採用の費用対効果の測り方|採用単価と見るべき指標
求人媒体に出し、エージェントに頼み、面接に時間を使う。採用は気づくと大きな支出になっていますが、「この金額は見合っていたのか」を説明できる会社は多くありません。この記事では、採用費用に何を含めるか、一人当たりの採用費用(採用単価)をどう出すか、単価以外に見るべき指標は何かを、小さな会社でも今月から始められる順番で整理します。
この記事の結論
- 採用の費用対効果は、まず「期間内の採用費用の合計 ÷ その期間に入社した人数」で一人当たりの採用費用(採用単価)を出すところから始めます。
- 採用費用には媒体費やエージェント報酬などの外部支出だけでなく、面接や書類選考に使った社内の時間も含めて考えると、実態に近い数字になります。
- 採用単価だけで良し悪しは判断できないため、チャネル別の応募〜内定の歩留まり、入社後の定着状況、募集開始から入社までの日数をあわせて見ます。
採用費用とは?まず「何を費用に含めるか」を決める
採用費用とは、人をひとり迎えるまでにかかった支出の合計です。分かりやすいのは求人媒体の掲載費、人材紹介会社への成功報酬、採用管理ツールの利用料、求人票や採用サイトの制作費、会社説明会や面接にかかる交通費や会場費、適性検査の費用などです。まずはこの「外に払ったお金」を一覧にするところから始めます。
見落とされやすいのが社内でかかったコストです。書類選考、日程調整、面接、内定者への連絡にかかった時間は、担当者や社長の人件費として実際に発生しています。厳密に計算しなくても、「一人の候補者に社内で何時間使ったか」をざっくり記録しておくと、外部費用と比べたときの見え方がかなり変わります。
含める範囲は会社ごとに決めて構いませんが、一度決めたら変えないことが大切です。ある期は社内人件費を入れ、次の期は外部費用だけ、という測り方をすると前年と比較できなくなります。「外部費用のみ」「外部費用+社内工数」のどちらで見るかを最初に決め、社内で共有しておきましょう。
一人当たりの採用費用(採用単価)の出し方
計算はシンプルです。ある期間にかかった採用費用の合計を、その期間に入社した人数で割ります。四半期または年度で区切るのが扱いやすく、月単位だと採用人数がゼロの月が出て数字が荒れます。「今期の採用費用の合計 ÷ 今期の入社者数」——まずこれだけ出してみてください。
次に、同じ計算をチャネル別に行います。求人媒体経由、人材紹介経由、リファラル(社員紹介)経由、自社サイトやSNS経由で、それぞれ「かかった費用 ÷ その経路からの入社者数」を出します。全体の採用単価は平均値にすぎず、実際には経路ごとに大きな差が出ることがほとんどです。どこにお金が効いていて、どこが効いていないかは、この分解で初めて見えます。
注意したいのは、入社者数が少ないときの数字の揺れです。ひとり採るのに一年かかった会社では、採用単価は「その一人にかかった全額」になります。数が少ない会社ほど、単価の高低で一喜一憂せず、複数年をならして見るか、後述の歩留まりのような途中の指標で判断する方が実用的です。
採用単価だけでは判断できない。あわせて見る4つの指標
一つ目は歩留まりです。応募数、書類通過数、面接実施数、内定数、入社数を段階ごとに数え、どこで人が減っているかを見ます。応募が集まらないのか、面接まで来ないのか、内定を出しても辞退されるのか——詰まっている場所によって打つ手はまったく違います。費用を増やすべきか、選考のやり方を変えるべきかは、ここを見ないと決められません。
二つ目は入社後の定着です。採用単価が低くても早期に退職が続けば、採り直しの費用が重なります。入社から半年、一年の時点で在籍しているかを経路別に記録しておくと、「安く採れる経路」と「長く働いてもらえる経路」が一致しないことに気づけます。三つ目は募集開始から入社までの日数です。空席が長引くほど、現場の残業や機会損失という形で見えないコストが発生します。
四つ目は、採用した人が生み出す成果との関係です。営業のように数字が追える職種なら、その人の貢献が採用費用を上回るまでにどのくらいかかったかを、おおまかにでも見ておきます。職種によっては数値化が難しいので、その場合は「予定していた業務を任せられるようになるまでの期間」で代用しても構いません。
新卒採用の費用対効果は、中途と同じものさしで測らない
新卒採用は、説明会やインターン、内定者フォローなど入社前の期間が長く、費用が発生してから入社までに一年前後かかります。そのため、その年の支出をその年の入社者数で割ると実態とずれます。新卒は「◯年卒の採用にかかった費用 ÷ ◯年卒の入社者数」と、卒業年次ごとに束ねて計算するのが筋の通った見方です。
もう一つの違いは、効果が出るまでの時間です。中途採用は入社直後から戦力になることを期待しますが、新卒は育成期間を前提にしています。新卒の費用対効果を入社一年目だけで判断すると、ほぼ必ず「割に合わない」という結論になります。数年単位の定着と成長を含めて見るか、少なくとも「何年で回収する前提か」を先に決めておきましょう。
新卒と中途のどちらに費用を寄せるか迷ったら、まず「今すぐ埋めたい穴があるか」を見ます。欠員が業務を止めているなら中途、数年後の体制づくりが目的なら新卒、という順です。両方を同じ年にやる場合も、予算と指標は分けて管理した方が、後から振り返りやすくなります。
数字が出たあと、どの順番で見直すか
採用単価が高いと感じたら、いきなり媒体を減らすのではなく、歩留まりから見てください。応募は十分あるのに書類通過が極端に少ないなら、求人票の条件と実際に採りたい人物像がずれている可能性があります。この場合、費用を減らすより先に募集要件と原稿を直す方が効きます。
面接まで進むのに内定辞退が続くなら、選考のスピードや条件提示、面接での伝え方に原因があることが多いものです。ここは費用ではなく運用の問題なので、お金をかけても改善しません。逆に、応募そのものが集まっていないなら、掲載先や訴求の見直し、あるいは予算配分の変更を検討する段階です。
チャネルの入れ替えは、いきなり全部を切り替えず、一つずつ試します。同時に複数を変えると、結果が良くても悪くても原因が分かりません。人材紹介は成功報酬型で初期の持ち出しが少ない一方、決まったときの支出は大きくなる傾向があります。媒体は先に費用が出ますが採用人数が増えるほど一人あたりは下がりやすい、という性質の違いを踏まえて、採用予定人数と資金繰りから選ぶと判断しやすくなります。
なお、採用にかかった支出の会計上・税務上の取り扱いは、内容や時期によって判断が分かれることがあります。年度をまたぐ新卒採用の費用などは、顧問の税理士に確認しておくと安心です。
人事担当がいない会社の、最小限の記録の仕方
専任の担当者がいなくても、スプレッドシート一枚で始められます。列は「応募日」「経路」「職種」「選考の最終段階」「入社日」「入社後の在籍状況」。これに、月ごとの採用関連の支出を経路別に記録する表を足せば、四半期ごとの採用単価と歩留まりは出せます。
記録は採用活動をしている最中に入れるのがコツです。終わってから思い出して埋めようとすると、応募数や辞退理由が曖昧になり、次に活かせません。面接が終わったその日に一行だけ足す、という運用にしておくと続きます。
そして、数字を見る日をあらかじめ決めておきましょう。四半期の終わりに三十分、採用単価とチャネル別の歩留まりを見て、次の四半期でどこを変えるかを一つだけ決める。これを続けるだけで、「なんとなく毎年同じ媒体に出している」状態からは抜け出せます。採用予算の規模が大きくなってきたら、労務面の設計とあわせて社会保険労務士や税理士に相談し、採用から入社後の手続きまで一本の流れとして整えておくことをおすすめします。
よくある質問
一人当たりの採用費用は、いくらくらいが適正ですか?
適正額は職種、地域、採用の緊急度、求める経験の幅によって大きく変わるため、一律の目安はありません。他社と比べるより、自社の前年や前期と比べて上がったか下がったか、その原因は何かを追う方が実用的です。判断に迷う場合は、採用したポジションが生む成果や、空席が続いた場合の影響と並べて考えてみてください。
採用費用には社員の人件費も含めるべきですか?
実態を正確に知りたいなら含める方が望ましいですが、毎回厳密に計算するのは負担です。まずは外部への支出だけで採用単価を出し、あわせて「一人の候補者に社内で何時間使ったか」を記録しておく形でも十分に判断材料になります。大切なのは、測り方を途中で変えず、同じ基準で比較し続けることです。
人材紹介と求人媒体、どちらが費用対効果が高いですか?
一概には言えず、採用予定人数と職種の希少性で向き不向きが変わります。複数名を継続して採る前提なら媒体経由の一人あたり費用が下がりやすく、専門性が高く母集団が小さい職種では紹介の方が結果につながることがあります。料金体系は各社で異なるため、最新の条件は各社の公式サイトで確認してください。
新卒採用の費用対効果は、いつ判断すればよいですか?
入社一年目だけで判断すると育成期間の分だけ不利に出るため、複数年で見るのが現実的です。採用活動を始める前に「何年で回収する前提か」を決めておき、卒業年次ごとに費用と入社者数、定着状況を束ねて記録しておくと、後から振り返りやすくなります。