年末調整システムの比較|クラウドソフトの選び方と無料の限界

・採用・労務・会社のはじめかた編集部(監修:田中 祐介)

年末調整の時期が近づくと、「紙の申告書を配って集めて、電卓で検算して」という作業に毎年うんざりしている方は多いはずです。一方で、クラウドの年末調整システムは種類が多く、どれを見ればいいのか分かりにくいのも事実です。この記事では、無料でできる範囲の限界から、クラウドソフトを比べるときの軸、会社の規模や状況ごとの判断の順番までを整理します。

この記事の結論

  • 年末調整システムを選ぶときは、まず「今使っている給与計算ソフトと連携できるか」を最初の条件にすると、候補が一気に絞れます。
  • 国税庁が提供する年末調整のための無料ソフトや表計算シートは、従業員が申告書データを作る用途には使えますが、会社側の集計・給与反映・源泉徴収票作成までを一括で担うものではありません。
  • 従業員数が十数名を超える、または雇用形態がばらばらで回収に手間がかかっているなら、クラウド型の年末調整システムを検討する段階に入っていると考えられます。

年末調整システムとは何をしてくれるソフトか

年末調整の作業は、大きく「従業員から申告内容を集める」「内容をチェックする」「計算して給与に反映する」「源泉徴収票と法定調書を作って提出する」の4段階に分かれます。年末調整システムと呼ばれるものは、このうちどこを自動化するかで性格が変わります。

クラウド型の年末調整システムの多くは、従業員がスマホやPCの画面で質問に答えていくと申告書相当のデータができあがり、担当者の画面に回収状況が一覧で表示される、という作りになっています。紙の配布と回収、記入漏れの差し戻し連絡がなくなるのが、いちばん大きな変化です。

一方で、計算結果を給与に反映させたり源泉徴収票を出したりする部分は、給与計算ソフト側の機能であることが多くあります。「年末調整システム」という名前でも、収集までなのか計算・帳票まで含むのかは製品によって違うため、比較の最初に確認したいポイントです。

無料でどこまでできるのか|国税庁のソフトとエクセルの限界

国税庁は、年末調整の申告書データを作成するための無料の仕組みを公開しています。従業員が自分で控除申告書のデータを作り、会社に提出する、という流れを想定したものです。会社側が受け取ったデータを取り込むには、対応する給与システム側の準備が必要になるため、「入れればすぐ全部が終わる」性質のものではありません。最新の対応状況や動作環境は、国税庁の公式ページで確認してください。

エクセルで作った年末調整シートを使っている会社もあります。従業員が数名で、扶養控除や保険料控除の内容がほぼ毎年同じなら、それで回っているケースもあるでしょう。ただし、税額表や様式が変わったときに自分でメンテナンスする必要があり、担当者が一人しかいないと属人化しやすいという弱点があります。

無料で続けるか、有料のシステムに移るかの判断は、「回収にかかる時間」「差し戻しの回数」「計算の検算にかかる時間」を一度ざっくり書き出してみると見えてきます。担当者が年末に何日も潰れているなら、システム化を検討する段階だと考えてよいでしょう。

クラウドの年末調整システムを比較する5つの軸

一つめは給与計算ソフトとの連携です。年末調整の結果は12月または1月の給与に反映されるため、給与側と分断されていると結局手入力が発生します。すでに給与計算ソフトを使っているなら、同じシリーズの年末調整機能をまず見て、それで足りるかを判断するのが近道です。

二つめは従業員側の使いやすさ、三つめは担当者側の進捗管理機能です。スマホだけで完結するか、質問形式のガイドがあるか、未提出者に自動でリマインドできるか。ここが弱いと、結局担当者が個別に声をかけて回ることになります。四つめは電子化への対応で、保険料控除証明書などの電子データを取り込めるか、作成したデータをどう保存するかは製品ごとに差があります。電子帳簿保存法など保存に関する要件は制度側の資料もあわせて確認してください。

五つめは料金体系と契約単位です。従業員一人あたりで課金されるのか、年末調整の時期だけ使えるのか、他の労務機能とセットなのかで総額の考え方が変わります。金額は改定されることがあるため、各社の公式サイトで最新の料金を確認してください。

よく名前の挙がるサービスは、どう位置づけが違うのか

検索でよく並ぶのは、労務手続き全般をクラウドで扱うタイプ(SmartHRやオフィスステーションなど)と、会計・給与のシリーズの一機能として年末調整を持つタイプ(マネーフォワード クラウドやfreeeなど)です。前者は入社手続きや社会保険の届出と従業員情報を共有できる点が特徴で、後者は給与計算・会計まで同じデータで流れる点が特徴です。

どちらが向くかは、会社の「困りごとの中心」で決まります。入退社が多く社会保険の手続きに時間を取られているなら労務プラットフォーム型、経理と労務を同じ人が兼務していて会計まで一気通貫にしたいならシリーズ型、という見方が実務的です。

加えて、電子申請までシステム内で完結したいか、社労士や税理士と画面を共有したいか、という観点もあります。顧問の専門家が特定のソフトに慣れている場合、そこに合わせたほうが依頼のやりとりが速くなることもあるので、契約前に一度相談しておくと判断しやすくなります。

会社の状況別|この順番で見れば決まる

従業員が自分ひとり、または役員だけの会社なら、まずは今の給与計算の方法を維持したまま、国税庁の仕組みや給与ソフトの標準機能で足りるかを確認します。件数が少ないうちは、新しいシステムを入れる手間のほうが大きくなることもあります。

従業員が数名から十数名で、パートやアルバイトを含む場合は、回収のしやすさを最優先に見ます。紙を配っても集まらない、記入漏れが多いという悩みが中心なら、従業員側がスマホで完結できるクラウド型を候補にします。すでに給与計算ソフトを使っているなら、同シリーズの年末調整機能→他社の専用サービス、の順で比べると無駄がありません。

入退社が頻繁、拠点が分かれている、外国語対応が必要といった事情があるなら、労務手続き全体を扱うタイプを軸に検討します。いずれの場合も、無料トライアルや資料請求で実際の入力画面を見て、自社の従業員が迷わず進められそうかを確かめてから決めるのが安全です。

導入するならいつ、何から動くか

年末調整は例年11月ごろから従業員への案内が始まるため、システムを新しく入れるなら夏から初秋のうちに検討を終えておくと余裕があります。すでに秋に入っている場合は、今年は現状のやり方で乗り切り、来年に向けて年明けから比較を始めるという判断も現実的です。

進め方は、①昨年の年末調整でかかった作業を工程ごとに書き出す、②給与計算ソフトとの連携条件を確認する、③候補を2〜3社に絞って画面を試す、④従業員への案内文と回収スケジュールを作る、の順です。用意しておくと話が早いのは、従業員名簿(雇用形態を含む)、現在使っている給与ソフト名、昨年の申告書の様式です。

なお、控除の判定や源泉徴収票の記載内容など、税務・労務の取り扱いに迷う点は、会社ごとの事情によって結論が変わることがあります。システムの選定とあわせて、顧問の税理士や社会保険労務士に一度確認しておくと、切り替えの年でも落ち着いて進められます。

よくある質問

年末調整のソフトは無料のものだけで済ませられますか

従業員が申告内容のデータを作る部分は、国税庁が提供する無料の仕組みで対応できる場合があります。ただし会社側の集計や給与への反映、源泉徴収票の作成までを含めると、給与計算ソフト側の対応が必要になることが多く、無料だけで全工程をまかなうのは難しいことがあります。

エクセルでの年末調整を続けていても差し支えありませんか

従業員が少なく、様式変更に自分で対応できる体制があるなら、続けている会社もあります。ただし税額表や様式の改定に毎年追従する手間と、担当者一人に知識が集中するリスクがあるため、人数が増えてきたタイミングで見直すことをおすすめします。

給与計算ソフトを変えずに年末調整だけクラウド化できますか

できる場合もありますが、連携に対応していないと結果を手入力することになり、効率化の効果が薄れます。検討中のサービスが今の給与ソフトとデータ連携できるかを、各社の公式サイトのサポート情報で先に確認してください。

導入を決めるのに適した時期はいつですか

年末調整の案内は例年11月ごろから始まるため、夏から初秋までに比較と申し込みを終えておくと運用に余裕が出ます。秋以降に検討を始めた場合は、今年は従来の方法で進め、来年分から切り替える計画にするのも現実的な選択です。

あわせて読みたい

「採用・労務」の記事をすべて見る →

次に決めること

記事をすべて見る(1087本)→

この記事は一般的な情報をまとめたものです。税務・法務・労務の個別の判断については、税理士・弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。 料金や条件は変わることがあるため、お申し込み前に必ず各サービスの公式サイトで最新の内容をご確認ください。