電子契約で連名・連帯保証人がいる場合|署名者の設定と注意点
「借主のほかに連帯保証人がいる」「共同で受注するので受注者が2社いる」。こうした署名者が複数の契約を、電子契約で締結できるのか迷う方は少なくありません。結論から言えば、多くの電子契約サービスは署名者を3人以上設定でき、順番に署名を回す運用に対応しています。一方で、保証契約は民法上あつかいが特別で、誰の名義でどう署名させるかを間違えると効力が争われかねません。この記事では、署名者の設定手順、代理署名の考え方、電子契約での割印・契印の扱いまで、実務で迷いやすい部分を順に整理します。
この記事の結論
- 連名契約や連帯保証人付き契約も、署名者(受信者)を複数設定できる電子契約サービスであれば、1つの契約書に全員が電子署名して締結できます。
- 連帯保証人は「契約当事者の一人」として本人のメールアドレス宛に署名依頼を送るのが基本で、主債務者が代わりに署名する運用はトラブルのもとになります。
- 電子契約では文書が一体のデータとして扱われ改ざん検知の仕組みが働くため、紙のような割印・契印・袋とじの作業は通常不要と説明されています。
電子契約で署名者が複数いる契約は締結できるのか
多くの電子契約サービスは、1つの契約書に対して署名者(受信者・宛先)を2人以上設定できる設計になっています。甲・乙の2者だけでなく、甲・乙・丙、さらに連帯保証人を加えた4名といった構成も、サービス側の上限の範囲内であれば設定可能です。上限人数や、署名を同時並行で回せるか順番に回すかは各社で異なるため、契約前に公式サイトの仕様や機能一覧を確認してください。
紙の契約書であれば、署名者の数だけ署名欄を設け、全員が記名押印したうえで人数分の原本を作るのが一般的です。電子契約ではデータが1つで、そこに全員の電子署名が重なっていく形になります。原本が1つで済み、郵送で回す時間がなくなる点は、署名者が多い契約ほど効いてきます。
ただし「電子でできる」ことと「電子で締結してよい」ことは別です。相手方の社内規程で紙の原本が必要とされている場合や、保証人が高齢でメールを日常的に使っていない場合など、電子化しないほうが進む場面もあります。署名者が多い契約ほど、事前に全員の合意を取ってから電子で進めるのが安全です。
連名契約(署名者が3者以上)の署名順の決め方
署名者を設定するときに最初に決めるのは、順番です。電子契約サービスには、指定した順番で1人ずつ署名依頼が届く「順次」と、全員に同時に届く「一括」の設定があるのが一般的です。迷ったら、まずは順次を選ぶことをおすすめします。前の署名者が署名した内容を次の署名者が確認できるため、途中で条件変更の申し出があったときに巻き戻しやすいからです。
順番の基本形は、契約内容を作成・提示した側が先に署名し、相手方、最後に保証人や立会人という流れです。たとえば賃貸借や業務委託で保証人が付く場合、主債務者が署名した契約内容を保証人が確認してから署名する、という順にすると、保証人が「何を保証したのか分からない」状態を避けられます。
一括送信が向くのは、共同事業契約のように当事者が対等で、内容がすでに全員に共有されている場合です。関係者が多く日程が合わないときは一括にしたほうが早く揃います。どちらにするかは「内容の最終確認をしてほしい人がいるか」で判断すると決めやすくなります。
連帯保証人がいる契約を電子で締結するときの注意点
連帯保証人は、主債務者とは別の独立した契約当事者です。したがって、署名依頼は保証人本人のメールアドレス宛に送り、本人が内容を確認したうえで署名する形にするのが基本です。主債務者の社内メールや代表者のアドレスにまとめて送る運用は、後から「本人が署名していない」と争われたときに反論しづらくなります。
民法では、事業のために負担する債務を個人が保証する場合など、保証契約について特別な取扱いが定められている場面があります。とくに公正証書の作成が求められるケースがあり、その場合は電子契約だけでは完結しません。自社の契約がこれに該当するかどうかは、契約の目的と保証人の属性で変わるため、弁護士や司法書士に確認してください。
また、保証人には保証する債務の内容や極度額などを正しく理解してもらう必要があります。電子契約では画面をスクロールして読み飛ばされやすいため、送信前に契約書のPDFを別途共有して説明の時間を取る、重要条項を要約したメールを添える、といった運用面の工夫が有効です。署名の記録(いつ、どのアドレスから署名したか)は監査ログとして残るので、保管方法もあわせて決めておきます。
代理署名は可能か|「本人が署名する」を崩さない運用
電子署名は、その電子データが誰の意思で作成されたかを示すものです。本人以外が本人になりすまして署名する運用は、証拠としての価値を大きく下げます。社長の代わりに事務担当者が社長名義のアカウントで署名する、といった運用は避けるべきです。
一方で、会社の契約を代表者以外が締結すること自体は、権限が与えられていれば珍しいことではありません。部長や支店長が、社内規程に基づく権限の範囲で自分の名義で署名する、というのが本来の形です。この場合は署名欄も「◯◯部長 氏名」とし、誰の権限で締結したかが文書上わかるようにしておきます。相手方から求められたら、委任状や社内規程の写しを提示できるようにしておくと安心です。
個人が当事者となる契約で、本人が高齢や入院などで署名できない場合は、代理権を明示した委任状を別途取り交わし、代理人名義で署名する形が考えられます。ただし、保証契約のように本人の意思確認が重視される契約では、代理による締結の適否は慎重な検討が必要です。この判断は個別事情に左右されるため、弁護士に相談することをおすすめします。
電子契約に割印・契印・収入印紙は必要か
紙の契約書では、複数ページをまとめる契印、同一内容の2通の関連性を示す割印、袋とじといった作業が行われてきました。これらはいずれも、差し替えや抜き取りを防ぐための工夫です。電子契約では契約書が1つのファイルとして扱われ、署名後にデータが変更されていないかを検知する仕組みが備わっているため、こうした物理的な作業は通常不要と説明されています。
署名者が3人以上いる場合も、押印欄のように「全員分のスペースが足りるか」を気にする必要はありません。署名者ごとの署名情報とタイムスタンプがファイルに記録される形になります。署名欄の体裁として氏名や会社名を表示させたい場合は、サービスの入力フィールド機能で署名者ごとに配置しておくと、完成版の見た目が整います。
収入印紙については、電子的に作成・交付される契約書の取扱いが紙と異なると整理されている場面があります。ただし文書の種類や取引実態によって判断が分かれることがあるため、課税関係については国税庁の資料を確認のうえ、税理士にご確認ください。
締結後の保管と、社内で決めておくルール
署名者が多い契約は、締結後の共有先も多くなります。締結完了の通知が全署名者に届く設定になっているか、完成版PDFを誰がどこに保存するかを、運用開始前に決めておきましょう。保証人が個人の場合、本人の手元にも控えが残る状態にしておくと、後の問い合わせに対応しやすくなります。
電子で授受した契約書の保存については、電子帳簿保存法の考え方に沿った管理が求められる場面があります。検索できる形で保存する、改ざんを防ぐ措置を取る、といった基本の考え方は押さえつつ、自社に必要な要件の詳細は国税庁の資料を確認し、判断に迷う部分は税理士に相談してください。
最後に、社内ルールとして「誰が署名者を設定するか」「誰が最終版を確認するか」「保証人付き契約は誰の承認を要するか」の3点を決めておくと、担当者が変わっても運用が崩れません。連名契約や連帯保証人付き契約は、後から効力を争われたときの影響が大きい類型です。保証の要件や代理の可否など個別の法的判断については弁護士や司法書士に、印紙や保存の取扱いについては税理士に、それぞれ早い段階で相談しておくことをおすすめします。
よくある質問
連帯保証人にメールアドレスがない場合、電子契約で締結できますか。
署名依頼を受け取る手段がないと、本人が電子署名する運用は難しくなります。保証人の部分だけ紙で取り交わす、あるいは契約全体を紙にするなど、当事者の状況に合わせた方法を検討してください。どの方法が適切かは契約の性質によるため、弁護士への確認をおすすめします。
署名者の一人が署名しないまま止まっている場合はどうなりますか。
多くのサービスでは、全署名者の署名が完了して初めて締結済みの状態になります。途中で止まっている間は未締結の扱いになるのが一般的で、リマインド送信や取り下げの機能が用意されていることが多いです。具体的な挙動は利用中のサービスの公式ヘルプを確認してください。
電子契約でも双方が電子署名する必要がありますか。片方だけではだめですか。
相手方の同意があれば片方のみが署名する形も見られますが、双方が署名したほうが合意の成立を示しやすくなります。とくに保証人が関わる契約では、各当事者が自分の意思で署名した記録を残しておくことが望ましいと考えられます。
電子契約書に割印を押すことはできますか。
紙の割印にあたる画像を貼ることは技術的には可能ですが、電子契約では改ざん検知の仕組みが働くため、通常は必要ないと説明されています。相手方が形式を求める場合は、その理由を確認したうえで対応方法を相談するとよいでしょう。