バーチャルオフィスとレンタルオフィスの違い|どちらを選ぶかの基準

・住所・オフィス・会社のはじめかた編集部(監修:田中 祐介)

会社の住所をどうするかは、設立準備のかなり早い段階でぶつかる問題です。バーチャルオフィス、レンタルオフィス、シェアオフィス、コワーキングスペース——似た言葉が並んでいて、どれが自分に合うのか分かりにくいと感じる方は多いはずです。この記事では、それぞれが何を提供しているサービスなのかを整理したうえで、「働く場所が要るか」「来客があるか」「登記できるか」という順番で選び分ける方法をまとめます。

この記事の結論

  • バーチャルオフィスは住所や郵便の取り扱いなどの「機能」を借りるサービスで、レンタルオフィスは鍵のかかる専有の執務スペースを借りるサービスです。
  • 作業場所が自宅やカフェで足りるならバーチャルオフィス、毎日こもって働く場所や資料を置く場所が要るならレンタルオフィスが基本の分かれ目になります。
  • どちらを選ぶ場合も、法人登記に使えるか、会議室が使えるか、郵便物をどう受け取れるかを、契約前に運営会社へ個別に確認してください。

バーチャルオフィスとレンタルオフィスの違いは「場所を借りるかどうか」

いちばん大きな違いは、専有して使える物理的なスペースがあるかどうかです。バーチャルオフィスは、事業用の住所、郵便物の受け取りや転送、電話番号や電話代行といった「オフィスの機能の一部」を借りるサービスで、基本的に毎日そこに座って働くことは想定されていません。名前のとおり、実体としての部屋を借りるわけではないのです。

一方レンタルオフィスは、個室や区切られた執務スペースを専有で借りるサービスです。机や椅子、インターネット回線などがあらかじめ用意されていて、契約するとすぐに働き始められる形になっているものが一般的です。鍵がかかる個室であれば、資料や機材を置いたまま退勤することもできます。

この違いから、費用の水準も使い方も変わります。バーチャルオフィスは住所という機能に絞っている分だけ負担が軽く、レンタルオフィスは空間を占有する分だけ重くなる、という関係で理解しておくと迷いにくくなります。具体的な金額は立地や広さで大きく変わるので、各社の公式サイトで最新の料金を確認してください。

シェアオフィス・コワーキングはどこが違う?レンタルオフィスの定義を整理する

レンタルオフィスという言葉には法律上の決まった定義があるわけではなく、運営会社によって指す範囲が少しずつ違います。ただ実務上は、「専有の執務スペースを月単位などで借りられるサービス」を指すことがほとんどです。個室タイプのほか、フロア内の固定席を専有するタイプもあります。

シェアオフィスやコワーキングスペースは、共用の空間を複数の利用者で分け合って使う形が中心です。席が決まっていないフリーアドレス型が多く、その日空いている席を使います。作業環境としては十分でも、機材を置きっぱなしにできない、オンライン会議の声が周囲に届く、といった制約が出やすい点は押さえておきましょう。

整理すると、専有の度合いが強い順に「レンタルオフィス(個室)→固定席→フリーアドレスのコワーキング→バーチャルオフィス(スペースなし)」という並びになります。バーチャルオフィスの別の言い方として「住所貸し」「ビジネスアドレスサービス」などが使われることもありますが、指しているものはおおむね同じです。

どちらを選ぶか:この順番で3つだけ確認する

まず1つめ。毎日こもって働く場所が必要かどうかです。自宅に仕事ができる机があり、集中できる環境が確保できているなら、バーチャルオフィスで足ります。逆に、自宅では家族の生活音で商談ができない、在庫や機材を置く場所が要る、という状態ならレンタルオフィスが現実的な選択肢になります。

2つめは、人が出入りするかどうかです。取引先が訪ねてくる、面接をする、スタッフを増やす予定がある——こうした場合は、会議室や応接スペースが使える環境が要ります。なおバーチャルオフィスでも、同じ運営会社の会議室を時間単位で予約して使える形を用意しているところがあります。来客が月に数回程度なら、この組み合わせで足りることも多いです。

3つめは、事業の性質上、対外的にどこまで実体を示す必要があるかです。許認可が要る業種では、事務所の実体や設備について行政側が要件を定めていることがあり、住所だけの契約では要件を満たさないと判断されることがあります。該当しそうな業種なら、契約前に所管の窓口や行政書士・司法書士に確認しておくと安全です。

法人登記と会議室:契約前に運営会社へ聞いておくこと

法人の本店所在地としてその住所を使えるかどうかは、必ず事前に確認します。バーチャルオフィスでもレンタルオフィスでも、プランによって登記利用の可否が分かれていることがあり、「借りたけれど登記には使えなかった」という行き違いが起きやすいところです。申し込みフォームの備考欄ではなく、問い合わせて回答をもらっておくと確実です。

次に郵便物の扱いです。届いた郵便をどう知らせてくれるのか、転送の頻度はどうか、本人限定受取郵便や書留のような対面が必要なものに対応しているか。税務署や年金事務所からの書類は期限があるものも含まれるので、受け取りの遅れが実務に直結します。

会議室については、予約のしやすさ、利用できる時間帯、他拠点の会議室も使えるかを見ておきます。リージャスのように全国・海外に拠点を持つ運営会社では、複数拠点の施設を使える形のプランが用意されていることもあります。出張が多い事業なら、この点が効いてきます。条件と料金は各社の公式サイトで確認してください。

レンタルオフィスのメリット・デメリットとバーチャルオフィスの向き不向き

レンタルオフィスのメリットは、内装工事や什器の購入をせずに執務環境が手に入ること、契約期間が比較的短い単位で設定されているものが多く、人数の増減に合わせて移りやすいことです。受付や清掃、インターネット回線などが含まれていれば、管理の手間も減ります。デメリットは、同じ広さの賃貸オフィスと比べると割高になりやすいこと、レイアウトや内装の自由度が低いこと、人数が増えたときに同じビル内で拡張できるとは限らないことです。

バーチャルオフィスが向くのは、オンライン中心で完結する事業、ひとりで動いている段階、自宅を公開したくない事業者です。ネットショップや士業以外のコンサルティング、受託開発など、客先か自宅で作業が完結する業態と相性がよいといえます。

逆に向きにくいのは、来客が日常的にある事業、現物の在庫を扱う事業、銀行口座の開設や与信の場面で事務所の実体をていねいに説明する必要がある事業です。口座開設の審査基準は金融機関ごとに異なり、住所の形態だけで決まるわけではありませんが、事業内容を説明できる資料を用意しておく姿勢は共通して求められます。

決めたあとの手順:いつ、何を用意して、どこに出すか

会社設立前なら、まず住所を決めてから定款の作成に入ります。本店所在地を定款に書き込み、公証役場での認証(株式会社の場合)を経て、法務局に設立登記を申請する流れです。住所が確定していないと手続きが止まるので、申し込みから利用開始までにかかる日数を運営会社に確認し、逆算して契約しておきましょう。

すでに会社があり、住所を移す場合は、法務局への本店移転登記が必要です。登記が済んだら、税務署・都道府県税事務所・市区町村、年金事務所、労働基準監督署やハローワーク(従業員がいる場合)への届出が続きます。取引先への通知、請求書や名刺、ウェブサイトの表記、銀行への住所変更も忘れやすいところです。

契約時に用意を求められるのは、一般的に本人確認書類、法人であれば登記事項証明書、事業内容が分かる資料などです。犯罪収益移転防止法などの観点から確認が行われるため、審査に一定の日数がかかることがあります。余裕を持って進めてください。

なお、住所の形態によって税務上の取り扱いや許認可の可否が変わる場面もあります。本店移転登記の手続きは司法書士、届出や経費の扱いは税理士、許認可の要件は行政書士や所管官庁に、契約前の段階で一度相談しておくと、後戻りを避けられます。

よくある質問

バーチャルオフィスの住所で法人登記はできますか?

運営会社が登記利用を認めているプランであれば、その住所を本店所在地として登記する形が一般的にとられています。ただしプランによって可否が分かれることがあるため、契約前に運営会社へ確認してください。登記手続き自体の不明点は司法書士に相談すると確実です。

バーチャルオフィスでも会議室やワークスペースは使えますか?

運営会社によっては、会議室やコワーキングスペースを時間単位で予約して使える形を用意しています。来客が月に数回程度なら、この組み合わせで足りることも多いです。利用条件や料金は各社の公式サイトで確認してください。

レンタルオフィスとシェアオフィスはどう違いますか?

レンタルオフィスは個室や固定席など専有スペースを借りる形が中心で、シェアオフィスやコワーキングは共用空間を複数の利用者で使う形が中心です。ただし呼び方は運営会社ごとに揺れがあるので、名称ではなく「専有できるか」「鍵がかかるか」で実態を確認するのが確実です。

最初はバーチャルオフィスで、後からレンタルオフィスに移れますか?

移ることは可能ですが、本店所在地として登記している場合は本店移転登記と各種届出が必要になります。同じ運営会社内でプラン変更できるなら住所が変わらず済むこともあるため、将来の拡張を見込むなら契約前に確認しておくとよいでしょう。

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この記事は一般的な情報をまとめたものです。税務・法務・労務の個別の判断については、税理士・弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。 料金や条件は変わることがあるため、お申し込み前に必ず各サービスの公式サイトで最新の内容をご確認ください。