給与計算ソフトの比較|少人数の会社に向く製品と無料ソフトの使いどころ
社長ひとり、あるいは従業員が数人。この規模だと「給与計算ソフトなんて要るのかな」と迷います。実際、Excelでも回せる会社はあります。一方で、社会保険の控除や年末調整まで手作業で抱えると、毎月じわじわ時間を削られます。この記事では、給与計算ソフトを比較するときに見るべき点を、判断の順番にそって整理します。
この記事の結論
- 給与計算ソフトは「従業員数」「勤怠の複雑さ」「年末調整と社会保険までソフトにやらせたいか」の3点で絞り込むと、候補がかなり減ります。
- 従業員が数人で全員が固定給の月給者なら、無料ソフトやExcelテンプレートでも当面は回せますが、税額表や保険料率の改定に自分で追従する必要があります。
- クラウド型は料率改定や様式変更が提供元側で更新される点が利点で、インストール型は社内に情報を置きたい会社やネット環境が不安定な場合に検討されます。
給与計算ソフトを比較する前に、自社の条件を3つ確認する
比較サイトを開く前に、自社の条件を紙に書き出してください。見るのは3つです。①人数(役員だけか、パート・アルバイトを含むか)、②勤務形態(全員が固定給の月給者か、時給者や残業が混ざるか)、③どこまでソフトにやらせたいか(毎月の明細だけか、年末調整や社会保険の届出まで含めるか)。
この3つが決まると、候補は自然に絞れます。たとえば「役員1名のみ・固定額・年末調整も自分でやる」なら、専用ソフトを入れる必然性は高くありません。逆に「時給のパートが数名いて勤怠がバラバラ」「年末調整を毎年ひとりで抱えて年末が潰れる」なら、ソフト導入の効果が出やすい条件です。
もうひとつ、将来の人数も考えておきます。1年以内に採用を増やす予定があるなら、増えた状態を前提に選んだほうが、あとで乗り換える手間を減らせます。
クラウド型とインストール型、どちらを選ぶか
給与計算ソフトは大きく、ブラウザで使うクラウド型と、パソコンにインストールして使う型に分かれます。迷ったら、まず「誰が、どこで作業するか」から考えてください。自宅と事務所の両方で作業する、税理士や社労士とデータを共有したい、という場合はクラウド型が扱いやすい傾向があります。
クラウド型のもうひとつの利点は、税額表や社会保険料率、様式の変更が提供元側で反映されることです。毎年のように細かい改定があるため、自分で追いかけなくてよいのは小さな会社ほど効きます。ただし継続的な利用料がかかるので、料金は各社の公式サイトで最新のものを確認してください。
インストール型は、データを社内のパソコンに置いておきたい会社、ネット環境が安定しない環境、あるいは特定の会計ソフトとセットで長く使っている場合に検討されます。この場合、更新プログラムの適用を自分で行う運用になることが多いので、誰がその担当になるかを決めておきます。
無料の給与計算ソフトはどこまで使えるか
「給与計算 ソフト 無料」で探す方は多いのですが、無料で使えるものには、無料プランを持つクラウドサービス、機能を限定した無償ソフト、行政や関係機関が公開しているExcelの計算シートなど、性格の違うものが混ざっています。まず、自分が見ているものがどれなのかを確認してください。
無料の範囲で当面まかなえるのは、おおむね次の条件がそろう場合です。人数がごく少ない、全員が固定給で残業の変動が小さい、賞与が少ない、そして税額表や保険料率の確認を自分で行える。逆に、時給者の勤怠集計や年末調整、電子申請までを含めたい場合は、無料の範囲では手作業が残りやすくなります。
注意したいのは「無料だから安い」とは限らない点です。毎月の確認作業や、改定の見落としを直す時間も、会社にとってはコストです。給与という性質上、間違いは従業員との信頼に直結します。手間と金額の両方を並べて比べてください。
少人数の会社が見落としやすい比較ポイント
機能一覧を横に並べると、どれも似て見えます。少人数の会社で差が出るのは、次の点です。まず、年末調整に対応しているか、そしてそれが追加の申し込みなしに使えるか。年に一度しか使わない機能ですが、ここを手作業で残すと年末の負担が一気に増えます。
次に、社会保険・労働保険の届出書類の作成や電子申請にどこまで対応しているか。入退社のたびに発生する手続きなので、人の出入りがある会社では効いてきます。ただし対応範囲は製品によってかなり違うので、公式サイトの機能説明で自社が使う手続きが含まれるかを確認してください。
三つめは、会計ソフトへの連携です。給与の仕訳を手入力している会社は、連携があるだけで毎月の作業が減ります。四つめは、従業員が自分のスマートフォンで明細を見られるか。紙で配る運用を続けるなら不要ですが、電子化したい場合は最初から見ておくと後戻りしません。
勤怠管理と給与計算は分けるか、まとめるか
「勤怠管理 給与計算 ソフト」で探す方が知りたいのは、たいてい「1つにまとめたほうがいいのか」という点だと思います。判断の基準はシンプルで、勤怠データを手で転記しているかどうかです。タイムカードや紙の出勤簿を見ながら残業時間を入力しているなら、連携でその工程がなくなります。
一方で、全員が固定給の月給者で、残業もほとんど発生しない会社では、勤怠側を厚くする必要性は高くありません。この場合は給与計算だけを整えて、勤怠は後から足す順番でも困りません。
まとめる場合は、同じ提供元のシリーズでそろえる方法と、別々の製品を連携させる方法があります。前者は設定が素直に進みやすく、後者は勤怠側の要件が特殊なとき(シフト制、直行直帰が多い、拠点が複数など)に選ばれます。自社の勤務実態を先に書き出してから、どちらが合うか判断してください。
導入と乗り換えの進め方
導入のタイミングは、期の切り替わりか、できれば年の初め(1月)が扱いやすいとされます。年の途中で乗り換えると、その年の支給累計や源泉徴収額を新しいソフトに引き継ぐ作業が発生するためです。急ぎでなければ、区切りのよい時期に合わせるのが無難です。
準備するものは、従業員ごとの基本情報(氏名、生年月日、入社日、扶養の状況)、給与の支給項目と控除項目の一覧、直近の給与明細、社会保険や雇用保険の加入状況が分かる書類です。手元にそろえてから初期設定に入ると、途中で止まりません。
本番の前に、必ず並行確認を1〜2か月行ってください。従来の方法で計算した結果と、新しいソフトの結果を突き合わせ、差額が出た項目を潰します。ここを飛ばすと、支給後に修正することになり、従業員への説明も含めて手間が増えます。
なお、給与明細や賃金台帳を電子データで保存する場合の扱い、社会保険の資格取得・喪失の期限など、制度側の要件は改定されることがあります。詳細は所管官庁の資料で最新の内容を確認し、自社の運用が要件を満たしているか不安な場合は、社会保険労務士や税理士にご相談ください。給与計算は労務と税務の両方にまたがる領域なので、設計の段階で一度専門家の目を入れておくと、後の修正が少なくて済みます。
よくある質問
従業員が3人ですが、給与計算ソフトは必要ですか。
全員が固定給の月給者で残業の変動が小さいなら、Excelや無料の計算シートでも当面は回せます。ただし年末調整や社会保険の手続きまで自分で抱えるのが負担になってきたら、導入を検討する目安です。
無料の給与計算ソフトでも年末調整までできますか。
製品によって対応範囲が大きく異なり、年末調整が有料の範囲になっていることもあります。無料で使える機能の境目は各社の公式サイトで確認し、自社が必要とする手続きが含まれるかを事前に見てください。
年の途中でソフトを乗り換えても大丈夫ですか。
可能ですが、その年の支給累計や源泉徴収額を引き継ぐ作業が発生します。可能であれば1月や期の切り替わりに合わせ、旧来の方法と1〜2か月並行して結果を突き合わせてから切り替えると安全です。
勤怠管理ソフトと給与計算ソフトは同じ会社のものでそろえるべきですか。
設定が素直に進みやすいという利点はありますが、必須ではありません。シフト制や複数拠点など勤怠側の要件が特殊な場合は、勤怠に強い製品を選び、連携できるかを確認する進め方もあります。