保存については電子帳簿保存法の考え方が関わりますので、保存方法の具体的な要件は国税庁の資料を確認するか、顧問税理士に相談すると安心です。

よくあるつまずきと、その場での対処

ひとつ目は名義のずれです。入札参加資格に登録した代表者名と、電子証明書の名義、契約書に記載する代表者名が一致しないと差し戻しになります。代表者の交代や商号変更があったときは、登記の変更と合わせて、資格登録・電子証明書・社内の契約管理台帳の三か所を更新する、とセットで覚えておくと漏れにくくなります。

ふたつ目は社内の決裁との順番です。電子契約は署名ボタンを押した時点で締結になるため、紙のように「押印前に回覧」というワンクッションが入りません。押す前に社内承認を終えておく運収にし、誰が署名者になるかをあらかじめ決めておきます。ひとり社長の会社でも、契約書の内容を読み切る時間を確保しておきましょう。

三つ目は印紙と原本の扱いです。電子的に作成・交付された契約書について、印紙税の取扱いは紙の文書と異なる考え方が示されていますが、個別の契約が課税文書に当たるかどうかは内容によって判断が分かれます。「電子なら不要」と自己判断せず、金額の大きい契約や継続的な取引の基本契約については、税理士や所轄の税務署に確認することをおすすめします。

四つ目は、電子契約に対応していない発注機関がまだあることです。この場合は紙の契約書に記名押印し、収入印紙の貼付が必要になることもあります。案件ごとに紙と電子が混在する前提で、契約書の保管場所を「紙は書庫、電子は共有フォルダ」と分けたうえで、どこに何があるかを一覧できる台帳を作っておくと管理が楽になります。

自社で電子契約サービスを選ぶときの見方

官公庁案件は発注機関のサービスに合わせるのが基本ですが、民間取引も含めて自社で電子契約サービスを導入する場合は、選び方の基準を決めておくと比較が早くなります。まず見るのは、当事者型の署名(自社の電子証明書を使った署名)に対応しているかどうかです。取引先から当事者型を求められる可能性がある会社は、この点を最初の分岐にします。

次に、締結済みデータのエクスポートのしやすさです。サービスを乗り換えたときや、監査・調査で提出を求められたときに、まとめて取り出せるかは実務で効いてきます。あわせて、電子帳簿保存法の電子取引データ保存に沿った検索や保存の機能があるか、公式サイトの説明を確認してください。

そのうえで、社内で署名できる人を制限する権限設定、テンプレート機能、他システムとの連携などを、自社の契約件数に照らして必要かどうか判断します。料金体系や機能は改定されることがあるため、各社の公式サイトで最新の情報を確認したうえで比較してください。無料で試せる範囲がある場合は、実際に一件通してみると操作感が分かります。

迷ったら専門家に相談を

官公庁・自治体との契約は、入札参加資格、契約約款、履行の確認方法など、民間取引とは異なるルールが重なります。契約条項の解釈や、下請け・再委託の可否といった法務面で迷ったときは弁護士に、契約書の電子データの保存方法や印紙税の取扱いについては税理士に確認すると、判断の根拠が残せます。

また、商号変更や代表者変更にともなう登記手続きは司法書士の領域です。登記が遅れると入札参加資格や電子証明書の更新にも影響しますので、変更が決まった段階で相談しておくとスムーズです。制度の要件そのものは所管官庁や発注機関の公表資料が一次情報になりますので、まずそちらを確認し、自社に当てはめる部分を専門家と詰めていく進め方が現実的です。

よくある質問

電子入札と電子契約は同じものですか?

別の仕組みです。電子入札は発注機関の入札システムで応札する手続き、電子契約は落札後に契約書を電子的に締結する手続きを指します。入札は電子でも契約は紙、という運用の機関もあるため、案件ごとに公告や契約担当部署への確認が必要です。

自治体の電子契約に、自社が使っている電子契約サービスを指定できますか?

多くの場合、発注機関が導入しているサービス(LGWAN-ASPとして提供されるものを含む)を使うことになり、事業者側からの指定は難しいと考えておくのが無難です。事業者はメールのリンクから署名する形が一般的で、自社アカウントは使いません。詳細は契約担当部署にご確認ください。

入札用の電子証明書は、どこで取得すればよいですか?

発注機関が指定する認証局が発行するICカード型の電子証明書か、法務局で取得する商業登記電子証明書が使われることが多いです。使える証明書は機関によって異なるため、参加したい機関の電子入札ポータルで指定を確認し、取得に日数がかかる前提で早めに申し込んでください。

電子契約で締結した官公庁との契約書は、どう保管すればよいですか?

相手方のシステム上に残るとしても、自社でもデータをダウンロードして保存しておくことをおすすめします。電子取引データの保存には電子帳簿保存法の考え方が関わるため、具体的な保存方法は国税庁の資料を確認するか、税理士に相談すると安心です。

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