外国人採用にかかる費用|特定技能・技能実習の費用の内訳
「外国人を採用すると、いくらかかるのか」。この質問に一本の数字で答えるのは難しいのですが、費用の“項目”は決まっています。どこに、いつ、誰に払うお金なのかを分解できれば、各社の見積もりを並べたときに何が高くて何が抜けているかが見えてきます。この記事では、特定技能と技能実習を中心に、採用費用の内訳と、見積書には出てこない自社負担、比較のときに見る順番を整理します。
この記事の結論
- 外国人採用の費用は「採用・紹介にかかる初期費用」「在留資格の手続き費用」「入国・住居など受け入れ準備の費用」「毎月の支援・監理にかかる継続費用」「給与・社会保険などの人件費」の5つに分けて考えると全体像がつかめます。
- 特定技能は登録支援機関への支援委託費が、技能実習は監理団体への監理費が、それぞれ毎月続く継続費用の中心になり、初期費用より総額への影響が大きくなりやすい項目です。
- 見積書に載らない住居の初期費用・備品・日本語学習・通訳・社内の担当者工数も総額に効くため、比較するときは初期費用だけでなく在留期間全体の合計で並べて判断します。
外国人採用の費用はどこに分かれるのか
外国人採用の費用を「いくらですか」と一言で聞くと、答える側も困ってしまいます。支払先も支払うタイミングもばらばらなお金が、まとめて「採用費用」と呼ばれているからです。まずは支払先で分けるのが分かりやすい方法です。
大きくは、①人材紹介会社や送出機関など採用ルートに払うお金、②在留資格の申請に関わる行政手数料や、行政書士など専門家に依頼する場合の報酬、③渡航費・住居の契約・家具家電など受け入れ準備のお金、④登録支援機関や監理団体に毎月払う支援・監理のお金、⑤給与・社会保険料・労働保険料といった、日本人を雇うときと同じ人件費、の5つです。
このうち⑤は外国人だからかかる費用ではありません。むしろ、同じ仕事なら日本人と同等以上の報酬にすることが制度上求められる考え方があるため、「安く雇えるから外国人」という発想で計算を組むと、そもそもの前提が崩れます。費用を考えるときは、①〜④が“上乗せ分”だと捉えてください。
特定技能の採用費用の内訳
特定技能で受け入れる場合、初期にかかるのは、人材紹介会社を使うならその紹介手数料、在留資格認定証明書交付申請や在留資格変更許可申請に関わる費用、海外から呼ぶ場合は渡航費や健康診断の費用などです。国内にいる留学生や技能実習修了者から切り替える場合は渡航費がかからない一方、変更申請の手続きが発生します。
継続してかかるのが、支援計画の実施を委託する場合の登録支援機関への支援委託費です。特定技能1号では、事前ガイダンス、出入国の送迎、住居確保、生活オリエンテーション、公的手続きへの同行、日本語学習の機会の提供、相談・苦情対応、定期面談といった支援が求められており、これを自社で全部行うか、登録支援機関に委託するかで費用構造が変わります。
自社で支援を行えば委託費は抑えられますが、担当者の時間と、多言語での相談対応体制が必要になります。ひとり社長や少人数の会社では、委託したほうが結果的に安定することが多い、という判断になりやすい部分です。金額は機関ごとに異なるため、各社の公式サイトや見積もりで最新の条件を確認してください。
技能実習の採用費用の内訳
技能実習の場合、団体監理型では監理団体を通すのが一般的です。初期には、監理団体への入会金や、現地の送出機関に関わる費用、面接のための渡航費、入国前後の講習に関する費用、在留資格の申請費用などが発生します。海外から呼ぶ形が基本になるため、渡航や講習まわりの初期負担は特定技能より重くなりやすい傾向があります。
継続してかかるのが監理団体への監理費です。監理団体は定期的な訪問指導や監査、実習生からの相談対応などを担い、その費用が毎月または定期で発生します。実習計画の認定、技能検定の受検、帰国時の費用など、期間中の節目ごとに出ていくお金もあります。
なお技能実習制度については、育成就労制度への移行が進められており、受け入れの枠組みや求められる手続きが変わっていく見込みです。今から新規に受け入れを検討する会社は、現行制度の費用だけで計画を固めず、移行後にどうなるかを含めて監理団体や専門家に確認しておくと安心です。制度の詳細は出入国在留管理庁など所管官庁の資料をご確認ください。
見積もりに含まれない自社負担を洗い出す
各社の見積もりを並べても総額が合わないことがあります。理由の多くは、見積書に載らない自社負担が抜けているためです。代表的なのは、住居の初期費用(敷金・礼金・仲介手数料・保証会社の利用料など)、家具家電や寝具、自転車などの生活用品、社宅として借りる場合の家賃負担分です。これらは見落とすと総額がずれやすい項目です。
次に多いのが、社内の工数です。役所での住民登録や口座開設への同行、社内マニュアルのやさしい日本語化や多言語化、安全教育の翻訳、受け入れ後の面談。担当者が本業の合間に対応する時間は見積書に出てきませんが、実際には発生することが多い負担です。
さらに、日本語学習の支援、通訳や翻訳ツールの利用、健康診断、帰国時の航空券、途中で離職や転職があった場合の再募集費用も想定に入れておくと、資金繰りの計画が立てやすくなります。これらを「予備費」としてまとめて置いておく形でも構いません。
特定技能と技能実習、費用で迷ったらこの順に見る
費用だけで選ぶ話ではありませんが、判断の順番はつけられます。まず見るのは「その仕事が、どちらの制度の対象分野・対象業務に当てはまるか」です。ここで選択肢が絞られることが多く、費用比較はその後の話になります。対象分野は制度ごとに定められているため、所管官庁の資料で確認してください。
両方が選べる場合、次に見るのは在留できる期間と、その間に払い続ける継続費用です。初期費用が抑えられていても、毎月の支援費や監理費が続けば総額は逆転し得ます。比較するときは、初期費用と継続費用を在留予定期間で合計し、同じ土俵に並べてください。
三番目が、自社にどれだけ受け入れ体制があるかです。日本語でのやり取りに慣れた社員がいる、寮がすでにある、受け入れ実績がある、といった条件がそろっているほど委託範囲を狭められます。逆に初めての受け入れで担当者も兼務、という会社は、支援や監理を厚く委託するコストを最初から見込んでおくほうが、現場のトラブルを減らせます。
費用を見積もるときの進め方と、相談先
進め方としては、採用を決める前に、①受け入れたい職種と人数、②開始したい時期、③海外から呼ぶのか国内在住者かを決め、その条件で複数の登録支援機関または監理団体に見積もりを依頼します。このとき「初期にかかるもの」「毎月かかるもの」「自社で用意するもの」を分けて書いてもらうよう依頼すると、比較しやすくなります。
並行して、労働条件通知書や雇用契約書を外国人本人が理解できる言語で用意すること、社会保険・労働保険の加入手続き、入社後のハローワークへの外国人雇用状況の届出といった、雇用側の手続きも確認しておきます。必要書類や様式は制度改正で変わることがあるため、最新のものを所管官庁のサイトで確認してください。
費用の計上方法や、住居費を会社が負担した場合の税務上の扱いは、負担の仕方によって判断が分かれることがあります。給与課税と扱われることがあるケースもあるため、就業規則や賃金規程の整備と合わせて、税理士・社会保険労務士にご確認ください。在留資格の申請そのものや制度選択の可否については、出入国在留管理庁に届出をした行政書士や弁護士など、入管手続きに詳しい専門家に相談されることをおすすめします。初回の枠組みを専門家と一緒に固めておくと、二人目以降の受け入れがぐっと楽になります。
よくある質問
外国人採用の費用は、日本人を採用するより高くなりますか。
紹介手数料や在留資格の手続き、受け入れ準備、支援・監理の継続費用といった上乗せ分があるため、初期の負担は大きくなりやすい傾向があります。一方、給与や社会保険料は日本人と同等の考え方で計算する必要があり、人件費そのものを抑える手段とは考えないほうがよい部分です。
特定技能の支援を自社でやれば費用は抑えられますか。
登録支援機関への委託費は抑えられますが、事前ガイダンスや定期面談、相談対応などを自社で実施する体制と、支援を担当できる要件を満たす必要があります。少人数の会社では担当者の負担が大きくなりやすいため、一部だけ委託する形も含めて検討してください。要件の詳細は出入国在留管理庁の資料をご確認ください。
技能実習生を受け入れるとき、監理費以外に定期的にかかるものはありますか。
技能検定の受検に関わる費用、講習に関する費用、帰国時の航空券など、期間中の節目で発生するものがあります。住居費や生活用品の負担も続くため、監理費だけで月次コストを見積もらないようにしてください。
費用の見積もりを取るとき、何を伝えれば比較しやすくなりますか。
職種・人数・開始時期・海外から呼ぶか国内在住者かの4点を伝えたうえで、「初期費用」「毎月の費用」「自社で用意する費用」を分けて記載してもらうよう依頼すると比較しやすくなります。金額は機関ごとに異なるため、各社の公式サイトや見積もりで最新の条件を確認してください。