合同会社の社員が退社するとき|持分の払い戻しと登記の手続き
合同会社は「社員」=出資者がそのまま経営に関わる会社形態です。そのため、誰かが抜けるときは、株式会社で株主が株を手放すのとは少し違う手続きになります。退社の理由によって進め方が変わり、持分の払い戻しをするかどうかで登記の要否も変わってきます。この記事では、社員が退社するときに何をどの順で確認すればよいかを、実務の流れに沿って整理します。
この記事の結論
- 合同会社の社員が抜ける方法には、退社(持分の払い戻しを受けて社員でなくなる)と、持分譲渡(他の人に持分を引き継ぐ)の2つの道があり、どちらを選ぶかで手続きも税務の扱いも変わります。
- 退社にともなう持分の払い戻しは、当事者の合意や定款の定めによって金額を調整したり、行わないこととする形もとられますが、資本金の額を減らす場合は債権者保護の手続きが必要になります。
- 業務執行社員や代表社員が退社した場合、また資本金の額が変わる場合は、原則として変更の登記が必要で、期限が定められているため早めの準備が求められます。
合同会社の「社員」とは何か|まず前提を整理する
合同会社でいう「社員」は、従業員のことではありません。会社に出資し、定款に名前が記載されている出資者のことを指します。株式会社でいえば株主に近い立場ですが、合同会社では原則として社員全員が業務執行の権限を持つ点が大きく違います。
定款で「業務執行社員」を限定している会社では、業務執行社員だけが経営に関わり、それ以外の社員は出資者としての立場にとどまります。さらに業務執行社員の中から「代表社員」を定めている場合は、その人が会社を代表します。この3つの区別は、退社したときに登記が必要かどうかを判断する際の分かれ目になるので、まず自社の定款を開いて、誰がどの立場なのかを確認してください。
そして社員が持っている出資の割合が「持分」です。株式のように1株単位で分かれているわけではなく、各社員が一つの持分を持っている、という考え方になります。この持分をどう扱うかが、退社手続きの中心になります。
社員が抜ける2つの方法|「退社」と「持分譲渡」はどちらを選ぶか
社員が会社から抜ける方法は、大きく2つあります。1つは「退社」で、会社との関係を解消し、会社から持分の払い戻しを受ける形です。もう1つは「持分譲渡」で、自分の持分を他の社員や新しく加わる人に引き渡し、その人が社員の地位を引き継ぐ形です。
判断の順番としては、まず「残る社員の中に、または外部に、持分を引き受ける人がいるか」を確認します。引き受け手がいて、会社からお金を出したくない(会社の資金を減らしたくない)のであれば、持分譲渡が選択肢になります。持分譲渡では会社から現金が出ていかず、資本金の額も変わらないため、手続きは比較的シンプルです。ただし、持分の譲渡には原則として他の社員全員の承諾が必要とされており、業務を執行しない社員の持分については扱いが異なる場合があります。定款に別段の定めが置かれていることもあるので、必ず定款を確認してください。
引き受け手がいない、あるいは抜ける本人が出資分の清算を望んでいる場合は、退社の手続きに進みます。退社の場合は会社が持分を払い戻すことになり、会社の財産が減る可能性があるため、後述する債権者保護の手続きや登記が関係してきます。「早く簡単に済ませたい」だけで選ぶと後から税務上の論点が出ることもあるため、金額が大きい場合は着手前に税理士に相談しておくと安心です。
退社には2種類ある|任意退社と法定退社の違い
会社法では、社員の退社について「任意退社」と「法定退社」が定められています。任意退社は、社員が自分の意思で退社を申し出るものです。会社の存続期間を定款で定めていない場合などは、事業年度の終了時に退社できるとされ、一定期間前までの予告が求められます。やむを得ない事由があるときは、いつでも退社できるとする定めもあります。
法定退社は、一定の事由が生じたときに当然に退社となるものです。定款で定めた事由の発生、総社員の同意、社員の死亡、破産手続開始の決定、後見開始の審判、除名などが挙げられます。たとえばひとり社長ではない合同会社で社員の1人が亡くなった場合、定款に相続人が持分を承継する旨の定めがなければ、その社員は退社したものとして扱われ、相続人は持分の払い戻し請求権を相続することになります。
実務上は、任意退社なら「いつの時点で退社するか」を書面で明確にしておくことが重要です。退社日が決まらないと、払い戻し金額を計算する基準の時点も、登記の期限の起算点も定まりません。退社届や社員間の合意書を作成し、日付を残しておいてください。
持分の払い戻し|金額の考え方と「払い戻しをしない」ケース
退社した社員は、会社に対して持分の払い戻しを請求できるとされています。その金額は、出資した額そのものではなく、退社の時点における会社の財産状況に応じて計算するのが原則です。利益が積み上がっていれば出資額より多くなることもありますし、赤字が続いていれば出資額を下回ることもあります。具体的な計算方法は会社の状況や定款の定めによって変わるため、決算書をもとに税理士と一緒に確認するのが現実的です。
「合同会社 退社 払い戻し しない」で検索される背景には、会社にお金を出す余裕がない、あるいは当事者同士で金銭のやり取りをしたくない、という事情があることが多いようです。実務では、退社する社員が払い戻し請求権を放棄する形や、定款であらかじめ払い戻しの取扱いを定めておく形、そもそも退社ではなく持分譲渡で地位を移す形などがとられます。ただし、こうした処理は関係者間の税務上の扱い(贈与や所得と評価されるかどうか)に影響することがあります。「払い戻さなければ何も起きない」とは言い切れないため、税理士に事前確認してください。
逆に、払い戻しを行う場合で、その原資として資本金の額を減らすときは、債権者保護の手続きが必要になります。官報での公告や、分かっている債権者への個別の催告を行い、一定の異議申述期間を設けるという流れです。公告には準備期間と掲載の手間がかかるので、払い戻しの時期から逆算してスケジュールを組んでください。なお、資本金の額を減らさずに、利益剰余金の範囲で払い戻す形をとれるかどうかも、会社の財務状況によります。
登記は必要か|必要になるケースと期限の考え方
退社したからといって、常に登記が必要になるわけではありません。判断の順番は次の通りです。まず「退社した人は登記されている人か」を確認します。合同会社の登記事項に載るのは、業務執行社員と代表社員です。業務を執行しない社員(出資だけの社員)は登記されていないため、その人が退社しても、それだけでは登記事項に変更は生じません。
業務執行社員や代表社員が退社した場合は、退社による変更の登記が必要です。代表社員が抜けるときは、残る社員の中から新たに代表社員を定める手続き(定款の定めに応じた互選や総社員の同意など)もあわせて行います。変更の登記は、変更が生じたときから一定の期間内に、本店の所在地を管轄する法務局へ申請することとされています。期限は法律で定められており、遅れると過料の対象になり得るため、退社日が決まったらすぐ準備を始めてください。
もう一つの登記の契機が資本金の額の変更です。払い戻しにともなって資本金の額を減らした場合は、その変更も登記します。申請には、退社の事実や社員の決定を示す書類、債権者保護の手続きを行ったことを示す書類などが必要になります。必要書類の組み合わせは会社ごとの事情で変わるので、法務局の案内を確認するか、司法書士に相談すると確実です。
なお、社員が1人もいなくなると、合同会社は解散事由に該当することになります。ひとり社長の合同会社で「自分が抜けたい」という場合は、退社ではなく、持分を誰かに譲って交代するか、解散・清算を選ぶかという話になります。方向性が変わるので、早い段階で方針を決めてください。
退社手続きの進め方|いつ・何を用意して・どこに出すか
流れは、おおむね次の順になります。第1に、定款を確認します。退社に関する定め、持分譲渡の承諾要件、業務執行社員・代表社員の定め方、相続人の持分承継に関する定めがあるかを見ます。ここを飛ばすと、後の手続きがやり直しになりがちです。第2に、退社か持分譲渡かを決め、当事者と残る社員の間で合意します。退社日、払い戻しの有無と金額、支払時期を書面にしておきます。
第3に、社員の意思決定を行います。総社員の同意書や業務執行社員の決定書など、定款の定めに応じた書面を作成し、日付と署名押印を残します。定款変更が必要になる場合(社員の記載を変える、代表社員を変えるなど)もこの段階で行います。第4に、資本金の額を減らす場合は債権者保護の手続きを進めます。公告の掲載期間と異議申述期間を見込んだスケジュールが必要です。
第5に、登記が必要なケースでは、期限内に本店所在地を管轄する法務局へ変更登記を申請します。最後に、税務署や都道府県・市区町村への異動届出、社会保険や許認可に関する届出が必要になることもあります。代表社員が交代した場合は、銀行口座の名義や取引先との契約名義、請求書の記載なども見直してください。登記が終わっても、周辺の手続きが残っていることは珍しくありません。
迷ったときの相談先|税理士・司法書士をどう使い分けるか
持分の払い戻し金額をどう計算するか、払い戻しをしない場合に当事者や会社にどのような税務上の取扱いが生じ得るか、退社にともなうお金の動きをどの勘定で処理するか。こうした論点は税理士の領域です。金額が大きいほど、後から「こう扱われることがあります」と指摘されたときの影響も大きくなるため、合意書を作る前の段階で相談しておくことをおすすめします。
定款の読み方、総社員の同意書や決定書の作り方、資本金の額の減少にともなう債権者保護の手続き、変更登記の申請は司法書士の領域です。特に代表社員の交代や資本金の変更が絡むときは、書類の組み合わせが会社ごとに違うため、専門家に整理してもらうほうが結果的に早く済むことが多いです。
社員間で意見が割れている、除名を検討している、退社した社員との間で金額の折り合いがつかない、といった争いの要素がある場合は、弁護士への相談を検討してください。合同会社は社員同士の信頼関係を前提にした会社形態なので、こじれると事業そのものに影響します。この記事は一般的な考え方の整理であり、個別の判断を保証するものではありません。制度の詳細や最新の取扱いは所管官庁の資料を確認のうえ、実際の手続きは税理士・司法書士・弁護士など、事案に合った専門家にご確認ください。
よくある質問
合同会社の社員が退社するとき、持分の払い戻しをしないことはできますか。
実務では、退社する社員が払い戻し請求権を放棄する形や、定款で取扱いを定めておく形、退社ではなく持分譲渡で地位を移す形などがとられます。ただし、こうした処理は関係者間で贈与や所得と評価されることがあり、税務上の扱いは事案によって変わります。金額にかかわらず、事前に税理士へご確認ください。
社員が退社したら必ず登記が必要ですか。
登記事項になっているのは業務執行社員と代表社員なので、出資だけの社員が退社した場合は、それだけでは登記事項の変更は生じません。業務執行社員や代表社員が退社した場合、また資本金の額を減らす場合は変更の登記が必要で、法律で定められた期間内に本店所在地を管轄する法務局へ申請します。遅れると過料の対象になり得るため、退社日が決まったら早めに準備してください。
社員が亡くなった場合、持分は相続されますか。
定款に相続人が持分を承継する旨の定めがなければ、その社員は退社したものとして扱われ、相続人は持分の払い戻しを請求する権利を相続することになるのが原則です。相続人にそのまま社員になってもらいたい場合は、あらかじめ定款にその旨を定めておく方法があります。自社の定款の記載を確認し、必要なら司法書士に相談してください。
ひとり社長の合同会社で、自分が退社することはできますか。
社員が1人もいなくなると解散事由に該当することになるため、単純な退社という形にはなりません。事業を続けるなら持分を譲って代表社員を交代する、続けないなら解散・清算に進む、という選択になります。どちらを選ぶかで手続きも税務も大きく変わるので、早い段階で税理士・司法書士に相談することをおすすめします。