本店所在地及び資本金決定書とは|設立登記での書き方と必要な場面

・会社設立・登記・会社のはじめかた編集部(監修:田中 祐介)

会社設立の書類をそろえていると、ひな形一覧のなかに「本店所在地及び資本金決定書」という見慣れない書面が出てきます。名前が長いわりに中身は数行で、しかも作る必要がある会社とない会社があります。この記事では、どういうときに必要になるのか、どう書けばいいのか、株式会社と合同会社で呼び方がどう変わるのかを、判断の順番に沿って整理します。

この記事の結論

  • 本店所在地及び資本金決定書は、定款で本店の所在地を「東京都渋谷区」のような最小行政区画までしか定めていない場合に、具体的な番地と資本金の額を決めたことを示すために作る書面です。
  • 定款に番地・建物名まで記載し、資本金の額も定款で確定している場合は、この決定書を別途作らない扱いになることが一般的です。
  • 記載するのは「本店の所在場所」と「資本金の額」の2点が中心で、決定した日付と、発起人または社員全員の記名押印を添えるのが基本の型です。

本店所在地及び資本金決定書とは何を証明する書類か

本店所在地及び資本金決定書は、会社の本店をどの番地に置くか、資本金をいくらにするかを、設立前に発起人(株式会社の場合)や社員(合同会社の場合)が決めたことを記録する書面です。登記申請書に添付して、登記される内容の根拠を示す役割があります。

なぜこんな書類が必要になるかというと、定款の書き方に幅があるからです。定款の本店の定めは「当会社は、本店を東京都渋谷区に置く」のように市区町村までにとどめることができます。この書き方だと、登記簿に載せる具体的な番地が定款だけでは決まりません。そこで、番地を決めた事実を別の書面で示すことになります。

資本金の額も同じ考え方です。定款に「資本金の額は金◯◯円とする」と書いていれば定款で確定しますが、出資の額の下限だけを定めている場合などは、実際にいくらを資本金に計上したかを別途明らかにする必要が出てきます。この2つをまとめて1枚にしたものが、本店所在地及び資本金決定書です。

自分の会社に必要かどうかを見分ける順番

迷ったら、次の順に定款を確認してください。第一に、定款の本店の条文に番地まで書いてあるかどうかです。「東京都渋谷区◯◯一丁目2番3号」のように所在場所が特定されているなら、本店について改めて決定書を作る場面は基本的にありません。逆に「東京都渋谷区に置く」で止まっているなら、番地を決めた書面が要ると考えてください。

第二に、資本金の額が定款で確定しているかどうかです。各発起人が引き受ける株数と払込金額が定款に定められ、その全額を資本金に計上するなら、金額は計算で確定します。この場合も決定書が不要とされることがあります。一方、出資の最低額だけを定めているなら、資本金の額を決めた書面が必要になります。

第三に、本店だけ必要・資本金だけ必要というケースもある点です。書面の表題は決まった正式名称があるわけではないので、本店だけなら「本店所在地決定書」、両方なら「本店所在地及び資本金決定書」と、決めた内容に合わせて表題を付ければ差し支えないとされています。判断に自信が持てないときは、申請先の法務局の相談窓口か司法書士に定款を見てもらうのが早道です。

株式会社と合同会社で書類の名前と作成者が変わる

株式会社の場合、設立前に意思決定をするのは発起人です。発起人が1人なら「発起人決定書」、複数人なら全員の同意を記録する「発起人会議事録」や「発起人の同意書」といった表題が使われます。いずれも中身は同じで、本店の所在場所と資本金の額を決めた旨を書きます。定款の定め方によっては、設立時取締役が本店の所在場所を決める形をとることもあります。

合同会社の場合は、設立時の社員(出資者)が決定します。そのため「本店所在地及び資本金決定書」という表題がそのまま使われることが多く、社員全員の記名押印を添えるのが一般的です。社員が1人の一人合同会社でも、同じ様式で作成します。

呼び名が違っても、登記官が確認したいのは「誰が、いつ、何を決めたか」です。表題の細部より、決定した内容が登記申請書・定款・払込を証する書面と食い違っていないかのほうが重要になります。

書き方の型と、記載するときの注意点

構成はシンプルです。①表題(本店所在地及び資本金決定書)、②柱書として「当会社の本店所在地及び資本金の額を、下記のとおり決定する」といった一文、③記書きで「本店の所在場所 東京都◯◯区◯◯一丁目2番3号◯◯ビル301号室」「資本金の額 金◯◯円」、④決定した年月日、⑤会社の商号、⑥発起人または社員全員の住所・氏名と記名押印、という並びです。

注意したいのが住所の表記です。登記される所在場所は、住民票や不動産の表示に合わせた正式な表記で書きます。「1-2-3」のような省略形ではなく「一丁目2番3号」と書くのが通例です。ビル名や部屋番号を入れるかどうかは会社の判断に委ねられますが、入れると決めたら定款・決定書・登記申請書のすべてで同じ表記にそろえてください。

日付にも順序があります。決定書の日付は、定款の作成日以降で、登記申請日より前に収まっているのが自然です。出資金の払込みとの前後関係も含め、書類全体で時系列に矛盾が出ないように確認しておくと安心です。押印については、発起人個人の実印を用い印鑑証明書を添える扱いが多いものの、取扱いが分かれる部分もあるため、申請先の法務局の案内を確認してください。

いつ作って、どこに出すか

作成のタイミングは、定款の作成(株式会社なら公証役場での認証)が終わり、出資金の払込みに進む前後です。実務上は、本店の物件が確定した段階で番地を確定させ、払込金額が固まった段階で資本金の額を記載する、という流れになります。決定書だけを単独で提出することはなく、設立登記の申請書に添付する書類の一つとして扱います。

提出先は、本店所在地を管轄する法務局(登記所)です。設立登記の申請書、定款、払込みがあったことを証する書面、就任承諾書、印鑑証明書などとまとめて提出します。オンライン申請を使う場合でも添付書面の考え方は同じで、方式については法務局の案内を確認してください。

なお、本店の所在場所は登記簿に載り、誰でも閲覧できます。自宅を本店にするか、レンタルオフィスやバーチャルオフィスを使うかで、あとから移転登記が必要になる可能性も変わります。物件の契約条件で法人の本店登記が認められているかどうかは、契約前に貸主や運営会社に確認しておくとトラブルを避けやすくなります。

よくあるつまずきと、迷ったときの相談先

多いのは、定款には番地まで書いたのに、ひな形を見てなんとなく決定書も作ってしまい、記載が微妙に食い違ってしまうケースです。書類が増えること自体が却下につながるとは限りませんが、内容の不一致は補正の原因になります。作るなら定款と一字一句そろえる、作らないなら作らないと決めて、書類間の整合を優先してください。

もう一つは、本店を決める前に定款を作ってしまい、あとから別の物件に変わるケースです。定款に番地まで書いていると、変更のたびに定款そのものの扱いを考える必要が出てきます。物件が確定しきっていない段階では、定款は市区町村までにとどめ、決定書で番地を特定する方法がとられることがあります。

設立登記の書類は、定款の書き方ひとつで必要な添付書面が変わります。自分のケースでどの書面が要るのか、押印や印鑑証明書をどうするのかで判断に迷う場合は、司法書士に定款案の段階で見てもらうと、申請後の補正を減らしやすくなります。資本金の額の決め方が税務や消費税の取扱いに関わることもあるため、その点は税理士にもあわせてご確認ください。

よくある質問

定款に本店の番地まで書いてあれば、決定書は作らなくてよいのですか。

定款で所在場所が特定され、資本金の額も定款で確定しているなら、別途の決定書を添付しない扱いが一般的です。ただし定款の書きぶりによって判断が分かれることがあるため、申請前に法務局の窓口か司法書士に確認すると安心です。

発起人が1人の場合でも、この書類は必要ですか。

必要かどうかは人数ではなく定款の書き方で決まります。1人でも、定款が市区町村までの定めなら番地を決めた書面を作ります。表題は「発起人決定書」とされることが多く、記名押印は本人のみで足りるのが通常です。

合同会社でも同じ書式で作れますか。

考え方は同じですが、決定するのは発起人ではなく設立時の社員です。社員全員の住所・氏名と記名押印を記載し、表題は「本店所在地及び資本金決定書」とするのが一般的です。社員が1人の場合も同様の様式で作成します。

ビル名や部屋番号は書いたほうがよいですか。

登記上は番地までで足りるとされる場面もありますが、郵便物の受取や取引先への案内を考えて記載する会社もあります。記載すると決めた場合は、定款・決定書・登記申請書で表記を完全にそろえてください。

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