業務委託契約書のひな形とテンプレート|WordとPDFの選び方と直す箇所
「業務委託契約書 ひな形」で検索してテンプレートを見つけたものの、どこを自社用に直せばいいのか分からない。そんな状態で止まっている方は少なくありません。この記事では、ひな形の入手先の選び方、WordとPDFの使い分け、そして自社の取引に合わせて必ず手を入れたい箇所を、直す順番つきで整理します。ひな形はあくまで出発点です。埋める場所と、考えて書き換える場所を切り分けるところから始めましょう。
この記事の結論
- 業務委託契約書のひな形は、自社で編集する前提ならWord(.docx)形式、相手に提示・保存する最終版ならPDFという使い分けが基本です。
- ひな形を直すときは「①業務の範囲 ②報酬と支払時期 ③期間と解除 ④成果物の権利 ⑤秘密保持」の順に、自社の取引内容に合わせて書き換えます。
- 厚生労働省などの公的機関が公開するひな形は、フリーランス取引や下請取引を想定した記載例が中心なので、自社の取引類型に近いものを選ぶことが大切です。
業務委託契約書のひな形はどこで探す?無料テンプレートの選び方
業務委託契約書のテンプレートは、大きく分けて三つの出どころがあります。一つ目は、厚生労働省や中小企業庁など公的機関が公開している記載例やモデル契約書。二つ目は、契約書作成サービスやクラウドサインなどの電子契約サービスが提供するひな形集。三つ目は、無料テンプレート配布サイトです。
選ぶときの順番はシンプルです。まず公的機関のひな形に近いものがないか探し、なければ自社の業種に近いサンプルを探す。公的機関のものは、法改正の考え方が反映されていることが多く、解説資料とセットで公開されている点が使いやすいところです。特にフリーランスへの発注を想定するなら、フリーランス・事業者間取引に関する公的な資料やひな形を出発点にすると、記載漏れに気づきやすくなります。
無料テンプレート配布サイトを使う場合は、いつ時点のものか、どんな取引を想定しているかが書かれているかを確認してください。想定が書かれていないひな形は、自社の取引と前提がずれていても気づけません。複数のサンプルを並べて、共通して入っている条項を「最低限のリスト」として扱う方法もおすすめです。
WordとPDF、どちらのフォーマットを使う?
結論から言うと、自社で編集する段階はWord(.docx)、相手に提示する最終版と保存用はPDF、という使い分けが扱いやすいです。Wordは条項の追加・削除や変更履歴の記録ができるため、社内での検討や相手方との修正のやりとりに向いています。ExcelやGoogleドキュメント形式で配布されているひな形も、同じ考え方で「編集用」に分類できます。
PDFのひな形しか見つからない場合、無理にテキスト抽出すると書式が崩れがちです。条項の構成だけを参考にして、自社のWordファイルに打ち直したほうが結果的に早いことがあります。逆に、PDFをそのまま印刷して手書きで埋めるのは、後から検索できず管理しづらいので避けたいところです。
締結後の保存については、電子でやりとりした契約書を電子のまま保存する場合、電子帳簿保存法の考え方が関わってきます。ファイル名に日付・取引先名・金額を入れて検索できるようにしておくなど、運用の型を先に決めておくと後が楽です。要件の詳細は国税庁の資料を確認するか、顧問税理士にご相談ください。
ひな形を自社用に直す順番|まず見る5つの条項
ひな形を開いたら、頭から順に読むのではなく、影響の大きい順に手を入れます。①業務の範囲と成果物、②報酬額・算定方法・支払時期、③契約期間と解除、④成果物の知的財産権、⑤秘密保持。この五つを埋めれば、契約書としての骨格はおおむね固まります。
一番もめやすいのは①です。「〇〇に関する業務」とだけ書かれたひな形をそのまま使うと、どこまでやるのかの線引きが後から争点になります。作業内容・回数・納品物の形式・修正対応の範囲を、別紙や仕様書に切り出して書くと、契約書本体を変えずに案件ごとに差し替えられて便利です。
②では、金額だけでなく「いつ締めて、いつ払うか」を必ず書きます。消費税の扱い(内税か外税か)、振込手数料の負担、交通費など実費の扱いも書き漏らしがちです。また、インボイス制度に関連して、相手方の登録状況によって経理処理が変わることがあります。処理の具体的な扱いは税理士にご確認ください。
請負型と委任型、どちらのひな形を選ぶ?
業務委託契約書と一口に言っても、中身は「完成した成果物を納品してもらう型(請負に近いもの)」と「一定の業務を継続的に遂行してもらう型(準委任に近いもの)」に分かれます。どちらのひな形を土台にするかで、書くべき条項が変わります。
判断の順番はこうです。まず「成果物が特定できるか」を見ます。Webサイト一式、記事、システム、デザインなど、納品して検収する対象がはっきりしているなら請負型のひな形。次に「時間や期間に対して払うか」を見ます。月◯時間の顧問業務、運用サポート、定例の相談対応などは委任型のひな形が近くなります。
請負型なら検収の手続きと期間、契約不適合があったときの対応を書き込みます。委任型なら報告の頻度と方法、業務時間の考え方、途中で終了したときの報酬の精算方法を書きます。両方の性質が混ざる契約もあるため、その場合は業務ごとに別紙で分けて書くと整理しやすくなります。
見落としやすい条項と、偽装請負にしないための注意点
ひな形に入っていても中身が薄くなりがちなのが、再委託の可否、反社会的勢力の排除、損害賠償の範囲、契約終了後の秘密保持の存続期間、管轄裁判所です。特に再委託は、実務上あとから問題になりやすい項目です。原則禁止で書面承諾があれば可、といった形にしておくと運用しやすくなります。
もう一つ重要なのが、雇用ではなく業務委託として扱えるかという点です。指揮命令を細かく行ったり、勤務時間・勤務場所を会社が指定したりする実態があると、実質的に労働者だと判断されることがあります。契約書の表題だけでは判断されず、実際の働き方の実態が見られます。この線引きに不安があるときは、社会保険労務士や弁護士にご確認ください。
フリーランスに発注する場合は、取引条件を書面や電子メールなどで明示すること、支払期日の考え方など、事業者間の取引に関するルールが関係することがあります。所管官庁が公開している資料やひな形を確認しつつ、自社の発注フローに落とし込んでおくと安心です。
締結から保存までの流れと、迷ったときの相談先
実務の流れは、①ひな形を選ぶ→②業務内容・報酬・期間を埋める→③社内で確認→④相手方に提示して修正のやりとり→⑤署名・押印または電子署名→⑥保存、という順です。紙なら2部作成して双方が1部ずつ保管、電子契約サービスを使うならサービス上に記録が残ります。電子契約サービスは各社で機能や料金が異なるため、各社の公式サイトで最新の内容を確認してください。
印紙については、契約の内容によって課税文書に当たるかどうかの判断が分かれます。請負に当たる契約書と、そうでない契約書とで扱いが変わることがあるため、判断に迷う場合は国税庁の資料を確認するか、税理士にご相談ください。電子契約の場合の扱いも含めて、事前に整理しておくと落ち着いて進められます。
ひな形はあくまで一般的な出発点です。継続的な取引、金額の大きい案件、知的財産が絡む案件、フリーランスへの反復発注などは、一度弁護士に内容を確認してもらうと安心です。労働者性や社会保険の扱いが気になるなら社会保険労務士、消費税やインボイスの処理なら税理士と、論点に応じて相談先を選んでください。最初に自社の標準ひな形を専門家と一緒に作ってしまえば、以降の案件は別紙の差し替えで回せるようになります。
よくある質問
業務委託契約書のひな形は厚生労働省のものを使えばいいですか?
公的機関が公開しているひな形や記載例は、想定する取引が明示されていることが多く、出発点として扱いやすい資料です。ただし自社の取引内容とぴったり一致するとは限らないため、業務の範囲や報酬の条件は自社に合わせて書き換える必要があります。最新版かどうかは各官庁の公式サイトでご確認ください。
無料テンプレートをそのまま使っても大丈夫でしょうか。
空欄を埋めるだけで使えるケースは限られます。業務の範囲、報酬と支払時期、成果物の権利、解除の条件は、取引ごとに事情が異なるため書き換えが前提です。金額が大きい取引や継続取引では、弁護士に一度確認してもらうことをおすすめします。
Wordのひな形が見つからず、PDFしかありません。どうすればいいですか。
PDFから無理に変換すると書式が崩れやすいので、条項の構成だけを参考にして自社のWordファイルに整理し直す方法が現実的です。複数のサンプルを見比べて、共通して入っている条項をチェックリストにすると漏れを防ぎやすくなります。
業務委託契約書に印紙は必要ですか?
契約の内容が課税文書に当たるかどうかで扱いが変わり、請負に該当するかがひとつの分かれ目になります。判断に迷う場合は国税庁の資料を確認するか、税理士にご相談ください。電子契約での扱いについても、あわせて確認しておくと安心です。