許認可が必要な事業の事業目的|建設業・古物商・派遣などの記載例

・会社設立・登記・会社のはじめかた編集部(監修:田中 祐介)

会社をつくってから「定款の事業目的にその事業が書かれていないので、許可申請を受け付けられません」と言われるケースは、決して珍しくありません。許認可が必要な事業をするなら、事業目的は設立前に決着させておきたい項目です。この記事では、業種ごとの書き方の考え方と一般的な記載例、そして「どの順番で確認すればよいか」を整理します。

この記事の結論

  • 許認可が必要な事業を行う場合、その事業が定款の事業目的に書かれていないと、許可申請の段階で目的変更を求められることがあります。
  • 事業目的は、許認可の担当窓口が「この会社はこの事業を行う会社だ」と読み取れる表現になっているかが重要で、法令で使われている用語をそのまま使うのが安全です。
  • 設立後に事業目的を追加する場合は、株主総会の特別決議で定款を変更し、管轄の法務局へ変更登記を申請する流れになります。

なぜ許認可と定款の事業目的がセットで問題になるのか

建設業許可、古物商許可、宅地建物取引業免許、労働者派遣事業の許可など、多くの許認可では、申請の際に会社の定款(や登記事項証明書)を提出します。窓口はそこで「この会社は、許可を受けようとしている事業を行う会社として設立されているか」を確認します。事業目的に該当する事業の記載が見当たらないと、補正や目的変更を求められることがあります。

会社法上、事業目的の記載はかつてほど厳格な審査はされないとされ、登記そのものは通っても、許認可の窓口で引っかかるという順序で問題が表面化します。つまり「登記できた=許可申請でも通る」ではない、というのが最初に押さえたい点です。

一方で、事業目的は多すぎても困ることがあります。金融機関の口座開設や融資の場面で「結局この会社は何をしているのか」が伝わりにくくなるためです。許認可に必要な文言は入れつつ、全体は10個前後に収める、といったバランスで考えるとよいでしょう。

事業目的を決めるときの確認の順番

迷ったら、次の順番で確認するのが実務的です。まず①これから行う事業に許認可・登録・届出が必要かを調べる。次に②その許認可の根拠になる法令や、所管官庁・自治体が出している手引きに書かれている事業の呼び方を確認する。最後に③その呼び方をできるだけそのまま事業目的の文言に取り込む、という流れです。

②が特に重要です。許認可の手引きには「〇〇業」という法令上の名称が必ず出てきます。自分で考えた言い換え(たとえば「リフォーム全般」「人材ビジネス」など)より、法令用語をそのまま使ったほうが窓口で説明が要りません。将来の事業を見込んで入れておく目的も、同じ考え方で書いておきます。

さらに、許認可によっては都道府県や市区町村が窓口になり、運用の細かい部分が地域で異なることもあります。設立前に、実際に申請する予定の窓口(都道府県庁の担当課、警察署、保健所など)に、想定している文言で差し支えないかを電話で確認しておくと、後戻りが減ります。

業種別・事業目的の一般的な記載例

以下は、よく使われる一般的な書き方の例です。実際の申請ではその許認可の手引きを優先し、窓口にも確認してください。建設業なら「建設業」「土木工事業」「建築工事業」「内装仕上工事業」など、取得予定の業種区分に合わせた工事業名を入れます。「建設工事の請負及び施工」といった書き方も広く使われています。古物商は「古物営業法に基づく古物商」「中古品の売買」など、古物を扱うことが読み取れる表現にします。

宅地建物取引業は「宅地建物取引業」、不動産賃貸や管理も行うなら「不動産の売買、賃貸、仲介及び管理」を併記します。労働者派遣事業は「労働者派遣事業」、職業紹介を行うなら「有料職業紹介事業」と分けて書きます。この2つは別の許可なので、両方行う予定なら両方を記載しておくのが安全です。

医療・福祉系では、訪問看護は「訪問看護事業」または「介護保険法に基づく訪問看護事業」、障害福祉は「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく障害福祉サービス事業」といった、法令名を含めた書き方が求められることがあります。運送業は「一般貨物自動車運送事業」「貨物利用運送事業」、旅館業は「旅館業法に基づく旅館業(旅館・ホテル営業)」「住宅宿泊事業」、酒類販売は「酒類の販売」「酒類の小売業」など、免許の区分に合う表現を選びます。飲食店を併設するなら「飲食店の経営」も入れておきます。

よくある失敗パターンと、避け方

ひとつ目は、抽象的すぎる書き方です。「各種サービスの提供」「コンサルティング業務」だけでは、許認可の窓口から見て該当事業を行う会社と読み取れないことがあります。抽象的な目的は残しつつ、許認可対象の事業は個別に1行立てるのが無難です。

ふたつ目は、似て非なる事業を混同するパターンです。派遣と職業紹介、建設業の業種区分、酒類の小売と卸売、旅館業と住宅宿泊事業(民泊)は、それぞれ別の手続きです。どちらも行う可能性があるなら両方書いておく、行わないものは書かない、と切り分けます。

みっつ目は、「前各号に附帯関連する一切の事業」だけで済ませてしまうケースです。この一文は便利ですが、許認可の審査でこれを根拠に認めてもらえるとは限りません。中心となる事業は、必ず独立した項目として明記しておきましょう。

設立後に事業目的を追加・変更するときの手続き

すでに会社があり、あとから許認可を取ることになった場合は、定款変更と登記変更が必要です。流れとしては、まず株主総会を開いて事業目的の変更を特別決議で決め、議事録を作成します。次に、変更後の目的を記載した株式会社変更登記申請書を、本店所在地を管轄する法務局へ提出します。登録免許税がかかるため、金額は法務局の最新の案内でご確認ください。

期限にも注意します。登記すべき事項が生じたときは、原則として決議の日から2週間以内に登記を申請することとされています。許認可の申請スケジュールが決まっているなら、登記完了までの日数(法務局の混み具合で変わります)も逆算して段取りしてください。

なお、定款そのものは会社の内部で保管する書類を書き換えれば足り、設立時のように公証役場で認証を受け直す必要はないのが一般的です。ただし、許認可の申請では「現行定款の写し」と登記事項証明書の両方を求められることが多いので、変更後の定款を整えておきましょう。

許認可ごとに、事業目的以外で見落としやすい要件

事業目的を整えても、それだけで許可が下りるわけではありません。多くの許認可では、資本金や純資産などの財産的基礎、専任の有資格者や責任者の配置、事務所や設備の要件、欠格事由に該当しないことなどが併せて求められます。会社の設計段階で、資本金の額や役員構成が要件に影響することがあるため、事業目的と同時に確認しておきたいところです。

たとえば人材系や不動産系では有資格者の常勤配置、医療・福祉系では人員基準と設備基準、運送業では車両や車庫の条件など、「会社の形」よりも「現場の体制」が問われる部分が大きくなります。設立前に手引きを通読し、足りない要素を洗い出しておくと、設立から許可取得までの期間を短縮できます。

また、許認可を取ったあとも、役員変更や本店移転のたびに変更届が必要になる制度が多くあります。登記の変更と許認可の変更届はそれぞれ別の手続きなので、片方だけで終わらせないよう、社内の手続きリストに両方を並べて書いておくと安心です。

判断に迷ったら、設立前に専門家へ相談を

事業目的の文言は、後から直せるとはいえ、直すたびに株主総会・登記・費用・時間がかかります。許認可の取得が前提の事業なら、設立前に一度整理しておくほうが結果的に早く済むことが多いはずです。

定款の作成や事業目的の記載、設立登記・変更登記については司法書士が取り扱う分野です。許認可の要件と定款の文言の突き合わせ、契約や責任範囲に法的な論点が絡む場合は弁護士、社会保険や雇用に関わる部分は社会保険労務士、資本金の設定や設立時の税務は税理士が相談先になります。

この記事は一般的な考え方をまとめたもので、個別の可否を判断するものではありません。実際の申請にあたっては、所管官庁・自治体が公開している最新の手引きを確認したうえで、司法書士など専門家にご相談ください。

よくある質問

定款の事業目的に書いていない事業を行うと、どうなりますか。

登記された事業目的の範囲外の活動をすると、取引の効力や対外的な説明で問題になることがあり、許認可の申請では受け付けてもらえない場合があります。実際に行う事業は、事業目的に記載しておくのが基本です。判断に迷う場合は司法書士や弁護士にご確認ください。

将来やるかもしれない事業も、先に書いておいてよいですか。

現時点で行っていない事業を記載すること自体は一般的に行われています。ただし目的が多すぎると会社の実態が伝わりにくくなるため、可能性が高いものに絞るのが現実的です。許認可が絡む事業は、先に入れておくと後の変更登記を避けられます。

古物商の許可を取るには、事業目的にどう書けばよいですか。

「古物営業法に基づく古物商」「古物の売買」「中古品の売買及び輸出入」など、古物を扱うことが読み取れる表現が一般的です。申請先は営業所を管轄する警察署になるため、想定している文言で差し支えないかを事前に相談しておくと安心です。

事業目的を追加する登記は、自分でもできますか。

株主総会議事録と変更登記申請書を用意して法務局へ提出する流れで、本人申請も可能です。ただし決議方法や記載内容に不備があるとやり直しになり、許認可のスケジュールに影響します。期限が決まっているときは司法書士に依頼することもご検討ください。

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この記事は一般的な情報をまとめたものです。税務・法務・労務の個別の判断については、税理士・弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。 料金や条件は変わることがあるため、お申し込み前に必ず各サービスの公式サイトで最新の内容をご確認ください。