入社手続きをオンライン化するツールの比較|ペーパーレス化の進め方

・採用・労務・会社のはじめかた編集部(監修:田中 祐介)

入社のたびに紙の書類を印刷して、郵送して、返ってきたものを転記して、役所に出す。人数が少ないうちは何とかなりますが、採用が続くと一気に負担が増える部分です。入社手続きをオンライン化するツールは種類が増えていて、SmartHRやオフィスステーションといった名前を聞いたことがある方も多いと思います。この記事では、どのツールが自社に合うかを判断するための見方と、ペーパーレス化を実際に進める手順を整理します。

この記事の結論

  • 入社手続きのオンライン化ツールは、本人に情報を入力してもらう「収集」と、行政への「電子申請」のどちらを重視するかで選び分けるのが基本です。
  • 労務手続きを社内で回すなら労務管理クラウド型、社会保険の電子申請を数多く扱うなら申請特化型が候補になり、給与計算ソフトに付属する入社手続き機能で足りる会社もあります。
  • ペーパーレス化は全社一斉ではなく、次の入社者1名から試し、入力依頼・回収・申請の流れを通して確認してから範囲を広げると失敗しにくくなります。

入社手続きのどこが手間なのか、まず分解する

入社手続きは一つの作業ではなく、いくつもの小さな作業の集まりです。大きく分けると、①本人からの情報収集(氏名・住所・マイナンバー・扶養情報・基礎年金番号・雇用保険被保険者番号・口座情報など)、②雇用契約書の締結、③社会保険・雇用保険の資格取得手続き、④給与計算システムや勤怠システムへの登録、⑤社内アカウントや備品の準備、という流れになります。

この中で紙とメールのやりとりが発生しているのはどこかを、まず書き出してみてください。多くの会社では、①の情報収集と、それを②〜④に何度も転記する部分に時間が取られています。同じ住所を三つの書類に書き写しているなら、そこがオンライン化の効果が出やすい場所です。

逆に、③の行政手続きを社労士にすべて委託していて、社内では情報を渡すだけという会社もあります。その場合は、社内に申請機能を持つツールを入れるより、情報収集と受け渡しをきれいにする方が先です。どこが自社のボトルネックかを決めてから、ツールを見に行くと迷いにくくなります。

入社手続きツールは大きく3タイプ、どれを見るか

一つめは労務管理クラウド型です。SmartHRなどがこのタイプで、入社者本人がスマホやPCから情報を入力し、そのデータが従業員データベースになり、そこから雇用契約の電子締結や社会保険の届出データ作成までつながる設計になっています。従業員が自分で入力する前提なので、入社が継続的に発生する会社や、従業員にも使ってもらう運用を想定している会社に向きます。

二つめは申請特化型です。オフィスステーションなどは、社会保険・雇用保険・労働保険の電子申請を幅広くカバーすることに重心があります。手続きの種類が多い、拠点や事業所が分かれている、社労士事務所として多数の顧問先を扱う、といった場合に検討しやすいタイプです。必要な機能だけを選ぶ構成になっている製品もあるので、公式サイトで機能の単位を確認してください。

三つめは、給与計算ソフトや勤怠管理ソフトに付いている入社手続き機能です。すでに使っている給与ソフトに入社情報の収集機能があるなら、まずそれで足りるかを試す価値があります。従業員が十数名までで、入社が年に数回という会社なら、ツールを増やさない選択も十分現実的です。

SmartHRとオフィスステーション、どう考えて選ぶか

この二つは検索でよく並べて比べられますが、同じ土俵の製品というより、出発点が違う製品だと考えると整理しやすくなります。従業員データを一元管理し、そこから年末調整や人事情報の活用まで広げていきたいなら労務管理クラウド型の発想が合います。行政手続きの電子申請を正確に数多くさばきたいなら申請特化型の発想が合います。

判断の順番としては、まず「従業員本人に入力してもらう運用ができるか」を見てください。全員がスマホを持ち、メールアドレスを配れるなら本人入力型が回ります。次に「社会保険手続きを社内でやるか、社労士に任せるか」を見ます。社内で完結させたいなら電子申請の対応範囲を、社労士に任せるならデータの受け渡し方法を確認します。最後に、給与ソフト・勤怠ソフトとの連携があるかを見ます。

どちらも無料トライアルや資料請求の窓口が用意されていることが多いので、架空の入社者を1名登録して、入力依頼から回収、申請データ作成までを一度通してみるのは、有効な確認方法のひとつです。画面を触ると、自社の運用と合わない部分がすぐ見えてきます。料金体系は人数や機能の選び方で変わるため、各社の公式サイトで最新の料金を確認してください。

比較で見るべきチェック項目

機能一覧を眺めても違いが分かりにくいので、次の観点に絞って比べると判断しやすくなります。①入社者本人が入力する画面がスマホで完結するか、②マイナンバーの収集と保管の仕組みがあるか、③雇用契約書の電子締結ができるか、④社会保険・雇用保険の電子申請にどこまで対応しているか、⑤自社の給与計算ソフト・勤怠ソフトと連携できるか、⑥既存の従業員データをCSVなどで取り込めるか。

加えて、運用面も見ておきたいところです。管理者を何人置けるか、権限を分けられるか、社労士など外部の担当者にアクセス権を渡せるか。入社手続きは個人情報の塊なので、誰がどこまで見られるかの設計は後から変えにくい部分です。

サポートの形も確認しておきます。導入時の初期設定を手伝ってもらえるのか、チャットやメールでの問い合わせ窓口があるのか。バックオフィス担当が1人しかいない会社では、詰まったときに聞ける先があるかどうかが実務上の差になります。

ペーパーレス化の進め方:次の入社者1名から始める

全社一斉に切り替えると、最初のつまずきが全員分になってしまいます。おすすめしたいのは、次に入社する1名を対象に、ツールの入力依頼から資格取得手続きまでを通してやってみる方法です。うまくいかなかった箇所をメモしておき、二人目、三人目で修正していきます。

具体的な順番としては、内定を出した時点で会社情報・事業所情報・保険料率などの初期設定を済ませ、入社日の2週間前をめどに本人へ入力依頼を送ります。入社日の数日前までに入力内容を確認し、不足があれば差し戻します。入社日以降、社会保険・雇用保険の資格取得の届出を期限内に行い、あわせて給与計算システムへデータを取り込みます。期限は手続きごとに定められているので、日本年金機構やハローワークの案内で確認してください。

紙で残すか電子で残すかの判断は、書類の種類ごとに分かれます。労働者名簿や賃金台帳などの法定帳簿、税務関係の書類、雇用契約書では、それぞれ保存のルールが異なります。電子帳簿保存法の要件を含め、どの書類をどの形で保存するかは所管官庁の資料を確認し、判断に迷う部分は税理士や社会保険労務士にご確認ください。

よくあるつまずきと、その回避のしかた

一つめは、入社者が入力してくれないケースです。案内メールが迷惑メールに入る、URLの意味が分からない、入力に必要な書類(年金手帳や雇用保険被保険者証、扶養家族の情報)が手元にない、といった理由が多く見られます。内定通知の段階で「入社前にオンラインで情報を入力してもらうこと」「何を手元に用意するか」を伝えておくと、当日の問い合わせが減ります。

二つめは、既存の従業員データが揃っていないために新旧が混在するケースです。新しい入社者はツール上に、既存社員はExcelに、という状態が長く続くと、結局どちらも見ることになります。移行のタイミングで、既存社員分も一度まとめて取り込む計画を立てておくと、後が楽になります。

三つめは、電子申請の準備不足です。電子申請にはGビズIDなどの事前準備が必要になる場合があり、取得には日数がかかることがあります。ツールの契約と同時に、申請に必要なアカウントの準備状況も確認しておいてください。社会保険や雇用保険の手続きの進め方、電子申請の可否については、社会保険労務士に相談すると自社の状況に合わせた整理がしやすくなります。雇用契約や就業規則の扱いで判断に迷うときも、社会保険労務士や弁護士への相談をご検討ください。

よくある質問

SmartHRとオフィスステーションはどちらが安いですか?

料金は従業員数や選ぶ機能の構成によって変わるため、一概には比べられません。自社の人数と必要な機能を書き出したうえで、同じ条件で各社に見積もりを依頼すると比べやすくなります。最新の料金体系は各社の公式サイトでご確認ください。

入社手続きをオンライン化すると、紙の書類は一切なくなりますか?

すべてが電子で完結するとは限りません。書類の種類によっては紙での保存や原本の確認が求められる場合があり、運用も会社ごとに異なります。どの書類を電子で保存できるかは所管官庁の資料を確認し、判断に迷う部分は税理士や社会保険労務士にご相談ください。

従業員が数名の会社でも入社手続きツールは必要ですか?

入社が年に数回程度なら、すでに使っている給与計算ソフトの機能で足りることもあります。採用が継続的に発生してきた、複数の担当者で手続きを分担している、といった段階になったら導入を検討するタイミングです。

入社手続きのツールを入れれば、社労士に頼まなくてもよくなりますか?

ツールで作業は効率化できますが、手続きの判断や例外的なケースへの対応は別の問題です。社会保険の加入要件や雇用契約の内容など、判断が必要な部分は社会保険労務士に確認しながら進める形が現実的です。

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この記事は一般的な情報をまとめたものです。税務・法務・労務の個別の判断については、税理士・弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。 料金や条件は変わることがあるため、お申し込み前に必ず各サービスの公式サイトで最新の内容をご確認ください。