採用に使える助成金・補助金|対象になる条件と申請の順番
はじめて人を雇うとき、「採用にかかる費用の一部が助成される制度がある」と聞いたことがある方は多いと思います。ただ、この分野でいちばん多いつまずきは、制度を知らなかったことではなく「採用してから調べはじめた」ことです。雇用に関する助成金の多くは、採用する前に計画を出しておくことが前提になっています。この記事では、採用まわりで話題になる助成金・補助金のおおまかな種類と、対象になりやすい条件、そして申請の順番を整理します。
この記事の結論
- 採用に関する助成金の多くは厚生労働省の雇用関係助成金で、ハローワークや労働局が窓口になり、採用前の計画届の提出が条件になっているものがあります。
- 雇用関係助成金の共通の入口は、雇用保険の適用事業所であること、労働保険料を納めていること、法定帳簿(労働者名簿・賃金台帳・出勤簿)が整っていることです。
- 申請の順番は「要件の確認→採用前の計画届→採用・雇用の継続→一定期間経過後の支給申請」が基本で、採用後に気づいて遡れないケースが多いため、求人を出す前に確認するのが安全です。
採用 費用の助成金と補助金は何が違う?
まず言葉の整理から始めます。一般に「助成金」と呼ばれるもののうち、採用や雇用に関わるものは厚生労働省が所管する雇用関係助成金を指すことが多く、窓口はハローワークや各都道府県の労働局です。要件を満たして手続きを踏めば支給の対象になりうる、という性質のものが中心です。
一方「補助金」は経済産業省や自治体などが実施するものが多く、事業の設備投資や販路開拓などが対象です。公募期間が決まっていて、申請内容を審査して採択を決める形式が一般的です。採用そのものを直接の対象にするものは多くありませんが、事業拡大にともなう人材確保が計画の一部に含まれる場合はあります。
採用にかかる費用の負担を軽くしたい、という目的であれば、まず見るのは厚生労働省系の雇用関係助成金です。自治体が独自に実施している就職氷河期世代の採用支援や、移住・UIターン人材の採用支援などもありますので、本社や事業所のある自治体のサイトも合わせて確認してください。
雇用 助成金は採用の何に対して出る?代表的な考え方
雇用関係助成金は「採用した人数」ではなく「どういう人を、どういう形で雇い、どう定着させたか」に着目して設計されているものが多いです。大きく分けると、就職が難しい状況にある方を雇い入れたとき、有期雇用の方を正社員などに転換したとき、人材育成のために訓練を行ったとき、職場環境や制度を整えたとき、といった切り口があります。
たとえば、ハローワークなどの紹介で高年齢の方や障害のある方、母子家庭の母などを継続して雇用する場合に対象となる助成金があります。また、有期契約で雇った方を一定期間後に正社員へ転換する取り組みに対する助成金は、はじめから正社員で採用するのではなく、段階を踏むことが前提になっています。
ここで大事なのは、制度の名前を覚えることではなく「自分の採用計画がどの切り口に当てはまりそうか」を先に見当をつけることです。当てはまりそうな切り口が見えたら、厚生労働省の助成金の一覧ページか、管轄のハローワーク・労働局に相談して、最新の要件と支給額を確認します。支給額や要件は年度ごとに見直されることがあるため、古い解説記事の数字をあてにしないでください。
対象になる会社の共通条件:まずここを満たしているか
個別の助成金の要件を調べる前に、雇用関係助成金に共通する入口の条件を確認します。順番としては、①雇用保険の適用事業所になっているか、②労働保険料を滞納していないか、③労働者名簿・賃金台帳・出勤簿といった法定帳簿を作成・保存しているか、この3つです。どれかが欠けていると、個別の要件を満たしていても支給申請まで進めません。
加えて、支給申請日の前一定期間に会社都合の離職者を出していないこと、労働関係法令に違反していないこと、不正受給をしていないことなども共通の確認事項になっています。設立したばかりで雇用保険の手続きがまだ、という場合は、採用にあわせて労働保険の成立届や雇用保険適用事業所設置届を出すところから始まります。
逆に言えば、この3つが整っている会社は、助成金の話に進む土台ができています。ひとり社長で従業員がいない段階では雇用保険の適用事業所になりませんので、「はじめての1人目を雇う」タイミングが、手続きと助成金を同時に考えるちょうどよい時期です。
申請の順番:採用前にやること、採用後にやること
雇用関係助成金の流れは、おおむね次の順です。第一に、求人を出す前に要件を確認します。第二に、制度によっては採用前に計画届や実施計画を労働局・ハローワークへ提出します。第三に、計画に沿って求人・採用し、雇用を続けます。第四に、一定期間の雇用や転換などの要件を満たした後に、支給申請書と根拠となる書類を提出します。
特に注意したいのが第二段階です。「採用してから申請すればいい」と考えていると、計画届の提出が採用より前という要件に引っかかります。また、ハローワークや適切な職業紹介事業者の紹介で採用することが条件になっている制度もあり、自社サイトや知人経由で先に採用してしまうと対象外になることがあります。求人の出し方を決める前に確認するのが安全です。
支給申請の段階で求められる書類は、出勤簿、賃金台帳、労働条件通知書または雇用契約書、雇用保険の資格取得に関する書類など、日常の労務管理で作る書類が中心です。つまり、助成金のために特別な書類を作るというより、ふだんの労務管理がきちんと記録として残っているかが問われます。採用と同時に勤怠と給与の記録の仕組みを整えておくと、後の申請が楽になります。
自社に合う制度をどう選ぶか:判断の順番
候補が複数あって迷ったときは、次の順に見ると絞りやすくなります。まず、採用しようとしている人の属性(年齢、就業状況、障害の有無など)に紐づく制度があるか。次に、雇用の形(最初から正社員か、有期からの転換か、短時間からの拡大か)に紐づく制度があるか。最後に、採用後の教育訓練や制度整備に紐づく制度があるか、という順です。
採用したい人物像がまだ固まっていない段階なら、助成金に合わせて採用条件を無理に曲げないことをおすすめします。助成金は事業の設計を助けるものであって、事業の設計を決めるものではありません。必要な人を必要な条件で採用したうえで、結果的に当てはまる制度があれば使う、という順序のほうが、採用後のミスマッチを避けられます。
一方で、「有期で雇って様子を見てから正社員にしたい」ともともと考えていた場合のように、自社の方針と制度の設計が最初から噛み合っているなら、制度の要件に沿って手順を組み立てる価値は十分あります。複数の制度が併給できるかどうかは制度ごとに決まっていますので、重ねて使えるつもりで計画を立てず、労働局に確認してください。
よくあるつまずきと、社会保険労務士への相談
実務でよく聞くつまずきは、大きく3つです。採用後に制度を知って計画届の期限を過ぎていた、対象労働者の要件(紹介経路や雇用形態)を満たしていなかった、支給申請の時点で出勤簿や賃金台帳が整っておらず証明できなかった、というものです。いずれも、採用前に一度確認しておけば避けられた可能性があるものです。
また、助成金は受け取った事業年度の収益として扱われることがあり、税務上の処理は顧問税理士に確認するのが確実です。支給額や要件は年度ごとに変わることがありますので、金額の目安を調べるときは、厚生労働省や都道府県労働局の最新の公式資料にあたってください。
雇用関係助成金の申請代行を業として行えるのは社会保険労務士です。自社が対象になりそうかの見立て、計画届のタイミング、申請書類の準備まで含めて相談できますので、1人目の採用を考えはじめた段階で、管轄のハローワーク・労働局に加えて社会保険労務士にも相談してみてください。労務管理の仕組みづくりと合わせて設計できると、その後の採用にもそのまま使えます。
よくある質問
採用してから助成金の存在を知りました。今から申請できますか?
制度によります。採用前の計画届の提出が要件になっているものは、後から遡って申請することが難しいケースが多いです。まずは管轄のハローワークや労働局、社会保険労務士に、採用日と雇用形態を伝えて相談してください。
ひとり社長でも採用の助成金は使えますか?
雇用関係助成金の多くは雇用保険の適用事業所であることが前提のため、従業員がいない状態では対象になりません。1人目を雇うタイミングで労働保険・雇用保険の手続きを行い、その流れで対象になる制度を確認するのが現実的です。
助成金の金額はどこで確認すればいいですか?
支給額や要件は年度ごとに見直されることがあるため、厚生労働省や都道府県労働局の公式サイトで最新のパンフレット・要領を確認してください。解説記事の数字は古くなっている可能性があります。
求人サイトの掲載費用にも補助は出ますか?
雇用関係助成金は採用した人の雇用状況に応じて支給される設計のものが多く、掲載費用そのものを対象とするとは限りません。自治体によっては採用活動の経費を対象にした独自の支援を行っている場合があるため、所在地の自治体の産業・雇用担当部署の情報を確認してください。