年末調整の仕訳|還付・徴収と預り金の処理の仕方

・会計・税務・会社のはじめかた編集部(監修:田中 祐介)

年末調整は「計算」よりも「記帳」でつまずく人が多い論点です。還付が出たのに預り金の残高が合わない、1月に納付する金額がいくらになるのか分からない——原因のほとんどは、預り金勘定の動きを追えていないことにあります。この記事では、還付・徴収それぞれの仕訳の形と、精算のタイミングごとの処理、住民税との違いを、判断の順番に沿って整理します。

この記事の結論

  • 年末調整の仕訳は、毎月の給与から天引きして貯めてきた「預り金(源泉所得税)」を、還付なら減らし、徴収なら増やす形で処理します。
  • 還付のときは預り金を借方に、徴収のときは預り金を貸方に立て、相手勘定は従業員に支払う(または従業員から差し引く)給与・現金預金になります。
  • 住民税は年末調整で精算しない税金なので、源泉所得税とは別の預り金として管理し、年末調整の仕訳には混ぜません。

年末調整の仕訳は「預り金」の増減で考える

毎月の給与計算では、支給額から源泉所得税を天引きし、会社が一時的に預かっています。このとき使うのが「預り金」(または「預り金(源泉所得税)」)という負債の勘定です。天引きした月は貸方に預り金が増え、税務署に納付した月は借方で減ります。

年末調整は、この1年間に預かってきた金額と、本来納めるべき年税額との差を精算する手続きです。つまり仕訳の上では、新しい勘定が登場するわけではなく、すでにある預り金を増やすか減らすかの調整にすぎません。ここが分かると、還付と徴収のどちらでも迷わなくなります。

判断の順番はシンプルです。まず「預かりすぎていたか、足りなかったか」を確認し、預かりすぎなら従業員に返す(預り金を減らす)、足りなければ追加で預かる(預り金を増やす)。この一文に立ち返れば、どの形の仕訳でも組み立てられます。

還付になるときの仕訳|預り金を借方に立てる

年末調整の結果、従業員に返す金額が出た場合は、会社が預かっていた源泉所得税を返すことになります。12月の給与と一緒に還付するなら、給与の仕訳の中に「借方:預り金(源泉所得税)」を組み込み、その分だけ従業員への手取り支給額が増える形になります。

仕訳の形としては、借方に給与手当と預り金(還付分)、貸方に預り金(当月天引きした社会保険料・源泉所得税)と普通預金(実際の振込額)を並べる形が一般的です。金額は各社の計算結果によって変わるため、給与計算ソフトが出力した明細の数字をそのまま転記してください。

なお、還付額が大きく、当月に天引きする源泉所得税より多くなることもあります。その場合、預り金勘定が一時的にマイナス(借方残高)になることがありますが、翌月以降の天引きで解消されていくのが通常です。決算期末にまたいで借方残高が残るときは、貸借対照表での表示を税理士に確認しておくと安心です。

徴収(不足)になるときの仕訳|預り金を貸方に増やす

年の途中で扶養が減った、賞与の支給が多かったなどの理由で、預かっていた額が年税額に足りないこともあります。この場合は不足分を従業員から追加で徴収し、会社がまとめて納付します。仕訳では、貸方に預り金(源泉所得税)を追加で立て、その分だけ手取り支給額が減ります。

形としては、借方に給与手当、貸方に預り金(社会保険料・当月分源泉所得税・年末調整不足額)と普通預金、という並びになります。摘要欄に「年末調整不足額」と書き分けておくと、後から見返したときに何の預り金か追いやすくなります。

不足額が大きく、1回の給与では差し引ききれないケースもあります。分割して徴収する取り扱いが認められる場合がありますが、条件があるため、該当しそうなときは国税庁の資料を確認するか、顧問税理士に相談してください。

12月給与で精算するか、1月給与で精算するかで仕訳のタイミングが変わる

年末調整の精算をいつの給与で行うかは、会社によって異なります。12月の給与または賞与で精算する場合は、その月の給与仕訳の中に還付・徴収を織り込みます。1月の給与で精算する場合は、12月時点では通常どおりの給与仕訳を行い、翌月の給与仕訳で調整を入れます。

どちらにするか迷ったら、判断の順番はこうです。まず12月の給与計算の締め日までに、従業員から控除申告書や保険料控除証明書がすべて集まるかを確認します。集まるなら12月精算、間に合わない人がいるなら1月精算にそろえるほうが、計算のやり直しが減ります。

決算月が12月の会社は、精算タイミングが期をまたぐかどうかも見ておきます。期末時点の預り金残高が、実際に翌月納付する金額と一致しているかを確認し、ずれる場合は理由を説明できるようにメモを残しておくとよいでしょう。

納付書への反映と、住民税を混ぜないこと

年末調整をした月の源泉所得税は、通常の天引き額から還付額を差し引いた(または不足額を足した)金額を納付します。納付書には年末調整による還付・徴収を記入する欄が設けられているため、給与計算の集計表を見ながら転記します。納付のタイミングは、原則として支給月の翌月10日までですが、納期の特例の適用を受けている場合は異なります。

ここで混同しやすいのが住民税です。住民税は前年の所得をもとに市区町村が税額を決め、会社は通知どおりに特別徴収するだけなので、年末調整で過不足を精算する対象ではありません。仕訳上も「預り金(住民税)」として源泉所得税と分けて管理し、年末調整の調整仕訳には含めないようにします。

社会保険料も同様に、年末調整では精算しません。年末調整で動くのは源泉所得税の預り金だけ、と覚えておくと、勘定科目の取り違えを防げます。

給与明細と帳簿の突き合わせ|確認の手順

記帳が終わったら、最後に数字が合っているかを確認します。手順は、①給与計算ソフトの年末調整一覧表(源泉徴収簿の集計)を出す、②その還付合計・徴収合計と、会計帳簿に入れた預り金の調整額を突き合わせる、③精算後の預り金残高が、次に納付する金額と一致するかを見る、の順です。

ずれが出たときは、原因を絞り込む順番も決めておくと早く解決します。まず住民税や社会保険料の預り金が混ざっていないか、次に還付を受けた従業員のうち振込が翌月にずれた人がいないか、最後に賞与分の天引きが漏れていないか、という順で見ていきます。

従業員に渡す源泉徴収票と給与明細の年末調整欄も、帳簿と同じ数字になっているかを確認します。明細に「年末調整還付」「年末調整不足額」と項目が表示されるよう設定しておくと、従業員からの問い合わせにも説明しやすくなります。給与計算ソフトの機能や利用条件は提供各社で異なるため、詳細は各社の公式サイトで最新の情報をご確認ください。

迷ったら専門家に確認を

年末調整は、従業員の扶養状況や中途入社の有無、住宅ローン控除の適用など、個別事情によって扱いが変わる場面があります。前職の源泉徴収票が届かない、不足額を分割で徴収したい、期をまたぐ預り金の表示をどうするか——こうした論点は、一般的な説明だけでは判断しきれないことがあります。

記帳や納付の取り扱いに迷うときは、顧問税理士に相談してください。従業員の労働条件や控除申告書の回収ルールにかかわる部分については、社会保険労務士に確認するとスムーズです。最新の様式や要件は、国税庁および各市区町村の公表資料をあわせてご確認ください。

よくある質問

年末調整の還付金は、どの勘定科目で処理しますか。

毎月の源泉所得税を天引きしたときと同じ「預り金(源泉所得税)」を使い、還付分を借方に立てて減らすのが一般的です。新しく「還付金」という科目を作る必要はありません。相手勘定は、給与と一緒に支払うなら普通預金などになります。

還付額が大きくて預り金がマイナスになりましたが、どうすればよいですか。

翌月以降の天引き分で解消されるのが通常なので、一時的な借方残高はそのまま推移を見る形になります。決算期末をまたいで残る場合は、貸借対照表での表示方法を含めて税理士にご確認ください。

住民税は年末調整で精算しなくてよいのですか。

住民税は前年の所得をもとに市区町村が税額を決定し、会社は通知どおりに特別徴収するしくみのため、年末調整で過不足を精算する対象ではないとされています。仕訳上も源泉所得税とは別の預り金で管理してください。

1月の給与で精算する場合、12月の帳簿はどう記帳しますか。

12月は通常どおりの給与仕訳を行い、年末調整の調整は1月の給与仕訳に入れます。決算期が12月の場合は、期末の預り金残高と翌月の納付額の関係を説明できるようメモを残しておくと確認が楽になります。

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