変形労働時間制・フレックスの労働条件通知書|記入例と注意点

・採用・労務・会社のはじめかた編集部(監修:田中 祐介)

「うちは月単位で忙しさに波があるから変形労働時間制にしたい」「エンジニアはフレックスにしたい」。制度自体は小さな会社でも導入できますが、つまずきやすいのは労働条件通知書の書き方です。始業・終業時刻が日によって違う、あるいは本人が決める、という状態をどう紙に落とすのか。この記事では、変形労働時間制とフレックスタイム制それぞれの労働時間欄の記入例と、リモートワークや年俸制を組み合わせるときの注意点を、確認すべき順番に沿って整理します。

この記事の結論

  • 変形労働時間制の労働条件通知書は、始業・終業時刻を一つに書くのではなく「勤務パターンごとの時刻」と「勤務パターンの組み合わせは各期間の勤務カレンダーによる」という形で書き、就業規則や労使協定の該当条文を併記するのが基本です。
  • フレックスタイム制の労働条件通知書には、フレックスタイム制である旨、清算期間、標準となる1日の労働時間、コアタイムとフレキシブルタイムの開始・終了時刻を記載します。コアタイムを設けない場合はその旨を書きます。
  • 変形労働時間制もフレックスタイム制も、労働条件通知書だけでは足りず、就業規則の定めと(制度によっては)労使協定の締結・届出がセットで必要になるため、書面の順番を先に確認してください。

そもそも労働条件通知書の労働時間欄には何を書くのか

労働条件通知書は、雇い入れのときに労働条件を書面などで明示するための書類です。労働時間に関する部分では、始業・終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇、交替制勤務がある場合の就業時転換に関することなどを明示することが求められています。固定の勤務時間だけの会社なら「始業9時00分 終業18時00分 休憩12時00分〜13時00分」と書けば足ります。

問題になるのは、始業・終業時刻が一つに定まらない働き方です。変形労働時間制では日や週によって所定労働時間が変わり、フレックスタイム制では始業・終業時刻を従業員本人が決めます。それでも「書かなくてよい」わけではなく、決め方のルールそのものを書く、という発想に切り替えるのがポイントです。

厚生労働省が公開している労働条件通知書のモデル様式にも、変形労働時間制やフレックスタイム制を想定した記載欄があります。ゼロから文案を考えるより、モデル様式の構造に自社の内容を流し込むほうが漏れが出にくいので、まずは最新の様式を所管官庁のサイトで確認してください。

変形労働時間制の労働条件通知書、記入例と書き方の順番

変形労働時間制は、一定の期間を平均して週の法定労働時間の枠に収まっていれば、特定の日や週に法定労働時間を超えて働かせることができる仕組みです。1か月単位、1年単位、1週間単位などの類型があり、どれを使うかで必要な手続きが変わります。労働条件通知書を書く前に、まず「どの類型か」を決めてください。

1か月単位の変形労働時間制の場合、労働時間欄はたとえば次のような形になります。「変形労働時間制(1か月単位)。毎月1日を起算日とする1か月を平均し、1週間あたりの労働時間が法定労働時間を超えない範囲で、各日の所定労働時間を定める。勤務パターンは、A勤務 始業9時00分/終業18時00分(休憩12時00分〜13時00分)、B勤務 始業10時00分/終業20時00分(休憩13時00分〜14時00分)、C勤務 休日。各日の勤務パターンは、毎月前月◯日までに交付する勤務カレンダーによる。詳細は就業規則第◯条による。」

1年単位の変形労働時間制なら、対象期間と起算日、対象期間中の労働日と労働日ごとの労働時間の定め方(年間カレンダーによる旨)を書きます。ここで大事なのは、変形期間の起算日を必ず特定することと、各日の労働時間を事前に特定する仕組みが実際に回っていることです。「忙しい日は長く働かせる」という運用の実態だけがあって、事前のカレンダー交付がないと、制度として認められないことがあります。

書面の順番としては、①就業規則に変形労働時間制の定めを置く、②必要な労使協定を締結し、労働基準監督署へ届け出る(1年単位の場合など)、③個々の労働条件通知書にその内容を反映する、という流れになります。通知書だけ先に整えても、根拠となる規程がなければ制度として成り立ちにくい点に注意してください。

フレックスタイム制の労働条件通知書、記入例とコアタイムの書き方

フレックスタイム制は、清算期間の総労働時間をあらかじめ定めたうえで、その範囲内で始業・終業時刻を従業員が決められる制度です。労働条件通知書には、①フレックスタイム制である旨、②清算期間とその起算日、③清算期間における総労働時間(または標準となる1日の労働時間)、④コアタイムの有無と時刻、⑤フレキシブルタイムの時刻を書きます。

記入例はこうなります。「フレックスタイム制。始業および終業の時刻は労働者の決定に委ねる。清算期間:毎月1日から当月末日まで。標準となる1日の労働時間:8時間00分。コアタイム:11時00分から15時00分まで。フレキシブルタイム:始業 7時00分から11時00分まで/終業 15時00分から20時00分まで。休憩:12時00分から13時00分まで。詳細は就業規則第◯条および労使協定による。」

コアタイムを設けないスーパーフレックスにする場合は、「コアタイム:定めなし」と明記します。空欄にすると、コアタイムがないのか書き忘れたのかが区別できず、後から認識のずれが起きます。同様に、フレキシブルタイムを設けない場合もその旨を書いておくと安全です。

フレックスタイム制は、就業規則に始業・終業時刻を労働者の決定に委ねる旨を定めたうえで、労使協定で対象者の範囲・清算期間・総労働時間などを定めることが必要とされています。清算期間が1か月を超える場合は、労使協定の届出が求められるなど扱いが変わります。自社がどちらに当たるかは、所管官庁の資料で最新の要件を確認してください。

リモートワーク・在宅勤務があるときの書き方

在宅勤務やリモートワークを前提にする場合、労働条件通知書で確認したいのは「就業の場所」の欄です。雇入れ直後の就業場所に加えて、変更の範囲も明示することが求められる扱いになっています。在宅勤務を認めるなら、「就業の場所:本社(東京都◯◯区◯◯)および労働者の自宅。会社の指示により変更することがある」といった形で、自宅を就業場所に含めて書いておくと実態と合います。

リモートワークそのものは労働時間制度ではないので、フレックスや変形労働時間制と組み合わせることもできます。ただし、事業場外みなし労働時間制を使えるかどうかは別の論点で、上司の指示に随時応じる義務がある状態など、労働時間を算定しがたいとは言えない場合には適用が難しいとされています。在宅だからみなし、という短絡は避けてください。

実務では、労働条件通知書の就業場所と労働時間の欄を整えたうえで、在宅勤務規程や通信費・光熱費の負担、中抜けの取り扱い、勤怠の記録方法を別途ルール化しておくとトラブルが減ります。費用負担の方法によっては税務上の取り扱いが変わることがあるため、負担額の決め方は税理士にも確認しておくと安心です。

年俸制・みなし残業と組み合わせるときの注意点

年俸制は賃金の決め方であって、労働時間の制度ではありません。年俸制だから残業代が不要、という整理にはならないのが基本の考え方です。労働条件通知書では、年俸額とその支払方法(何回に分けて支払うか)、賞与相当部分を含むのかどうかを分けて書き、労働時間欄は変形・フレックスの記載を別途きちんと入れます。

固定残業代(みなし残業)を入れる場合は、基本給部分と固定残業代部分の額、固定残業代が何時間分の時間外労働に相当するか、その時間を超えた場合は追加で支払う旨、の3点を明示するのが一般的な整理です。フレックスタイム制では清算期間を通じて時間外労働を計算するため、固定残業代の設計が複雑になりやすく、設計時点で社会保険労務士に見てもらうことをおすすめします。

また、変形労働時間制やフレックスタイム制を採用していても、時間外労働をさせるには三六協定の締結・届出が必要です。労働条件通知書の「所定時間外労働の有無」欄に「有」と書くなら、協定がそろっているかをあわせて確認してください。

導入前に確認する順番と、専門家に相談すべきタイミング

迷ったら、この順で確認してください。①どの制度を使うか(1か月単位の変形、1年単位の変形、フレックス、通常の固定時間)を決める。②その制度に必要な就業規則の条文を整える。③必要な労使協定を締結し、届出が要るものは労働基準監督署へ出す。④その内容を労働条件通知書に落とし込む。⑤勤怠の記録方法と、勤務カレンダーや清算期間の運用を決める。通知書は最後です。

制度選びの目安としては、月ごと・季節ごとに繁閑の波がはっきりしていて会社側が勤務日を指定したいなら変形労働時間制、働く時間帯を本人の裁量に任せたい職種が中心ならフレックスタイム制、という分け方が出発点になります。両方を同じ会社で職種別に使い分けることもできますが、その場合は就業規則で対象者の範囲を明確にしておく必要があります。

常時10人以上の労働者がいる事業場では就業規則の作成・届出が求められます。人数がそれ未満でも、変形労働時間制やフレックスタイム制を使うなら、根拠となる規程を書面で残しておくほうが後々の説明がしやすくなります。

制度設計と書面の整合は、後から直そうとすると不利益変更の論点が出てきて手間が増えます。導入を決めた段階で、就業規則・労使協定・労働条件通知書の3点をまとめて社会保険労務士に確認してもらうのが、結果的にいちばん早い進め方です。賃金制度の変更が税務や社会保険の負担に影響する場合は、あわせて税理士にもご相談ください。

よくある質問

労働条件通知書に「就業規則による」とだけ書いてもよいですか。

始業・終業時刻など明示が求められる事項について、勤務形態が複数あるなどの事情がある場合に、具体的な内容を記載したうえで就業規則の該当条文を併記する形は実務でよく使われます。ただし条文番号だけを書いて具体的な時刻をまったく書かない形は、説明として不十分と受け取られることがあるため、勤務パターンや清算期間などの要点は通知書にも書いておくのが安全です。

フレックスタイム制でコアタイムを設けない場合、通知書はどう書きますか。

「コアタイム:定めなし」と明記します。空欄のままにすると書き忘れと区別がつかず、後から認識の食い違いが起きやすくなります。フレキシブルタイムの範囲を設ける場合は、その開始・終了時刻もあわせて記載してください。

変形労働時間制の勤務カレンダーは、いつまでに従業員へ示す必要がありますか。

各日・各週の労働時間を事前に特定することが制度の前提とされているため、変形期間が始まる前に示すのが基本です。就業規則で「前月◯日までに交付する」といった形で期限を定め、実際にその通り運用しているかを記録に残しておくと説明しやすくなります。具体的な期限の妥当性は社会保険労務士にご確認ください。

年俸制にすれば残業代の計算は不要になりますか。

年俸制は賃金の決め方であり、労働時間制度とは別のものとして扱われるのが一般的な考え方です。管理監督者に当たるかどうかや固定残業代の設計によって取り扱いが変わるため、自社の設計が適切かどうかは社会保険労務士に確認することをおすすめします。

あわせて読みたい

「採用・労務」の記事をすべて見る →

次に決めること

記事をすべて見る(1087本)→

この記事は一般的な情報をまとめたものです。税務・法務・労務の個別の判断については、税理士・弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。 料金や条件は変わることがあるため、お申し込み前に必ず各サービスの公式サイトで最新の内容をご確認ください。