就業規則の附則と施行日の書き方|追記・新旧対照表の作り方

・採用・労務・会社のはじめかた編集部(監修:田中 祐介)

就業規則は、一度つくったら終わりではありません。手当をひとつ増やす、テレワークの条文を足す、休暇の日数を変える——そのたびに「どこに何を書けばいいのか」で手が止まります。悩みどころは、たいてい同じ3つです。附則に何を書くか、施行日をいつにするか、新旧対照表をどう作るか。この記事では、一部改正のときの書き方を、文例と手順の順番で整理します。

この記事の結論

  • 就業規則を一部だけ変えるときは、本文の該当条文を書き換えたうえで、末尾の附則に「この規則は◯年◯月◯日から施行する」と改正附則を追加するのが基本の形です。
  • 施行日は、労働者への周知が終わり、所轄の労働基準監督署への届出の準備が整う日以降に設定するのが無難で、賃金や休暇に関わる変更は賃金計算期間や年度の区切りに合わせると運用が楽になります。
  • 新旧対照表は法令上必須の書類ではありませんが、変更前後を左右に並べて改正箇所に下線を引いた表をつくると、意見聴取・届出・社内周知のすべてで同じ資料を使い回せます。

就業規則を一部だけ変えるとき、まず決める3つのこと

就業規則の一部改正で迷ったら、「①本文のどこを直すか」「②附則に何を書くか」「③施行日をいつにするか」の順に決めます。この順番が崩れると、条文は直したのに施行日が書かれていない、附則だけ足して本文が古いまま、といった食い違いが起きます。

①は、変更したい内容が既存の条文の中にあるのか、新しい条文として足すのかを見分けるところからです。たとえば「慶弔休暇の日数を変える」なら既存条文の書き換え、「テレワーク勤務の章を設ける」なら条文の追加になります。②の附則は、いつからこの内容が効くのかを示す札のようなもので、改正のたびに積み上げていきます。

③の施行日は、後から動かすのがいちばん面倒な項目です。先に「この日から」と口頭で社内に伝えてしまうと、意見聴取や周知が間に合わず、辻褄を合わせるために無理が出ます。先に手続きの段取りを引いてから、逆算して日付を決めてください。

附則の書き方|改正附則の文例と、積み上げ方

附則は、就業規則の本文のいちばん後ろに置く、施行や経過措置についての取り決めです。最初に作ったときの附則は「この規則は、◯年◯月◯日から施行する。」の一文で足りることが多く、改正のたびに、その下へ改正附則を追加していきます。

改正附則の基本形は次のとおりです。「附則(◯年◯月◯日改正) この規則は、◯年◯月◯日から施行する。」。改正日と施行日が違う場合は両方を書き分けます。制定時の附則を消して上書きしてしまう例を見かけますが、沿革が追えなくなるので、古い附則は残したまま下に積み上げるのが扱いやすい形です。

経過措置が必要なときは、施行日の一文に続けて書きます。たとえば「ただし、施行日前に発生した事由に基づく◯◯の取扱いについては、なお従前の例による。」のような書き方です。手当の計算方法を変えるときや、休暇の繰越が関わるときは、切り替え前後の扱いを一文足しておくと、あとで「どっちが適用されるのか」でもめにくくなります。

どこまで経過措置を書くべきかの判断は、不利益変更にあたる可能性があるかどうかで変わります。労働条件を下げる方向の改正が含まれる場合は、附則の書き方だけでなく手続きそのものの検討が必要になるため、社会保険労務士に相談しながら進めることをおすすめします。

施行日はいつにする? 遡って適用できるのか

施行日は、「意見聴取 → 届出 → 周知」の段取りが終わる日以降に置くのが基本です。意見書をもらう時間、監督署に出しに行く日、社内に配る日を先にカレンダーに置いて、その先の区切りのよい日を施行日にします。賃金に関わる変更なら賃金計算期間の初日、休暇に関わる変更なら年度の初日に合わせると、計算が二重にならずに済みます。

「もう4月から運用してしまっているので、遡って適用したい」という相談はよくあります。労働者に有利になる変更(手当の新設、休暇の増加など)を遡らせるケースと、不利になる変更を遡らせるケースでは、まったく意味合いが違います。後者は労働条件の不利益変更の問題になり、同意の取り方や合理性の検討が必要になるため、自己判断で遡及の一文を入れるのは避けてください。

有利な変更を遡らせる場合でも、附則には「この規則は、◯年◯月◯日から施行する。ただし、第◯条の改正規定は、◯年◯月◯日から適用する。」のように、施行日と適用日を分けて書く形が使われます。どの書き方が自社の実態に合うかは、変更内容と従業員への説明の経緯で変わります。判断に迷う部分は社会保険労務士に確認しましょう。

新旧対照表の作り方|左右に並べて下線を引く

新旧対照表は、変更前(旧)と変更後(新)を左右に並べた表です。法令上の必須書類ではありませんが、作っておくと、従業員代表への意見聴取の説明資料、監督署への届出の添付資料、社内周知用の資料として同じものを使い回せます。改正箇所が複数ある一部改正ほど、効果が出ます。

作り方はシンプルです。表を2列にして、左に「改正後(新)」、右に「改正前(旧)」を置きます(左右の順は社内で統一されていれば逆でも構いません)。条文は変更箇所の前後1〜2行も含めて引用し、変わった文言に下線または太字を入れます。条文を削除する場合は旧の欄に条文を書き、新の欄に「削る」と記載します。条文を追加する場合は旧の欄を「(新設)」とします。

表の先頭に、改正の趣旨を1〜2行添えておくと、説明のときに楽です。「テレワーク勤務の実施に伴い、第◯章を新設する」程度で十分です。従業員から質問が出やすい項目(賃金、休暇、懲戒)は、理由の書き方をていねいにしておくと、意見聴取がスムーズに進みます。

条文を追加するとき|条番号を振り直さずに済む書き方

条文を追加するときに悩むのが、以降の条番号がすべてずれてしまう問題です。第10条の次に新しい条文を入れると、旧第11条以降がすべて1つずつ繰り下がり、新旧対照表が膨大になります。そこで使われるのが「枝番号」です。第10条の次に入れるなら「第10条の2」とし、以降の条番号はそのままにします。

枝番号を使えば、新旧対照表に書くのは追加した条文だけで済み、他の条文を参照している箇所(「第◯条に定める」といった引用)の修正も不要になります。ひとり社長や小さな会社の就業規則でも、改正の回数が増えるほど効いてくる書き方です。

逆に、章ごと大きく入れ替える、全体を現行法令に合わせて作り直すといった場合は、枝番号だらけにせず「全部改正」にしたほうが読みやすくなります。目安として、条文の半分近くに手が入るなら全部改正、数か条の追加・修正なら一部改正+枝番号、と考えると判断しやすいはずです。全部改正にする場合は、附則を「この規則は◯年◯月◯日から施行する。なお、◯年◯月◯日制定の就業規則は、この規則の施行日をもって廃止する。」のような形にします。

軽微な変更でも届出は必要? 変更の手続きの順番

常時10人以上の労働者を使用する事業場では、就業規則を変更したときも、所轄の労働基準監督署長への届出が求められています。「手当をひとつ足しただけ」「文言を直しただけ」といった軽微に見える変更でも、就業規則の記載事項を変えたのであれば、届出の対象として扱われるのが一般的です。誤字の修正のみといった実質的な変更がない場合の扱いは、所轄の監督署に確認するのが確実です。

手続きの順番は、①変更案(本文・附則・新旧対照表)を作る、②労働者の過半数で組織する労働組合、またはそれがなければ労働者の過半数を代表する者から意見を聴き、意見書をもらう、③就業規則変更届に変更後の就業規則(または変更部分)と意見書を添えて、所轄の労働基準監督署に提出する、④施行日までに従業員へ周知する、という流れです。②の意見書は賛成・反対を問うものではなく、意見を聴いた記録として必要になります。

届出のときに提出するのは、変更後の就業規則全文でも、変更部分のみでも受け付けられることが多いのですが、取扱いは監督署によって案内が異なることがあります。電子申請を使う場合も含め、提出方法と添付書類は事前に所轄の労働基準監督署または厚生労働省の案内で確認してください。周知は、見やすい場所への掲示、書面の交付、社内の共有ドライブへの掲載など、従業員がいつでも見られる状態にするのが趣旨です。

人数が10人未満で届出が求められない事業場でも、就業規則をつくって運用しているなら、附則と施行日、周知の手順は同じように整えておくと、後から人数が増えたときに困りません。不利益変更が含まれる場合、変更の有効性が争点になり得る場合は、進め方そのものを社会保険労務士や弁護士に相談してから着手することをおすすめします。

今日からできる手順まとめ

まず、現行の就業規則のファイルを複製して「◯年◯月改正案」と名前を付けます。次に、変更したい箇所を本文で直し、追加なら枝番号を使います。直したら、末尾に改正附則を1行足します。ここまでで、だいたい半日あれば形になります。

続いて新旧対照表を作り、改正の趣旨を1〜2行添えます。これを持って従業員代表に説明し、意見書をもらいます。意見書の日付が施行日より後にならないよう、スケジュールは余裕をもって引いてください。

最後に、変更届・変更後の就業規則(または変更部分)・意見書をそろえて所轄の労働基準監督署へ提出し、施行日までに従業員へ周知します。賃金・休暇・懲戒など労働条件の中身に関わる変更や、不利益変更の可能性がある変更は、文面を固める前の段階で社会保険労務士にご相談ください。手続きの順番と附則の書き方を一度見てもらっておくと、次回からは自社で回せるようになります。

よくある質問

就業規則の附則には何を書けばいいですか。

最低限、施行日を書きます。「附則(◯年◯月◯日改正) この規則は、◯年◯月◯日から施行する。」が基本形です。切り替え前後で扱いが変わる事項があれば、「なお従前の例による」といった経過措置の一文を添えると運用しやすくなります。

就業規則を遡って適用することはできますか。

労働者に有利になる変更と不利になる変更では意味合いが大きく異なり、不利益変更を遡らせる場合は同意や合理性の検討が必要になることがあります。自己判断で遡及の一文を入れる前に、社会保険労務士にご確認ください。

条文を1つ追加するだけでも届出は必要ですか。

常時10人以上の労働者を使用する事業場では、就業規則を変更したときも届出の対象として扱われるのが一般的です。条文の追加もこれに含まれると考えられます。実質的な変更がない誤字修正などの扱いは、所轄の労働基準監督署に確認してください。

新旧対照表は必ず作らないといけませんか。

法令上の必須書類ではありません。ただし、意見聴取の説明、届出時の資料、社内周知のすべてで同じ資料として使えるため、改正箇所が複数ある一部改正では作っておくと手間が減ります。

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