会社設立の相談は誰にするか|司法書士・税理士・行政書士の役割と費用
会社をつくろうと決めたとき、多くの人が最初につまずくのが「これ、誰に相談すればいいんだろう」という問題です。司法書士、税理士、行政書士、弁護士。名前は聞いたことがあっても、どこからどこまでを誰が担当するのかは、意外と知られていません。この記事では、それぞれの役割と担当できる範囲、費用の考え方、そして「どの順番で相談すればいいか」を、これから設立する人の目線で整理します。
この記事の結論
- 会社設立の登記申請を代理できるのは司法書士(および弁護士)で、設立後の税務顧問は税理士、定款作成や許認可申請は行政書士が主に担当します。
- 迷ったら「設立後に税理士と顧問契約する予定があるか」から考え、予定があるなら税理士に相談し、提携する司法書士を紹介してもらう流れが進めやすいです。
- 専門家への報酬は事務所ごとに自由に決められるため、定款作成・電子定款認証・登記申請のどこまでが含まれるかを見積書で確認したうえで比較します。
会社設立の相談は誰にするか|まずこの順に判断する
会社設立にまつわる手続きは、大きく「定款をつくる」「定款を認証する」「法務局に登記を申請する」「設立後に税務署などへ届け出る」の4つに分かれます。相談先が分かりにくいのは、この4つを別々の専門家が担当できるからです。まずは、自分がどこで困っているかを切り分けてみてください。
判断の順番はシンプルです。①設立後に税理士と顧問契約をする予定があるか→あるなら税理士に最初に相談する。②予定がなく、登記だけ任せたいか→司法書士に直接相談する。③許認可が必要な事業(建設、飲食、古物、人材派遣など)か→行政書士に相談する。④株主が複数いる、出資や契約に争いの芽がある→弁護士に相談する。この4つのどれに当てはまるかで、最初の窓口はほぼ決まります。
多くの事務所は他士業と提携しているため、どこか1か所に相談すれば、足りない部分は紹介してもらえることが少なくありません。「全部を自分で手配しなければ」と考えなくて大丈夫です。
設立にかかる法定費用
どちらの形態でもかかる、国が定めた費用です。設立代行サービスの手数料は、これとは別にかかります。
| 項目 | 株式会社 | 合同会社 |
|---|---|---|
| 登録免許税(設立登記) | 資本金の額の1,000分の7。15万円に満たないときは1件につき15万円 | 資本金の額の1,000分の7。6万円に満たないときは1件につき6万円 |
| 定款の認証手数料 | 資本金100万円未満 3万円/100万円以上300万円未満 4万円/300万円以上 5万円 | 日本公証人連合会の手数料の案内に掲載なし |
| 定款の謄本(同一の情報の提供) | 1枚につき250円 | 日本公証人連合会の手数料の案内に掲載なし |
| 収入印紙(紙の定款の場合) | 4万円 | 日本公証人連合会の手数料の案内に掲載なし |
司法書士の役割|設立登記を代理できる専門家
会社設立の中心になる手続きが、法務局への設立登記の申請です。この登記申請を本人に代わって行えるのは、司法書士と弁護士に限られています。行政書士や税理士は、登記申請の代理そのものは担当しません。
司法書士に依頼した場合、定款の作成、公証役場での定款認証のサポート、登記申請書類の作成、法務局への申請までを一括で任せられるのが一般的です。設立時の役員構成、株式の数や種類、事業年度の決め方など、あとから変更登記が必要になりやすい部分についても相談できます。
「登記は自分でやるつもりだけれど不安」という場合も、書類のチェックだけを頼めるか聞いてみる価値があります。会社の形がやや複雑な場合(複数株主、現物出資、種類株式、本店移転の予定があるなど)は、最初から司法書士に相談したほうが手戻りが少なくなります。
税理士の役割|設立前に決めること、設立後にやること
税理士は、登記そのものではなく、その前後のお金と税務を担当します。設立前であれば、資本金の額、事業年度(決算月)をいつにするか、消費税の扱いをどう考えるか、役員報酬をどう設定するかといった論点について、相談に乗ってもらえます。これらは登記の前に決めておくべき項目で、あとから変えると手間がかかるものもあります。
設立後は、税務署・都道府県・市区町村への法人設立の届出、青色申告の承認申請、給与に関する届出などが発生します。提出には期限が定められているものがあり、期限を過ぎると受けられる扱いが変わることがあります。顧問契約を結んでいれば、これらの届出をまとめて対応してもらえることが多いです。
設立段階から税理士に相談するメリットは、提携先の司法書士を紹介してもらえるケースがあること、そして設立後の経理・記帳の流れまで見通したうえで会社の形を決められることです。判断に迷う税務の論点は、必ず税理士にご確認ください。
行政書士の役割|定款作成と電子定款、許認可の申請
定款は会社のルールを定めた書類で、株式会社の場合は公証役場での認証が必要です。この定款の作成そのものは、行政書士、司法書士、弁護士が業務として扱えます。行政書士に依頼する場合は、定款の作成と電子定款による認証手続きのサポートまでを頼むのが一般的な形です。
紙の定款には収入印紙の貼付が必要とされていますが、電子定款で作成・認証する場合は、その扱いが異なるとされています。電子定款には専用のソフトや電子証明書が必要なため、自分で用意するより専門家に頼んだほうが結果的に負担が軽くなることもあります。詳しい要件は公証役場や法務省の資料をご確認ください。
行政書士のもう一つの強みは、事業を始めるための許認可です。建設業、飲食店、古物商、運送、産業廃棄物、人材紹介など、許可や届出が要る事業では、会社の目的(定款の事業目的)の書き方が許認可の審査に影響することがあります。許認可がある業種なら、定款づくりの段階から行政書士に相談しておくと安心です。
弁護士・社会保険労務士に相談したほうがよい場面
弁護士は登記の代理もできますが、会社設立で弁護士に相談する意味が大きいのは、関係者が複数いるときです。共同創業者と出資比率をどう分けるか、誰が代表になるか、抜けるときにどうするか。こうした論点は、株主間契約や定款の設計であらかじめ決めておくと、あとの揉めごとを減らせます。既存の勤務先との競業や知的財産の扱いに不安がある場合も、早めの相談が向いています。
社会保険労務士は、人を雇う段階からの相談先です。法人は、社長ひとりでも役員報酬を出す場合は社会保険の適用を検討することになります。従業員を採用するなら、労働保険の手続き、雇用契約書、就業規則などが関わってきます。制度の詳細は日本年金機構や労働局の資料を確認しつつ、判断に迷う部分は社会保険労務士にご相談ください。
なお、ひとり社長で当面雇用の予定がないなら、設立時点では司法書士と税理士の2者で足りることが多く、社労士は採用のタイミングで探せば間に合います。
費用の考え方と、依頼から設立までの進め方
会社設立には、専門家への報酬とは別に、公証役場の定款認証にかかる費用や、登記の際の登録免許税といった実費がかかります。実費は制度で定められた計算方法があり、専門家に頼んでも自分でやっても発生します。一方、報酬額は事務所が自由に決められるため、金額は事務所ごとに異なります。相場を検索して比べるより、見積書で「何が含まれているか」を確認するほうが確実です。
見積りを比べるときは、①定款の作成が含まれるか、②電子定款での認証に対応しているか、③登記申請の代理まで含むか、④実費が別建てか込みか、⑤設立後の届出や顧問契約とのセットになっていないか、の5点を同じ条件で確認します。「設立費用が安い」ケースの中には、設立後の顧問契約を前提にしているものもあるため、総額と期間で考えてください。料金は各事務所の公式サイトや見積りで最新の内容をご確認ください。
進め方の目安はこうです。まず、会社名・本店所在地・事業目的・資本金・役員・決算月の6項目を自分なりに決めます。次に、印鑑証明書(発起人・役員分)と本人確認書類、会社実印を用意します。そのうえで専門家に相談し、定款を作成して公証役場で認証を受け、資本金を払い込み、法務局へ登記を申請します。登記が完了したら、税務署・都道府県・市区町村へ届出を行い、法人口座の開設に進みます。
相談の予約をするときは、いつまでに設立したいかを最初に伝えるのがコツです。会社設立日は登記の申請日になるため、希望日がある場合は逆算してスケジュールを組む必要があります。
よくある質問
会社設立は誰に相談するのが一般的ですか。
登記手続きだけを任せたい場合は司法書士、設立後の税務まで見据えるなら税理士が最初の窓口になりやすいです。許認可が必要な業種であれば、行政書士に定款の事業目的から相談する流れが向いています。
定款は誰が作るのですか。自分で作れますか。
定款は発起人が自分で作ることもでき、行政書士・司法書士・弁護士に作成を依頼することもできます。電子定款で認証を受けるには専用の環境が必要なため、専門家に依頼するケースが多く見られます。
税理士と司法書士の両方に頼む必要がありますか。
登記の代理は司法書士、設立後の税務届出や決算は税理士と役割が分かれるため、両方に関わってもらう形が一般的です。ただし提携している事務所も多く、一方に相談すればまとめて段取りしてもらえることがあります。
専門家に頼まず自分で会社設立することはできますか。
定款作成から登記申請まで自分で行うことも制度上は可能で、法務局の手続案内も公開されています。ただし記載の不備があるとやり直しになるため、株主が複数いる場合や許認可がある業種では、専門家への相談を検討したほうが安心です。