株主総会議事録の書き方|記載事項と臨時総会・定款変更のときの注意点

・契約・電子署名・会社のはじめかた編集部(監修:田中 祐介)

会社をつくると、毎年の決算後や役員報酬を決めるタイミングで「株主総会議事録」を書く場面が出てきます。ひとり社長の会社でも、株主が自分だけでも、会社法上は株主総会という手続きを踏んだ記録を残すことが想定されています。この記事では、議事録に何を書くのか、定時総会と臨時総会で違うところ、定款変更や配当、議案が否決されたときの書き方までを、書く順番に沿って整理します。

この記事の結論

  • 株主総会議事録には、開催した日時・場所、出席した役員、議事の経過の要領とその結果、議事録を作成した取締役の氏名などを記載するのが基本です。
  • 定時株主総会と臨時株主総会で記載事項の枠組みは大きく変わらず、違いは「開催の位置づけ」と「決議する議案の中身」です。
  • 定款変更や役員変更のように登記が伴う決議では、議事録が登記の添付書類になるため、議案の文言を登記内容と一致させておくことが重要です。

株主総会議事録には何を書く? 基本の記載事項

株主総会議事録は、会社法と会社法施行規則で記載すべき事項の枠組みが決まっています。おおまかには、(1)開催の日時と場所、(2)議事の経過の要領とその結果、(3)出席した取締役・監査役などの氏名、(4)議長がいる場合はその氏名、(5)議事録を作成した取締役の氏名、といった項目です。細かい要件は会社の機関設計によって変わるため、法務省や所管官庁が公開している資料もあわせて確認してください。

書く順番としては、タイトル(「第◯期定時株主総会議事録」など)→開催日時・場所→株主総数と議決権数、出席株主の状況→議長の選出と開会宣言→議案ごとの審議と決議結果→閉会→作成日と作成者・署名、という流れが自然です。この型さえ決めてしまえば、毎回同じフォーマットを使い回せます。

「議事の経過の要領」は、発言を一言一句書き起こす必要はありません。議長が議案を説明し、質疑のうえ賛成多数(または全員一致)で可決した、という程度の要約で足りるとされるのが一般的です。ただし、後から紛争になりそうな議題や、少数株主がいる会社では、反対意見が出た事実まで残しておくと安心です。

定時株主総会と臨時株主総会で、書き方はどう違う?

定時株主総会は、事業年度ごとに決算を確定させるために開く総会で、計算書類の承認や報告、剰余金の配当、役員の選任などを扱うのが一般的です。議事録のタイトルに「第◯期定時株主総会議事録」と期を入れ、決算期との対応が分かるようにします。冒頭で「計算書類および事業報告の内容を報告した」旨を書くのがこの総会らしい部分です。

臨時株主総会は、決算とは関係なく必要が生じたときに開く総会です。役員の急な交代、本店移転、定款変更、増資など、待てない事情があるときに開きます。臨時株主総会議事録の書き方は定時とほぼ同じで、タイトルを「臨時株主総会議事録」とし、期の表記は入れないか「第◯期中」といった形にとどめます。

どちらの場合も、株主全員の同意があれば招集手続を省略できる場面があります。省略したときは、議事録に「株主全員の同意により招集手続を省略した」旨を記載しておくと、後から手続の適法性を確認しやすくなります。省略できる条件は会社の状況によるため、判断に迷う場合は司法書士や弁護士に確認してください。

定款変更の議事録は、どこに気をつけて書く?

定款変更は株主総会の特別決議が必要とされる事項で、商号変更、目的の追加、本店所在地の変更、発行可能株式総数の変更などが典型です。議事録には「特別決議の要件を満たして可決した」ことが読み取れるように、出席株主の議決権数と賛成の状況を書きます。「議決権の過半数を有する株主が出席し、出席株主の議決権の3分の2以上の賛成により可決した」といった書き方が使われます。

もうひとつの肝は、変更後の条文をそのまま議事録に書き込むことです。「第◯条を次のとおり変更する」と見出しを置き、新しい条文の全文を引用します。目的を追加する場合は、追加後の事業目的を号番号ごとに全部並べておくと、登記申請の際に内容の照合がしやすくなります。

定款変更のうち、商号・目的・本店・発行可能株式総数などは登記事項でもあります。議事録の文言と登記申請書の記載がずれていると、法務局から補正を求められることがあります。登記が絡む定款変更は、議事録の作成段階から司法書士に見てもらうと手戻りが減ります。

配当・役員報酬・役員変更の議事録の書き方

剰余金の配当を決議する場合は、配当財産の種類(通常は金銭)、株主に割り当てる配当財産の割当てに関する事項、効力発生日を議案として明示します。「1株あたり◯円」「総額◯円」「支払開始日◯年◯月◯日」という形で、金額と日付が特定できるように書くのがポイントです。分配可能額の範囲を超えていないかという判断は税務・会計の論点にもつながるため、決議前に税理士に確認しておくと安心です。

役員報酬は、定款に定めがなければ株主総会で決議するのが原則です。実務では「取締役全員の報酬総額を年額◯円以内とし、各取締役への配分は取締役会(または取締役の協議)に一任する」という決め方がよく使われます。ひとり社長の会社でも、決議した日付と金額の枠が分かる議事録を残しておくと、税務上の説明がしやすくなります。

役員の選任・退任では、選任された人の氏名と、就任承諾の有無を書きます。議事録に「被選任者は席上その就任を承諾した」と記載しておくと、就任承諾書の代わりになる場合があります。任期満了と辞任では登記の書き方が変わるので、どの事由で退任したのかを議事録上で区別しておきましょう。

議案が否決されたとき、修正されたときはどう書く?

否決された議案も、議事録には残します。書き方はシンプルで、議案の内容を書いたうえで「採決の結果、賛成が議決権の◯分の◯に満たず、本議案は否決された」と結果を明記します。可決した議案だけを書いて否決分を省くと、議事の経過の記録として不十分になりかねません。

原案を一部修正して可決した場合は、「議長より原案の一部を次のとおり修正する旨の提案があり」と経過を書き、修正後の内容を全文で記載してから決議結果を書きます。修正前と修正後のどちらが有効なのかが読み手に分かることが大切です。

特別利害関係のある株主が議決権を行使できない場面や、取締役が自己取引の承認を求める場面では、誰が審議に加わらなかったかを記録しておくと、後から手続の妥当性を説明しやすくなります。判断が難しいケースは弁護士に相談してください。

署名・押印・保存はどうする? 電子化するときの注意

株主総会議事録は、取締役会設置会社かどうかなどによって署名・押印の扱いが変わります。法律上、出席役員全員の署名や記名押印が一律に求められるわけではありませんが、登記の添付書類として使う場合は法務局が求める押印のルールに従う必要があります。登記に使う予定があるなら、申請前に法務局や司法書士に確認してから押印するのが確実です。

保存については、原則として本店に一定期間備え置くこととされています。紙で保存するか、電子データで保存するかは会社の運用次第ですが、電子で保存する場合は、誰が・いつ作成したものかが後から確認できる状態にしておくことが大事です。電子署名やタイムスタンプの要否は、用途(登記・税務・社内保管)によって考え方が変わります。

実務的には、議事録ファイルを「開催日+総会の種類+主な議案」で名前を付け、年度ごとのフォルダにまとめておくと探しやすくなります。決算書類や登記簿謄本と同じ場所に置いておくと、融資や補助金の申請で提出を求められたときにもすぐ出せます。

ひとり社長・小規模会社での現実的な運用

株主が社長ひとりの会社でも、株主総会という手続きの形は残ります。実際には集まって議論するわけではないので、書面決議(株主全員の書面または電磁的記録による同意で決議があったとみなす方法)を使うことも多く、この場合は「株主総会議事録」ではなく「提案書と同意書」「みなし決議の議事録」といった形になります。どの形式で残すかは、あらかじめ決めておくと迷いません。

おすすめの運用は、年間で議事録が必要になる場面をリスト化しておくことです。決算後の定時総会、役員報酬の改定、役員の任期満了、本店移転や商号変更といったイベントを想定し、テンプレートを用意しておけば、必要になった日に慌てずに済みます。

そして、議事録は「作った日」より「決議した日」が意味を持ちます。後から日付を遡って作ることは避け、決議の都度その日のうちに記録を残す習慣をつけましょう。

迷ったら専門家に確認を

株主総会議事録は、形式が整っているかどうかだけでなく、そもそもその決議が必要だったか、決議要件を満たしているか、といった中身の判断が絡みます。定款変更や役員変更のように登記につながるものは司法書士、株主間の対立が見込まれる場面や決議の有効性に不安があるときは弁護士が相談先になります。

配当や役員報酬のように税務に直結する決議は、決議のタイミングや金額の決め方によって税務上の取扱いが変わることがあります。決議する前の段階で税理士に相談しておくと、後から「この決議はこう扱われることがあります」と言われて困る事態を避けやすくなります。

自社で作った議事録のひな形を一度だけでも専門家に見てもらい、以後はそれを使い回す、という進め方が現実的です。最初の一回に手間をかけておくことが、その後の何年分もの安心につながります。

よくある質問

株主がひとりでも株主総会議事録は必要ですか?

株主が社長ひとりでも、会社法上の決議が必要な事項については記録を残すことが想定されています。実務では書面による同意で決議があったとみなす方法が使われることも多く、その場合も提案内容と同意の記録を保管します。登記に使う場合の形式は司法書士に確認すると確実です。

臨時株主総会の議事録は、定時と別のフォーマットが必要ですか?

記載事項の枠組みは共通なので、タイトルと冒頭の書き出しを変えるだけで対応できることが多いです。定時は「第◯期定時株主総会議事録」として計算書類の報告を書き、臨時は決議したい議案から書き始めます。テンプレートを1つ作っておけば使い回せます。

議事録に押印は必要ですか?

法律上、常にすべての出席役員の押印が求められるわけではありませんが、登記の添付書類として提出する場合は法務局が求めるルールに従う必要があります。登記予定があるなら、押印の要否と印鑑の種類を事前に法務局または司法書士へ確認してください。

議事録を作り忘れていた場合、あとから作ってもよいですか?

記録がないままにするより、決議の事実に沿って作成し直すほうが望ましい場面もありますが、日付を実際と違う形で記載することは避けるべきです。過去分の扱いをどうするかは事情によって判断が分かれるため、弁護士や司法書士に相談したうえで対応してください。

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