合同会社の実質的支配者とは|確認方法と口座開設での申告

・会社設立・登記・会社のはじめかた編集部(監修:田中 祐介)

法人口座を開こうとしたら「実質的支配者を記入してください」と言われて手が止まった、という相談はとても多いです。合同会社は株式会社と仕組みが違うため、誰を書けばよいのか迷いやすいところでもあります。この記事では、合同会社の実質的支配者の考え方、社内で確認する手順、口座開設や各種手続きでの申告のしかたを、順を追って整理します。

この記事の結論

  • 合同会社の実質的支配者とは、会社の意思決定を実質的に左右している個人のことで、まずは出資の状況、次に業務執行への影響力、それでも定まらない場合は代表者、という順で判断します。
  • 確認は定款、出資の内訳が分かる資料、登記事項証明書の三点をそろえ、記載が食い違っていないかを突き合わせる方法が基本です。
  • 法人口座の開設時には、金融機関所定の申告書に実質的支配者の氏名・住所・生年月日などを記入し、本人確認書類とあわせて提出するのが一般的な流れです。

合同会社の実質的支配者とは何を指すのか

実質的支配者とは、法人の事業経営を実質的に支配できる立場にある「自然人(個人)」のことです。犯罪収益移転防止法にもとづき、金融機関などが取引時に確認することとされていて、法人口座の開設や一部の行政手続きで申告を求められます。法人が名義になっていても、その背後にいる個人を明らかにする、という趣旨の仕組みです。

ポイントは、必ず個人までたどる、という点です。合同会社の社員(出資者)が法人である場合でも、その法人を支配している個人まで遡って記載するのが原則の考え方になります。親会社が入っている、持株会社の下にある、といった構造の会社は特に注意が必要です。

なお「実質的支配者」は肩書きではなく、あくまで実態にもとづく判定です。名刺の役職や社内の呼び方とは切り離して考えてください。

合同会社では誰が実質的支配者になるのか|判断の順番

合同会社は株式会社と違い、出資者である「社員」が原則として会社の運営に関わります。判断はおおむね次の順番で進めます。まず第一に、議決権や出資の割合から見て、法令で定められた基準を超えて保有している個人がいるかどうかを確認します。具体的な割合の基準は関係法令や金融機関の案内に定められているため、提出先の様式や所管官庁の資料で最新の内容をご確認ください。

第一の基準で該当者がいない場合は、次に、出資以外の要素から見て事業活動に支配的な影響力を持つ個人がいるかを検討します。たとえば、実質的に資金を出しており経営方針を決めているといった事情がある場合です。ここでも該当者がいなければ、最後に、会社を代表し業務を執行する個人、つまり合同会社では代表社員(代表社員が法人であればその職務執行者にあたる個人)を記載する、という流れになります。

ひとり社長の合同会社で、自分が全額出資し、自分が代表社員であれば、実質的支配者は自分ひとり、という整理になるのが通常です。反対に、複数人で出資している会社では、出資比率によって該当者が複数になることも、誰も基準に達さず代表社員を記載することもあります。迷ったら「出資 → 影響力 → 代表者」の順に見る、と覚えておくと整理しやすくなります。

合同会社 実質的支配者の確認方法|そろえる資料は三点

社内で確認するときは、定款、出資の内訳が分かる資料、登記事項証明書(履歴事項全部証明書)の三点をそろえます。定款には社員の氏名・住所と出資の内容が記載されているのが一般的で、誰がいくら出資したのかを確認する出発点になります。設立時のものだけでなく、その後に社員の加入や退社があれば、変更後の定款や総社員の同意書も確認してください。

次に、出資の内訳を金額ベースで整理します。誰がどれだけ出資し、議決権をどう定めているかを一覧にしておくと、判定がぐっと楽になります。合同会社では定款で議決権の割合を出資額と異なる定め方にしている場合もあるため、定款の該当条文を必ず読み返してください。

最後に登記事項証明書で、業務執行社員・代表社員の記載が現状と合っているかを突き合わせます。定款では社員が交代しているのに登記が古いまま、という食い違いは実際によくあります。三点の内容がずれている場合は、まず登記や定款の整備を先に進めたほうが、その後の手続きがスムーズです。

法人口座の開設で実質的支配者をどう申告するか

流れとしては、口座開設の申込時に、金融機関所定の「実質的支配者に関する申告書」などの書類へ記入します。記入するのは、実質的支配者の氏名、住所、生年月日、国籍、会社との関係(出資者なのか代表社員なのか)、該当する判定の根拠などが一般的です。様式は金融機関ごとに異なるので、提出先の案内に従ってください。

用意するものは、登記事項証明書、定款の写し、代表者の本人確認書類、会社の実態が分かる資料(事業内容の説明資料や賃貸借契約書など)といったところが目安です。実質的支配者が代表者以外の個人である場合、その人の本人確認書類の提示を求められることもあります。必要書類は金融機関によって差があるため、申込前に公式サイトや窓口で最新の案内を確認しておくと二度手間を避けられます。

提出のタイミングは、口座開設の申込と同時が基本です。設立直後に開設する場合は、登記完了後に登記事項証明書を取得してから動くことになります。また、開設後に社員の変更や出資の異動があった場合、金融機関から届出を求められることがあるため、変更があったら早めに連絡する習慣をつけておくと安心です。

合同会社ならではの注意点|定款認証がない分、自分で整理する

株式会社の設立では公証人による定款認証の際に実質的支配者となるべき者の申告が行われますが、合同会社の設立では定款認証の手続きがありません。その分、実質的支配者を整理する最初の機会が、法人口座の開設や取引先からの確認になりがちです。設立の段階で出資者と議決権を一覧にまとめておくと、後で慌てずに済みます。

また、法務局では法人の実質的支配者に関する情報を保管する制度が設けられていますが、対象となる会社の種類や手続きの内容には条件があります。合同会社で利用できるかどうかを含め、制度の詳細は法務省や法務局の案内で最新の内容をご確認ください。

社員に法人が含まれている場合は、その法人の登記事項証明書や株主構成が分かる資料まで求められることがあります。グループ会社を挟む構成を考えているなら、設立前の段階で「最終的に誰が実質的支配者になるか」を確認しておくと、口座開設で止まりにくくなります。

更新のタイミングと、迷ったときの相談先

実質的支配者は一度決めたら終わりではありません。社員の加入・退社、出資の追加、代表社員の交代があれば、判定が変わることがあります。持分の異動があったときは、定款の変更、必要に応じた登記、そして取引金融機関への届出、という順で見直してください。

実務上のおすすめは、定款・出資一覧・登記事項証明書の三点を一つのフォルダにまとめ、変更のたびに更新日を記録しておくことです。口座開設のたびに一から調べ直す手間がなくなり、取引先から確認を求められたときにもすぐ答えられます。

出資構成が複雑な場合や、法人が社員に入っている場合、登記と定款の内容が合っているか不安な場合は、司法書士に相談すると論点を整理しやすくなります。税務上の取り扱いが絡む場面では税理士に、契約や支配関係の評価が問題になりそうなら弁護士に確認する、と相談先を分けて考えると進めやすいです。

よくある質問

ひとり社長の合同会社でも実質的支配者の申告は必要ですか。

社員が自分ひとりの合同会社でも、法人口座の開設時などに申告を求められるのが一般的です。この場合は自分自身が実質的支配者として記載されることが多く、判定そのものは難しくありません。提出様式は金融機関ごとに異なるため、申込先の案内をご確認ください。

出資者が複数いる場合、実質的支配者は何人まで書くのですか。

法令の基準に該当する個人が複数いれば、その全員を記載するのが基本の考え方です。全員が基準に達しない場合は、代表社員などを記載する流れになります。人数の書き方は申告書の様式に指示があるので、それに従ってください。

実質的支配者と代表社員は同じ人でなければいけませんか。

同じである必要はありません。出資はしているが業務執行に関わらない社員が実質的支配者になることもあれば、出資の基準に該当する人がおらず代表社員を記載することもあります。実態にもとづいて判定する点が大切です。

社員が変わったら、どこに届け出ればよいですか。

まず定款の変更と、必要に応じた登記の手続きを進め、そのうえで取引のある金融機関へ連絡するのが一般的な順序です。登記や定款の整合に不安があれば、司法書士に相談すると論点を整理しやすくなります。

あわせて読みたい

「会社設立・登記」の記事をすべて見る →

次に決めること

記事をすべて見る(1087本)→

この記事は一般的な情報をまとめたものです。税務・法務・労務の個別の判断については、税理士・弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。 料金や条件は変わることがあるため、お申し込み前に必ず各サービスの公式サイトで最新の内容をご確認ください。