就業規則の年次有給休暇の規定例|5日取得義務と時間単位の書き方

・採用・労務・会社のはじめかた編集部(監修:田中 祐介)

従業員を雇ったら、就業規則に年次有給休暇の規定を置くことになります。とはいえ「法律どおりに書く」と言われても、付与日数の表をそのまま写せばよいのか、年5日の取得義務はどう書くのか、時間単位で使わせるには何が必要なのか、迷うところが多いはずです。この記事では、規定に必要な要素を順番に並べ、条文の書き方のイメージと、自社で決められる部分・決められない部分の線引きを整理します。

この記事の結論

  • 就業規則の年次有給休暇の規定は、①付与日数②請求手続と時季変更権③年5日の時季指定④繰越と時効⑤賃金の計算方法、の5点を押さえると形になります。
  • 年10日以上付与される従業員には使用者が年5日の時季指定を行う義務があり、時季指定の対象者と方法を就業規則に定めておく必要があるとされています。
  • 時間単位の年次有給休暇は、労使協定を結んだうえで就業規則にも定めることが前提となり、協定なしに就業規則だけで導入することはできないと整理されています。

就業規則の有給休暇の規定は、何と何を書けばいいのか

年次有給休暇は労働基準法で内容がかなり細かく決まっているため、就業規則で自由に設計できる範囲は限られます。まず書くべきは、付与の要件と日数、請求の手続、使用者の時季変更権、年5日の時季指定、繰越と時効、休暇中の賃金の計算方法です。この6つが揃っていれば、条文としての骨格は整います。

加えて、自社で導入する場合だけ書き足すのが、計画的付与(計画年休)、時間単位年休、半日単位の取得、退職時の残日数の扱いといった項目です。導入しないなら書かなくてよい一方、導入するなら就業規則への記載が前提になるものがあります。

就業規則は、常時10人以上の労働者を使用する事業場では作成と労働基準監督署への届出が求められます。人数がそれ未満でも、休暇のルールを文書で共有しておくと、入社後のトラブルを減らしやすくなります。

年次有給休暇の付与日数と基本条文の記載例

基本となる条文は、次のような形が一般的です。「第◯条(年次有給休暇)1 雇入れの日から6か月間継続勤務し、所定労働日の8割以上出勤した従業員に対しては、10日の年次有給休暇を付与する。2 前項の日以後1年ごとに、所定労働日の8割以上出勤した従業員に対し、法令に定める日数の年次有給休暇を付与する。」というものです。

勤続年数ごとの日数は法令で決まっているため、条文に表を載せる方法と、「法令に定める日数」とまとめて書く方法の両方があります。表を載せると従業員に分かりやすい反面、法改正時に規則の改定が必要になります。従業員が少なく改定の手間を抑えたい会社は後者、説明資料として使いたい会社は前者、という選び方ができます。

週の所定労働日数が少ないパートタイマーには、比例付与という仕組みがあります。パートを雇う予定があるなら「所定労働日数が通常の従業員より少ない従業員については、法令に定めるところにより比例した日数を付与する」といった一文を入れておくと、後から個別対応に困りにくくなります。具体的な日数表は厚生労働省の資料で確認してください。

請求手続と時季変更権をどう書くか

有給休暇は従業員が時季を指定して取得するものなので、就業規則には申請の方法と期限を書きます。「年次有給休暇を取得しようとする従業員は、原則として取得しようとする日の◯日前までに所定の方法により会社に届け出るものとする」といった形です。期限は業務の引き継ぎに必要な日数を目安にし、長すぎる設定は避けたほうが無難です。

続けて時季変更権を置きます。「会社は、事業の正常な運営を妨げる場合には、従業員が指定した時季を変更することがある」という条文です。ここで注意したいのは、時季変更権は取得そのものを拒否する権限ではなく、別の日に振り替えてもらうための規定だという点です。運用で拒否に近い使い方をすると争いになりやすいため、判断に迷う場面は社会保険労務士に相談してください。

急な体調不良で当日連絡になるケースをどう扱うかも、あらかじめ決めておくと現場が動きやすくなります。「やむを得ない事由により事前の届出ができなかった場合は、会社が認めたときに限り事後の届出を認めることがある」といった書き方で、会社の裁量を残しつつ現実に合わせる方法があります。

年5日の取得義務(時季指定)の記載例

年10日以上の年次有給休暇が付与される従業員については、使用者が時季を指定して年5日を取得させる義務があるとされています。就業規則には、対象者と指定の方法を定めておきます。記載例は「第◯項 会社は、年次有給休暇が10日以上付与される従業員に対し、付与日から1年以内に、当該従業員の意見を聴いたうえで、時季を指定して5日の年次有給休暇を取得させる。ただし、従業員が自ら取得した日数および計画的付与により取得した日数は、当該5日から控除する」といった形です。

運用の順番としては、まず従業員自身の申請に任せ、付与日から半年ほど経った時点で取得状況を確認し、5日に届かない見込みの人にだけ会社から候補日を示す、という流れが管理しやすいでしょう。年度末にまとめて指定すると業務が回らなくなりがちです。

年次有給休暇管理簿の作成と一定期間の保存も求められます。人数が少ないうちは表計算ソフトでも足りますが、付与日が入社日ごとにばらつくと管理が煩雑になるため、勤怠管理サービスの利用を検討する会社もあります。サービスの料金や機能は各社の公式サイトで最新の情報を確認してください。

時間単位年休・半日年休・計画的付与を入れるときの書き方

時間単位の年次有給休暇は、労使協定を結んだうえで就業規則にも定めることが前提になります。協定で決めるのは、対象となる従業員の範囲、年に取得できる日数の上限(法令上は5日の範囲内とされています)、1日分を何時間に換算するか、1時間以外の単位で取得させる場合のその単位です。就業規則側は「労使協定に定めるところにより、年次有給休暇を時間単位で取得させることがある」と受ける形が簡潔です。

半日単位は、法令上の義務ではなく労使の合意で運用されるものとして扱われています。導入するなら「従業員が希望し、会社が認めた場合には、半日単位で取得させることがある」と書き、午前・午後の区切りを明記しておくと運用でぶれません。時間単位と半日単位のどちらを先に入れるか迷ったら、通院や子どもの送迎など短時間の離席が多い職場は時間単位、シフトが半日で区切れる職場は半日単位から検討するとよいでしょう。

計画的付与は、付与日数のうち5日を超える部分について、労使協定で取得日をあらかじめ決める仕組みです。全社一斉に休む日を作りたい場合に使われます。こちらも労使協定が前提なので、就業規則では協定に委ねる書き方にしておくと改定の手間が減ります。

「理由」を書かせてよいか、「有給休暇がない」会社はどうなるか

申請書に取得理由の欄を設けること自体は多くの会社で行われていますが、理由によって取得の可否を判断するような運用は、争いのもとになりやすいとされています。就業規則に「理由を明記しなければ取得できない」と書くのは避け、記載させる場合も「時季変更権の判断のための参考として差し支えない範囲で記入を求めることがある」といった位置づけにとどめる方が安全です。判断に迷う場合は社会保険労務士や弁護士に確認してください。

「うちは有給休暇がない」という言い方を耳にすることがありますが、年次有給休暇は法令上の要件を満たせば発生するもので、就業規則に書いていないから発生しない、という関係ではありません。規定がないまま人を雇っている場合は、早めに条文を整えることをおすすめします。ひとり社長で従業員がいない段階なら急ぎませんが、最初の採用の前に準備しておくと慌てずに済みます。

退職時の残日数の扱いも、あらかじめ決めておきたい項目です。買い上げは原則として想定されていない一方、法定日数を超える部分など例外的に認められる場合もあると整理されています。自社のケースが当てはまるかどうかは、社会保険労務士に相談して判断してください。

作成の手順と、専門家に相談したほうがよい場面

手順としては、まず厚生労働省が公開しているモデル就業規則を土台に、自社の所定労働日・シフト・申請方法を当てはめて下書きを作ります。次に、時間単位年休や計画的付与を入れるなら労使協定の案も同時に用意します。そのうえで従業員代表の意見書を添え、常時10人以上の事業場であれば所轄の労働基準監督署へ届け出ます。

届出の後は、従業員がいつでも見られる場所に置く、社内の共有フォルダに置くなど、周知の方法まで決めて実行します。作っただけで共有していないと、規則として機能しにくくなります。

年次有給休暇は、付与日の管理、パートの比例付与、時季指定義務の運用など、文章にすると短くても実務では判断が分かれる場面が多い分野です。自社の規定が法令に沿っているか不安がある場合や、シフト制で付与日の管理が複雑な場合は、社会保険労務士に就業規則のチェックを依頼することを検討してください。労使協定の作成や、既存の規則の改定手続についても相談できます。

よくある質問

従業員が数人しかいなくても、就業規則に有給休暇を書く必要がありますか。

常時10人以上の事業場では就業規則の作成・届出が求められますが、それ未満でも年次有給休暇は法令上の要件を満たせば発生します。人数にかかわらず、付与日数や申請方法を文書で共有しておくと運用しやすくなります。

就業規則に「有給休暇は取得できない」と書くことはできますか。

法令で定められた年次有給休暇を就業規則で打ち消すことはできないと整理されています。法令を下回る内容を定めた部分は効力が認められないため、規定を作る際は社会保険労務士に確認してください。

時間単位年休は就業規則に書くだけで導入できますか。

時間単位年休は労使協定の締結が前提とされており、就業規則の記載だけでは導入できません。協定で対象者・上限日数・1日あたりの時間数などを定め、就業規則は協定に委ねる形にするのが一般的です。

年5日の時季指定は、いつ誰に対して行えばよいですか。

年10日以上付与される従業員が対象で、付与日から1年以内に5日取得させる形で行います。実務では付与から半年ほど経った時点で取得状況を確認し、不足しそうな人に会社から候補日を示す流れが管理しやすいでしょう。

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