法人口座で外貨・海外送金を受け取る|Wiseと銀行の使い分け
海外のクライアントから「送金先を教えてください」と言われて、手が止まる。日本の法人口座のSWIFTコードを伝えればいいのか、それともWiseのような送金サービスを使うべきなのか。実際に受け取ってみると、着金までの日数や、いつの間にか目減りしている金額に驚くこともあります。この記事では、法人で外貨・海外送金を受け取る方法を、銀行とWiseの二軸で整理し、どんな会社がどちらに向くかを判断の順番で説明します。
この記事の結論
- 法人が海外から入金を受ける方法は大きく、日本の銀行で被仕向送金(外貨または円転)を受ける方法と、Wiseなどの送金サービスで現地通貨の受取口座情報を使う方法の二つがあります。
- 受取通貨をそのまま外貨で保有して支払いにも使いたい、少額の入金が頻繁にある、という会社はWiseなどのサービスが検討しやすく、金額が大きく取引先や金融機関からの信用を重視する会社は銀行の外貨預金口座が向きます。
- どちらを使う場合でも、着金額と為替レート、差し引かれた費用を記録し、円換算のルールを決めておくことが会計処理上は重要で、判断に迷う部分は税理士に確認してください。
法人で海外送金を受け取る方法は、大きく2つ
一つ目は、日本の銀行の法人口座で受け取る方法です。海外から送られてくる送金を銀行側では「被仕向送金」と呼びます。送金元には銀行名・支店・SWIFT(BIC)コード・口座番号・口座名義(英字)・銀行住所などを伝え、着金すると銀行から連絡が来て、円に換えて受け取るか、外貨のまま外貨預金口座に入れるかを選ぶ形が一般的です。
二つ目は、Wise(ワイズ)に代表される送金・両替サービスのビジネスアカウントを使う方法です。こちらは米ドルやユーロ、英ポンドなど、通貨ごとに現地の受取用口座情報が発行され、送金元から見ると「国内送金」として送れる通貨があります。受け取った外貨はそのまま保有でき、必要なときに円に換えて日本の法人口座へ出金します。
どちらか一方しか使えないわけではなく、実務では併用している会社も少なくありません。まずは両者の性格の違いを押さえてから、自社の取引に当てはめて選ぶのが近道です。
銀行で受け取る場合の流れと、つまずきやすいところ
銀行で受け取る準備は、口座開設のあとに「外貨預金口座を持つか」を決めるところから始まります。円建てで受け取るだけなら既存の法人口座でも受けられることが多い一方、外貨のまま保有したい場合は外貨普通預金の口座を別途申し込む流れになります。取扱通貨や申込方法は金融機関ごとに違うので、取引銀行の公式サイトや窓口で確認してください。
送金元に伝える情報は、英字の口座名義(登記上の商号を英語表記にしたもの)、SWIFTコード、支店の住所などです。ここで名義のスペルが登記や送金元の請求書と食い違うと、着金が保留になり照会のやり取りが発生します。最初に一度、英字表記を社内で決めて文書に残しておくと、以後のやり取りが楽になります。
つまずきやすいのは費用と日数です。海外送金は送金元の銀行、経由する中継銀行、受取銀行のそれぞれで費用が差し引かれることがあり、請求額と着金額がずれることがあります。また、被仕向送金では入金の理由や取引内容の確認を求められる場合があり、書類提出で数日かかることもあります。具体的な費用や所要日数は取引銀行に確認してください。
Wise(ワイズ)の法人アカウントはどういうものか
Wiseのビジネスアカウントは、法人として登録すると、通貨ごとの受取用口座情報を持てるサービスです。たとえば米ドルなら米国の口座情報、ユーロならIBANといった形で、海外のクライアントからは国内送金の感覚で送ってもらえる通貨があります。受け取った資金は通貨ごとに残高として保持でき、同じアカウントから海外への支払いにも回せます。
為替の考え方も銀行とは異なります。銀行の外貨取引では、買値と売値の差(スプレッド)が実質的な費用に含まれる形が一般的ですが、Wiseは市場の中値をベースに、両替手数料を別建てで表示する仕組みを取っています。どちらが自社にとって有利かは金額と通貨、頻度によって変わるため、実際の送金画面や銀行の提示レートで、同じ金額・同じ通貨で見積もって比べるのが確実です。料金は改定されることがあるので、必ず各社の公式サイトで最新の情報を確認してください。
注意したいのは、Wiseは銀行預金とは性質が異なる点です。国内の預金保険の対象となる預金口座とは仕組みが違い、取扱通貨や利用できる国・用途にも条件があります。また、法人としての登録には登記事項証明書や事業内容の説明、実質的支配者の情報などの確認が求められるのが一般的です。申込前に、自社の事業がサービスの対象に含まれるかを公式サイトで確認しておくと安心です。
Wiseと銀行、どちらを使うか——この順に見る
最初に見るのは「受け取った外貨をどう使うか」です。外注先への支払いや海外の広告費など、同じ通貨で出ていくお金があるなら、外貨のまま保有して支払いに回せる仕組みのほうが両替の回数を減らせます。この条件に当てはまるなら、Wiseなどの外貨保有型のサービスが検討しやすくなります。反対に、受け取ったらすぐ全額を円にして国内の支払いに充てるだけなら、銀行で円転して受ける形でも大きな不便はありません。
次に見るのは「1回あたりの金額と頻度」です。少額の入金が月に何度もあるなら、1件ごとに固定的な費用がかかる仕組みでは負担が重くなりやすく、国内送金として受けられる通貨がある方法が向きます。逆に、数千万円単位の入金が年に数回という取引なら、送金経路の確かさや、着金しなかったときの照会対応を含めて、取引銀行の枠組みで受けるほうが落ち着いて進められます。
三つ目は「相手先や金融機関からどう見られるか」です。海外の大企業や官公庁が相手の場合、送金先として銀行口座を指定するよう求められることがあります。また、融資の相談をしている銀行がある会社は、売上の入金が全部よそを通っていると、取引実績が見えにくくなります。この事情がある会社は、メインの入金は銀行で受け、細かい入金や海外への支払いをサービス側でさばく、という分け方が現実的です。
最後に「社内の手間」です。会計ソフトとの連携、通帳・取引明細の出し方、複数人での承認の要否は、日々の作業量に直結します。経理が自分ひとりなのか担当者がいるのかで、適した形は変わります。
外貨で受け取ったときの記録と会計処理で気をつけること
外貨の入金は、請求した金額がそのまま入ってくるとは限りません。中継銀行の費用が引かれていたり、両替のタイミングでレートが動いていたりするためです。売掛金の消し込みでつまずかないよう、請求書番号・請求通貨・請求額・着金額・適用レート・差引かれた費用を、1件ずつ記録として残しておきましょう。表計算でも構いません。
円換算のルールも、最初に決めておくと後が楽です。取引を計上した日のレートと、実際に入金・両替した日のレートが違えば、その差が為替差損益として処理されるのが一般的な考え方です。どの日のどのレートを使うか、期末の外貨残高をどう評価するかは、会社の状況によって扱いが変わることがあるため、税理士にご確認ください。
消費税の扱いも見落とされがちです。海外の相手への役務提供が輸出取引に該当するかどうかは、取引の中身や相手の所在地によって判断が分かれることがあり、証憑の保存が求められる場合もあります。インボイス制度や電子帳簿保存法との関係も含めて、要件の詳細は国税庁の資料を確認したうえで、自社の取引に当てはまるかは専門家に相談するのが安全です。
受け取り体制をつくる順番と、相談先
これから整える場合の順番は、①日本の法人口座を開設する、②受け取る通貨と年間の想定金額・件数を書き出す、③取引銀行に外貨での受け取り方法と必要書類を確認する、④少額の入金が多いなら送金サービスのビジネスアカウントを併せて検討する、⑤英字の商号表記と住所表記を社内で統一して文書化する、という流れが取り組みやすいはずです。
実際の運用では、最初の1件を小さい金額で試すことを強くおすすめします。送金元にとっても初めての送金先であることが多く、名義や経由銀行の指定で止まることがあります。テスト送金で流れを確認してから、本番の請求に進めば、資金繰りに影響する事故を避けやすくなります。
海外取引が絡むと、為替差損益の処理、輸出取引の消費税、源泉徴収の要否、外国為替及び外国貿易法に基づく報告の要否など、判断が必要な論点が一気に増えます。とくに継続的に海外から入金がある会社は、体制を固める前の段階で、国際取引に詳しい税理士に一度相談しておくと、あとからの修正が少なくて済みます。契約書の準拠法や支払条件で不安がある場合は、弁護士にも確認しておきましょう。
よくある質問
Wiseの法人アカウントは、日本の法人口座の代わりになりますか
完全な代わりとして考えるのは難しい場面があります。国内の取引先への振込先として指定できるか、融資や取引の審査で口座としてどう扱われるかは相手方の判断によるためです。日本の法人口座を主軸にしつつ、外貨の受け取りと海外への支払いに送金サービスを併用する形が、現実的な使い分けになりやすいです。
海外から送金を受けるのに、外貨預金口座は必要ですか
円に換えて受け取るだけなら、通常の法人口座でも被仕向送金を受けられることが多いです。外貨のまま保有して後日両替したい、外貨で支払いにも使いたいという場合に、外貨預金口座が必要になります。取扱通貨や申込条件は金融機関ごとに異なるので、取引銀行の公式サイトで確認してください。
送金手数料はどちらが安いですか
金額・通貨・送金経路によって変わるため、一律にどちらが安いとは言えません。銀行は為替レートのスプレッドに費用が含まれる形が一般的で、送金サービスは両替手数料を別建てで表示する仕組みが多く、比べ方に注意が必要です。同じ金額・同じ通貨で、実際の見積画面と銀行の提示レートを並べて確認するのが確実で、料金は改定されることがあるため各社の公式サイトで最新情報をご確認ください。
請求額より着金額が少なかったときはどう処理しますか
中継銀行などで費用が差し引かれた可能性があります。まず送金元に送金明細を取り寄せてもらい、差額の理由を特定してください。差額を手数料として処理するか、売掛金の未回収として扱うかは状況によって変わるため、判断に迷う場合は税理士にご確認ください。