業務委託契約書とは|記載する内容と作り方のポイント

・契約・電子署名・会社のはじめかた編集部(監修:田中 祐介)

外部のデザイナーやエンジニア、営業代行に仕事をお願いするとき、口頭やチャットのやりとりだけで進めていませんか。業務委託契約書は「何を、いつまでに、いくらで、どこまでやるか」を紙の上で確定させる道具です。この記事では、契約書に何を書くのか、どういう順番で作るのか、署名前にどこを見ればいいのかを、はじめて作る人向けに整理します。

この記事の結論

  • 業務委託契約書とは、発注者が外部の個人・法人に仕事を依頼する際に、業務の範囲・報酬・納期・権利の帰属などの条件を書面で定めた契約書です。
  • 記載の中心は「業務内容」「報酬と支払時期」「納品と検収」「知的財産権の帰属」「秘密保持」「契約期間と解除」の6点で、ここが曖昧だと後からトラブルになりやすくなります。
  • 作成は、依頼内容を箇条書きで整理する→請負型か委任型かを決める→雛形に自社の条件を当てはめる→相手と条件をすり合わせる→署名押印または電子署名、の順で進めるのが実務的です。

業務委託契約書とは何か、なぜ作るのか

業務委託契約書とは、自社の業務の一部を外部の個人や法人に依頼するときに、その条件を書面にしたものです。法律上「業務委託契約」という名前の契約類型があるわけではなく、実際には民法上の請負契約や準委任契約にあたる内容を、実務上まとめてこう呼んでいます。呼び名よりも、中身にどんな約束が書かれているかが重要です。

作る理由は大きく2つあります。ひとつは、認識のズレを防ぐこと。「ここまでやってくれると思っていた」「修正は何回まで無料なのか」といった食い違いは、契約書がないと水掛け論になりがちです。もうひとつは、支払いが滞ったとき、納品物が使えなかったときに、何を根拠に話し合うかを残しておくことです。

契約書の効力について言えば、日本では口頭の合意でも契約は成立するとされています。ただし、成立することと、あとから内容を証明できることは別の話です。書面や電子データで残っていれば、条件の証拠として扱いやすくなります。

請負型と委任型、どちらで作るかをまず決める

最初の分かれ道は「完成物を納めてもらう契約か、業務の遂行そのものをお願いする契約か」です。ロゴの制作、システムの開発、記事の執筆のように、成果物を納品して初めて仕事が終わるものは請負型に近くなります。この場合、契約書には納品物の仕様、納期、検収の方法、修正対応の範囲を書き込む必要があります。

一方、月額でのコンサルティング、経理業務のサポート、カスタマー対応の代行のように、決まった成果物ではなく稼働そのものを依頼するものは委任(準委任)型に近くなります。こちらは「何を、どのくらいの頻度・時間で行うか」「報告はどうするか」を書くことが中心になり、完成責任の有無の扱いが請負型とは変わってきます。

迷ったら、「相手が一生懸命やったのに結果が出なかったとき、報酬を払うか」と自問してみてください。払わない前提なら請負型、稼働した分は払う前提なら委任型の考え方に近くなります。実務では両方が混ざる契約もあるため、判断に迷う場合は弁護士に相談するのが安全です。

業務委託契約書に記載する内容(必須の6項目)

①業務内容・範囲。ここが最も揉めやすい部分です。「Webサイト制作一式」ではなく、ページ数、対応するデバイス、デザイン案の提示数、修正の回数、含まれない作業(例:写真撮影、サーバー契約)まで書き分けます。範囲外の作業を依頼する場合は別途見積もりとする、と一文入れておくと運用しやすくなります。

②報酬と支払時期。金額、消費税の扱い(内税か外税か)、源泉徴収の有無、締め日と支払日、振込手数料をどちらが負担するかを書きます。月額固定なのか、成果物ごとなのか、稼働時間に応じるのかも明記します。着手金を設ける場合はその割合と、途中で中止になったときの扱いもあわせて決めておきます。

③納品と検収。いつまでに、どういう形式(データ形式、納品先)で納めるか。受け取った側が何日以内に確認し、期限内に連絡がなければ検収完了とみなすか。検収で不合格になった場合の修正期限と、それでも基準を満たさないときの扱い。このあたりを決めておくと、「いつ支払義務が発生するか」が明確になります。

④知的財産権の帰属。制作物の著作権を発注者に移すのか、受注者に残したまま利用許諾を受けるのかを決めます。著作者人格権の取り扱い、受注者が実績として公開してよいか、第三者の素材を使う場合の責任分担も書いておきたい項目です。開発系では、汎用的なライブラリは受注者に残す、といった切り分けもよく行われます。

⑤秘密保持。知り得た情報の範囲、目的外使用の禁止、契約終了後も義務が続く期間を定めます。個人情報を扱う依頼なら、取扱いのルールと返却・消去の方法も入れます。⑥契約期間・解除・損害賠償。期間と自動更新の有無、中途解約する場合の予告期間、契約違反があったときの解除条件、賠償責任の範囲をどこまでとするかを記載します。

このほか、再委託を認めるか、遅延したときの扱い、反社会的勢力の排除、管轄裁判所、協議条項なども一般的に置かれます。契約書の後半にある定型的な条文も、自社にとって不利な内容になっていないか目を通しておきましょう。

業務委託契約書の作り方|5つのステップ

ステップ1:依頼内容を箇条書きにする。契約書のフォーマットを探す前に、まず自分の言葉で「誰に、何を、いつまでに、いくらで」を書き出します。この段階で曖昧なところが見つかれば、それがそのまま契約書で詰めるべき論点です。ステップ2:請負型か委任型かを決め、前章の6項目に自社の条件を当てはめます。

ステップ3:雛形を使って文章に落とします。中小企業向けの契約書ひな形は公的機関や業界団体が公開しているものもあり、自社の業種に近いものを出発点にすると作業が楽になります。ただし雛形は発注者寄り・受注者寄りのどちらかに偏っていることがあるため、自社の立場で読み直し、不要な条項は削り、足りない条項は足します。

ステップ4:相手と条件をすり合わせます。完成品をいきなり送りつけるより、業務範囲と報酬、権利の帰属だけを先にメールで合意してから契約書化したほうが、修正が少なく済みます。ステップ5:署名押印または電子署名を行い、双方が同じ内容の控えを保管します。電子契約サービスを使う場合は、証跡がどのように残るかを事前に確認してください。

なお、契約書の種類によっては印紙税の対象となることがあります。請負に関する契約書などが挙げられますが、判断は契約の中身によって変わるため、国税庁の資料を確認するか、税理士にご確認ください。電子契約の場合の取り扱いも含め、事前に整理しておくと安心です。

署名前のチェックポイントと、よくある落とし穴

まず読み返すのは業務範囲です。「〜等」「その他付随する業務」といった言葉が多いほど、範囲が広がる余地が残ります。受注者側ならここを絞り、発注者側なら必要な作業が漏れていないかを確認します。次に支払条件。検収完了から支払いまでの期間、何をもって検収完了とするかが噛み合っているかを見ます。

次に権利と責任のバランス。損害賠償の上限、再委託の可否、契約解除の予告期間は、片側だけに厳しくなっていないかを確認します。受注者側で見落としやすいのが、成果物の権利がすべて発注者に移る条項と、実績公開の制限が同時に入っているケースです。ポートフォリオに載せたいなら、その旨を条文に入れる交渉をしておきましょう。

もうひとつ注意したいのが、契約の実態です。名前は業務委託でも、勤務時間や働く場所を細かく指示し、断る自由がないような働き方になっていると、実質的に雇用と判断されることがあります。社会保険や労働法の適用に関わる論点のため、迷う場合は社会保険労務士に相談してください。下請取引にあたる場合は、書面交付や支払期日などのルールが関わることもあり、所管官庁の資料で確認しておくと安心です。

雛形で済ませていい契約と、専門家に見てもらう契約

すべての契約書を弁護士に見てもらう必要はありません。少額で短期、成果物の権利関係もシンプルな依頼であれば、信頼できる雛形をベースに前章のチェックポイントを押さえれば実務は回ります。同じ相手に繰り返し依頼するなら、基本契約書を一度作り、個別の依頼は発注書で回す形も整理しやすい方法です。

一方で、次のどれかに当てはまるなら、契約前に専門家に確認しておく価値があります。契約金額が自社にとって大きい、システムやコンテンツの権利が事業の核になる、個人情報や顧客データを外部に渡す、長期・独占的な取引になる、相手から提示された契約書に内容を判断しかねる条項がある、といった場合です。

契約書の条項設計や交渉については弁護士、印紙税や源泉徴収の取り扱いについては税理士、業務委託と雇用の線引きや社会保険の取り扱いについては社会保険労務士が相談先になります。契約を結んだあとに直すのは手間がかかります。判断に迷うところが1つでもあれば、署名の前に専門家へ相談することをおすすめします。

よくある質問

業務委託契約書がなくても契約は成立しますか?

日本では口頭の合意でも契約は成立するとされています。ただし、あとから条件を証明することが難しくなるため、業務範囲や報酬、納期は書面や電子データで残しておくことが望ましいです。最低限、メールで条件を確認し合うだけでも記録になります。

業務委託契約書は雛形をそのまま使ってもいいですか?

出発点としては有効ですが、そのまま使うのは避けたほうが安全です。雛形は発注者寄り・受注者寄りのどちらかに偏っていることがあり、業務範囲や権利の帰属は依頼ごとに変わります。自社の条件に合わせて書き換え、重要な取引は弁護士に確認してください。

業務委託契約書に収入印紙は必要ですか?

契約の内容によって印紙税の対象になるかが変わります。請負に関する契約書などが挙げられますが、判断は条文の中身次第です。国税庁の資料を確認するか、税理士にご確認ください。電子契約での取り扱いも含めて事前に整理しておくと安心です。

業務委託と雇用は何が違いますか?

業務委託は、独立した事業者同士が業務の遂行や成果物の納品を約束する関係で、指揮命令を受けながら働く雇用とは考え方が異なります。契約書の名称が業務委託でも、実態が雇用に近いと判断されることがあります。社会保険や労働法の適用に関わるため、社会保険労務士への相談をおすすめします。

あわせて読みたい

「契約・電子署名」の記事をすべて見る →

次に決めること

記事をすべて見る(1087本)→

この記事は一般的な情報をまとめたものです。税務・法務・労務の個別の判断については、税理士・弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。 料金や条件は変わることがあるため、お申し込み前に必ず各サービスの公式サイトで最新の内容をご確認ください。