クラウドサイン以外の選択肢と乗り換え|比較の軸と移行の手順
電子契約サービスは、一度入れたら終わりではありません。送信件数が増えた、取引先から別のサービスで送られてくることが増えた、書類の保存要件を見直したい——きっかけは会社によってさまざまです。この記事では、いま使っているサービス(クラウドサインに限らず)から別のサービスへ乗り換えるべきかを判断するための比較の軸と、乗り換えると決めた場合の移行手順を、順番に沿って整理します。
この記事の結論
- 電子契約の乗り換えを検討するときは、まず「署名方式(立会人型か当事者型か)」「取引先の受信側の負担」「他システムとの連携」「保存と検索のしやすさ」「料金体系の考え方」の5点を、この順に比較します。
- 乗り換えても過去に締結した契約データが自動で新サービスに移るわけではないため、旧サービスでの保存期間と一括ダウンロードの可否を、解約前に確認する必要があります。
- 取引先が受信して署名する側である限り、こちらがどのサービスを使っていても相手はアカウント登録なしで署名できる方式が多く、乗り換えのハードルは社内側の運用整備にあります。
そもそも乗り換えを検討すべきタイミングはいつか
電子契約サービスの見直しを考えるきっかけは、だいたい次の4つに分かれます。①送信件数が当初の想定より増えて料金体系が実態に合わなくなった、②取引先から「この方式では受けられない」と言われた、③会計・人事・営業管理などの他システムと連携させたくなった、④契約書の保存・検索が追いつかなくなった。まずは自社がどれに当てはまるかを書き出してみてください。
このうち①と④は、乗り換えではなくプラン変更や社内ルールの整備で解決することも多い項目です。一方、②と③はサービス自体の仕様に関わるため、乗り換えの検討に進む理由になりやすいところです。「なんとなく他が良さそう」で動き始めると、移行作業だけが残って効果が出ないことがあります。
判断の順番としては、まず「いま困っていることは、サービスを変えないと解決しないか」を確認します。解決しないと分かった段階で初めて、次章の比較の軸に進むのが効率的です。
クラウドサイン以外を比較するときの5つの軸
1つめは署名方式です。電子契約には、サービス事業者の名義で電子署名を付す「立会人型(事業者署名型)」と、契約当事者自身が電子証明書を使って署名する「当事者型」があります。多くのクラウド型サービスは立会人型を中心に提供しており、一部のサービスは当事者型や、立会人型と当事者型の併用に対応しています。相手方の社内規程で当事者型が求められる場合があるため、取引先の業種・規模によってはここが決め手になります。
2つめは、受信する側の負担です。送る側の画面は営業資料で分かりますが、受け取る取引先がどんなメールを受け取り、何回クリックして署名まで進むのかは見落とされがちです。無料トライアルがあるサービスなら、自分のプライベートのメールアドレス宛にテスト送信して、受け取る側の画面を実際に見てみると実態を把握しやすくなります。
3つめは他システムとの連携、4つめは保存と検索です。契約書をフォルダ階層で管理するのか、取引先名・契約種別・有効期限といった項目で検索するのかで、使い勝手が大きく変わります。更新期限のアラート機能が必要かどうかも、継続取引の多い会社では確認しておきたい点です。5つめの料金体系は、月額の固定部分と送信件数による部分の組み合わせがサービスごとに異なります。各社の公式サイトで最新の料金を確認し、自社の年間送信件数を当てはめて比べてください。
クラウドサインの料金プラン
クラウドサインの料金は次のとおりです。改定されることがあるため、申し込み前に公式サイトで最新の内容をご確認ください。
| プラン | 月額 | 1件あたりの送信料 | ユーザー数 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| Free | 0円 | 無料(月2件まで) | 1名 | 月の送信2件が上限。書類管理機能に制限 |
| Light | 11,000円(税抜)/12,100円(税込) | 220円(税抜)/242円(税込) | 無制限 | AI契約書管理(インポート時)非対応、キャビネット機能なし |
| Corporate | 28,000円(税抜)/30,800円(税込) | 220円(税抜)/242円(税込) | 無制限 | 専任CSM非対応、一部の内部統制機能に制限 |
| Business / Enterprise | 記載なし(個別) | 記載なし(ボリュームディスカウントあり) | 記載なし | 料金は問い合わせ |
立会人型と当事者型、どちらで迷ったらどう判断するか
迷ったときは、次の順に見てください。まず「取引先から署名方式を指定されたことがあるか」。指定された経験があるなら、その要求に対応できる方式を選ぶ必要があります。次に「不動産・金融・建設など、書面や署名方式について個別の法令やガイドラインが関わる契約を扱っているか」。扱っている場合は、所管官庁の資料や業界団体の案内を確認したうえで、弁護士に相談して方針を決めるのが安全です。
上記のいずれにも当てはまらず、取引先が中小企業や個人事業主中心であれば、相手の負担が軽い立会人型を基本にしている会社が多いのが実情です。ただし「立会人型なら法的効力がない」「当事者型でなければ通らない」といった単純な話ではなく、電子署名法の解釈や本人確認の仕組みが関わります。効力の評価が争点になりうる契約については、締結前に弁護士へ確認してください。
なお、両方式に対応しているサービスを選べば、契約の種類ごとに使い分けるという運用も取れます。件数の大半は立会人型で回し、重要契約だけ当事者型にする、という考え方です。
取引先はどうなる? 乗り換えの影響範囲を切り分ける
乗り換えで一番心配されるのが「取引先に迷惑がかかるのでは」という点ですが、影響は立場によって分かれます。こちらが送信者で相手が署名者という関係なら、多くのサービスは相手方のアカウント登録なしで署名できる仕組みを取っているため、相手側の作業は「メールのリンクから署名する」という点であまり変わりません。差出人のサービス名と画面デザインが変わる、という程度の影響にとどまるケースが多いです。
影響が大きいのは、取引先から送られてくる契約を自社で受け取っているケースや、相手が「自社はこのサービスしか使わない」と決めているケースです。この場合、こちらが乗り換えても相手のサービスで受け取る運用は残るため、複数サービスが併存することを前提に、受信した契約書をどこに保存するかのルールを決めておく必要があります。
切り分けの手順としては、直近1年の締結契約を「自社発信」「相手発信」に分け、相手発信の割合が高い取引先を数社リストアップします。その数社に事前に一報を入れておくと、切り替え後の混乱を減らせます。
乗り換えると決めたあとの移行手順
手順は、解約の前に準備を済ませる順番が大切です。まず①新サービスの無料トライアルで、実際の契約書テンプレートを使って社内テストを行います。②並行して、旧サービスに保存されている締結済み契約書の一括ダウンロード機能の有無と、解約後の閲覧可否・保存期間を、旧サービスのヘルプページやサポート窓口で確認します。③締結済みPDFと証跡(タイムスタンプや操作ログの情報)をダウンロードし、社内の保存先に移します。
④次に社内の運用を切り替えます。誰が送信できるか、誰が承認するか、押印申請のワークフローとどうつなぐかを文書にして共有します。⑤決めた切替日以降の新規契約を新サービスで送信し、旧サービスは「すでに送信済みで未締結のもの」が片付くまで並行稼働させます。⑥すべて片付いてから旧サービスを解約する、という順です。
電子帳簿保存法に関わる保存要件(検索できる状態にしておくこと、改ざん防止の措置など)は、サービスを移しても会社の側で満たす必要があります。移行後の保存方法が要件を満たす形になっているかは、国税庁の資料を確認したうえで、顧問税理士に見てもらうと安心です。
販売代理店経由・シェアの話をどう受け止めるか
電子契約サービスは、メーカー直販のほかに販売代理店を通じて契約できる場合があります。代理店経由だと導入時の設定支援や社内説明会をまとめて依頼できることがある一方、契約窓口とサポート窓口が分かれて問い合わせ先が分かりにくくなることもあります。自社に情シス担当がいないなら支援のある窓口、社内で完結できるなら直販、という分け方が一つの目安です。
「どのサービスのシェアが大きいか」を気にする方も多いのですが、公表されている調査は集計対象や定義がそれぞれ異なるため、数字だけを並べて比べるのは適切とはいえません。それよりも、自社の取引先が実際にどのサービスで送ってきているかを数えるほうが、判断材料としては役に立ちます。過去1年の受信契約を振り返れば、自社の業界で何が使われているかが見えてきます。
導入形態を決めたら、見積もりは必ず複数のルートで取り、内訳(初期費用、月額、送信ごとの費用、オプション)を同じ項目で並べて比較してください。料金は改定されることがあるため、各社の公式サイトで最新の情報を確認するようにしてください。
最後に:判断が分かれる論点は専門家に確認を
電子契約の乗り換えそのものは、社内の事務手続きとして進められる話です。一方で、「この契約は電子で締結してよいか」「署名方式の違いで効力の扱いが変わるか」「移行後の保存方法が電子帳簿保存法の要件を満たすか」といった論点は、会社の状況によって判断が変わります。
契約の有効性や署名方式に関する論点は弁護士に、帳簿書類の保存や証憑の取り扱いは税理士に相談するのが一般的です。登記に関わる書類を電子で扱う場合は司法書士に確認する場面もあります。乗り換えの検討段階で一度相談しておくと、移行後に手戻りが生じにくくなります。
よくある質問
クラウドサインから他社サービスに乗り換えると、過去の契約書はどうなりますか。
締結済みの契約データが自動で新サービスに移行される仕組みは一般的ではなく、多くの場合は自社でダウンロードして保存し直す形になります。解約後の閲覧可否や保存期間はサービスごとに異なるため、解約手続きの前に旧サービスのヘルプやサポート窓口で確認してください。
自社が乗り換えると、取引先も新しいサービスに登録し直す必要がありますか。
こちらが送信者で相手が署名者という関係であれば、相手方のアカウント登録なしで署名できる仕組みを取っているサービスが多く、相手の手間は大きく変わらないことが一般的です。ただし相手から契約を送ってもらう取引がある場合は、複数サービスが併存する前提で保存ルールを決めておくとよいでしょう。
GMOサインとクラウドサインのシェアはどちらが大きいですか。
公表されている調査は集計の対象や定義が異なるため、数字を単純に比べて優劣を判断するのは適切とはいえません。自社の取引先が実際にどのサービスで契約を送ってきているかを過去1年分数えるほうが、実務上の判断材料になります。
乗り換えのタイミングはいつがよいですか。
旧サービスの契約更新月の1〜2か月前から準備を始め、新規送信の切替日を決めたうえで、未締結分が片付くまで並行稼働させる進め方が取りやすいです。期末や繁忙期と重ねると確認作業が滞りやすいため、比較的落ち着いた時期を選ぶことをおすすめします。