電子契約の締結日はいつか|契約日の記載とバックデートの扱い

・契約・電子署名・会社のはじめかた編集部(監修:田中 祐介)

電子契約に切り替えると、最初につまずくのが「契約日はいつと書けばいいのか」です。紙のときは押印した日を手書きしていたので迷いませんでしたが、電子契約では署名した日時がシステム側に記録されるため、書面上の契約日とずれることがあります。この記事では、締結日の考え方、契約書に書く契約日の決め方、日付をさかのぼりたいときの扱い、確定日付との関係を、実務の判断順に整理します。

この記事の結論

  • 電子契約では、契約書の冒頭や末尾に記載する「契約日」と、電子署名やタイムスタンプに記録される「署名日時」の二つがあり、後者は後から書き換えられない記録として残ります。
  • 契約書に書く契約日は、当事者全員が合意した日を記載するのが基本で、署名が数日にまたがる場合は最後の当事者が署名した日を契約締結日とする運用が分かりやすい方法です。
  • 過去の日付を契約日として記載すること自体が直ちに否定されるわけではありませんが、実態と異なる日付を書くと証拠としての信頼性が下がるため、効力発生日を別条項で定める方法が検討されます。

電子契約の締結日はいつになるのか

電子契約には、日付が二つ登場します。一つは契約書の文面に書かれた「契約日」「本契約締結日」といった記載です。もう一つは、電子署名や電子サイン、タイムスタンプに記録される署名日時で、これはシステムが自動で付与します。

法律上の契約は、申込みと承諾の意思が合致した時点で成立すると考えられています。電子契約の場合、当事者全員の署名がそろった時点をもって合意が成立したと整理する運用が一般的です。片方だけが署名した段階では、まだ相手の承諾が示されていないためです。

つまり「締結日はいつか」と聞かれたら、原則として最後の当事者が署名を完了した日、と答えるのが分かりやすい整理になります。ただし契約の性質や交渉経緯によって異なる判断になることもあるため、重要な契約では弁護士に確認してください。

契約書に書く契約日はどう決めるか

実務では、次の順に考えると迷いません。第一に、当事者が「この日を契約日にする」と合意しているならその日を記載します。第二に、特段の合意がなければ、最後に署名する当事者の署名予定日を記載します。第三に、署名日が読めない場合は日付欄を空欄にして送り、締結後に署名記録の日付を管理台帳に控える方法もあります。

電子契約サービスの中には、全員の署名完了時点の日付を契約書の日付欄に自動で差し込める機能を持つものがあります。この機能があれば、書面上の契約日と署名記録が自然に一致します。導入済みのサービスで使えるかどうかは、各社の公式サイトやヘルプで確認してください。

注意したいのは、契約日と効力発生日を混同しないことです。「契約日は締結した日、効力発生日は◯月1日」と分けて書けば、実態と書面のずれを作らずに、望む時期から権利義務を発生させられます。基本契約や業務委託契約では、この書き分けが特に役立ちます。

締結日をさかのぼる(バックデート)ことはできるか

「4月から取引が始まっていたのに、契約書の締結が7月になってしまった」というケースは少なくありません。このとき、契約日欄に4月1日と書いてしまう対応が、いわゆるバックデートです。

当事者間で過去の日付を契約日とすることを合意し、その旨を明示しているのであれば、当事者間の関係としては有効と扱われることがあります。一方で、電子契約では署名日時がシステムに残るため、書面上の契約日と署名記録が食い違うことが後から誰の目にも明らかになります。税務調査や紛争時に「実態と違う書類を作った」と見られると、契約書全体の信頼性が下がりかねません。

そのため、実務では日付をさかのぼって書くのではなく、締結日は実際の署名日を記載したうえで、「本契約は◯年4月1日に遡って適用する」という遡及適用条項を置く方法が検討されます。事実と書面が一致し、当事者の意図も残せるためです。関係者や取引先に説明もしやすくなります。

なお、第三者の権利や税務上の取扱いが絡む場面では、当事者間の合意だけで整理しきれないことがあります。遡及の期間が長い契約、売上や費用の計上時期に影響する契約は、税理士や弁護士に事前に相談してください。

タイムスタンプと署名記録は何を証明するのか

電子契約サービスが付与するタイムスタンプは、「その時刻にその電子ファイルが存在し、以降内容が変更されていない」ことを示す仕組みです。誰が署名したかは電子署名や本人確認の方法が支え、いつの時点かはタイムスタンプが支える、という役割分担で考えると整理しやすくなります。

この記録があることで、契約書の内容が後から差し替えられていないことを示しやすくなります。逆に言えば、署名記録が残る以上、書面の契約日を実態と違う日に書いても、その差は隠せません。日付の正確さを軽視しないほうがよい理由はここにあります。

締結後は、契約書のPDFだけでなく、署名記録(監査ログ、合意締結証明書などと呼ばれます)もあわせて保存しておくと安心です。電子取引データの保存方法については電子帳簿保存法の考え方が関わりますので、要件の詳細は国税庁の公表資料で確認し、判断に迷う点は税理士にご確認ください。

確定日付は電子契約でも取れるのか

確定日付とは、その日にその文書が存在していたことを公的に証明する制度です。紙の文書では公証役場で確定日付印をもらう方法が知られています。債権譲渡の対抗要件など、第三者に対して日付を示す必要がある場面で使われます。

電子文書についても、公証制度の中で日付に関する扱いが用意されています。利用の可否、申請の方法、必要となるファイル形式などは制度の運用によって異なりますので、日本公証人連合会や最寄りの公証役場に事前に問い合わせてください。取り扱える契約の種類や手続きの流れを確認してから進めると、やり直しが減ります。

判断の順番としては、まず「第三者に対して日付を主張する必要があるか」を考えます。必要がなければ、電子署名とタイムスタンプの記録で足りることが多いでしょう。必要があるなら、公証役場に相談するか、司法書士や弁護士に手続きを確認するのが確実です。

社内ルールとして決めておきたいこと

日付の扱いは、案件ごとに判断していると担当者によってばらつきます。契約管理の最初の段階で、三つだけ決めておくと運用が安定します。一つ目は、契約日の記載ルール(全員署名完了日に統一するのか、合意日を書くのか)。二つ目は、効力発生日が締結日と異なる場合は必ず条項で明示すること。三つ目は、締結後に署名記録まで含めて保存する場所と担当です。

締結が遅れそうな案件は、早めに気づける仕組みにしておきます。取引開始日が決まった時点で契約書の準備を始め、開始日までに締結が間に合わないと分かったら、遡及適用条項を入れる前提で相手方と調整します。後から日付をどうにかしようとするより、はるかに手間がかかりません。

取引先から「契約日を先月にしてほしい」と依頼されたときの対応も、事前に決めておくと担当者が困りません。断るのではなく、「締結日は実日付、適用開始は遡及条項で」という代替案を提示できるようにしておくと、話がまとまりやすくなります。

専門家に相談したほうがよい場面

次のいずれかに当てはまるなら、自社だけで判断せず、専門家に確認することをおすすめします。遡及する期間が事業年度をまたぐ場合、売上や費用の計上時期が変わりそうな場合、契約日が税務や許認可の要件に関わる場合は税理士に。債権譲渡や担保など第三者への対抗が問題になる契約、紛争が起きている相手との契約は弁護士に相談してください。

登記に関わる書類の日付や、会社の機関決定と契約日の前後関係が問題になる場面では、司法書士が力になってくれます。従業員との雇用契約や労働条件通知の日付に関わることであれば、社会保険労務士への相談が向いています。

電子契約は、日付の記録が正確に残るからこそ、書面の日付も実態と合わせておく価値があります。迷ったら、事実どおりに書いて条項で調整する。この原則を社内で共有したうえで、個別の判断は専門家に確認する流れをつくっておくと安心です。

よくある質問

電子契約で当事者の署名日が違う場合、契約日はどちらを書きますか。

実務では、最後の当事者が署名を完了した日を契約締結日とする運用が分かりやすく、社内でもそろえやすい方法です。サービスによっては全員の署名完了日を自動で差し込む機能があるため、対応状況を確認してみてください。異なる整理をしたい事情がある場合は弁護士にご相談ください。

取引はもう始まっているのに契約書の締結が遅れました。どうすればよいですか。

契約日は実際に署名した日を記載し、別の条項で「◯年◯月◯日に遡って適用する」と定める方法が検討されます。事実と書面が一致するため、後から説明しやすくなります。計上時期などに影響しそうな場合は、税理士に確認しておくと安心です。

契約書の契約日を空欄のまま締結してもよいですか。

空欄のままでも、署名記録に日時が残るため締結時点は特定できますが、後で参照するときに手間がかかります。管理台帳に締結日を控えるか、日付を自動で差し込める機能を使う運用にしておくと、契約管理が楽になります。

電子契約でも確定日付は必要ですか。

第三者に対して日付を主張する必要がある場面では、検討する価値があります。社内管理や当事者間の証拠としては、電子署名とタイムスタンプの記録で足りることが多いでしょう。電子文書での手続きの可否や方法は、公証役場に事前に問い合わせてください。

あわせて読みたい

「契約・電子署名」の記事をすべて見る →

次に決めること

記事をすべて見る(1087本)→

この記事は一般的な情報をまとめたものです。税務・法務・労務の個別の判断については、税理士・弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。 料金や条件は変わることがあるため、お申し込み前に必ず各サービスの公式サイトで最新の内容をご確認ください。