シェアオフィスの契約形態と契約書|転貸や利用規約で確認する条項
シェアオフィスを申し込むとき、渡される書面が「賃貸借契約書」ではなく「施設利用契約書」や「会員規約」になっていて、戸惑う方は少なくありません。名前が違うだけに見えて、実は解約のしやすさ、登記の可否、退去時の扱いまで変わってきます。この記事では、シェアオフィスの契約形態の見分け方と、契約書・利用規約のどこを順に読めばよいかを整理します。
この記事の結論
- シェアオフィスの契約は賃貸借契約ではなく「施設利用契約(会員契約)」の形をとることが多く、借地借家法の保護が前提にならない場合があるため、契約書と利用規約の両方を読む必要があります。
- 契約書は、契約期間と自動更新、解約予告の期間、法人登記の可否、住所利用と郵便物の扱い、値上げ・規約変更の条項、という順に確認すると漏れが減ります。
- 運営会社が建物のオーナーでない場合は転貸(また貸し)の構造になるため、元の賃貸借が終了したときに利用者の利用がどうなるかを契約書で確認しておくと安心です。
シェアオフィスの契約形態は何種類ある?まず自分がどれかを見分ける
シェアオフィスで結ぶ契約は、大きく分けて三つの形に整理できます。一つ目は、区画を特定して貸す「賃貸借契約」。二つ目は、施設やスペースを使う権利を得る「施設利用契約・サービス提供契約」。三つ目は、住所と郵便受け取りが中心の「住所利用契約(いわゆるバーチャルオフィス型)」です。実務では、二つ目の施設利用契約の形をとる施設が多く見られます。
見分け方はシンプルで、書面の表題ではなく中身を見ます。特定の部屋番号や区画が明記され、専有して使えると書かれていれば賃貸借に近い性質、席や設備を「利用できる」という書き方で区画が特定されていなければ施設利用契約に近い性質、と読めます。個室タイプでも、運営側が部屋の変更をできると定められていれば、専有を前提にしていない可能性があります。
この違いが効いてくるのは、契約を続けたいのに運営側から終了を告げられた場面です。賃貸借であれば借地借家法の考え方が関わることがありますが、施設利用契約ではその前提にならない場合があります。長く同じ住所で事業を続けたいなら、契約形態は申し込み前に運営会社へ確認しておきたい点です。
契約書と利用規約はセットで読む|どちらが優先するかを先に確認
シェアオフィスでは、個別の契約書(申込書)と、共通の利用規約・館内ルールの二本立てになっていることがよくあります。料金や期間は契約書に、禁止事項や設備の使い方、免責は規約に書かれている、という分かれ方です。契約書だけ読んで申し込むと、後から規約側の制限に気づくことになりがちです。
最初に探すのは「本契約と規約の内容が異なる場合はどちらが優先するか」という条項です。あわせて「規約は運営会社が変更できる」とだけ書かれていないか、変更するときに事前の通知や周知があるか、変更に応じられない場合に解約できるか、も見ておきます。ここが緩いと、入居後に条件が変わったときに動きにくくなります。
申し込み時には、契約書の控え、利用規約、料金表、館内ルールの四点を、PDFなどの形でまとめて手元に保管しておくことをおすすめします。更新や解約の相談をするとき、この四点があるかどうかで話の進み方が変わります。
契約書で確認する条項を、この順に見る
読む順番を決めておくと漏れません。まずは①契約期間と自動更新の有無、②解約予告の期間と方法(書面かオンラインか)、③中途解約できるか、できる場合の扱い。短期で試したい方は、最低利用期間の定めがないかをここで押さえます。
次に④料金の改定条項です。「運営会社が改定できる」とある場合、事前に通知があるか、通知後に解約できるかを確認します。⑤保証金・預り金の返還時期と、原状回復や清掃に関する定め。⑥設備の停止やメンテナンスによる利用停止があったときの扱い、⑦情報漏えい・盗難・郵便物の紛失などに関する免責の範囲。共用空間である以上、免責が広めに定められていることは珍しくないので、自社のリスク許容度と照らして判断します。
最後に⑧法人登記と住所利用、⑨来客・郵便・電話の取り扱い、⑩契約終了後に住所を使えなくなる時期、という運用面です。特に⑩は、退去後に登記や名刺の住所をいつまでに変えるかというスケジュールに直結します。なお「シェアオフィス 契約書 テンプレート」を探して自作しようとする方もいますが、契約書は通常、運営会社側が用意したものに署名する形です。テンプレートを探すより、示された契約書を上記の順に読むほうが実益があります。
転貸(また貸し)の構造になっていないかを確認する
シェアオフィスの運営会社が、その建物の所有者とは限りません。運営会社がビルオーナーから一棟または一フロアを借り、それを会員に使わせている構造であれば、実質的に転貸に近い形になります。この場合に気をつけたいのは、運営会社とオーナーの間の契約が終了したとき、利用者の利用がどうなるかという点です。
契約書に、運営会社が建物を使用する権原を失った場合の取り扱い、その際の通知期間、代替拠点の案内の有無などが書かれているかを見ます。書かれていなければ、申し込み前に「建物の所有者から借りて運営しているのか」「その場合、元の契約が終わったときはどうなるのか」を質問しておくとよいでしょう。答えを避けられる場合は、その姿勢自体が判断材料になります。
また、自分が借りた個室を第三者に使わせる「利用者側の転貸」は、多くの契約で禁止または事前承諾制になっています。グループ会社や業務委託先に席を使わせたい、法人登記だけ関連会社に使わせたい、といった予定がある方は、契約前に条項を確認し、必要なら書面で承諾を得ておく形が安全です。
法人登記に使う場合に、契約前後でやること
登記の本店所在地としてシェアオフィスの住所を使いたい場合、まず契約書か規約に「法人登記可」と明記されているかを確認します。プランによって可否が分かれることや、別途の申請・追加の手続が必要なことがあります。可否が書面で確認できないまま登記を進めると、後で住所変更が必要になることもあります。
流れとしては、①申し込み前に登記利用の可否と条件を確認、②契約成立後に運営会社から住所利用の承諾が得られる形を整える、③会社設立であれば定款や設立登記の書類に住所を記載し、法務局へ申請、という順です。すでに設立済みで本店を移す場合は、株主総会や取締役の決定など社内手続を経てから、法務局へ本店移転の登記を申請します。登記の要否や書類は状況で変わるため、司法書士に確認すると確実です。
あわせて、税務署や都道府県・市区町村への届出、金融機関の口座、許認可の届出住所も、登記の住所と揃える必要があります。なお、許認可業種では、事務所の独立性や専有性が求められることがあり、共用スペース中心のシェアオフィスでは要件を満たさないと判断される場合があります。該当しそうな業種の方は、申し込み前に所管の窓口へ確認してください。
申し込みから利用開始までの手順と、迷ったときの判断基準
手順はおおむね次の通りです。①内見または見学(時間帯を変えて二回見ると混雑がつかめます)、②プランと契約形態の確認、③契約書・利用規約・料金表の受領と読み込み、④登記や転貸など個別に必要な条件の質問、⑤申し込み(本人確認書類、法人であれば登記事項証明書などを求められることがあります)、⑥審査・契約締結、⑦利用開始と初期設定(入館証、郵便の受け取り方法、Wi‑Fi、住所表記のルール)。料金やプランの内容は施設ごとに異なるため、各社の公式サイトや窓口で最新の条件を確認してください。
迷ったときの判断の順番も決めておきましょう。まず「何年そこにいたいか」。二年以上その住所で腰を据えたいなら、契約形態と終了条項の安定性を最優先にします。次に「住所を外に出すか」。登記や名刺、Webサイトに出すなら、登記可否と契約終了後の住所利用期限を重視します。最後に「人が増える見込みがあるか」。増える可能性が高いなら、席の追加やプラン変更が契約上どう扱われるかを確認します。
短期で軽く始めたい、当面ひとりで動く、という場合は、解約予告が短く、最低利用期間の縛りが緩い契約が向きます。逆に、来客が多い、機密性の高い資料を扱う、というときは、専有性と施錠、免責条項の範囲を見たうえで判断します。条項の意味が読み取れない、リスクの大きさが判断できないというときは、契約前に弁護士に契約書を確認してもらうと安心です。登記の可否や手続については司法書士、経費処理や消費税の扱いについては税理士にご相談ください。
よくある質問
シェアオフィスの契約書は自分でテンプレートを用意する必要がありますか。
通常は運営会社が用意した契約書や申込書、利用規約に同意する形なので、利用者側がテンプレートを作る場面はほとんどありません。テンプレートを探すより、示された書面の期間・解約・登記・免責の条項を順に読むほうが実益があります。内容が読み取りにくいときは弁護士に確認を依頼してください。
シェアオフィスの契約は賃貸借契約ですか。
施設利用契約やサービス提供契約として結ばれることが多く、その場合は建物の賃貸借とは異なる扱いになることがあります。区画が特定され専有できると明記されているかどうかが、見分けの目安になります。契約形態によって更新や終了の考え方が変わるため、申し込み前に運営会社へ確認しておくと安心です。
借りた個室を関連会社や業務委託先に使わせてもよいですか。
多くの契約で転貸や第三者への利用させる行為は禁止、または事前承諾制とされています。予定がある場合は契約前に条項を確認し、必要なら書面で承諾を得る形にしておくと、後のトラブルを避けやすくなります。無断で行うと契約解除の理由とされることがあります。
解約したいとき、いつまでに伝えればよいですか。
解約予告の期間は契約書に定められており、施設によって異なります。予告方法が書面のみか、オンラインの手続でよいかも決まっていることがあるので、契約時に控えておきましょう。契約終了後に住所を使えなくなる時期も、登記や名刺の変更スケジュールに関わるため合わせて確認してください。