派遣社員の費用と直接採用の比較|どちらが自社に合うか
人が足りない。でも正社員を増やすのは怖い。そんなときに検討されるのが派遣の活用です。ただ、「派遣は高い」「直接採用のほうが安い」という話は、どこまでの費用を数えるかで結論が変わります。この記事では、派遣と直接採用それぞれで発生する費用の項目を並べ、自社がどちらに向くかを判断する順番を整理します。
この記事の結論
- 派遣の費用は派遣会社へ支払う料金にほぼ集約され、直接採用の費用は募集費・給与・社会保険料・教育や労務管理の手間に分散します。
- 比較するときは時給や月給だけでなく、採用にかかる費用、社会保険料の会社負担、教育や労務管理に使う時間まで含めて並べると判断しやすくなります。
- 期間が決まっている業務や立ち上げ期は派遣、長期に会社の中核を担ってほしい業務は直接採用、という軸でまず切り分けるのが実務的です。
派遣の費用はどこにかかるのか
派遣を使う場合、会社が支払うのは派遣会社に対する派遣料金です。この料金の中には、派遣スタッフに支払われる賃金のほか、社会保険料の事業主負担、有給休暇の費用、派遣会社の募集・教育・管理にかかる経費などが含まれているのが一般的です。つまり、雇用にまつわる手続きの多くを外側に置いた形になります。
そのため、単価だけを自社の時給と並べると「派遣は割高」に見えます。ただし、自社で雇う場合にも社会保険料の会社負担や募集の費用は発生します。比べるときは、派遣料金の中に何が含まれているかを派遣会社に確認し、自社の負担項目と対応させて並べるのが出発点です。
料金の水準は業務内容、地域、必要なスキル、契約期間によって変わります。相場を一律に語れるものではないので、複数社から見積もりを取り、内訳の説明を受けてください。
直接採用の費用は分散している
直接採用では、費用が複数の時点に分かれて発生します。まず入社前に、求人媒体の掲載費や人材紹介の手数料、面接にかける時間といった採用コストがあります。次に入社後、給与に加えて社会保険料や労働保険料の会社負担、通勤手当、必要に応じて備品や端末の費用が乗ります。
見落としやすいのが、教育と労務管理にかかる時間です。入社直後の数週間から数か月は、既存メンバーが指導に時間を使います。給与計算、社会保険の手続き、年末調整、有給管理なども自社側の仕事として増えます。ひとり社長の会社では、この時間が実質的に一番大きなコストになることもあります。
一方で、直接採用は長く続けるほど一人あたりの採用コストが薄まっていきます。教育した内容が自社に蓄積し、業務の任せ方も広げやすくなります。時間軸を長く取るほど、直接採用側が有利に働く構造です。
費用を比べるときの並べ方
同じ土俵で比べるには、項目をそろえた表を一枚つくるのが早道です。派遣側は「派遣料金」「受け入れ側の指揮命令や調整にかかる時間」「契約更新のやりとり」。直接採用側は「募集費または紹介手数料」「給与と賞与」「社会保険料・労働保険料の会社負担」「教育にかかる時間」「毎月の労務手続きにかかる時間」を並べます。
時間の項目は、担当者の時間単価をざっくり置いて金額に換算すると比較しやすくなります。厳密な数字でなくて構いません。「月に何時間取られるか」を書き出すだけでも、どちらが自社にとって重いかが見えてきます。
比較期間の置き方も結果を変えます。3か月だけなら採用費と教育時間が重く効き、2年3年なら派遣料金の積み上がりが効いてきます。実際に人に入ってもらいたい期間で試算してください。
派遣が向く場合、直接採用が向く場合
次の順で見ていくと切り分けやすくなります。第一に、その業務が終わる時期が見えているか。繁忙期対応、システム入れ替え、産休・育休の代替など、期間が区切られているなら派遣の適性が高い領域です。第二に、その仕事を教えられる人が社内にいるか。教える余力がないなら、すでに経験のある人に来てもらえる派遣が現実的です。
第三に、その業務を将来的に自社の中核に育てたいか。顧客との関係づくり、社内の意思決定、独自のノウハウが溜まる仕事なら、直接採用の方向で考えたほうが後がつながります。第四に、労務管理の手間を自社で引き受けられるか。給与計算や社会保険の手続きを回す体制がまだないなら、最初の一人を派遣で受け入れて体制づくりの時間を稼ぐ考え方もあります。
なお、派遣には受け入れ期間や業務内容に関する法令上のルールがあり、派遣先が行える指揮命令の範囲にも定めがあります。運用を誤ると想定外の対応が必要になることがあるため、契約前に派遣会社の担当者に確認し、判断に迷う場合は社会保険労務士に相談してください。
派遣から直接雇用に切り替えるときの費用
一定期間受け入れた派遣スタッフを自社で雇いたくなることがあります。この場合、派遣会社との契約に紹介予定派遣や手数料に関する定めが置かれていることが多く、切り替えのタイミングや条件は契約書によって異なります。まず契約書を確認し、派遣会社に相談するのが順番です。
費用の面では、切り替え後は給与と社会保険料の会社負担が自社に移り、労務管理も自社の仕事になります。一方で派遣料金の支払いは終わります。すでに業務を理解している人を迎えられるため、教育コストが小さく済むのは切り替えの利点です。
本人の意向、契約上の条件、自社の労務体制がそろっているかを、この順で確認してください。雇用契約の内容や社会保険の加入手続きで迷う点があれば、社会保険労務士に確認すると手戻りが減ります。
意思決定の手順と、相談するタイミング
実務としては、こう進めるとまとまります。まず、任せたい業務を書き出し、期間と必要なスキルを決める。次に、派遣会社2〜3社から見積もりと内訳の説明を受ける。同時に、自社で採用した場合の募集費・給与水準・社会保険料の会社負担・教育時間を書き出す。最後に、実際に人に入ってもらいたい期間で両者を並べて比べる。
料金は業務内容や地域、時期によって変わるため、各社の公式サイトや担当者から最新の条件を確認してください。金額だけでなく、契約期間の区切り方、交代が必要になったときの対応、受け入れ側で用意すべきものも同時に聞いておくと、後の調整が楽になります。
派遣の受け入れルール、雇用契約の内容、社会保険の加入範囲、費用の税務上の取り扱いは、会社の状況によって判断が分かれることがあります。労務面は社会保険労務士、費用計上や消費税の扱いは税理士にご確認ください。契約書の文言で迷う場合は弁護士に相談すると安心です。
よくある質問
派遣と直接採用は、結局どちらが安いのですか。
比較する期間と、数える費用の範囲によって結論が変わります。短期で採用や教育の手間を避けたいなら派遣、長期で同じ人に働いてもらう前提なら直接採用が有利に働きやすい構造です。実際に人に入ってもらう期間で試算して比べてください。
派遣料金には社会保険料も含まれていますか。
一般的には、派遣スタッフの賃金に加えて社会保険料の事業主負担などが料金に含まれる形が多いとされています。ただし内訳の考え方は派遣会社によって異なるため、見積もりを受け取る際に何が含まれるかを確認してください。
派遣で受け入れた人を直接雇用に切り替えられますか。
派遣会社との契約内容によります。切り替えの条件や手数料の定めが契約書に置かれていることが多いので、まず契約書を確認し、派遣会社に相談するのが順番です。雇用契約や社会保険の手続きは社会保険労務士にご確認ください。
派遣の費用は経費としてどう扱われますか。
一般に人件費ではなく外注に近い形で計上されることが多いとされますが、勘定科目の選び方や消費税の扱いは会社の状況によって判断が分かれます。処理方法については顧問税理士にご確認ください。