会社設立後の届出一覧|税務署・年金事務所・労基署への提出物と期限

・会社設立・登記・会社のはじめかた編集部(監修:田中 祐介)

登記が完了して登記事項証明書を手にすると、ひと区切りついた気分になります。ただ、会社としての事務はここからが本番です。税務署、都道府県税事務所、市区町村、年金事務所、そして人を雇うなら労働基準監督署とハローワーク。提出先が分かれていて、それぞれに期限があります。この記事では、設立後に出す届出を提出先ごとに並べ、どれから手をつければよいか、ひとり社長ならどこまで必要かを整理します。

この記事の結論

  • 会社設立後の届出は、税務署・都道府県税事務所・市区町村・年金事務所の4か所が基本で、人を雇う場合に労働基準監督署とハローワークが加わります。
  • 税務署への法人設立届出書は設立から2か月以内、社会保険の新規適用届は事実発生から5日以内が目安とされており、期限が短い社会保険を先に動かすと安全です。
  • 役員報酬を出すなら、ひとり社長でも給与支払事務所等の開設届出書と社会保険の加入手続きが必要になるのが一般的です。

会社設立後の届出一覧|提出先は大きく6つ

設立登記が完了したあとの届出は、提出先で分けると理解しやすくなります。税金関係が「税務署」「都道府県税事務所」「市区町村役所」の3か所、社会保険が「年金事務所(日本年金機構)」、労働保険が「労働基準監督署」と「ハローワーク」です。会社の形や人を雇うかどうかで、6か所すべてに出す会社もあれば、4か所で済む会社もあります。

税務署に出すのは、法人設立届出書、給与支払事務所等の開設届出書、青色申告の承認申請書、源泉所得税の納期の特例に関する申請書などが代表的です。都道府県税事務所と市区町村には、法人設立・設置に関する届出を出します。名称や様式、添付書類は自治体ごとに違うので、所在地の自治体の公式サイトで最新の様式を確認してください。

社会保険は、役員報酬を支払う法人であれば原則として加入対象とされています。年金事務所に新規適用届と被保険者資格取得届を出します。従業員を雇う場合は、労働基準監督署に労働保険(労災保険)の成立に関する届出、ハローワークに雇用保険の適用事業所設置届と資格取得届を出す流れが一般的です。

どの順番で出す?期限が短いものから手をつける

迷ったら、期限が短い順に動くのが安全です。社会保険の新規適用届は事実発生から5日以内が目安とされており、設立後の届出のなかでも期限が最も短い部類です。労働保険の成立届は保険関係が成立した日から10日以内、雇用保険の適用事業所設置届も設置日の翌日から10日以内が目安とされています。

一方、税務署の法人設立届出書は設立から2か月以内、都道府県・市区町村の届出も設立から1〜2か月程度を目安とする自治体が多く、社会保険や労働保険より余裕があります。つまり「社会保険・労働保険 → 税務署 → 都道府県・市区町村」の順に着手すると、期限切れを起こしにくくなります。

ただし例外が1つあります。青色申告の承認申請書は、原則として設立から3か月を経過した日と、最初の事業年度終了の日のうち早いほうの前日までに提出する、という期限の決まり方をします。期限を過ぎるとその事業年度は青色申告の扱いを受けられないことがあるため、後回しにせず設立直後に他の税務書類とまとめて出しておくのが無難です。

税務署への届出|法人設立届出書と給与支払事務所等の開設届出書

税務署への提出物は、まず法人設立届出書です。会社の商号、所在地、事業年度、事業の概要などを記載し、定款の写しなどを添えて、本店所在地を管轄する税務署に提出します。設立から2か月以内が目安です。提出は窓口持参、郵送のほか、e-Taxによる電子提出にも対応しています。

次に給与支払事務所等の開設届出書です。「従業員を雇っていないから不要」と考えてしまいがちですが、役員報酬も給与として源泉徴収の対象になるため、ひとり社長でも報酬を出すなら提出対象になるのが一般的です。給与の支払いを始めることになった日から1か月以内が目安とされています。

あわせて検討したいのが、源泉所得税の納期の特例に関する申請書です。源泉徴収した所得税は原則として毎月納付しますが、給与の支給人員が常時一定数以下の事業所は、年2回にまとめて納付する特例を申請できる仕組みがあります。小規模な会社では事務負担が軽くなることが多いので、青色申告の申請と同じタイミングで検討するとよいでしょう。適用の可否や要件は国税庁の資料で確認してください。

年金事務所への届出|社会保険はひとり社長でも対象になる

法人は、代表者1人だけの会社であっても、報酬を支払っている限り健康保険・厚生年金保険の適用事業所に該当するとされています。「従業員がいないから社会保険は関係ない」という理解は、法人の場合は当てはまらないことが多い点に注意してください。

提出するのは、健康保険・厚生年金保険新規適用届、被保険者資格取得届、扶養する家族がいる場合は被扶養者(異動)届です。提出先は管轄の年金事務所で、電子申請や郵送にも対応しています。登記事項証明書など、会社の実在を確認できる書類の添付を求められるのが一般的なので、登記完了後に登記事項証明書を複数部取得しておくと、他の届出にも使い回せて便利です。

なお、役員報酬をゼロに設定している場合など、報酬の有無によって取り扱いが変わることがあります。設立直後は報酬額がまだ決まっていないケースもあるため、判断に迷うときは年金事務所か社会保険労務士に確認してから手続きを進めてください。

労基署・ハローワークへの届出|人を1人でも雇うなら必要

従業員を雇わず役員だけで運営している間は、労働保険の手続きは基本的に発生しません。アルバイトを含めて人を1人でも雇い入れた時点で、労働基準監督署とハローワークへの届出を検討することになります。役員は原則として労働者に当たらないため、ここが社会保険との大きな違いです。

労働基準監督署には、保険関係成立届と、概算保険料申告書を提出します。成立届は保険関係が成立した日の翌日から10日以内、概算保険料申告書は50日以内が目安とされています。労災保険は、雇用形態や勤務時間にかかわらず、雇った人全員が対象になるのが原則です。

ハローワークには、雇用保険適用事業所設置届と雇用保険被保険者資格取得届を提出します。雇用保険は労災保険と違い、週の所定労働時間や雇用見込み期間によって加入対象かどうかが変わります。短時間のアルバイトを雇うときは、加入要件に当たるかどうかをハローワークの窓口か社会保険労務士に確認するのが確実です。

人を雇うと、就業規則や労働条件通知書、賃金台帳や出勤簿といった帳簿の整備も関わってきます。届出だけで終わりではないので、採用を決めた段階で労務まわりを一度まとめて点検しておくと、後の負担が軽くなります。

ひとり社長の場合、最低限どこまで出せばいい?

従業員を雇わないひとり社長で、自分に役員報酬を支払う場合、届出先は税務署・都道府県税事務所・市区町村・年金事務所の4か所が基本形になります。税務署には法人設立届出書、給与支払事務所等の開設届出書、青色申告の承認申請書、必要に応じて源泉所得税の納期の特例の申請書。年金事務所には新規適用届と資格取得届です。労基署とハローワークは、人を雇うまでは出番がありません。

進め方としては、登記完了後にまず登記事項証明書と印鑑証明書を取得し、法人名義の銀行口座開設と並行して届出を進めるとスムーズです。届出には登記事項証明書の添付を求められる場面が多く、口座開設でも使います。何部必要になるかは提出先によって違うので、余裕をもって取得しておくとよいでしょう。

提出したら、控えに受付印をもらう、または電子申請の受付結果をPDFで保存しておいてください。後から金融機関や取引先、補助金の申請などで「届出済みであること」の確認を求められることがあります。紙とデータのどちらで保管するかも、この段階で決めておくと後が楽です。電子データでの保存方法については、電子帳簿保存法の考え方も関わるため、国税庁の資料を確認しておくと安心です。

迷ったら誰に相談する?分野ごとの窓口

設立後の届出は分野がまたがるため、相談先も分かれます。税務署への届出、事業年度の決め方、役員報酬の設定や青色申告の扱いは税理士。社会保険・労働保険の加入判断、雇用時の手続きや就業規則は社会保険労務士。登記事項の変更や本店移転などの登記は司法書士。契約書や取引上のトラブルは弁護士、というのが一般的な切り分けです。

特に判断が分かれやすいのが、役員報酬の金額と支払い開始時期です。これは法人税の扱いと社会保険料の両方に関わるため、設立直後のうちに税理士と社会保険労務士の双方の視点で一度整理しておくと、後から修正する手間を避けやすくなります。

この記事は一般的な流れをまとめたもので、個別の会社の事情によって必要な届出や期限の扱いは変わることがあります。自社に当てはめた判断が必要なときは、税務は税理士、社会保険・労働保険は社会保険労務士に確認したうえで進めてください。最新の様式や要件は、国税庁・日本年金機構・厚生労働省および所在地の自治体の公式サイトでご確認ください。

よくある質問

会社設立後の届出を出し忘れるとどうなりますか?

届出の種類によって影響は異なりますが、青色申告の承認申請のように期限を過ぎるとその事業年度に適用を受けられないものがあります。社会保険や労働保険についても、後から遡って加入手続きや保険料の納付を求められることがあります。気づいた時点で管轄の窓口に連絡し、対応方法を相談してください。

役員報酬をゼロにしている場合も社会保険の届出は必要ですか?

報酬の有無によって取り扱いが変わることがあり、一律には判断できません。設立直後で報酬額が未定の場合もあるため、年金事務所または社会保険労務士に状況を伝えて確認するのが確実です。後から遡って手続きが必要になるケースもあるので、早めの確認をおすすめします。

届出はすべて紙で出す必要がありますか?

税務署の届出はe-Tax、社会保険や労働保険は電子申請に対応しているものが多く、オンラインで完結できる場合があります。対応状況や必要な電子証明書は手続きごとに異なるため、国税庁や日本年金機構の公式サイトで最新の案内を確認してください。

登記事項証明書は何部くらい取っておけばよいですか?

提出先ごとに添付を求められることがあり、法人口座の開設でも使うため、複数部あると手続きがスムーズです。必要部数は提出先や金融機関によって異なるので、手続きを始める前にそれぞれの案内を確認して、まとめて取得しておくとよいでしょう。

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この記事は一般的な情報をまとめたものです。税務・法務・労務の個別の判断については、税理士・弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。 料金や条件は変わることがあるため、お申し込み前に必ず各サービスの公式サイトで最新の内容をご確認ください。