法人の住所変更登記の必要書類|株主総会議事録と申請書の準備
オフィスを移転する、自宅兼事務所から借りたオフィスに移る、登記だけ別の場所に移す。理由はさまざまですが、法人の住所(本店)が変われば登記の変更が必要になります。ややこしいのは「定款を変えなければいけないケース」と「変えなくていいケース」があり、それによって必要書類も手続きの重さも変わる点です。この記事では、まず何を確認すればいいか、どの順に書類をそろえるかを、実務の流れに沿って整理します。
この記事の結論
- 法人の住所変更登記の必要書類は、登記申請書のほか、取締役会議事録(または取締役の決定書)、定款変更が必要な場合は株主総会議事録と株主リスト、代理申請なら委任状が基本です。
- 定款に本店所在地を「最小行政区画(市区町村まで)」で記載している場合、同じ市区町村内での移転なら定款変更も株主総会決議も不要になるのが一般的です。
- 管轄する法務局が変わる移転では、新しい本店所在地の管轄法務局あての申請書も併せて必要になり、代表者印の印鑑届書を出し直すのが通常です。
法人の住所変更登記の必要書類は?まず全体像をつかむ
法人の住所変更(本店移転)の登記で使う書類は、大きく「決定したことを証明する書類」と「法務局に出す書類」に分かれます。決定を証明するのが議事録や決定書、法務局に出すのが登記申請書や委任状です。この2つをセットで考えると、何が足りないのかが見えやすくなります。
基本形として用意するのは、①登記申請書、②取締役会議事録(取締役会を置いていない会社は取締役の決定書)、③定款変更が必要なら株主総会議事録と株主リスト、④司法書士などに依頼する場合は委任状、⑤管轄外に移る場合は新所在地を管轄する法務局あての申請書と印鑑届書、といったところです。登録免許税がかかりますが、金額や納付方法は法務局の案内で最新の情報を確認してください。
なお、法人の住所変更は移転の日から一定期間内(原則として2週間以内)に申請するのが会社法上の建前です。遅れたからといって登記ができなくなるわけではありませんが、後回しにすると銀行や取引先への届出が滞りやすくなります。移転日が決まった時点で、書類の準備を始めておくと安心です。
定款変更は必要?「最小行政区画」の記載で判断する
最初に確認するのは自社の定款です。多くの会社は「当会社は、本店を東京都◯◯区に置く」のように、市区町村(政令指定都市なら区)までの記載になっています。この書き方であれば、同じ市区町村内での移転は定款の記載と矛盾しないため、定款変更も株主総会決議も不要というのが一般的な整理です。
一方、定款に「東京都◯◯区◯◯一丁目1番1号」のように番地まで書いてある会社は、同じ市区町村内の移転であっても定款の記載と食い違うため、株主総会の特別決議による定款変更が必要になります。ひとり社長の会社でも、株主総会議事録という形で書面を残す必要があります。
判断の順番はシンプルです。まず定款を開き、本店の条文が市区町村までか番地までかを見る。次に、移転先が同じ市区町村内かどうかを見る。市区町村までの記載で同一市区町村内の移転なら取締役の決定だけ、それ以外は株主総会の決議も必要、と覚えておくと迷いません。判断に自信が持てないときは、司法書士に定款を見てもらうのが早道です。
株主総会議事録と取締役会議事録、どちらを作る?
定款変更が必要なケースでは、株主総会で「本店を◯◯に置く」という定款変更を決議し、その株主総会議事録を作ります。さらに、実際の所在場所(番地・ビル名)と移転日を取締役会または取締役の決定で定め、その議事録・決定書も作るのが通常の流れです。つまり、定款変更が必要な場合は2種類の書面が並ぶことになります。
定款変更が不要なケースでは、株主総会は開かず、取締役会議事録(取締役会非設置会社なら取締役の決定書)だけで足ります。記載するのは、新しい本店の所在場所と移転日です。移転日は「◯年◯月◯日」と特定できる形で書き、実際の引っ越し日とずれないようにしておきます。
議事録には、開催日時・場所、出席者、議題と決議内容、署名または記名押印を入れます。定款変更を含む株主総会議事録を添付する場合は、あわせて「株主リスト」(議決権数の多い株主等を記載した書面で代表者が証明するもの)が必要になるのが通例です。株主リストは見落としやすい書類なので、法務局の記載例を確認しながら作成してください。
同一管轄内と管轄外で手続きが変わる
本店移転には、同じ法務局の管轄内で動く場合と、管轄が変わる場合があります。管轄内なら、その法務局に申請書一式を出して終わりです。添付するのは、取締役会議事録または取締役の決定書、定款変更をしたなら株主総会議事録と株主リスト、委任状などです。
管轄が変わる移転では、旧所在地を管轄する法務局と新所在地を管轄する法務局の両方あてに申請書を作り、旧所在地の法務局へまとめて提出するのが一般的な取扱いです。登録免許税も管轄ごとにかかる考え方になります。さらに、新しい管轄法務局では会社の印鑑を改めて届け出る必要があるため、印鑑届書と、代表者個人の印鑑証明書を用意しておきます。
移転先が同じ都道府県内でも管轄法務局が違うことはよくあります。法務局の管轄一覧で、旧住所と新住所それぞれの管轄を先に確認してから書類を組み立ててください。ここを取り違えると、申請書の宛先ごと作り直しになります。
申請の手順と、登記後に出す届出
手順としては、①定款の確認(定款変更の要否を判断)、②必要に応じて株主総会を開き議事録を作成、③取締役会または取締役の決定で所在場所と移転日を確定、④登記申請書・株主リスト・委任状などを作成、⑤移転日以降に管轄法務局へ申請、という流れになります。申請は窓口、郵送、オンラインのいずれでも可能ですが、方法によって必要な準備が違うので、法務局の案内を見て選んでください。
登記が完了したら、履歴事項全部証明書(登記事項証明書)と、必要なら印鑑証明書を取得します。これが「法人の住所変更がわかる書類」として、銀行や取引先、リース会社などに提出を求められることが多い書類です。何通必要になるかは提出先の数しだいなので、届出先を先にリストアップしておくと、取り直しの手間が減ります。
登記の後に続く届出も忘れないようにします。税務署への異動届出書、都道府県税事務所・市町村への届出、年金事務所への事業所所在地変更の届出、労働基準監督署・ハローワークへの届出、そして銀行口座や法人カード、許認可の変更などです。届出の様式や期限はそれぞれ異なるため、各窓口の最新の案内を確認してください。税務まわりの届出範囲に迷う場合は、顧問の税理士に相談すると整理が早くなります。
よくあるつまずきと、その避け方
よくあるのは、移転日より前に申請しようとしてしまうケースです。登記は実際に本店が移った事実を登記するものなので、移転日が到来してから申請するのが原則です。引っ越しの日程が前後しそうなときは、議事録の移転日の書き方を含めて、事前に司法書士に確認しておくと安心です。
次に多いのが、株主リストの付け忘れと、議事録の押印や署名の不足です。会社の実情(取締役会設置かどうか、株主が何人か)によって必要な書面が変わるため、法務局の申請書様式・記載例のうち、自社に当てはまるパターンを選ぶことが大切です。
そしてもうひとつ、登記だけ済ませて各種届出を止めてしまうパターン。郵便物が旧住所に届き続けたり、社会保険や労働保険の書類が行き違ったりします。登記完了日を起点に、税務・社会保険・銀行・契約先の順でチェックリストをつぶしていくと抜けにくくなります。書類の組み立てや管轄外移転の手続きに不安があるときは、登記の専門家である司法書士に相談し、税務上の届出については税理士に確認することをおすすめします。
よくある質問
法人の住所変更で定款も変更しないといけませんか?
定款の本店所在地が市区町村までの記載なら、同じ市区町村内の移転では定款変更は不要とされるのが一般的です。番地まで記載している場合や、別の市区町村へ移る場合は、株主総会の決議による定款変更が必要になります。まず自社の定款の条文を確認してください。
ひとり社長の会社でも株主総会議事録は必要ですか?
株主が自分ひとりでも、定款変更を伴う移転であれば株主総会の決議を行い、議事録を作成して添付するのが通常です。あわせて株主リストの提出を求められることが多いため、法務局の記載例を見ながら準備してください。
法人の住所変更がわかる書類として何を提出すればよいですか?
一般には、登記完了後に取得する履歴事項全部証明書(登記事項証明書)が使われます。提出先によっては印鑑証明書や、発行から一定期間内のものを求められることがあるため、事前に必要な種類と通数を確認してから取得すると無駄がありません。
登記の費用はどのくらいかかりますか?
登録免許税がかかり、管轄が変わる移転では負担の考え方も変わります。金額や納付方法は法務局の公式案内で最新の情報を確認してください。司法書士に依頼する場合の報酬は事務所ごとに異なるため、見積もりを取って比較するとよいでしょう。