慶弔休暇・忌引休暇の規定例|日数と対象範囲の決め方

・採用・労務・会社のはじめかた編集部(監修:田中 祐介)

身内に不幸があった、社員が結婚する——そのときに「うちは何日休めるんですか」と聞かれて、答えが決まっていない会社は少なくありません。慶弔休暇・忌引休暇は法律で日数が決まっている休暇ではなく、会社が自分で設計する休暇です。だからこそ、先に書いておかないと、そのつど社長の判断になり、後から「あの人のときは違った」という不公平感が残ります。この記事では、対象範囲・日数・有給か無給か、という決める順番と、就業規則にそのまま落とし込める条文の考え方を整理します。

この記事の結論

  • 慶弔休暇・忌引休暇は労働基準法で義務づけられた休暇ではなく、会社が就業規則で内容を自由に決める「法定外(特別)休暇」です。
  • 決める順番は「①対象となる親族の範囲 ②関係ごとの日数 ③有給か無給か ④申請と証明の方法」の4つで、この順に決めると条文が書けます。
  • 就業規則に日数と範囲を書いた以上は労働条件になるため、その都度の例外運用ではなく、規定どおりに運用できる水準で決めることが大切です。

慶弔休暇・忌引休暇は就業規則に定めないといけない?

結論から言うと、慶弔休暇や忌引休暇は労働基準法で付与が義務づけられている休暇ではありません。年次有給休暇のように日数が法律で決まっているものではなく、会社が独自に設ける「法定外休暇(特別休暇)」にあたります。つまり、制度を設けない選択も、設ける場合の日数も、会社側で設計できます。

ただし、制度を設けるのであれば、就業規則に書いておくのが基本です。休暇に関する事項は就業規則の記載事項とされており、常時一定人数以上の労働者を使用する事業場では就業規則の作成・届出が求められます。人数が少なく作成義務がない段階でも、慶弔休暇のように感情が絡む場面のルールこそ、文書にしておくと運用が楽になります。

注意したいのは、いったん就業規則に書くと、それは労働条件の一部になるという点です。後から日数を減らす、対象範囲を狭めるといった変更は、労働条件の不利益変更の問題になり得ます。最初から「毎年これなら続けられる」という水準で決めておき、足りない分は個別の配慮として上乗せするほうが、運用は安定します。

決める順番は4つ|範囲 → 日数 → 有給か無給か → 申請方法

慶弔休暇の規定づくりで迷うのは、たいてい「何日にするか」から考え始めるからです。先に決めるべきは対象範囲です。忌引であれば、どの親族の不幸を対象にするのか。慶事であれば、本人の結婚だけか、子の結婚も含めるのか。範囲が決まると、日数は「関係の近さの順に並べる」だけで自然に決まります。

次に日数、そして有給(賃金を支払う)か無給(賃金を支払わない)かを決めます。慶弔休暇を有給扱いにするか無給にするかも会社の判断です。有給扱いにする場合は、その日の賃金をどう計算するか(通常の勤務をしたものとして扱うのか)まで書いておくと、給与計算で迷いません。

最後に申請方法です。いつまでに、誰に、何で申請するのか。急な訃報では事後申請にならざるを得ないので、「やむを得ない場合は事後の届出を認める」と一文入れておきます。この4つが決まれば、条文はほぼ書けたようなものです。

忌引休暇の対象範囲と日数の決め方|祖父母はどう扱う

忌引の範囲は、親等で線を引くのが分かりやすい方法です。配偶者・父母・子を一番近い区分、祖父母・兄弟姉妹・孫を次の区分、おじおばなどをさらに外側、という三段階にすると整理できます。配偶者の父母(義父母)を実父母と同じ扱いにするか、一段階下げるかは会社ごとに分かれるところなので、明記しておくと後で揉めません。

「就業規則 祖父母 忌引き」で検索されるように、祖父母の扱いは特に質問が多い項目です。同居していたか、喪主を務めるかで実際の負担は大きく違うため、基本日数を短めに置いたうえで「喪主を務める場合は◯日を加算する」といった加算条項を入れる会社もあります。日数そのものは自由に設定できるので、自社の人員体制で回るかを基準に決めてください。

日数の数え方も書き分けが必要です。暦日で数えるのか、所定労働日のみで数えるのか。休日をまたぐときに日数が実質的に変わってしまうため、どちらかを明記します。あわせて、遠方の場合に往復の移動日を加算するか、連続した取得を原則とするか(分割取得を認めるか)も決めておくと、実務で判断に迷いません。

結婚休暇・出産時の休暇など慶事の決め方

慶事でよく設けられるのは、本人の結婚、子の結婚、配偶者の出産の3つです。本人の結婚休暇は連続取得を原則にしつつ、「入籍日または挙式日から◯か月以内に取得すること」と期限を切るのが一般的な書き方です。期限がないと、入籍から何年も経ってから請求される可能性が残ります。

配偶者の出産にともなう休暇は、育児・介護休業法にもとづく制度(産後パパ育休など)とは別物です。会社独自の休暇として数日を置く場合、法定の制度と混同されないよう、条文上も別条にして「本規則による特別休暇」と分けて書いておくと説明しやすくなります。法定制度の要件は、所管官庁や厚生労働省の資料で最新の内容を確認してください。

再婚の場合に付与するか、事実婚をどう扱うかも、あらかじめ方針を決めておきたいところです。「同一の事由については一回限り」と書くのか、家族の形に幅を持たせるのか。ここは会社の考え方が出る部分なので、迷ったら「回数の上限だけ決めて、範囲は広めに取る」と運用しやすくなります。

就業規則の記載例|そのまま使える条文の骨格

条文は、①趣旨と対象者 ②事由と日数 ③賃金の取扱い ④申請と証明 ⑤その他の取扱い、の順で組み立てます。たとえば第一項で「従業員が次の各号に該当する場合は、申請により特別休暇を与える」と書き、各号で事由と日数を列挙します。各号は「本人の結婚」「配偶者の出産」「配偶者、父母または子の死亡」「祖父母、兄弟姉妹または孫の死亡」といった並びです。

賃金の取扱いは、「本条の休暇は有給とし、所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金を支払う」または「本条の休暇は無給とする」と一文で書きます。有給とする場合でも、パートタイマー等について別の定めを置くなら、その旨を明記します。対象者を正社員に限るのか、契約社員やパートにも適用するのかは、同一労働同一賃金の観点からも説明できる整理が必要です。

申請の条項では、「原則として事前に所定の様式で届け出る。ただし、緊急の場合は事後速やかに届け出るものとする」とし、必要に応じて会葬礼状や死亡診断書の写し、婚姻届受理証明書などの提出を求められる旨を加えます。最後に「本条の休暇は年次有給休暇とは別に付与する」「休暇日数に所定休日を含むかどうか」「期間の途中に会社都合の休日がある場合の取扱い」を補足条項として置くと、実務での質問がほぼ潰せます。

慶弔見舞金は休暇と分けて規定する

慶弔見舞金(結婚祝金、弔慰金、出産祝金など)は、休暇とは別の制度です。就業規則の本体に書き込むより、「慶弔見舞金規程」として別規程にし、就業規則から委任する形にすると、金額の見直しがしやすくなります。金額は会社が決めるものなので、ここでは水準を示しませんが、社内の等級や勤続年数で差を付けるか、一律にするかを先に決めてください。

税務上の取扱いには注意が必要です。社会通念上相当と認められる範囲の慶弔見舞金は課税対象外として扱われることがある一方、金額や支給の仕方によっては給与として扱われることもあります。判断は個別の事情によるため、規程を作る段階で顧問税理士に確認しておくと安心です。

また、支給要件(在籍期間、雇用形態、支給の申請期限、同一事由の重複支給の可否)を書いておかないと、その都度の判断になります。休暇と見舞金の対象範囲をそろえておくと、社員にとっても分かりやすく、案内も一枚で済みます。

作ったあとの運用|周知・記録・見直しの手順

就業規則や規程は、作って終わりではありません。作成義務がある事業場では、労働者代表の意見書を添えて所轄の労働基準監督署に届け出ます。届出の有無にかかわらず、社内での周知(掲示、書面交付、共有フォルダでの閲覧など)が前提です。慶弔休暇はいざというときに参照される規定なので、どこを見れば書いてあるかを入社時に伝えておきます。

運用では、申請書と証明書類の保管ルールを決めておきます。個人の死亡や家族構成に関わる情報を扱うため、アクセスできる人を限定し、保管期間も定めておくと安全です。給与計算の担当者には、有給扱いの日をどう入力するかを手順として残しておくと、担当が変わっても再現できます。

見直しのタイミングは、人数が増えたとき、雇用形態が増えたとき、そして実際に運用して「規定どおりにできなかった」ときです。例外対応が続くなら、規定のほうが実態に合っていない可能性があります。不利益変更にあたる見直しは慎重な手続きが必要になるため、変更を検討する段階で社会保険労務士に相談し、必要に応じて弁護士の確認も受けてください。制度の細かな要件は所管官庁の最新資料をあわせて確認しましょう。

よくある質問

祖父母が亡くなった場合、忌引休暇は何日にすればいいですか。

法律で日数が決まっているわけではないため、会社が自由に設定できます。配偶者・父母・子より短めに置き、喪主を務める場合や遠方の場合に加算する、という組み立てにしている会社もあります。自社の人員体制で無理なく運用できる日数を基準に決めてください。

慶弔休暇は有給と無給、どちらにすべきですか。

どちらも可能で、会社の判断になります。有給にするなら賃金の計算方法まで条文に書き、無給にするなら年次有給休暇を充てられることを案内すると親切です。雇用形態で扱いを変える場合は、その理由を説明できるように整理しておきましょう。

入社直後や試用期間中の社員にも慶弔休暇を与える必要がありますか。

法定の休暇ではないため、勤続期間で要件を設けることもできますし、入社日から適用することもできます。ただし対象外とする場合は、その旨を就業規則に明記しておかないと、後から解釈が分かれます。パート・契約社員の扱いとあわせて方針を決めておくと整理しやすくなります。

慶弔休暇の日数に土日や祝日は含めますか。

暦日で数えるか所定労働日で数えるかは会社が決める事項なので、就業規則に明記しておくのが確実です。書いていないと、休日をまたぐたびに判断が必要になります。あわせて、連続取得を原則とするか分割を認めるかも記載しておくと運用が安定します。

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