就業規則の作成費用の相場|社労士に依頼する場合の料金の考え方
従業員が増えてきて「そろそろ就業規則を」と考えたとき、多くの人がまず調べるのが費用です。ただ、就業規則の作成料金は「一式いくら」と決まっているものではなく、何をどこまで頼むかで大きく変わります。この記事では、金額そのものより先に押さえたい「見積もりが動く要素」と、自作・ひな形・社労士依頼をどう使い分けるかを、判断の順番で整理します。
この記事の結論
- 就業規則の作成費用は、本則だけか諸規程まで含むか、ヒアリングや説明会の回数、従業員数などで変わるため、条件をそろえて複数の社労士から見積もりを取るのが基本です。
- ゼロから作るより、既存の規則のレビュー(点検)や部分改定のほうが作業量が小さく、見積もりも抑えられることが一般的です。
- ひな形をそのまま使うと自社の実態と合わない条文が残りやすいため、労働時間・休日・賃金・退職まわりだけでも専門家の確認を受ける進め方が現実的です。
就業規則の作成費用は、何で決まるのか
就業規則の料金に「相場表」が存在しないのは、同じ『就業規則を作る』という言葉でも、中身の作業量が会社ごとにまったく違うからです。まず見積もりが動く要素を知っておくと、提示された金額が高いのか妥当なのかを自分で判断できるようになります。
主な要素は、(1)本則だけか、賃金規程・育児介護休業規程・ハラスメント防止規程などの附属規程まで含むか、(2)ゼロから作るのか、既存の規則の見直しか、(3)ヒアリングの回数や打ち合わせの形式(対面かオンラインか)、(4)従業員数や雇用形態の種類(正社員のみか、パート・有期・嘱託も分けるか)、(5)労働基準監督署への届出代行や、従業員への説明会までお願いするか、の5つです。
この5つのうち、費用に効きやすいのは「附属規程の数」と「雇用形態の種類」です。パート用の規則を別に作る、固定残業や変形労働時間制を入れる、といった条件が加わるほど、条文の設計と整合性チェックの手間が増えます。問い合わせの段階でこの5点を伝えると、各事務所の見積もりを横並びで比べやすくなります。
自作・ひな形・社労士依頼、どれを選ぶかの判断順
最初に見るのは「自社の働き方が、標準的なひな形に収まるか」です。全員が正社員で、所定労働時間も休日も一律、残業代は実績どおり支払う、という会社であれば、公開されているモデル就業規則をベースに自社の実態へ書き換える進め方も選べます。このタイプは、まず自分でたたき台を作り、最後に専門家に点検してもらう順番が効率的です。
次に見るのは「変則的な要素があるか」です。シフト制、変形労働時間制、固定残業代、裁量労働、テレワーク、副業許可、有期契約やパートの待遇差など、どれか一つでも当てはまるなら、条文の書き方しだいで運用の解釈が分かれやすくなります。この場合は、たたき台づくりの段階から社労士に入ってもらうほうが、あとからの手戻りが少なくなります。
3つめは「今すぐ必要な理由があるか」です。助成金の申請、金融機関や取引先からの提出依頼、従業員とのトラブルが起きている、といった事情があるときは、期限と目的を最初に伝えたうえで依頼先を選びます。目的によって重点を置く条文が変わるため、「何のために作るか」を伝えていないと、作り直しが発生することがあります。
新規作成とレビュー(見直し)、費用の考え方はどう違う
すでに就業規則がある会社の場合、選択肢は「全面的な作り直し」と「レビュー+部分改定」の2つです。一般に、レビューのほうが作業範囲が限定されるぶん、見積もりは抑えやすくなります。まずは現行の規則を送って、どちらが適しているかを判断してもらうところから始めると無駄がありません。
レビューを頼むときは、「読んで意見をもらう」だけなのか、「修正条文の案まで作る」のかで中身が変わります。前者は改善点の指摘が中心で、条文の書き換えは自社で行います。後者は新旧対照表や改定案の提供まで含むことが多く、そのぶん工数が増えます。どちらを想定しているかを最初に伝えてください。
作り直しを検討したほうがよいのは、何年も改定していない、法改正が反映されていない、条文どうしが矛盾している、他社のひな形をつぎはぎしていて自社の運用と合っていない、といったケースです。部分修正を重ねるより、一度全体を組み直したほうが結果的に手間が少なくなることもあります。どちらが適切かは現物を見ないと判断できないので、見積もり段階で相談するのが確実です。
見積もりを比べるときに確認したい項目
複数の社労士事務所に問い合わせるときは、同じ前提条件を伝えることが前提です。従業員数、雇用形態の種類、現行規則の有無、希望する附属規程、届出代行の要否、希望時期。この6点をテンプレートにして送ると、返ってきた見積もりを比較しやすくなります。料金は事務所ごとに設定が異なるため、金額は各事務所の公式サイトや見積書で最新のものを確認してください。
金額以外では、次の点を確認します。打ち合わせは何回まで含まれるか、修正対応は何回までか、納品物は何か(本則・附属規程・意見書の様式・従業員向け説明資料)、労働基準監督署への届出は含まれるか、納品後の法改正対応は別料金か。この「含まれる/含まれない」の線引きが、最終的な総額の差になりやすい部分です。
もう一つ見ておきたいのが、作成後の運用支援です。就業規則は作って終わりではなく、法改正や社内制度の変更に合わせて更新していくものです。スポット依頼のみを受ける事務所もあれば、顧問契約の中で継続的に見直す形を取る事務所もあります。将来的に労務相談も任せたいなら、顧問での関わり方まで含めて話を聞いておくと、依頼のしかたを決めやすくなります。
依頼から届出までの流れと、用意しておくもの
進め方の一例は、次の順です。(1)現状のヒアリング(労働時間、休日、賃金の決め方、休暇の運用、入退社の手続き)、(2)たたき台の作成、(3)内容の確認と修正、(4)従業員代表の意見聴取、(5)労働基準監督署への届出、(6)従業員への周知。ヒアリングから届出まで、会社側の確認に時間がかかると全体が伸びるため、社内の意思決定者を最初から関与させておくとスムーズです。
事前に用意しておくと話が早いのは、雇用契約書や労働条件通知書の雛形、給与明細の項目がわかる資料、現在の勤怠の運用がわかるもの(シフト表や打刻の方法)、既存の規則や社内ルールのメモです。文書になっていない慣行(暗黙の休憩の取り方、繁忙期の対応など)も、口頭で伝えておくと条文に反映しやすくなります。
常時使用する労働者が一定数以上の事業場では、就業規則の作成と労働基準監督署への届出が労働基準法で求められています。人数の数え方や対象となる範囲には細かい取り扱いがあるため、自社が該当するかどうかは厚生労働省や労働基準監督署の案内を確認するか、社労士にご確認ください。届出の際には従業員代表の意見書を添えるのが一般的です。
費用を抑えたいときの現実的な進め方
予算を抑えたい場合、丸ごと安く済ませようとするより、「自社でやる部分」と「任せる部分」を分けるほうが結果が安定します。たとえば、労働時間・休日・休暇の実態整理は社内で行い、条文化と法的な整合チェックを専門家に任せる、という分担です。ヒアリング時間が短くなるぶん、見積もりにも反映されることがあります。
公開されているモデル就業規則を出発点にする方法もありますが、そのまま使うと自社にない制度の条文が残ったり、逆に実際に運用している制度が抜けたりしがちです。条文と実態がずれていると、後々の解釈で行き違いが生じることがあります。少なくとも労働時間・休日・賃金・退職と解雇の章は、自社の運用に合っているかを専門家に見てもらう価値があります。
また、就業規則の整備が要件に関わる助成金もあります。ただし要件や募集状況は時期によって変わるため、利用を考えるなら厚生労働省や都道府県労働局の最新の案内を確認し、申請の可否は社労士にご相談ください。手続きの順番を誤ると対象外になることもあるので、作成の前に確認しておくのが安全です。
迷ったら、条件を整理して社労士に相談を
就業規則は、会社と従業員の約束ごとを文書にしたものです。金額だけで決めると、自社の働き方が反映されていない規則ができあがり、あとから作り直す手間が生じることがあります。まずは従業員数、雇用形態、変則的な勤務の有無、必要な時期を整理し、その条件で複数の社労士から見積もりを取ってみてください。
内容の妥当性や、自社が届出の対象になるか、どの附属規程まで整えるべきかといった判断は、会社の状況によって変わります。制度の要件は所管官庁の資料で確認しつつ、個別の判断については社会保険労務士にご相談ください。労務トラブルが起きている、あるいは起きそうな局面では、弁護士に相談すべきケースもあります。
よくある質問
就業規則の作成費用は、従業員数で変わりますか。
変わることがあります。人数そのものより、雇用形態の種類が増えるほど条文の設計が複雑になるためです。パートや有期契約の規則を別に作るかどうかで作業量が変わるので、問い合わせの段階で内訳を伝えてください。
既存の就業規則をレビューだけ頼むことはできますか。
多くの社労士事務所でスポットのレビューに対応しています。ただし「指摘だけ」か「修正条文案まで」かで範囲が変わるため、どこまで求めるかを最初に伝えると見積もりがそろいます。
ひな形をそのまま使うのは避けたほうがよいですか。
出発点として使うこと自体はよくある進め方ですが、そのまま届け出ると自社の実態と条文がずれたままになりやすい点に注意が必要です。労働時間・休日・賃金・退職の章だけでも、社労士に確認してもらうことをおすすめします。
就業規則を作り直したら、あらためて届出は必要ですか。
内容を変更した場合は、変更後の規則を労働基準監督署に届け出るのが一般的で、従業員代表の意見書を添えます。対象となる事業場の範囲や手続きの詳細は、労働基準監督署の案内を確認するか、社労士にご確認ください。