会社設立後の経理の始め方|経費はいつから・帳簿と会計ソフトの準備

・会社設立・登記・会社のはじめかた編集部(監修:田中 祐介)

会社をつくった直後、いちばん多い質問が「経費っていつから落とせるんですか」です。答えを先に言うと、設立登記の前に払ったお金も、会社のための支出であれば会社の帳簿に載せられる道があります。ただし載せ方が違います。この記事では、経費計上の起点、最初に決める勘定科目、会計ソフトの準備、そして最初の貸借対照表をつくるまでを、実際に手を動かす順番で整理します。

この記事の結論

  • 会社設立前の支出も、会社のための準備費用であれば「創立費」「開業費」として設立後の会社の帳簿に計上できる場合があり、経費のスタートは登記日より前にさかのぼることがあります。
  • 経理の立ち上げは、法人口座と事業用カードを決める→会計ソフトを契約して口座を連携する→開始時点の貸借対照表(資本金と現預金)を入力する、の順で進めると迷いにくくなります。
  • 勘定科目は最初から細かく分けず、よく使う十数個を決めて社内で固定し、判断に迷う支出はメモを残して顧問税理士に確認する運用が現実的です。

会社設立の経費はいつから? 登記日の前後で扱いが変わります

結論から言うと、経費の起点は「設立登記の日」ではありません。会社をつくるために登記前に支払った費用も、設立後の会社の費用として処理できる場合があります。登記の日を境に、それ以前の支出は創立費・開業費という特別な科目で、それ以降の支出は通常の経費として扱うのが基本的な考え方です。

ここで大事なのは、支払った時期よりも「その支出が会社のためのものだったか」です。定款認証や登録免許税のように会社をつくる手続きそのものにかかった費用、開業準備のために使った打ち合わせ費用や名刺・ウェブサイトの制作費などは、会社の費用として扱われることがあります。一方で、設立前から個人で使っていた私物や、事業と関係のない支出は、会社の経費とすることは難しいと考えてください。

登記前の支出は個人のお金で立て替えているケースがほとんどです。この場合、会社が個人(社長)に返す形になるので、領収書は捨てずに日付順にまとめておきます。ここが後から一番再現しづらい部分なので、設立準備を始めた時点から領収書を1つの封筒に入れておくだけでも、後の作業がかなり楽になります。

創立費と開業費の違い、そして「経費で落とす」の実際

創立費は、会社を設立する手続きそのものにかかった費用です。定款の認証にかかった費用、登録免許税、設立登記を専門家に依頼した場合の報酬などが代表例です。開業費は、設立後から実際に営業を始めるまでの準備期間に使った費用で、開業の挨拶や広告、名刺、市場調査の費用などが挙げられます。

どちらも、支出した年度に一度に費用とするほか、資産として計上して後の年度に配分していく方法が認められていると説明されることが多い科目です。利益が出ていない初年度に全額を費用にするか、利益が出てから配分するかで税負担のタイミングが変わるため、ここは自己判断せず税理士にご確認ください。金額が大きくなりやすい部分でもあります。

「経費で落とす」という言い方はよく使われますが、実務では「会社の費用として帳簿に記録し、法人税の計算上も損金として認められるか」という二段構えの話です。帳簿に載せたからといって、すべてが税務上の損金として認められるとは限りません。特に社長個人と会社の境界があいまいになりやすい支出(自宅兼事務所の家賃、自家用車、スマートフォンなど)は、按分の考え方を先に決めておき、その根拠をメモに残しておくと説明しやすくなります。

経理の立ち上げ手順|口座・カード・会計ソフトをこの順で準備する

まず最初にやることは、会社のお金の入口と出口を1本にまとめることです。法人口座の開設を申し込み、あわせて事業用のクレジットカードまたはデビットカードを決めます。ここを分けずに社長個人の口座と混ぜてしまうと、後から仕訳を一件ずつ切り分ける作業が発生し、毎月それに時間を取られます。

次に会計ソフトを契約します。法人口座が開設できるまで時間がかかることもありますが、ソフトの契約と初期設定は口座より先に進めておいて構いません。会社名、事業年度(決算月)、資本金、消費税の扱いといった基本情報を登録し、勘定科目の一覧を確認します。事業年度と決算月は定款で決めた内容と一致させてください。

法人口座が開設できたら、会計ソフトに口座とカードを連携させます。連携しておくと入出金の明細が自動で取り込まれ、あとは科目を選ぶだけになります。ここまでを設立後1〜2か月のうちに終えておくと、初年度の途中で「そういえば帳簿をつけていない」という状態を避けられます。最後に、領収書とレシートの保管ルール(紙で保管するのか、スキャンして電子で残すのか)を決めます。電子で保存する場合は電子帳簿保存法の要件に関わるため、国税庁の資料で最新の取り扱いを確認してください。

勘定科目はどう決める? 最初は十数個で固定する

会計ソフトには最初から多くの勘定科目が用意されていますが、全部使う必要はありません。小さな会社であれば、よく使う科目を十数個に絞り、それを社内の標準として固定するほうが、月次の処理が速くなり、前年との比較もしやすくなります。

たとえば、売上高、役員報酬、給料手当、法定福利費、地代家賃、水道光熱費、通信費、旅費交通費、消耗品費、支払手数料、外注費、広告宣伝費、会議費、接待交際費、租税公課あたりが出発点になります。業種特有の費用が大きい場合(仕入、システム利用料、車両費など)は、そこだけ独立した科目にしておくと、後で原価を把握しやすくなります。

迷いやすいのが、似た科目のどちらに入れるかです。判断基準はシンプルで、「翌年も同じ判断ができるか」。たとえばクラウドサービスの利用料を通信費にするか支払手数料にするか消耗品費にするかは、どれかに決めて一貫させることが大切です。判断に迷った支出は、仕訳の摘要欄に「何のための支出か」を一言書いておくと、決算のときに自分でも思い出せますし、税理士に確認するときの材料になります。

会計ソフトの選び方|弥生会計やクラウド型で見るポイント

会計ソフトは大きく、パソコンにインストールして使うタイプと、ブラウザで使うクラウド型に分かれます。弥生会計のように長く使われてきた製品はインストール型とクラウド型の両方の系統があり、他にもクラウド会計サービスが複数あります。料金やプラン内容は改定されることがあるため、各社の公式サイトで最新の情報を確認してください。

選ぶときは、次の順に見ると絞りやすくなります。第一に、顧問税理士がいる、または依頼する予定があるなら、その税理士が対応しているソフトを確認すること。データのやりとりがスムーズなソフトを選ぶだけで、毎月の手間が変わります。第二に、法人口座やクレジットカード、決済サービスとの連携に対応しているか。第三に、給与計算や請求書発行まで同じシリーズで揃えるかどうか。

判断の分かれ目はこうです。自分で日々の入力をして経理のリテラシーを持ちたい、外出先でも入力したい、という場合はクラウド型が向きます。パソコン1台で腰を据えて作業する、既に慣れているソフトがある、という場合はインストール型でも問題は起きにくいでしょう。どちらにしても、無料で試せる期間があるものは、実際に自社の取引を数件入れてみてから決めるのが確実です。

簿記の知識はどこまで必要? 最初の貸借対照表をつくる

会計ソフトを使うなら、簿記の資格までは必要ありません。ただし、「借方・貸方」「貸借対照表と損益計算書は何が違うのか」という骨格だけは押さえておくと、ソフトが出した数字が読めるようになります。目安としては、簿記3級の教材を一通り眺める程度で、月次の数字が自分の言葉で説明できるようになります。

設立直後にやることのひとつが、開始時点の貸借対照表の入力です。といっても難しくはありません。設立時点では、左側(資産)に資本金として払い込まれた現預金、右側(純資産)に資本金が並ぶ、という非常にシンプルな形からスタートします。そこに、創立費や開業費、社長からの立替金(役員借入金として扱うことがあります)を加えていくと、最初の姿ができあがります。

その後は、月に一度でいいので貸借対照表と損益計算書を開いて、現預金の残高が通帳と一致しているか、身に覚えのない残高が残っていないかを確認してください。この「月次で締める」習慣がつくと、決算のときに一年分をまとめて処理する必要がなくなり、納税額の見通しも早い段階で立てられます。

経理の立ち上げでつまずきやすいところ

よくあるのが、社長個人のお金と会社のお金が混ざったままになっているケースです。個人のカードで会社の経費を払うこと自体はよくありますが、そのままにせず、立替精算として会社から本人に支払うか、役員借入金として記録するかを決めて処理しておきます。ここを放置すると、決算で原因不明の差額が出やすくなります。

もうひとつは、役員報酬の決め方です。役員報酬は、支給額や決定のタイミングについて法人税法上のルールがあり、期の途中で自由に変えると損金として扱われないことがあります。設立から一定期間内に決める必要があるとされるため、最初の株主総会・取締役会で決めた内容を議事録に残しておいてください。金額の設定は社会保険料にも影響するので、税理士や社会保険労務士に相談しながら決める方が安心です。

そして、提出書類の期限です。設立後には税務署・都道府県・市区町村への届出、社会保険関係の手続きがあり、それぞれ期限があります。経理の立ち上げと並行して、設立後の届出チェックリストを1枚作り、提出済みかどうかを管理しておくと抜けにくくなります。

迷ったら専門家に相談を

ここまでの手順は、自分で進められる範囲を意識してまとめました。一方で、創立費・開業費をどのタイミングで費用にするか、役員報酬をいくらに設定するか、消費税の課税事業者を選ぶかどうかといった論点は、会社の状況によって結論が変わりますし、後から取り返しがつかない選択もあります。

設立から数か月のうちに一度、税理士に相談しておくことをおすすめします。顧問契約までしなくても、初年度のスケジュールと論点を整理してもらうだけで、その後の判断がぐっと楽になります。従業員を雇う予定があるなら社会保険労務士、登記事項の変更が出てきたら司法書士が相談先です。

制度の細かい要件は改正されることがあります。電子帳簿保存法やインボイス制度の取り扱いは、国税庁など所管官庁の最新資料を確認したうえで、自社に当てはめる部分は専門家に確認してください。

よくある質問

会社設立前に支払った費用も経費にできますか?

会社をつくるために支払った費用は、創立費や開業費として設立後の会社の帳簿に計上できる場合があります。登記前の支出は個人が立て替えている形になるため、領収書を日付順に保管しておいてください。どこまで含められるかは状況によるため、税理士にご確認ください。

会計ソフトは会社設立後すぐに契約すべきですか?

法人口座の開設を待たずに、設立後早い段階で契約して初期設定まで進めておくと安心です。事業年度や資本金などの基本情報を登録し、口座が開設でき次第、連携させる流れがスムーズです。料金やプランは各社の公式サイトで最新の情報を確認してください。

簿記の資格がないと経理はできませんか?

会計ソフトを使うなら資格は必要ありません。ただし貸借対照表と損益計算書の違い、借方・貸方の考え方だけは押さえておくと、出てきた数字を自分で読めるようになります。簿記3級の教材を一通り眺める程度が目安です。

勘定科目はどこまで細かく分けるべきですか?

小さな会社であれば、よく使う十数個に絞って固定するほうが実務が回りやすくなります。大切なのは分類の細かさより、翌年も同じ判断ができる一貫性です。迷った支出は摘要欄に用途をメモしておくと、決算時の確認がしやすくなります。

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