就業規則を雇用区分で分けるか|正社員の定義と契約社員の規定

・採用・労務・会社のはじめかた編集部(監修:田中 祐介)

就業規則をつくるとき、多くの会社が最初につまずくのが「誰に適用するのか」という部分です。正社員だけのつもりで書いた規則が、そのまま契約社員やパートにも適用されてしまい、あとで賞与や退職金の扱いでもめる——これは小さな会社で起きやすい事故です。この記事では、雇用区分ごとに就業規則を分けるかどうかの判断基準と、正社員の定義の書き方、そこから届出・周知までの流れを、順番に整理します。

この記事の結論

  • 就業規則は雇用区分ごとに分けることも一本にまとめることもできますが、正社員と契約社員・パートで労働条件が異なるなら、適用範囲を明記したうえで別規程にするか、区分ごとの特則を設けるのが実務的です。
  • 正社員の定義は「無期雇用であること」「所定労働時間がフルタイムであること」「勤務地や職務の限定がないこと」など、他の区分と区別できる要素を組み合わせて条文に書きます。
  • 適用範囲の条項が抜けていると、正社員向けに書いた賞与や退職金の規定が他の区分にも及ぶと解釈されるおそれがあるため、作成時にまず確認すべきポイントです。

就業規則を正社員と契約社員で分けるべきか、まずどこを見るか

判断の出発点はひとつです。正社員と契約社員・パートで、労働条件に違いがあるかどうか。賞与、退職金、手当、休職制度、所定労働時間、契約期間のいずれかに差があるなら、同じ条文をそのまま全員に当てはめることはできません。差があるのに一本の規則で済ませると、書いてある条件が全員に適用されると受け取られるリスクが残ります。

逆に、雇用区分が実質的に正社員しかない、あるいは労働条件がほぼ同じという会社なら、無理に分ける必要はありません。この場合は一本の就業規則に「この規則は当社の従業員に適用する」と定め、例外がある部分だけ条文の中で書き分ければ足ります。

迷ったら、次の順に確認してください。①契約期間に定めのある人がいるか、②所定労働時間が短い人がいるか、③賞与・退職金の有無が区分で違うか。ひとつでも当てはまるなら、適用範囲を明示したうえで、区分ごとの規程または特則を用意する方向で考えます。

就業規則の適用範囲(対象)は、どう書けばよいか

就業規則の冒頭近くには、総則として適用範囲の条項を置きます。典型的な書き方は「この規則は、第◯条に定める正社員に適用する」「契約社員、パートタイマーについては別に定める規程による」という二段構えです。ここで「別に定める」と書いた以上、その別規程を実際に作らないと、何も定めのない状態になってしまう点に注意してください。

別規程をまだ作れない場合は、暫定的に「本規則を準用する。ただし、賞与、退職金および◯◯手当については適用しない」といった形で、準用と除外を明記する方法もあります。空白のまま放置するより、どの条文が適用され、どの条文が適用されないかをはっきりさせるほうが、後々の説明が楽になります。

役員や業務委託の人は労働者にあたらないため、就業規則の対象外です。ただし、実態として指揮命令を受けて働いている場合は労働者と扱われることがあります。線引きに不安があるときは、社会保険労務士に実態を見てもらうと安心です。

正社員の定義は就業規則にどう書くか

正社員という言葉は法律上の用語ではなく、各社が自社で定義するものです。だからこそ、就業規則に定義を書いておかないと「正社員に適用する」と書いても誰のことか確定しません。定義に使う要素は主に三つ、契約期間、所定労働時間、勤務地や職務の限定の有無です。

条文の一例としては、「正社員とは、期間の定めのない労働契約を締結し、第◯条に定める所定労働時間をすべて勤務する者であって、勤務地および職務内容に限定のない者をいう」といった形です。勤務地限定の社員や短時間の無期社員を置く予定があるなら、その区分も別に定義しておくと、あとから制度を足すときに整理しやすくなります。

あわせて、契約社員は「期間の定めのある労働契約を締結した者」、パートタイマーは「正社員より所定労働時間が短い者」と定義し、区分が重ならないようにします。無期転換によって契約期間の定めがなくなった人がどの区分に入るのかも、定義のどこかで触れておくと、実務での迷いが減ります。

契約社員・パートの規定で、特に決めておきたい項目

契約社員規程で欠かせないのは、契約期間と更新の扱いです。更新の有無、更新する場合の判断基準(勤務成績、業務量、会社の経営状況など)、通算での上限を設けるかどうかを書いておきます。無期転換の申込みがあった場合の取り扱いについても、どの区分の労働条件になるのかを定めておくと運用が明確になります。

次に、正社員と差を設ける項目です。賞与、退職金、各種手当、慶弔休暇、休職制度などは、区分ごとに適用の有無を明記します。ここで大切なのは、差があること自体ではなく、その差に説明がつくかどうかです。職務の内容や責任の程度、配置変更の範囲といった違いに基づいて説明できるよう、人事制度と規定を揃えておきます。

短時間・有期雇用で働く人の待遇差については、求められたときに説明することが法令上想定されています。制度設計の妥当性に不安があるときは、規程を作る段階で社会保険労務士に相談し、説明できる形になっているかを確認しておくとよいでしょう。

作成から届出・周知まで、何をどの順で進めるか

手順はシンプルです。まず、自社の雇用区分を洗い出し、区分ごとの労働条件を一覧にします。次に、正社員就業規則の本体を作り、適用範囲と正社員の定義を先に固めます。そのうえで、契約社員規程・パートタイマー規程を作るか、本体に特則を置くかを決めます。給与規程や育児介護休業規程を別冊にする場合も、本体から参照する条文を忘れずに入れてください。

常時一定人数以上の労働者を使用する事業場では、就業規則の作成と所轄の労働基準監督署への届出が求められるとされています。届出の際には、労働者の過半数で組織する労働組合、またはそれがない場合は労働者の過半数を代表する者の意見書を添えます。契約社員やパートも含めた全労働者から代表を選ぶ必要がある点は、見落とされやすいところです。届出の様式や部数は、所轄の労働基準監督署の案内で確認してください。

最後が周知です。書面の交付、社内の見やすい場所への掲示、共有フォルダやクラウドへの保存など、従業員がいつでも見られる状態にします。周知されていない規則は効力が認められにくいと考えられているため、作って届け出て終わりにしないことが大切です。変更したときも、同じ流れで意見聴取・届出・周知を行います。

ありがちなつまずきと、その回避のしかた

よくあるのが、テンプレートをそのまま使って適用範囲の条項を空欄のまま残してしまうケースです。この状態だと、正社員向けの退職金や賞与の条文が全員に及ぶと解釈される余地が生まれます。ダウンロードした雛形を使うときは、最初に総則の適用範囲と定義条項を自社仕様に書き換えてください。

もうひとつは、規程を分けたものの、内容が古いまま片方だけ改定されていくパターンです。法改正や制度変更のたびに、正社員規則だけ直して契約社員規程を忘れる、という事態は起こりがちです。規程の一覧表を作り、最終改定日を記録しておくと管理が楽になります。

三つめは、実態と規定のずれです。規程上はフルタイム無期を正社員としているのに、実際には短時間勤務の無期社員がいる、といった状態は説明が難しくなります。年に一度は、在籍者が規程上のどの区分に当てはまるかを棚卸ししておきましょう。判断に迷う人が出てきたら、その時点で社会保険労務士に相談し、区分の定義や規程の建て付けを見直すことをおすすめします。

よくある質問

就業規則は正社員と契約社員で必ず分けなければいけませんか。

分けること自体が法令で求められているわけではありません。ただし労働条件に違いがあるなら、適用範囲を明記したうえで別規程にするか、本体の中に区分ごとの特則を設ける形が実務的です。どちらの方式でも、どの人にどの条文が適用されるかが読み取れることが重要です。

正社員の定義は就業規則のどこに書けばよいですか。

総則の適用範囲の条項とセットで、規則の前半に定義条項を置くのが一般的です。期間の定めのない契約であること、所定労働時間、勤務地や職務の限定の有無といった要素を組み合わせ、他の区分と重ならないように書きます。

パートタイマーにも就業規則は適用されますか。

パートタイマーも労働者ですので、就業規則の対象になります。別規程があればそちらが適用され、なければ本体の規則が適用されると解釈されることがあります。適用関係があいまいな場合は、準用するのか除外するのかを条文で明示してください。

別規程を作ったら、それも労働基準監督署に届け出る必要がありますか。

契約社員規程やパートタイマー規程も就業規則の一部として扱われるため、届出の対象になると考えられます。意見聴取や添付書類の扱いを含め、具体的な手続きは所轄の労働基準監督署の案内を確認するか、社会保険労務士にご相談ください。

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